ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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半年ぶりくらいか…


14話 専門外だと何度言えば

 

 

 

 レイト・バーガンはガンスリンガーである。しかし今は魔剣士学園に通っているのでみんなで仲良く木製の剣を握って振り回している。夏が近付いているのが肌で感じられるようになった気温の中で、何でこんなことしなきゃならんのだと言う愚痴を噛み殺しながら黙々と剣を振るう。たまに剣がすっぽ抜けて名も知らぬ誰かにぶつかるが、わざとじゃあない。これだから剣は嫌いなんだ。

 

 剣がすっぽ抜ける度に隣からギロリと強い目線を感じるが無視……を5回くらいやった辺りから目線の主、アレクシアが脇腹を剣先で何度かつつかれたので微妙な表情だけ向けてやった。

 

 やる気が無いのも隠さない。実力も無いのを隠してない。なのに何故俺はアレクシアの隣で剣を振っているのか。答えは簡単、以前ゼノンが起こした事件のせいでアイツの教えてた王都ブシン流を選択する生徒の数がそこそこ減ったのを良いことにアレクシアが職権乱用して俺を無理矢理1部に入れたからだ。

 余談だがシドの奴はアレクシアの彼氏彼女の関係が解消されたので元の9部に戻ったが、王都ブシン流の生徒が結構減ったらしく繰り上げで7部になったらしい。

 

 

「……帰りてぇ」

「何か言ったかしら?」

「さっさと帰って本読みたいなって」

「そこは普通誤魔化すところだと思うわよ」

「おべっか言われんのが嫌いだろうお前相手に言うだけ無駄だろ」

「それが分かってるなら無駄口叩いてないで真面目にやったら? 剣投げ飛ばすの何度目よ」

「………自分に合った剣使わないと練習の意味無いって思わないか?」

「それは同感ね。基礎がちゃんと出来てればって前提条件があるけど」

「ちぇっ」

 

 

 闘い方を教える約束をして以来、学園にいる間はシドよりもアレクシアと一緒にいることが増えた。女の子と二人きり、と言えば聞こえはいいが乙女が唸るようなピュアストーリーなんて微塵も無いしお互いに起こす気などない。向こうの一方的な需要と供給の関係でそれ以外は赤の他人だ。

 

 とはいえ俺も苦手な剣術を全うに学べるチャンスではあるので別に良いかと割り切ってはいる。これでも一応シドの右腕なのだ。シャドウの右腕である時は銃でいいが、シドの時は剣だ。

 

 そんなこんなで剣を振り続けていると授業の終わりを告げる鐘の音が学園に響き渡る。

 

 

「っとぉ、時間だなよし帰るじゃあなまた明日ッ!!!」

「あっ、ちょっ、コラ、待ちなさい!!」

 

 

 音が耳に入るのと同時に剣を所定の位置に片付け、名も知らない先生の話も聞かずに全速力で更衣室へと駆け込みぱっぱと着替えて帰る支度を済ませる。

 

 今日は特に帰りたい気持ちが大きい。別に剣術が嫌だからとかではなくいくつか用事があるからだ。

 一つは銃のことで。先日の一件以来銃の威力をどうにか上げられないかと模索している最中で、一昨日くらいにようやく良い感じの改善案が思いついて実行しているトコなのだ。まだまだ理想の段階だが上手いこと行けば魔力の消費量も減らせて一石二鳥、最終目標は魔力無しで高威力。

 

 もう一つはイータに渡すコートの生地探しだ。事件の終わった翌朝に早速約束通りイータ用のコートを買いに服屋を何店舗か回ったのだが流石に時期も時期なのでお気に召すモノが見当たらなかったので結局約束を果たすために俺が造ることになった。

 服なんて造れるのかと前にシドに訊かれたことがあったがアンサーは当然イエス一択である。シャドウガーデン結成前は数え切れない数の試作品とそれに合うホルスター、ファーストラインにボディースーツ、全部手作りだったのだ。今更服だけ造れませんだなんて言わない。ついでに言うと七陰の面々の私服も下着もアクセサリーも半分以上、その他シャドウガーデンのメンバーの一部アイテムもメイドイン俺である。スライムスーツはとても便利だが、年頃の女の子なんだからオシャレさせてあげないと感性とか物欲とかが乏しくなる。こういうことシドはしないから俺が率先してやらないと誰もやらないのだ。

 

 そういうワケなのでここ最近のレイトさんは忙しいので早いトコ帰ってタスクを終わらせたい。その一心がこの高速身支度アンド早着替えを実現させてくれた。感情が自身の動作にバフを与えてくれるのはプラシーボではない。

 靴も履き替えて完全に準備が整ったところで時刻をチラリと確認、ここから全力で走れば丁度列車が到着する頃だ。ふっ、計算通り。勝ったな。

 

 

 

 ガアァァンッ!!!

