ソードマンの聖杯戦争   作:永谷

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第弐拾漆話:危機迫る晩餐会

 

 

 

士郎SIDE

 

 

 

 居間から連れ出され、声が届かない離れの廊下まで来ると、腕を組んで苛立たしげに遠坂は呟いた。

 

 

「まさかセイバーが口出ししてくるとはね」

 

 

 遠坂の引越しの件について、今日初めてセイバーに聞かせたことだったが、あの時セイバーは特に反対意見を言わなかったから賛成していると思っていた。反対だったらどんな状況でもその意思を伝えるヤツだし、通らなかったら嫌味のひとつくらい言いそうだ。何もいわなかったから、桜に促されてこの件に異を唱えたことに驚いた。セイバーの真意が何処にあるのか分からない……。

 

 

「悪いな遠坂。俺の方から持ちかけたことなのに」

 

「別に士郎のせいじゃないわよ。あいつの性格が悪くてひねくれてるだけで」

 

「はは、でもさ、ちゃんと話し合わなかった俺もやっぱ悪いと思う」

 

 

 協力して欲しい、って言い出したのは俺の方なのにセイバーには何の相談もしなかった。

今回だってセイバーには話しづらいこととはいえ、何も話さず事後承諾という形だった。多分……また今回も「お前が困るだけだ」と言われて終わりだと思っていたんだ。

 ……セイバーには悪いと思う。でもこの件については簡単に引き下がるワケにはいかない。この件は俺だけじゃない、………桜のことも関わっているんだから。セイバーに疑われている桜がこの家に留まるというのならば尚更だ。

 

 

「遠坂、この件は俺に任せてくれないか」

 

「……この辺で首輪をきっちり掛けておけばいいのに士郎はお人好しね。―――まぁ、だからこそ協定を結ぼうと思ったんだけど(ボソ」

 

「悪かったな、お人好しで。でも直さないぞ」

 

「フン、別に治せなんて言ってないわよ」

 

 

 最近よく「お人好し」と言われるが、俺は俺のやりたいようにやっているだけだ。それが誰かに「お人好し」と言われても、この性格を直したいとは思わない。少しむっとして言い返すとプイとそっぽを向かれる。

 しかしそれも一瞬のこと。遠坂が何か思いだしたように急にこちらに振り返り、ピと指を一本立てた。

 

 

「それに、いくら協力者だからって甘えないでよね!自分のサーヴァントのことはマスターである自分で見るに決まってるでしょ。言われなくても私はそこまで干渉しないわよ」

 

「………」

 

 

 え、えーと………。

 遠坂の発言に様々な思考が頭を過ぎっていく。

 

 

「随分セイバーのことについて相談したし、世話になったような気がするんだけど……」

 

 

 うん、俺協力関係になる前からいろいろと遠坂に迷惑かけてるよな。今回だってセイバーの行動についてのことだし。

 

 

「そ、それはっ……!そう、あんなの放し飼いされたら冬木の管理人として困るのよ!だから仕方なくやってるだけで、今回は違うわよ!士郎がちゃんと話し付けなさいよ!」

 

「ああ、うん。……ありがとな、遠坂。遠坂が居てくれて本当に良かった」

 

「………」

 

 

 うん、やっぱり遠坂はいいヤツだ。元々何の不満もないけれども、協力関係であることに再度安心する。学校のマスターを如何にかするまでという期限付きだと言われていても嬉しく思う。その気持ちと感謝の気持ちを込めてまっすぐに礼を言う。

 

 

「あ…あんたは……っ!見当違いなお礼なんて言ってないでさっさと玉砕してきなさいよ!」

 

「玉砕とか縁起悪いこというなよ!俺だってちょっと不安なんだぞ?!」

 

 

 この件は俺がやるべきことだと思いはしてもやはり、セイバーを説得するのは不安になる。流石に食べ物じゃ吊られてくれないよなあ……いや、セイバーなら夜食も付けてやればあるいは……いやでもなあ。

 

 

「―――ぃ、―――先、………い」

 

 

 セイバーの説得法を考えて自分の思考に沈んでいると、会話がなくなり静かになった廊下に声が響く。桜だ。桜には調理を頼んだから藤ねえかセイバーが来るかと思ったんだけど………働け二人とも。

 

 

「桜、こっちだ。わざわざ呼びに来させて悪かったな」

 

