ソードマンの聖杯戦争 作:永谷
士郎SIDE
「んで、あんたらも俺の敵でいいんだよな?」
軽い調子で訪ねた先には、穂群原のミスパーフェクト、遠坂凛がいた。
「と、遠坂?!」
明らかに場違いである。何で遠坂がここに。っていうかなんで俺の家知ってるんだ。あれ?隣にいる赤い男なんか見覚えあるな。ってそうじゃない!何でこう、ヤバイ時に訪問者が絶たないんだ!?幸い青い男は遠坂に気付いてない、ならば遠坂だけでも!
「遠坂!お前なんでここに…いやそれより早くここから離れろ!」
「は!?何言ってんのよ今一番危ないのは衛宮くんじゃない!逃げるわよ!」
手を掴まれる。や、やわらか…!
「じゃなくて!あいつは俺の恩人なんだ!放っておけるか!」
「恩人!?あの青いのはアンタ殺そうとしてんのよ?!衛宮君あなた正気!?」
「違う!そっちじゃなくて髪の白いほう!」
「アイツが今一番やばいんじゃない!殺されるわよ!」
「な、なんで殺されなきゃならないんだよ!っていうか殺されるわけないだろ。犯罪じゃないか」
「ぐぁぁぁぁ~~~!!!なんっであんたは状況の理解が出来ないのよ!見て分かるでしょ!!」
「分かるわけないだろ?!
いきなり殺されたかと思ったら生きてて、生きてたと思ったらまた殺されそうになって!
んで助かったと思ったらその恩人は変な奴と戦ってるし!」
こんな状況で自分の置かれた状況がちゃんと分かるわけがない!
でもこれだけはいえる。俺の事なんかより遠坂だ。何の用で来たかは分からないけどすぐに避難させないと!
「凛、もういいだろう、帰るぞ」
「はぁっ?!帰らないわよ!ここまで突っ込んできておいてこんな危なっかしい馬鹿放っておけるわけないでしょ!」
「むっ、馬鹿ってなんだよ。俺は遠坂の安全を考えてだな」
「自分から棺桶造ってる様な奴に考えてもらう安全なんて無いわよ!」
「棺桶なんて作ってないぞ俺」
「そうじゃないわよ!馬鹿!」
「また馬鹿って……あぁ、もういいから遠坂帰れよ。用事は明日聞くから」
「こん、の…!馬鹿っっ!!果てしないほど馬鹿っっ!!!人の話聞きなさいよね、衛宮君の癖に!!!」
「っぅ~~~~~!お、俺の癖にって……」
「うるさい!衛宮君ごときが私の心配なんて30年早いのよ!!」
「ランサー帰ったけどいいのか?」
「む、セイバー・・・でいいのか?ランサーを逃がしたのか」
「そりゃぁこんな痴話喧嘩すぐ横でおっぱじめられちゃぁな」
「……あぁ、」
「苦労しそうだな、赤いの」
「私はアーチャーだ」
「遠坂は女の子だろ!心配して何が悪いってんだ!」
「なに、このご時勢に女の子は守ってやんなきゃとかいってんの?!自分すら守れないのに!」
「俺は男だからいいんだよ!っていうかこんな夜中に出歩いて何してんだよ危ないだろ!」
「だから、危ないのは衛宮君の方だって言ったら何回…」
ぐ、と遠坂が俯く。
や、ヤバイ…ちょっと言いすぎた、か?売り言葉に買い言葉だったとはいえ、心配してくれてるだろう遠坂に対して、確かにちょっと言いすぎたかもしれない…
「あ、と、遠さ
「言えば分かるんじゃこんちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
見事な右フックに意識を刈り取られた。
「あ、決まった」
「やれやれ」
そんな会話が聞こえた……いつの間にあの青い男帰ったんだ?
士郎SIDE END
「違う!そっちじゃなくて髪の白いほう!」
「アイツが今一番やばいんじゃない!殺されるわよ!」
「な、なんで殺されなきゃならないんだよ!っていうか殺されるわけないだろ。犯罪じゃないか」
「ぐぁぁぁぁ~~~!!!なんっであんたは状況の理解が出来ないのよ!見て分かるでしょ!!」
一触即発の空気だったのに、いつの間にか痴話喧嘩が始まっていた。ポカンとした顔でランサーも二人のやり取りを見ている。やっぱ呆気に取られるよなー。下手したら…いや、あのままで行けば確実にここから生きて帰れなかったというのにあのやり取り。
「なぁ、俺帰っていいか?今回は様子見だったし」
地面に胡坐を掻いたまますっかりヤル気を殺がれた様子でこちらに提案するランサー。
突然現れた赤いサーヴァントは二人のやり取りを見て頭痛を抑えている。苦労人だ…!
