ミドガル魔剣士学園は謎のテロリストによって襲撃された。それによって何人もの生徒が命を落とし、捕まって大講堂に集められた生徒達も明確な死を全身で感じながら怯えている。
だが、校舎の至るところに犠牲になった生徒以上の数のテロリストの遺体が転がる狂気的な空間が広がっている。ある者は胸を貫かれ、ある者は頭部が無くなって、冷たい肉塊となって道を塞ぐ。
その冷たい肉塊を量産しているのが俺と右手にあるコイツなワケだが、現在かなり大きな問題が発生して困っている。
「ええっと弾は……残り12発か」
ヤバい、調子に乗って撃ちすぎた。テンション上がりすぎて弾数の管理もできなくなってる。
校舎に入って敵を見つけ次第撃っては進み撃っては進みを何度も繰り返して、途中から楽しくなっちゃってついやりすぎちった。てへ。
普段愛用している
スピードローダーやムーンクリップを使えばもうちょっと持ち運びは楽になるが、ただでさえリボルバー二挺をパーツ分解して服の中に収納してるのに便利アイテムに割くスペースなんか無い。
屋上にある専用ボックスにも在庫は無いので撃ち尽くしたら最悪目に映る敵全員撲殺せざるを得ないぞ。銃を撃てないガンスリンガーってなんだよ。
どうするか、このままだとライフル振り回す羽目になる。遺体から銃奪ってもいいけど、何人いるかも分からない敵相手に単発のマスケット銃は心許ない。かと言って剣拾っても投げるしかできないし……。
仕方ない、シドと合流して戦闘全部押し付けるか。よし、そうと決まれば早速俺の代わりに戦う武器…じゃねぇやシドを探しに───
「……ッ!貴方、ドレッド!?」
「あっ」
廊下を曲がると、何故かアレクシアがいた。
お互いに存在を認識した直後にアレクシアは即首を狙って剣を横一線、けど今は魔力を使えないので避けなくてもいいか。
魔力の籠っていない攻撃なら直撃しても何ら問題は無いのはこの世界の常識で、銀玉鉄砲と実銃を比較するようなモノだ。般若の面でも被ってるのかと訊きたくなる程の形相を浮かべて剣を降っているが、涼しい顔で攻撃ごと無視しようとする。
が、首に刃が触れる直前にその攻撃をブリッジの体勢でそれを避けた。空振りとなった剣は近くの柱にぶつかり、それを一刀両断した。
「お?」
ブリッジの体勢で世界が180°した状態のまま左手を軸に回転、その勢いを利用してアレクシアの腕に足を絡めて剣を巻き取る。だが俺の動きをあらかじめ予測していたのか、自ら剣を手放して逆に胴回し回転蹴りを放ってきた。それを肘打ちでいなすと再度踵が飛んできたので、片手で掴んで放り投げる。
投げ飛ばされたアレクシアは先程自身が手放した剣を空中で掴み、着地と同時に突進のような刺突を行ったが、それよりも速く接近して眼前に銃を向けて動きを止めさせた。
己の不利を悟ったアレクシアは抵抗を止め、刺突の体勢のまま停止する。
ふむ、これはどういうことだ?
