ソードマンの聖杯戦争   作:永谷

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第肆話:初戦の後に

 

 サーヴァントセイバーの召喚された土地―――衛宮邸。

襲撃者は退き、戦場であった庭は夜に静まり返って本来の静けさを取り戻している。

 

 しかし聖杯戦争は終わったのではない。

先程までの戦いですら始まりを告げるものでしかなかった。

 

赤い弓兵のサーヴァント。

白い剣士のサーヴァント。

 

 二人のサーヴァントが揃った時、戦場は開幕を告げているのである。

 

 

「コイツは貴様のマスター、いや召喚者だろう。ならば貴様が面倒を見るのが道理ではないか?」

 

「道理だ?んなつまんねぇもん引っ張り出してきて押し付けようとすんじゃねぇよ」

 

「不可抗力とはいえ一度でも助けたのであれば最後まで面倒をみたまえ」

 

「助けたのはそっちも同じだろ?ま、あんななまくらじゃ傷一つつかねぇけど」

 

「クッ、助けたのではなく不意を付いただけのことだ。まさか不意を付くのが邪道というようなたまではあるまい?」

 

「おぉおぉ、弓兵は弓兵らしく目の届かない所でこそこそ隠れてガクガク震えてるのがお似合いだ」

 

「フッ、それがお望みとあらば夜道には気をつけることだな。座に帰ったら戦歴に刻み込んでおけ。マスターを選り好みして弓兵風情に負けました、とな」

 

「あんたら……いい加減にしなさいよ!アーチャー、衛宮君を運びなさい!」

 

「凛、何故私が」

 

「い・い・か・ら!」

 

 

 一言一言言い聞かすように告げてから一つ息を吐くトウサカリン。上げられた顔は憤怒の表情が一気になりを潜めて、アーチャーを呼ぶ声は慈愛すらこもっている。かもしれない。

 

 

「アーチャー」

 

「なんだ」

 

「これはお願いじゃないの、命令なの」

 

 

 鬼だ!ここに鬼が、あくまがいる!!

 

 

「……地獄に落ちろ、マスター」

 

 

 せめてもの仕返しとアーチャーが少年を運ぶ手はぞんざいだった。

 

 

 

******

 

 

 

「衛宮君と契約しなさい」

 

「NO」

 

 

 俺は日本人じゃないからNOと言える。こうしてトウサカリンという少女に付き合ってるのは、まぁ夕飯をごちそうになっているからである。あれから俺たちはトウサカリンに沈められた士郎をアーチャー(俺は断固断った)が運び、布団に寝かせた後居間?客間?まぁ畳の敷かれた和室に三人で揃った。手持ち無沙汰だったので机の上に置かれていたセンベイを取って包装を剥がしてバリバリと食べる。

 

 

「……随分図々しいわね、アンタ」

 

「ちょっとは魔力の足しになるからな。ま、お助け料って訳だ。足りんが」

 

 

 中々美味だったので独り占めするのも悪いのでトウサカリンの方にも差し出してみるが、なんか俯いてブツブツ言ってる。大丈夫かよ。

 

 

「………うぅ、私のセイバー像がセイバー像が…」

 

「トウサカリン、幻想とは壊れるものさ」

 

「アンタなんてセイバーじゃない…。それにトウサカじゃなくてトオサカ、っていうかフルネームで呼ばなくてもリンでいいわよ」

 

「おぉ、じゃぁ俺もセイバーでいいぜ」

 

 

 軽い自己紹介をしているとコトンと目の前に湯飲みが置かれた。視線を向ければ赤い弓兵がリンの傍に座る所だった。中を覗いてみると緑色の液体が入ってる。野菜ジュース?青汁?

 

 

「茶だ」

 

「ん?悪いな」

 

 

 緑茶らしい。礼を言ってふぅふぅと冷ましながら口に含む。センベイに合うな。食べ終わった包装紙を避けて、もう一枚と手を伸ばすとリンが更にうな垂れていた。

 

 

「アーチャーあんたまで……」

 

「どうせ進展無いんだし、家主も寝てんだし好き勝手にやらせてもらおうぜ。怒られたら寝てたお前が悪いっていえばいいし」

 

「……」

 

「……」

 

「あんだよ」

 

「やりたい放題ねー、と思って。衛宮君のサーヴァントじゃないのに」

 

「随分と現世に馴染んでいると思ってな。君は召喚されたばかりだろう」

 

「折角現界したんだし、遠慮なんてしてつまんない英霊人生送るよりましだろ。で、アーチャーの意見はもっともだが聖杯からのバックアップがあるだろうが」

 

 

 俺の存在意義でもある殺人が禁止されてるのだからその衝動を他に置き換えて誤魔化さないと辛いものがある。無益な殺人なんて好きではないから抑えることに文句はないのだが、自分で抑えるのは結構骨が折れる。

 

 

「そんなにここの生活が気に入ったんなら衛宮君のサーヴァントになればいいじゃない」

 

「ごめんだね、聖杯戦争やりにきたのに聖杯戦争知らないガキのお守りなんて。アーチャーも嫌だろ?英霊相手に木刀で突っ込もうとするような馬鹿」

 

 

 魔術師の端くれならば、俺らの存在の非常識さを察知して欲しいものである。事前に察知できなくとも、俺がランサーと戦っているときに理解できたはずなのにあいつは逃げなかった。俺の嫌な予感は当たる。むしろ嫌な予感だから当たる。幸運E-は伊達じゃないのだ。

 

 

「確かにな。だが私のマスターは幸いにして凛だ。お悔やみ申し上げるよ」

 

 

