ソードマンの聖杯戦争   作:永谷

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第睦話:食後の考察

 五、六人前はある食事をデザートまで四人で食べつくし、食後のお茶を終える。

そして教会へ行く前の腹休めとしてエミヤシロオが不本意ながらも巻き込まれた聖杯戦争についての説明が始まる。

 ゴロリと横になり、丸めた座布団を枕代わりにしているとアーチャーから小言を言われた。

 

 

「行儀が悪い。それに食後すぐに横になるのは体に悪影響だ。具体的に」

 

「要らん。英霊に健康云々なんて関係あるわけねぇだろ」

 

「む。それはそうだが、私が言いたいのは健康に害があるからだけではなく心構えが」

 

「あぁ!別にいいじゃねぇか!なんだ、お前は俺の母親か!」

 

「誰が貴様の母親だ!仮に親だとしても貴様のような躾けのなってない子供には育てんわ!」

 

 

「……遠坂、」

 

「衛宮君、あっちは放って置きなさい。こっちは確実に命が掛かってるんだから」

 

「わ、分かってる」

 

「でもそうね、これ以上話の邪魔されるのは困るわ。

 

アーチャー、話したいことがあるなら他でしなさい。でなきゃ消えて」

 

「凛…その言い方はなにやら問題があるぞ…。まぁ精神の未熟な敵と話すことなど何もない。君が望むとおり霊体化させてもらおう」

 

 

 リンの言葉遣いに対してなにか言いたそうな視線をリンに向けていたが、勿論黙殺されたのでアーチャーは溜息を吐いた後こちらに皮肉をきっちり告げてから消えた。あいつは一体なにがどうしたいんだか分からん…構いたいのかそうじゃないのか…。

 

 

(しかし……)

 

 

 緩めていた思考を戻し、リンの説明を受けているエミヤシロオを見る。

驚いたり怒ったりと反応は様々だが、それだけで人となりが分かる。お人好し。

 まぁ令呪の兆しがあり、聖杯戦争に参加する権利を持っている―――つまり、敵となる可能性を持っている人間に、わざわざ聖杯戦争をレクチャーしてやるリンもお人好しなのだが。

 アーチャーもそのことは理解しているだろう。それなのに何故それを止めないのか……奴がいる方に視線だけ向ける。………ま、リンに頭が上がらないってのもあるかもしれんがな。

 

 

(エミヤシロオ・・・・・・何かあるのか?)

 

 

 食事中に二人の関係を聞いてみたがそこまで深い仲でもなさそうだし、知り合いの知り合い、といった方が適切かもしれない。その程度の間柄だ。リンはお人よしだが、きっちりと公私の区別が出来る。敵味方の区別が出来る。そこがエミヤシロオのお人好しとは違うのだが、何故生かして生存確率を上げさせるような真似をするのかが不明だ。

しかも護衛に俺をつけようとするとか……意味分からん。

 

 

(とにかく情報が足りない)

 

 

 たった一戦だが、魔力放出をして戦った。マスターが居らず、魔力供給が出来ていない現状では今は良いがこれからは分からない。魔力循環で消費が激減されているがささやかながら魔力は放出している。霊体化してもいいのだが、俺の武器は俺の武器じゃない。現世にあるものを武器にするのだ。

 

 つまり、霊体化していると持てない。

わざわざその場で調達しなければ素手で戦うことになるのだ。切り札があるにはあるが…、この状態で惜しまず連発するのは難しい。ここには物が溢れているから良いが……どこで戦うかなんてその場にならなければ分からない。

 召喚されたばかりで地理なんて全く分からない。教会へ行って、用が済んだら町を回ってみた方がいいな。出来ることならリンの弱みを握ることが出来ればいいんだが、アーチャーの真名は一度宝具でもない攻撃を食らっただけだし不明だが、その一端を掴むくらいはしたい。

 俺狙いじゃないサーヴァントでも襲撃してこねぇかなー……幸運E-じゃそんな上手く行くわけねぇか。

 はぁ、誰をマスターにするかも決めてないのにやることは大量だな。

 心の中で溜息を吐いて考えを纏める。

 

 

(為るようになる!)

 

 

「え、っていうことはセイバーさんも英雄なのか?」

 

 

 そりゃどういう意味だエミヤシロオ。

 

 

 

 

士郎SIDE

 

 

 

 

「ちょっと待て。過去の英雄って、ええ・・・・・・!?

え、っていうことはセイバーさんも英雄なのか?」

 

 

 俺の作った料理を一口食べるや否やあっちもこっちもと忙しそうに手を伸ばしていたセイバーさん。

 生命が懸かっているんだ、と言わんばかりに誰も取らないのに食べ物を詰め込むセイバーさん。

 食後のお茶を幸せそうに啜り、満足げな表情で溜息を吐くセイバーさん。

 アーチャーに小言を言われて大人気ないやりとりをするセイバーさん。

 

 とてもじゃないけど英雄に見えない。

あ、いや別に遠坂の言葉を信じないって訳じゃないんだけど・・・行動がそれらしくない。

 

 

「ま、英雄っていってもそれぞれだな」

 

 

 ヨイショと寝転がっていた体を起してこちらの話に加わってくる。それに対して遠坂が「そうね」と頷いてこちらを厳しい目で見てくる。

 

 

「でもこれだけは言えるわ。どんな英雄でも英雄なの。怪物じみた力を持ってるわ。性格はそれぞれだし、中にはほだされるような行動を取る奴もいるかもしれないけどそれだけはどんな英霊も変わらないわ」

