ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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描きたいこと描いて削って描いて…長くなる長くなる。丁度いい文字数に収めたいのに止まらない。悩まし


23話 バンダナはもう古いのかもしれない

 

 

 

「魔力量が増えた?」

「ええ。貴方に撃たれた日から、現在進行形でね」

「お前を撃った……ああ、ヒールトリガーか。けどあれは、魔力の波長を整えて傷を癒すだけの効果のはずだが…いや、そうか」

 

 

 アレクシアが魔力を使えていることにようやく合点がいった。

 前に使ったヒールトリガー、これはシドに習った悪魔憑きの治療をベースに開発した回復技だ。撃った対象の体細胞を魔力で直接弄り、おかしな箇所を洗い出したうえで骨の位置や臓器、血管、肉体を元に戻す。その際に暴走を起こしている魔力を対象に癒着させる形で治める。これがヒールトリガーのカラクリだ。シドみたいに手から魔力を飛ばすことはできないが、銃を介することで弾としてそれを飛ばせる。

 

 そしてそれを受けたアレクシアは、暴走こそ起こしていないが立派な英雄の子孫。つまり、シャドウガーデンの面々と同様に進化を残していた。だが今の段階でそう多くの魔力を感じられないのは恐らく、暴走が始まっていない状態での治療を受けたことでその進化にラグが発生しているのだろう。

 

 

「なるほど、イータが聞けば面白がりそうだ」

「ちょっと、勝手に一人で納得しないで私にも説明して。乙女の身体を弄ったんだから説明義務があると思うわよ」

「いやなに、実はあれまだ試作品でな。あの時撃った俺の魔力が多分お前に吸収されたからデカくなってんだ」

 

 

 悪魔憑きとか魔力暴走の話、英雄の子孫の話はとりあえず伏せておく。説明しても面倒だし、信じられないどころかそもそも詳しく知らないから。

 

 

「貴方の魔力が私に?そのうち私も貴方みたいに毎回喋り方や装備が変わったりするのかしら」

「TPOを弁えてるって言ってくれ」

 

 

 デリンジャーみたいな小型のならともかく、俺の持つ銃は基本全て大型のモノなので一般人に扮して携帯するのは骨が折れる。その場に合わせた装備に変更して戦うのはむしろ賢いと言え。

 今回のリボルバーはまぁノーカン。今回みたいな何かあった時用に全て分解して懐にしまっている緊急用で今尚遊んでいる状態だ。緊急用なので弾が無いってことにしてる。

 

 

「それとさっきから気になってたんだけど」

「ん?」

「それ、使わないの?」

 

 

 アレクシアが俺の腰に差してあるもう一挺のリボルバーを指さしながら問う。

 

 

「今のトコはな。これは緊急用ヤツだから、マジで弾無くならん限りは使わない」

「残りの弾数が少ないとか言ってたのに、出し惜しみしてる場合?」

「一番人気のセール品は最初に並ばないだろ」

「貴方の説明で初めて納得したわ」

 

 

 求めていた回答を与えられたところで、リボルバーを懐にしまう。ずっと持ってたら撃ちたくなるから敵がいない時はちゃんとしまおう。

 

 なんて至極当然の注意事項で脳のリソースを割いていると、反対側の校舎に人影が見えた。また敵かと思ったが、黒と一緒に小さいがピンクも目に映る。シドとシェリーの二人だ。

 二人がどこかの部屋に入っていく姿が見えたので、もう探し回る必要はなさそうで助かる。

 

 

「アレクシア、標的を見つけた。デケェ扉だが、あそこはシェルターか何かか?」

 

 

 俺に言われてアレクシアも窓越しに反対側の校舎を見る。

 

 

「あそこは…副学園長室ね」

「安全な場所か?」

「………そもそもこの学園自体が安全な場所よ。昨日までは」

 

 

 複雑な心情が言葉に乗って隠せていない。事が事だから流石に同情してやるが、今は無視しておく。

 部屋の中に入ったので急いで追いかける必要は無くなったが、扉の前に机とかデケェオブジェでも置かれて籠城されても困る。なので早いうちに合流しておいた方がいい。

 

 

「お前、曲がりなりにも王女様だろ?ならさっさと安全取り戻すためにも行けよ」

「行けって、貴方は来ないの?」

「お友達を紹介しますつって俺の横に立ってみるか?そんなことすりゃ雨も降ってないのに濡れ衣コーデで平和を唄うことになるぞ」

「なら私が部屋から出てくるのを待ってなさい。貴方は部屋に近付く連中を片付ける、私はシェリー先輩に協力して連中の目的を探る。異論は?」

「無い」

 