「お前、何で魔力が使えるんだ?連中以外の全員が魔力操作をできなくされているはずなんだが」
「さぁね?仮に知っていても、テロリストに教える情報なんて無いわ」
そりゃそうだわな。向こうからすれば現状怪しいのは黒ずくめの男、そんで俺は連中と同じく魔力を用いて戦ってるのだから関連があると考えても無理はない。と言うか俺も同じ立場なら疑う。
まぁだとしたら、魔力を何故か使えているアレクシアも怪しいという点では同じだ。
「なら選ばせてやる。このまま死ぬか、怪しい奴同士協力するか」
「あら、忘れたの?これでも私、この国の王女なのよ?テロリストに手を貸すワケないでしょう」
「聞き方を変えてやろう。ここで俺に殺されるか、連中を止めるか、選べ」
「……貴方、連中の味方じゃあないの?」
「質問してるのも、お前が五秒後に生きてるかを決めるのも、俺だ」
聞き方を変えてから数秒間、じっくりと考えた末にアレクシアは剣を降ろした。
「
「……相変わらず、貴方の言語は分からないわ。それで、私に何をさせようって言うの?」
銃を降ろして懐にしまうと、お互い壁に寄りかかる。
「そう面倒なことは頼まねぇよ。弾数が残り少ないから俺の代わりに戦って欲しいだけだ」
「いたいけで可憐な女の子を前線に放り出して自分だけ高みの見物?」
「敵の目的も不明瞭なまま弾切れになるワケには行かないんでね。まぁ任せっぱなしにはしねぇから安心しろよ」
「だいたいその目的とやらはどうやって知るつもりなのよ。策はあるんでしょうね?」
作戦らしいモノも考えてない。素直に伝えるのも癪なので、とりあえず言い訳くらいしておこう。
「アイデアは無いが問題は三つある。一つは敵の目的が一切分からないこと。そのせいでタイムリミットも不明だし、達成しなくても俺らがこのまま配下を片付けても分が悪いってことで撤退される可能性がある。二つ目は大講堂にいる人質の安全は保証されてないこと。校内放送でもすれば特にお前は抵抗が出来なくなる。三つ目はまだ校舎内を逃げ回ってるシェリーって奴を捕まえる必要があること。ウチのボス曰くそいつが鍵を握ってるらしいが、協力はしてくれないだろうよ。まぁ最悪強引に言うことを聞かせることもできるがな」
長々と喋ったがつまるところ、このままだと何も出来ないということだ。それがアレクシアにも伝わったのか、頭を抱え始めた。
「………………つまり、貴方一人じゃ何も出来ないってワケね」
「間違っちゃねぇな。否定はしない」
残念ながら俺は探偵じゃなくてガンスリンガーだから、調べるのも聴き込むのも向いてないんだ。微塵もない申し訳なさと共に高笑いをして雰囲気を流す。
「はぁ……………。とりあえず、私がいれば三つ目の問題ならどうにかなるわ。シェリー先輩ならお互い面識があるから、話くらいは聞いてくれるはずよ」
「
目標も決まったので移動を始める。シェリーが何処にいるのかは知らないが、シドの奴が直接守ってるだろうから人がいない方進めばそのうち見つかるだろう。
人のいない方、つまりは敵がいないかやられてる道を進むので会話が無い。ドレッドの仮面を付けていない普段のレイトの状態なら適当な話題で雑談してられるが、死体が積み重なる校舎だなんて特殊な環境で、ましてや一時的に協力中だが俺たちは敵同士なのに楽しく話そうとしたらおかしい。そんなワケなのでお互い黙って道を進む。敵も来ないので退屈だ。何かしらきっかけが無いとずっと沈黙状態だろう。
しかし、先に沈黙を破ったのはアレクシアの方だった。
「ねぇ、さっき言ってたボスって言うのは…シャドウのことかしら?」
向こうから話しかけてくるとは思わなかったので、返答がすぐには出ないで言葉が詰まる。それを悟られないようリボルバーをクルクル回し始めてから口を開く。
「ああ。シャイだからどっかに潜んでるが、前みたく何処の馬の骨かも分からん連中がシャドウガーデン名乗ったから直々に片付けに来てる」
「そう……やっぱり、彼もいるのね」
奴の存在を知って闘気を見せるアレクシア。俺を見つけた時と同じように攻撃を仕掛けるつもりだろうか。
「分かってるとは思うが、お前じゃまだ届かないぞ」
「言われなくても分かってるわよ。けど、いつか必ずアイツを倒してみせるわ。勿論、貴方のこともね」
「逆転勝利の伏線か?良いね、回収はさせないがな」
舌を出して煽ってやるが何も返ってこない。代わりに、遠くから複数人分の足音が聞こえてきた。
アレクシアもそれに気付いて剣を抜いて応戦の準備をしたので俺も合わせて銃を抜く。
「銃を持った相手との闘い方は分かるか?」
