ソードマンの聖杯戦争   作:永谷

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第漆話:画策する従者

 

 

 流石に夜道を学生二人(しかも男女)で歩く訳にも行かないので、万が一のことを考えて保護者という役割を割り当てられて実体化したまま二人の傍を歩く。

俺の状態を考えたら、ちゃんとしたマスターがいるアーチャーがなるべきなのだが……、

 

 

「生憎と私に着られる服がないものでな、残念だ。非常に残念だが二人の保護者の役目は君に相応しかろう」

 

「……ぅ、ぐぅぅ……!」

 

 

 アーチャーの身長は190に近い。

そして学生のシロウだけが暮らすこの家にそれだけの大きさの服などない。シロウが引っ張り出してきたロングコートを着れて、成人に見えるのは俺だけだったのだ。リンに進言すればいいだけなのに態々実体化するとかお前、絶対大人気ない。これ以上時間をかけるのも馬鹿らしいし、ここは大人になって睨みつけるだけで済ますことにする。

 そんなこんなで、苦汁を舐めさせられながらもお茶菓子と夕飯の借りを返す為教会を目指すのだった。ぜってぇアイツの引導は俺が渡してやる・・・・・・。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 隣町にある教会。影だけしか見えなかったそれは、坂を上がりきればすぐに見えた。高台のほとんどを敷地にしたまったいらな広場の奥に立つそれは小さいながらも豪勢なものだった。

 

 

 しかし、その教会という建物には相応しくない空気は直ぐに感じ取れる。……途中にあった外人墓地など比べ物にならない。既に死んだ身だから、死体を何千と見てきたから、感じられる。

 死者の念じゃない……じゃぁ、生者か……とにかくこの場は面白くない。不快だ。

臭いなどしないはずなのに、鼻に付くのは不快な臭い。

 教会に入る前でそれなのだ。ならば中に入れば?

 

 

「俺はここにいる」

 

「え?」

 

「は?」

 

「俺の護衛は教会までのはずだ。マスター探しを教会の監督役に頼るなんてごめんだな」

 

 

 特に、こんな臭いのする教会の主であれば尚更だ。

そんな奴が紹介するマスターなぞ……考え方が気に食わないシロウよりもお断りだ。

教会の中へと進んでいく二人の背中を見送って、夜空を見上げる。

 

 ……恐らく、俺が予想していることは当たっているはず。

聖杯戦争、サーヴァント、令呪・・・・・・全ての事を聞けばシロウは理解するはずだ。

いや、シロウが理解できずともリンが理解する。

 

 

 俺を召喚したのはシロウだ。召喚し、現界した地点で俺とシロウには繋がりが出来ている。

契約を結んでいなくとも、俺のマスターは便宜上シロウになっているのだ。

勿論、遥かに薄い繋がりなのできちんと契約をすればマスターの上書きくらいは出来る。

 んで、ココで問題になるのが……俺は魔術師じゃない、ということだ。魔力循環によって魔術の使用が不可能であり、魔術自体が効かないこともあって、魔術に関する知識が……恐らく他のサーヴァントにすら劣る。つまり、ラインを繋ぐ方法を知っている魔術師がマスターでなければならないのだ。

………まぁ、それ以外にも下世話な手段が無きにしも非ずだが。俺が嫌だ。

 とにかく、俺がなんと言おうとシロウがマスターであるのは変わりない。新しくマスターを探すなら……はっきり言おう、シロウは邪魔だ。ここがマスターの避難所ならば、サーヴァントだけを失い、令呪が残った状態で駆け込むものもいるはず。ならば棄権したマスターの令呪を取り除く手段が何らかの形で伝えられているはずだ。

そんでなきゃ令呪を持ったマスターが新たにサーヴァントと契約することを危惧した襲撃を受ける。

いくら監督役といえど下手にサーヴァントとやりあいたいなんて思うはずも無いだろうから、そういった手段がある可能性はかなり高いはず。

 シロウが戦争中にここに残るというのなら、契約を結び、令呪を発現させて取り除いてもらう。そして俺は新しいマスターを探す。それで済むはずだ。

幸いにして保有スキルの単独行動があるから数日はマスターなしで動けるからな。

 問題は、サーヴァント無し(と思っている)状態で聖杯戦争に参加しようっていう場合だ。

そこに「契約は確かじゃないけどお前俺のマスターだから」とか言えば、確実にシロウがマスターという状態を維持されるだろうし……それはイヤだ。

 

 絶対気苦労が耐えない!