 

 今俺は嘘をついた。弾無くなるから俺の代わりに戦う奴捕まえたはずなんだが、いつの間にやら役割が逆転してる。ガンスリンガーの矜持がどうこうって理由でワガママ言ってんのは俺の方だから別にいいけどよ。

 

 

「ひとまず後で合流しましょう。私が呼んだらすぐに来なさい。いいわね?」

「はいはい。Yes,Your Highness(承知しました王女様). ってな」

 

 

 互いに軽口を叩き合ってから俺は踵を返し、アレクシアと離れた。扉に入るまでは無傷で送ってやろうと地面に落ちてる死体から銃を奪い取って構える。ライフリンクが無いので真っ直ぐ飛ばない出来損ないだが中にスライムを滑り込ませて無理矢理弾道を調節、これで俺なら当てられる。

 しかし追加の人員が来ることはなくアレクシアは無事に副学園長室に入った。

 

 一人になった。いつ呼ばれるのかは分からないのでしばらくは退屈な時間が流れる。副学園長室の扉前で待ち構えてもよいかもしれないが、シドにも指摘された通り近くで銃を撃とうモノならいることがバレる。用が済めばどうでもいいが、少なくとも今日一日はシェリー相手に自己紹介はしない方が良いだろう。

 

 けど暇だ。窓越しに副学園長室の周辺を見渡しても敵の気配は一切無い。これだけ数を減らしたのだから、品切れかも。

 

 懐のリボルバーを取り出しておもむろにシリンダーを開いて弾数を確認する。こっちも品切れだ。

 

 

「はぁ…」

 

 

 適当な教室に入って長机の上に寝転がる。普段座学で使う教室の机に、何となく悪いことしてる気分になって、それがまた良い出汁に感じる。

 誰かが近付いてきたら音で分かるし、しばらくは横になって楽にしてよう。

 

 

「弾切れには一生悩まされそうだなぁ…」

 

 

 自分がトリガーハッピーな自覚はある。けどそれを治すことは出来ないので度々同じ悩みにぶつかってしまう。定期的に弾が無くなって同じことボヤいて最終的に直接殴って敵を倒すスタイルもある意味ではガンスリンガーっぽいかもしれないが……うん、そもそもあれは殴り合いが映えるのであって一方的な撲殺はまた違うな。

 

 仮面を外してついでにコートも脱ぐ。ドレッドからレイトにフォームチェンジをしてから一気に脱力、スライムになったような気分だ。

 予備のスーツだからか知らないが、今日はテンション低めのドレッドノートさん。銃を大量に持ち出して襲ってくる敵にはアガるモノはあったけども、結局待ち望んでいた銃撃戦とはならなくて実に残念だ。

 

 けど今回は逆にそれで良かったのかもしれない。単発式の銃だとしても、それを持つ敵が大量に入れば結局弾数が足りなくて鉄拳制裁タイムになってしまうからだ。ほんと、どうするかなこれ。

 

 

「好みじゃないから全く使わなかったけど、いよいよダブルカラムの運用を視野に入れ「こんなこともあろうかと〜……」うぉあっ!?」

 

 

 突然真横から声が聞こえて机から転げ落ちた。すぐに立ち上がって急に現れた人物を見る。

 

 

「イータ……?」

 

 

 どうやら脱力し過ぎて味方の気配も読めてなかった様だ。それと心做しか、イータの表情がいつもより柔らかい。ドヤ顔とも言える。

 

 

「人生で一度は言いたいセリフ……言えた…」

「お、おう…良かったね…?」

 

 

 困惑する俺を他所に胸を張ってふふんとドヤり続けるイータ。何故いるのかも何しに来たのかも全部分からないが、イータが用もなく現れることは無い……いや割とあるな。とりあえず落ち着くために備え付けの椅子に腰掛けてからイータと向き合う。

 

 

「……で、こんな時にどうしたよ」

「預かってた銃…返しに来た」

「ああ、試してみたいこととやらはもう終わったのか。ありがとう。………ちなみに弾一緒に持ってきてたりしない?」

「無い」

 

 

 非情な現実を前に俺はガクッと項垂れてしまう。銃だけ持ってても宝の持ち腐れだ…どうしよ、もういっその事さっきのシドみたいにスライム飛ばすか?