 

「英雄をどういう目でみているのかは分からないがな、エミヤシロオ。英雄って言うのは殺人の代名詞みたいなもんだ。人を殺さずに為った英雄なんて少なくとも俺は知らん」

 

 

 少なくとも俺は知らん、つまり彼は人を殺して為った英雄なのだ。

それを言われて襲撃してきた青い男との一戦を思い出す。

背筋も凍り、一歩も動けなくなるような残酷なまでに冷たい殺気を思い出す。

 

 そうだ、だから遠坂は言ったんだ。

 

『中にはほだされるような行動を取る奴もいるかもしれない』と。

 

 これは忠告だ。

遠坂と、他でもない本人であるセイバーさんからの。

 でも、

 

 

「俺はセイバーさんを怖いとは思えないな」

 

「は?」

 

「わざわざ忠告してくれるなんていい人じゃないか」

 

「・・・・・・・・・俺、頭痛くなってきたから消える」

 

「・・・・・・・・・私も消えたい・・・・・・」

 

「む、人が御礼言おうとしてるのにその態度は無いんじゃないか」

 

 

 額を押さえてよろよろとテレビの電源を入れ、チャンネルを変えてから消えるセイバーさん。

重く溜息を吐きながら額を押さえて頭を振っている遠坂が羨ましそうにセイバーさんが消えた先を見る。そして再度深く溜息を吐きながらこちらに向き直って説明を再開する遠坂。

ちょっと二人の態度が面白くなくて眉を寄せる。

 ……人のことお人好しお人好しっていうけどこの二人も十分お人好しだと思うんだけどなぁ。

言うと烈火のごとく怒られたり、こののんびりした空気も吹き飛ぶような殺気を向けられるので口には出さないけれど。

 

 

(でも、嫌いじゃないな)

 

 

 うん、嫌いじゃない。

 ちょっとだけ心の中で笑ってから、俺が巻き込まれている聖杯戦争というものの説明を受ける。この左手に刻まれた参加の兆しを使うか、使わないかを見極める為に。

 

 

 

 

士郎SIDE END

 

 

 

 

「さて。話がまとまったところでそろそろ行きましょうか」

 

 

 どうやら大まかではあるが、聖杯戦争と、サーヴァントという存在についての説明が終わったらしい。リンの言葉にエミヤシロオはきょとんとして首を傾げている……お前……いや、何も言うまい。折角霊体化して空気となっているのだ。リンに全て任せよう。俺はただの護衛だ。説明書じゃない。

 

 

「?行くってどこへ?」

 

「……あんたね。まぁ、いいわ。教会に行くって行ってたでしょ。そこにあなたが巻き込まれたこのゲーム……”聖杯戦争”の監督役がいるから会いに行くわよ。そこでなら詳しい聖杯戦争のこと聞けるし。

衛宮君も聖杯戦争の理由について知りたいんでしょ?いざという時の避難所でもあるから行って損はないわ」

 

「教会って……確か隣町だったよな」

 

 

 ただでさえ遅かったのに、暢気に夕食を食べ、食後のお茶まで飲んだ上、大まかな説明までしていたので、時刻はもう深夜を指している……普通の人間が出歩く時間じゃないな。

聖杯戦争自体は夜に行うものが主だからリンたち参加者にとっちゃ大した時間じゃないだろうが。

 

 

「大丈夫よ。隣町なんて急げば夜明けまでには帰ってこれるし。それに明日は日曜なんだから、別に夜更かししてもいいじゃない」

 

「いや、そういうことじゃなくてだな」

 

 

 どうせコイツのことだ、こんな物騒な時間に女の子が隣町まで歩くのが危ないとかなんとかだろー、一番教会に行くのが必要な奴がなんで物事を先送りにするのやら……。俺も付き合うことになってるし、ここで明日に持ち越し……なんていうのはご免だ。

 

 

「俺もアーチャーもいるんだ、万が一サーヴァントと遭遇しても早々やられやしねぇだろ。

というか、リンが俺を教会まで連れて行こうとした時点で気付けよ、護衛が欲しかったんだって」

 

 

 勿論、リン自身の護衛の強化にもなるかもしれないが…本命はエミヤシロオのだろう。

アーチャーとエミヤシロオの仲は何故か悪いからな。いざという時エミヤシロオを見捨てて離脱する、なんてことくらい起こりそうだ。他のサーヴァントに遭遇でもしたら更に倍率ドンだろ。

 

 

「ぅ、……分かったよ。今から行くんだろ」

 

 

 こうして、俺たちは教会までの道のりへ歩み出したのであった。

 

 

「そういえばさ、セイバーさん」

 

「ん?」

 

 

 玄関まで続く廊下の途中で呼び止められる。

 

 

「俺のことフルネームで呼ぶの、よしてくれないか?

遠坂のことも名前で呼んでるし、何か落ち着かない。あとシロオじゃなくてシロウ、なんだけど」

 

「あん?でもリンが」

 

「トウサカだったのをトオサカに直したわね、でも衛宮君の名前はシロオじゃなくてシロウよ」

 

「・・・・・・ややこしい。んじゃ俺もセイバーでいいぜ。さん付けなんて何か痒い」

 

「あぁわかった、よろしくなセイバー」

 

「いや、よろしくするつもりはないぞ俺」

 

 

 きっちりと訂正を入れて夜の街へと繰り出すのであった。

 





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