 命がいくつあっても足りない!(シロウの)

安全な所で隠れてくれるっていうならいいんだが……ぜってぇんなこといわねぇよな、アイツ。

 

 

「やっぱ殺すか」

 

 

 溜息と共に軽く言う。

ジャリ、と背後で砂を踏みしめる音がした。

 

 

「誰をだね?」

 

 

 振り返れば、予想通り敵意を瞳に滲ませながら立つアーチャーがそこにいた。……というか、リンと一緒に教会に入ったのかと思ってた。さっきまで近くに気配を感じなかったからな。

 敵意を向けられて殺人衝動が頭をもたげる。しかしそれを全力で抑える。相手は武器を出してない。警戒でしかない。避けられる戦闘だ。

 

 

「あぁ、あんたのマスターにゃ手を出さねぇよ」

 

「衛宮士郎か」

 

「ん、まさかあんたら聖杯戦争が終わるまであいつの護衛してるわけじゃないだろ」

 

「確かに、そんな馬鹿な真似はせんな。しかし何故殺す?」

 

「邪魔だから」

 

 

 俺は別に殺人が好きという訳ではない。

俺が人を殺すのは自分に益になる時と、敵意を向けられた時。んで、シロウは邪魔だ。

 

 

「……そうか、やはりアイツが貴様のマスターだったということか」

 

「ん。でも俺はアイツをマスターと認めていない。聖杯戦争に参加しないんなら長生き出来るんだがな」

 

 

 どう思うよ?とアーチャーに訊ねる。

 フム、と腕を組むアーチャー。

 

 

「無理だろうな。教会で聖杯戦争がどういうものか。聖杯がどういうものかを聞けばあいつは参加するだろう」

 

「サーヴァントがいなくとも?はっきりいってそりゃ命を捨ててるようなもんだぜ?」

 

「フン、貴様にはアイツがどういう奴なのか理解出来ているのだろう。知った事を聞くなたわけ」

 

「あー…だよなー、なんで俺はこんなに不運なんだ……厄介すぎるマスターに呼ばれたもんだぜ」

 

 

 殺すしか手段が無いってどうよ。

溜息をついているとアーチャーが不可解なものを見るような目でこちらを見てくる。

 

 

「殺すと言っているが…貴様はセイバーなのだろう、騎士道に反するのではないのか?」

 

「セイバーなのは空いてたからそのクラスに押し込まれただけで、俺は騎士でも何でもない」

 

 

 セイバークラスがない聖杯戦争なんて!って事じゃなかろうか。

ま、俺はセイバークラスに押し込まれただけなので騎士道なんて持ってないわけである。

 

 

「フム…しかし困ったな、貴様に衛宮士郎を殺させるわけにはいかんのだよ」

 

「へぇ、リンが怒るか?……っていうかなんで知り合いの知り合い、程度の間柄であんなに親身なの?」

 

「知らんよ。人間関係の不思議とでも思っておくと良い」

 

「了解。ま、マスターの証である令呪さえ如何にかできるってんなら殺す必要はないんだが」

 

「……ん?貴様はマスターを殺したいほど気に食わないから殺すのではないのか」

 

 

 聖杯戦争も理解出来てない未熟者がマスターなんて気に食わん!殺してやる!とか、聖杯戦争に無関係になったんなら見逃してやらぁ!と思っていると思われてたってことか………ってこいつ、俺のこと勘違いしてないか?気に食わない=殺すとかそういう思考回路してるとか思ってないか?

俺そこまで短気で唯我独尊じゃねぇよ。

 

 

「んなわけねぇだろ!新しいマスターと契約するのに邪魔だから殺すんだよ!」

 

「ならば令呪を無駄遣いさせればいいではないか。三回」

 

「…………あぁ!」

 

「…………君は、…………まぁ、悩みは解決したか?」

 

「おぉ、ありがとな!アーチャー!お前頭良いな!」

 

「……普通の魔術師ならそんな馬鹿なことをするとは考えられないが、衛宮士郎なら大丈夫だろう」

 

「そうだな」

 

 

 ニヤリと笑う。

勿論ここで「無駄遣いじゃなくてもいい」とは言わない。

どんな願いでもいいのだ。どんな理不尽な願いでも不可能な願いでも。

戦闘で魔力は使ったが、耐魔力のランクが下がるほどに消費はしていない。

 

 俺には令呪が効かない。

それほどの耐魔力がある、なんて丁寧に教えてやる義理は無いしな。

リンが俺に対して魔術を使ったことは無い。

どんな切り札を持ってこようと、俺には効かない。そこにきっと隙が出来る。

 フフフ、アーチャーめ、俺が密かに気にしていることでおちょくったことを後悔させてやる……。

背が高いからってなんだ!たった、たった……8cmしか違わない癖に偉そうに!

179だって十分高いんだぞ!ちくしょう!せめてあと1cmとか思ったことはあるけど!!

 

 とにかく、これで俺の方針は決まった。

あとは教会から二人が出てきたときに全てが終わり、俺の聖杯戦争が始まるだけだ。

 

 





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