「あ、離れの方に居たんですね。じゃあ何処に泊まるか決まったんですか?」

 

「いえ、もう少し他の部屋も見せてもらおうと思ってるの。桜、後で案内してもらえるかしら」

 

「はい、勿論です」

 

 

 何事もなく会話をする二人を眺める。遠坂を見て少し様子桜の様子が可笑しかったような気がしたんだが気のせいだったようだ。

 本当、あとはセイバーだけだよな。……いや、弱気になるな俺。頑張ろう。

 

 

 

士郎SIDE END

 

 

 

 シロウとリンが出て行って真面目な話は終わったので適当にテレビをつけて眺める。夕方のニュースを眺めてると相変わらず朝やっていたものと同じ報道が続けられている。

 あーはいはい、ガス漏れ事件ですね。何日同じもんやってんだよ。ニュースのキャスターやお偉い専門家や評論家の人間がテロや組織的な犯行か、などと見当違いな仮説を立てている。

 

 

(ほーんと、こんな大々的に報道までされちゃって………秘匿ってなんだろうなぁ)

 

 

 聖杯から流れてくる知識から秘匿の意味を調べてみるがやはり俺の知ってる秘匿だ。シロウから辞書借りて調べてみるかな。

 『秘匿』:真相(犯人)に辿り着かなければ誰に見られてもいい。―――みたいになってたりして。

 もしそうだったらシロウも弓兵と槍兵の戦いを見ていきなり魔術の儀式なんて結びつかせなかっただろうし、「コスプレした人たちが何か凄かった」で終わってただろうな。おいおい、それじゃシロウ殺され損じゃねぇかあっはっは、とまぁ冗談はここまでにして。

 

 

 手口は同じ。広範囲に渡って聖杯戦争の参加者の目に留まってはいても、己の手口は見せずに魔力の収集が出来ている。リンから聞いた学校に結界を張っているお粗末なサーヴァントとは大違いだ。

バーサーカーは無理、ランサーはこんなまどろっこしいやり方はしない。アーチャーはリンの監視が行き届いてるし、こんな生かさず殺さずなんて手法俺には無理。

残るはアサシン、ライダー、キャスターだけだが…………ま、キャスターが有力候補だな。まだライダーに遭遇したことないから分からないので判断はつかないけど。

 

 

(どっちにしろ)

 

 

 さっさと片付けないと面倒になることは分かりきっている。キャスターがやってたら面倒だなー。

協力関係にならないかと接触された時「マスターに一声かけろ」って言っちゃったもんなぁ。

こんなことやってるって分かったら拒否するだろうし。「あらそう、じゃあ仕方ないわ」って諦めてくれるような性格してなさそうだしあのキャスター。

 

…………

………

……うむ、交渉の席に俺も同席させてもらえるよう祈っておこう。

 

 

「士郎と遠坂さん遅いねえ」

 

「ん?そうか?そうだな」

 

 

 フジムラタイガの呟きに時刻を見れば、なるほど二人が席をはずしてから三十分を余裕で過ぎている。作戦会議でもしてるんじゃないかと思っている俺は気にならないが、フジムラタイガはそうではない。ついでに、俺たちのやり取りを聞いて調理の音が止まる。

 

 

「あ、あの、もう盛り付けて運ぶだけなのでお二人を呼んできて貰えますか?!」

 

 

 今までゆったりとマイペースで進められていた調理の手があわあわと動き出す。

サラダに使うらしいレタスがザルで水を切ることもなくそのまま皿に直行している。

メインの鍋はなんとか完成していてコンロに掛けられて煮込まれているが、その他のものは皿に盛られるのを待っている状態で、これから何が起きるか不安過ぎる。

 

 

「盛り付けなら俺とフジムラタイガでやっとくからマトウサクラが呼びに行って来たらどうだ」

 

「えっ!?」

 

「四人分の鍋は重いだろうし、落とされたら困る」

 

「そうそう、火傷したら大変だもん。桜ちゃん、二人とも呼んできてよ」

 

「あ、ありがとうございます!じゃあ呼んできますね、あとはよろしくお願いします!」

 

 

 エプロンをつけたまま一度だけ頭を下げると足早に居間を後にするマトウサクラ。

 ふ、取りあえず危機は去ったな………。

 

 

「んじゃ、俺は鍋持ってくから盛り付けよろしく頼むな」

 

「え」

 

「え?」

 

 





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