 

 

 なんて思ったのもつかの間、更衣室の扉を開けて出ようとした瞬間大きな音が聞こえた。振り返るとアレクシアが更衣室の扉を全開にし、着替えも剣も片付けずに腕を組みながら足で出入口を塞いでいた。

 

 

「………ここ男子更衣室」

「私が着替え終わるまでそこで待ってなさい」

「今日は練習付き合わんぞ」

「私が着替え終わるまでそこで待ってなさい」

「あっ、お得意の正解言うまで解放されないやつだこれ」

 

 

 勝利を確信した瞬間、人間が最も油断しているタイミングだと先週くらいアレクシアに教えたような気がするが……はぁ、どうやら帰れるのはもうちょっと後になりそうだ。

 目に見えてしょんぼりとしながら俺は言われるがままに更衣室前の壁に寄りかかってワガママプリンセスの優雅なお着替えプラススキンケア足す匂いケアその他でそれはそれは時間が掛かる掛かる。おかげで俺がこうして待つ時間が伸びる伸びる。泣けるぜ。

 結局俺は壁に寄りかかって30分近く待たされるのであった。うん、今日はシャワー浴びてないからまだ短い方だな。

 

 

 

______________________________

 

 

 

「まったく、か弱い乙女を置いて一人で帰ろうだなんてどういう神経してるのかしら」

「家に辞書は無いのか?一度か弱いの意味を調べることをお勧めするよ」

 

 帰宅途中、正確に言えば魔剣士学園の校舎内にある学術学園の方に用があるらしいアレクシアを護衛の名目で同行させられている最中、俺は適当な言葉で王女様をあしらいながら足踏みを揃えていた。

 

 闘い方を教えるようになって以来、アレクシアは何故かこう毎日絡まれてる。アレクシア曰く俺の普段の動きとか立ち回りを参考に闘い方を模索しているらしい。知らんけど。シドと同じように目立たないムーブを心掛けてるからこの状態の俺を参考にしても何も無いと思うけどそこんとこどうなんだろ。

 

 

「そういえばもうすぐ武神祭だけど、もちろん貴方も参加するわよね?」

「武神祭?なんじゃそりゃ」

「……えっ、武神祭を知らないの?正気?」

「お前よりは」

 

 

 キッとした顔で睨まれるが態度を改めるつもりは無い。これでなんかあったら容赦なくこの国ひっくり返す所存。

 

 

「………武神祭はこの国が二年に一度行っている剣術大会よ。国内からはもちろん、国外からも名の知れた魔剣士が集まるの。そしてそこには学園枠が設けられていて、選抜大会を勝ち抜けば私たちもそれに参加できる。列車に乗ると歩くより早いくらい当たり前のことだけど、ここまでいいかしら?」

「ほーん」

「興味無さそうね」

「実際無い」

「……貴方なんでこの学園に来たの?」

 

 

 シドに誘われたから…なんて言ったら向こうに何かしら飛び火しそうだから何も言わないでおこう。

 まぁとりあえず、魔剣士でない俺には縁のない行事なのでもちろん参加などしない。シドの奴もどうせ平凡なモブである自分が目立つイベントに出て注目を集めるなんて有り得ない、とか言いそうなので仲良くスルーするとしよう。

 

 

「デカい催しかもしれねぇけど出ないぞ。エントリーもしてないしそもそも祭りの存在を今知ったしな」

「そう言うと思ってたから貴方の分も予めエントリーしておいたわ。流石に武神祭を知らないとは思ってなかったけど」

「はぁ!?」

 

 

 突然のカミングアウトに思わず声を荒らげてその場で足を止めてしまった。その様子にアレクシアは勝ち誇ったような悪い顔をしながら俺を笑う。

 

 

「感謝してくれて良いわよ。貴方は普段私に戦い方を教えてくれてるのだから、私の方からも貴方が剣術を成長する機会をあげないとフェアじゃあ無いものねぇ?」

「こ…このアマぁ…ッ!人が下手に出てたら図に乗りやがって…ッ!!!」

「ふふふふふ…ねぇ、普段スカしてる男が感情任せに喚く姿は無条件で人を笑顔にさせてくれると思わない?」

「い、いや…今からでも遅くない…エントリーのキャンセルを…」

「残念だけれど、もうトーナメントの組み合わせは完成してるからキャンセルはできないわよ」

 

 

 頭を抱えてる俺を尻目にアレクシアは一人でシトシトと足を進め、くるりと振り返ってからしてやったりと言った顔で話しかけた。

 

 

「貴方の珍しい顔が見れたから今日の見送りはここまでで良いわ。それじゃあね」

 

 

 踵を返してそそくさと俺を置いて廊下を曲がると、曲がり角から首だけ覗かせて再度声を掛ける。

 

 

「どーしても私に剣術を教えて欲しいなら、また明日いつもの場所に集合ね」

 

 

 言いたいことだけ述べてからアレクシアは姿を消した。やっばい久々にキレそう。シドとは別ベクトルの面倒くささで俺の日常に害を与えてくるタイプだ。

 ………明日学校仮病使ってブラックプリンセスで一日過ごそうかな。いや、そんなことしたらまた突撃されて余計面倒になるだけか。

 

 

「……はぁ、シドがまだ愛おしく思えてくるな」

「僕がどうかした?」

「あ?」

 

 

 顔を上げると、丁度シドがいた。何故か気絶してるヒョロをジャガと一緒に抱えながら。

 

 

「シドとジャガ…にヒョロはどうした、コブラにでも噛まれたか?」

「さーね、急に失神したから保健室に連れてくトコ。良かったら手伝ってくれない?僕この後学生課に行きたいから早いトコこのガラクタ捨てたいんだ」

「学生課?遂になんかやらかしたか」

「違うって。ヒョロが勝手に僕を武神祭にエントリーしたからキャンセルできるか聞きに行きたいんだ」

「あーーー………。OK、手伝おう」

「さんきゅー」

 

 

 アレクシアの言葉通りならばキャンセルはできないだろうが、ほんの僅かの希望に縋ってみようじゃあないか。聞かされている残酷な現実を喉の奥にしまい込んで、俺はシドとジャガを手伝って恐らくシドに気絶させられたのであろうヒョロを保健室まで運んだ。

 

 その後学生課でエントリーをキャンセル出来ないか直談判したが、結局アレクシアの言葉通りの結末で希望は絶たれてしまった。

 

 

 

 




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