クルクルと回転させて懸念点を解消すべく隣に問うと、待ってましたと言わんばかりの声色で返答がくる。
「言ってなかった?そのうち貴方も倒すつもりだから、遠距離武器相手との闘い方も習ってるのよ」
「
「あそこだ!赤い方はアーティファクト持ちだ!距離を取って撃ち殺せ!」
先導する黒ずくめの男が指示を出して銃を持つ人員を前方に配置。間髪入れずに鉛を飛ばしてくるが、俺もアレクシアも自身に命中するモノだけを揃って蹴り落とした。
銃撃が止んだ直後にアレクシアは敵の喉元まで急速接近し、魔力を剣に纏わせてマスケット銃ごと斬り捨てる。左にいる敵には斬られて膝から崩れ落ちている最中の男を蹴り飛ばしてドミノの要領で押し倒して、蹴った際の衝撃を推力に右の敵を貫く。
「私を省いて男同士で楽しもうだなんて、レディの扱い方をママに教わらなかったの?」
続いて俺も後方で剣を構えている集団の中に飛び込んで殴る蹴るで連中の剣を砕いてから銃撃。放たれた弾丸は一発で敵の頭を三人ぶち抜いた。近くにいた敵をスライムロープで拘束してもう一人にぶつけて倒して一発放つ。地面に向けて放たれた弾丸は跳弾し、天井を経由してからもう一人の頭部を壊した。
「悪いな。お前は確かに良い女かもしれねぇが、俺はそれを優に超える良い男なんだ」
銃を持つ相手をアレクシアが、剣を持つ相手を俺がそれぞれ片付ける。だが戦闘音に釣られてどんどんと狭い廊下に人が集まっていく。片手で数えられる数字より大きなモノは数えないでいると、前方と後方それぞれから大所帯でおかわりが来た。
何も言わずにアレクシアは前方の集団へと突撃しに行ったので俺は後方の敵へと向かう。今度は後方の敵が銃を持っていたので手本を見せてやろう。
引き金にかける指を三回弾いて床、壁、天井を跳ねさせて両端と後方にいる敵の命を抉りとって連中に隙を生み出し、その間に接近して腕を折る。直後に相手の銃を奪って槍のように身体を貫き、そのまま後ろの敵を撃つ。
両隣から銃を向けられたのでそれぞれの銃口に指を入れ、スライムを固めてビームのように発射。同時に爆発を起こしてまた命が散った。
こちら側の敵を片付けたのでアレクシアの方を見ると、複数人相手でも難なく斬り捨てていた。十全に魔力を使えないはずなのに、敵の刃は掠りもせずただ一方的に徒花を咲かせている。
慢心も無い。驕りも無い。だがまだ未熟。足元に倒れてる死体に紛れてまだ息がある奴がいる。放っておいても勝手に力尽きてくれるだろうが、手負いの敵は獣も人間も共通して恐ろしいモノだ。
アレクシアの周りに立つ敵がいなくなり、振り返ってこちらへと歩いてくる。が、足元で辛うじて生き残っている敵はまだその手に剣を、銃を持っている。そいつらの目には、殺意が消えていない。
シリンダーに残っている弾はあと一発、敵は二人、跳弾で二枚抜きは可能だが、壁を経由してる間にアレクシアが討たれてしまう。
ならば、こうだ。
右腕を下からすくい上げるように大きく動かし、加えて手首のスナップを効かせながら引き金を引いて最後の一発を放つ。
轟音と共に放たれた弾丸は、アレクシアの足へ吸い込まれる。突然のことにアレクシアはギョッとした表情をしたが、回避するよりも先に弾丸は弧を描いてその後ろにいた敵二人の頭を撃ち抜いてみせた。
死にかけの獣は剣と銃をそれぞれ手から落として、その脅威と共に生命活動を止めた。それを見たアレクシアは、ようやく俺の射撃の意図を察した。
「……礼は言わないでおくわ」
「それでいいさ。俺らは仲間じゃあないからな」
空薬莢を捨てて最後の六発を装填。もう弾は残ってない。
「けど、なんで魔力を使えるかくらいは教えて欲しいな。女は秘密を着飾って美しくなるとは言うが……ヒントになりそうなモンは共有してくれねぇとお互い困る」
「チケットが欲しいならバカみたいに長い列を並びなさい。それが価値あるモノを手に入れる対価ってヤツよ」
「王女様じゃあ無かったのか?『民の問い』って書いて『悪い、割り込みます』って読むんだ」
「なら、その問いには『分からない』と答えておくわ。と言うより、貴方の方が詳しいんじゃない?」
「ああ?」
何故そこで俺に振る? 分からないから聞いてるのであって、俺が知っていたらとっくに問題は解決されている。魔力のこと自体俺はあまり詳しいことは知らないし、ファンタジーな部分は、シドの役目だ。
魔力を制御するカラクリも、それを突破する方法も力技でしか───ああ、なるほど。
「太った?」
「ぶっ殺すわよ」
場を和ますちょっとしたジョークのつもりだったけど、怒られちゃった。
飢えてます。感想高評価ここ好きに。