と。今はそれどころじゃないな。
「様子見かよ。だったら吹っ飛ばした時帰って置けよ」
そしたらこんな混沌とした状況にはならなかったのに。
「いいじゃねぇか、見てる分にゃ面白いだろ、アレ」
「否定はしないが…俺もマスター探しに行かなきゃだな」
「おいおい、本当にあの坊主と契約してなかったのかよ」
「してねぇよ。俺の嫌いな臭いがすんだよあのガキ」
「ふぅん?ま、お前とはまた闘り合いたいからな。つまんねぇ事で消えるんじゃねーぞ」
「はっ、馬鹿め。本気の俺に手も足も出なかったくせに。大人しく隅っこに縮まっとけよ」
「テメェの心臓は絶対に俺が貰い受ける」
赤い槍をこちらに突きつけ、それだけ言うとさっさと塀を飛び越えてランサーは夜の街に消えた。
「お前にやれるほど安もんじゃねぇっつの」
俺はこの世界の知識どおりに正しく中指を立ててその姿を見送ってやった。
「自分から棺桶造ってる様な奴に考えられる安全なんて無いわよ!」
「棺桶なんて作ってないぞ俺」
「そうじゃないわよ!馬鹿!」
「また馬鹿って……あぁ、もういいから遠坂帰れよ。用事は明日聞くから」
痴話喧嘩はまだ続いている……つかランサー帰ったこと絶対気付いてないなあいつら。このまま放ってマスター探しに繰り出しても良いが、眉を寄せて唸っている苦労人の姿を見て声をかけることにした。
「ランサー帰ったけどいいのか」
「む、セイバー…でいいのか?ランサーを逃がしたのか」
「そりゃぁこんな痴話喧嘩すぐ横でおっぱじめられちゃぁな」
「……あぁ、」
「苦労しそうだな、赤いの」
「私はアーチャーだ」
「ん、俺は一応セイバーだ」
「そうか」
「これ、いつまで続くんだ?」
「大丈夫だ、そろそろ終わる」
アーチャーに促されて二人を見ると、赤い少女が俯いている。
あーぁ、泣かせたか?全く自分の心配をしてこんな死地まで来てくれた少女を泣かせるなんて鬼だなアイツ。少年もヤバイと思ったのか直ぐにバツが悪そうな顔をして戸惑いがちに声をかける。
キュピーーーンと影になっていた目が光った気がした。
「言えば分かるんじゃこんちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「あ、決まった」
「やれやれ」
見事な右フック。きっと世界も狙える。
カンカンカーン!とゴングを鳴らしてやりたいほどにキレがあり、あの細腕からは思えないほどのスピードだった。アーチャーはやっぱり頭痛がするのか額を指で押さえている。鈍い音を立てて少年が地に崩れ落ちて、ようやく今夜の聖杯戦争は落ち着いたのである。
「では我々は帰ろう」
「そうね。あとはセイバー頑張ってね」
「おいおいおい、一番厄介なもん押し付けてくなよ。つか俺もマスター探ししなきゃ何ねぇんだけど」
「「は?」」
「この少年は俺のマスターじゃないぞ」
「は?!じゃぁ他の誰がアンタを呼び出したってのよ」
「たぶん、こいつだと思うが……呼び出した覚えがないっつーんだもん」
「男がもんとか言わないでよ。覚えがないって言ってもアンタを呼び出したのが衛宮君ならあんたのマスターは衛宮君でしょ」
「俺はコイツに俺がセイバーだって言ってないし、契約も完了してない」
「え、じゃ、じゃぁ今のアンタって」
「ハグレサーヴァントってやつかな」
「衛宮君……こんな物騒なサーヴァントに首輪かけてないって……!」
あ、どかーんと来そう。ぶるぶると震える拳が尋常じゃない。
っつか物騒なサーヴァントって失礼だな……まぁ、英霊なんて一人いるだけで十分物騒だが。
あー、でも俺殺人衝動のランクが高いから更に危険度ドンだな。三人だけで、敵意がないから抑えられているだけで、敵意向けられたら全員殺しちまうからな。しかし殺人衝動があるってのはばれてないはずだが……ま、あの殺気で十分危険か。
「というかそいつ聖杯戦争のことすら知らなそうだし、俺を召喚したのだって偶然だと思うぞ」
「嘘!そんな奴にセイバーが取られたって訳?!」
わなわなと震えるトウサカリン。もしかしてセイバーが良かったのか?チラリとアーチャーに視線で問えば肯定。おいおい、自分のサーヴァントの目の前で言うことじゃないだろ。
「なんだ、セイバーがいいんならここにいるぜ。ハグレサーヴァントだけど」
「あんたはお断り。絶対ヤバイもの」
うむ、その直感は正しい。大事にしたまえ。
「凛、それほどの英霊をこの小僧が御することができると思うのかね・・・」
「あ」
それほど上等なもんじゃないんだが。正規の英霊じゃないしな俺。
セイバーというクラスについてはいても本来は違うカテゴリーに分けられるし。ソードマンってのが一番俺に相応しいクラスだと思う。でも「セイバーとどう違うんだよ」と言われてこのクラスに押し込まれたのだが。……剣を持ってないセイバーって致命的じゃね?
「うむ、何を隠そう今この状態で一番殺したいと思うのはそこの少年だからな」
「な、なんでよ…あんたのマスター、じゃなかったのね。とにかく呼び出したのは衛宮君でしょ。聖杯を手に入れるチャンスをくれたのは衛宮君ってことじゃない」
「別にいらないし」
「え」
「俺の願いは英霊になる時に自分の死後と引き換えに叶えて貰ったからな」
まぁ、叶えて欲しいものはあと一つ二つ三つ……うむ、欲があるということは人間らしいことだ。悪いことではない。とりあえず切羽詰った、どうしても叶えて欲しいってもんはないということで。
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