 ック、と嫌みったらしく笑うアーチャー。

ここらでサーヴァントを減らす仕事でもするかな…おぉそうすりゃマスターも手に入るな。食事をするところだからやりはしないが。戦意のないサーヴァント<食べ…魔力補給だ。カスが付いた指を舐め取り、不機嫌そうにこちらを睨みつけてくるリンに指を突きつける。

 

 

「だからアイツのお守りはしないっつの。そろそろ俺探しに行ってくるかな」

 

「ちょっと!本気で」

 

「本気です。嫌です。というかこんなヤバイ儀式なんだから監督役とか調停役とかそういうのいんだろ。死んで欲しくないんならそこに連れ込んでやるんだな」

 

 

 というかこの聖杯戦争を始めた奴らこんな街中を舞台にするなんて何考えてんだろうな。俺が生きていた時代とは違って魔術は秘匿するものってことになってるらしいし。俺に言わせて見ればお前ら秘匿する気ねぇだろって感じだがな。こんな平和な世界じゃこんな物騒な奴らが戦ってるのは勿論、いるのだって迷惑だろうに。お上は考えることが違いすぎて分からんね、と溜息をついて立ち上がる。

 

 

「せめて衛宮君に何か言ってから行きなさいよ」

 

「混乱するだけだろーが」

 

「お茶菓子紛失してた方が混乱するわよ」

 

「そこはほら、リンが話を付けてくれれば」

 

「嫌よ。家主が気を失ってるってのにお茶菓子漁ってたなんて遠坂の恥だわ」

 

 

 大体食べたのあなただけじゃない。と言われてしまうと何も言えん。後悔なんて勿論しない。

どうやって共犯にしてやろうかを考える。

 

 

「……言っとくけど、食べないわよ。こんな夜遅くに物食べるなんて女の子にとっちゃ厳禁なんだから」

 

「腹が減った時に食べる、それの何が悪いんだよ」

 

「あら残念ね、私お腹減ってないの」

 

「そんな小食だからボリュームが」

 

 

チュイン!

 

 

「何か言ったかしら?」

 

「そんな小食だからボリュームがすく」

 

 

ずどどっどどどどど!!

 

 

「凛!やめないか!」

 

「うるさい!殺すわ!絶対にコイツは!」

 

「ふ、その程度の魔術で俺を傷つけようなんて」

 

 

「うわ!なんだこれ?!っていうか壁!壁に穴あいてる!!」

 

 

「……だから言ったのだがな」

 

「……も、もっと早く言いなさいよアーチャー!」

 

 

 え、アーチャーが悪いのか?恐ろしい。

そんなやり取りを聞いたのか、襖を開けて家主が登場する。

 

 

「と、遠坂!?…とアンタか」

 

「お邪魔してるわ」

 

「勝手にお茶菓子食ってんぞ」

 

「いや、それは別にいいんだけど…この壁はなんだ」

 

 

 アーチャーと俺の視線がリンに向けられる。うぐ、とバツが悪そうに視線を下げるリン。

 

 

「いいわよ!直してあげるわよ、そんなの私に掛かればあっというまなんだから!」

 

「おぉ、男らしい」

 

「遠坂がやったのかよ、これ……」

 

「アーチャー!直しなさい!」

 

「私か!?」

 

「あんたが私のこと止めなかったんだから同罪でしょ!」

 

「……はあ、まあこれくらいなら構わないが……」

 

 

 発破を掛けられて渋々とだがガンドによる銃痕を直そうとするアーチャー。それを腕を組んで偉そうに眺めるトオサカリン。これが正しい主従の関係らしい……絶対こんな理不尽な主人の下には就きたくねぇな。そして俺は家主からの許可が下りたので堂々とセンベイを食べる。

 バリッ。ボリボリボリ。

 

 

「あ、お茶いるか?」

 

「ん」

 

「どうぞ、って言うか良く分かったな、急須とか茶葉とかの置き場所」

 

「俺じゃねぇよ、そこの赤いのが淹れてくれた」

 

「…アイツか」

 

 

 ちょっと面白くなさそうにリンに扱き使われている赤いアイツを眺める少年。

 

 

「そういえばお礼言ってなかったな。

 

俺は衛宮士郎。今日は本当に助かった、ありがとう」

 

「別に気にすんな、というか突然現れたことにつっこまねぇか?」

 

「む、確かにそうかもしれないけどお礼はちゃんと言うべきだろ」

 

「お人好しめ」

 

「……そうだよ、お人好しだよ悪いか」

 

「あぁ悪いね。そんな自己満足みたいなもん押し付けられるこっちが」

 

「なんだと」

 

「ちょっとあんたら何いきなり険悪になってんのよ!」

 

 

 ギシギシとなりそうな空気を感じてアーチャーの作業を見ていたリンが止めに入ってくる。確かに俺がちょっと大人気なかった。自覚はしている。出来る大人ならここで大人しくエミヤシロオの感謝の言葉を受け流しておくべきだ。適当に。

 自分の命が何度も失われる羽目になっているというのに、その状況を理解する前に感謝する神経が気に食わないだけだった。リンはコイツを俺に任せようとしているがごめんだ。

命がいくつあっても足りない。勿論俺じゃなくてエミヤシロオの。直感で言うと40回くらい。

 

 

「まず、衛宮君は自分が置かれている状況をキチンと把握すること。そしてセイバー、あなたはマスターを探しているのよね、だったら避難所でもある教会に行ったほうが早いわ。どうせ私たちも教会に行かなきゃならないし、案内も監督役への口聞きもするわ。その条件であなたも私たちに付き合って頂戴」

 

「断ったら?」

 

 

 

「冬木の管理者としてあなたの様なサーヴァントを放置して置けない。

だからあなたには魔力供給が断たれて消耗するだけの今の状態で倒させてもらうわ」

 

 

 





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