 

 

「ふふ…レイトは、他と違って銃が無いと……ポンコツ…」

「なんでちょっと嬉しそうに貶すんだイータさん…」

「ピンチに颯爽と現れて…渡した発明品で形勢逆転……。他のメンバーは…強くてピンチにならない。けど、レイトは程良い弱さ…」

「え、泣きそう。俺にトドメ刺しに来たの?」

 

 

 何故か嬉しそうに俺の致命的な部分の解説を始めた。うるさいな人が気にしてるトコをそんな嬉しそうな顔で語るな怒りにくいだろうが。

 

 

「戦えるけどしない…そんなレイトのために……これ」

 

 

 全身に纏っているスライムスーツの中から小さな箱を取り出して俺に見せる。一見するとただの黒い箱だが、それが何なのかは見ただけでは分からない。爆弾か何かだろうか。

 するとイータはその箱の天面、蓋の部分をスライドさせて中を見せる。中には何も入っていないのを確認させてから、ポケットからコインを取り出してそれを入れて蓋を閉める。そしてその箱にイータが魔力を流したのを感じ取り、蓋を開けると中に入っていたコインが二つ、全く同じモノが二つ入っていた。

 

 

「へぇ、驚いたな。知らぬ間に手品なんて覚えたのか」

「違う。この箱…中にあるモノをコピーする…。箱に収まるモノなら…何でも…」

「拾いモンのアーティファクトか?」

 

 

 イータは頷いた。

 一辺が僅か4cm、64cm3にも満たない手のひらサイズの小さな立方体はタネも仕掛けも無いこの世界特有の不思議アイテム、アーティファクトだ。魔力と同格のファンタジーの産物だが、何故今これを出したのか。その答えをイータは焦らすことなく淡々と答えた。

 

 

「これを改造して…作ったのが……このマガジン」

「マガジンって…お前まさかこれ…!」

「そう……」

 

 

 この瞬間だけは、イータのドヤ顔が一層輝いて見えた。

 

 

「無限マガジン。魔力が続く限り…だけ…」

You're awesome(お前マジ超最高). 抱き締めて耳元で愛を囁きたいくらいに」

「ベッドの上でなら…許可…」

 

 

 イータはサムズアップしながら承諾をしたがそれを理性で耐える。けどこの発明品は俺にとってはすごく画期的だ。魔力量の制限こそあるが、それがある限りは絶えることなく弾をばら撒ける、つまりは数さえ出せば魔剣士にも有効打を与えられる。最高すぎる。この手のアイテムはバンダナだとも思ったが、もうこの認識は古いのかもしれないな。

 

 シンプルにこれ一つで悩みが二つ解決すると考えるとお釣りが来るレベルだし、何より弾代が浮く。作っては無くなり作っては無くなりの繰り返しなので費用がアホみたいにかかる、理論通りならこれが無くなるのは本当にデカい。 

 

 テンション爆上がりしてる最中だが一旦冷静になろう。あくまで理論上なのでまずは試さないと行けない。イータだって実際に使って問題点を見つけるために持ってきたんだろうし、まずは使おう。イータから銃を受け取ってから……あれ?

 

 

「そういや、銃は?」

「はい」

 

 

 二挺の大型自動拳銃、ではなくイータは何故かグローブを手渡した。

 

 

「……イータ?」

「嵌めて…。それから、人差し指に…魔力を込めて」

 

 

 意図は分からないままだがとりあえず言う通りにしてみよう。両手にグローブを嵌めてから、左右の人差し指それぞれに魔力を込める。

 

 すると、今いる教室の壁や窓を勢いよく突き破って俺の手元に白銀と黒金の大型自動拳銃(クライム&パニッシュメント)がナイフの形態になって飛んできた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

 壁を突き破って現れたその二挺に驚いて両手を前に出して受け止めようとしたが、左右それぞれ吸い付くように手にグリップが収まった。

 

 

「そのグローブに…流れた魔力反応して動く……超強力、磁石」

「……有効距離は?」

「500マイル」

「…周りへの被害は?」

「グローブに込められた魔力にだけ反応……。それ以外の…生物の魔力、全てに反発。レイトの腕以外に…影響無し」

「銃の内部に影響は?」

「魔力由来の磁力だから…内部構造に、一切影響……無し」

「……ははっ、パーフェクトだイータ。それ以外にふさわしい言葉を俺は知らねぇ」

「ふふん」

 

 

 今日一番のドヤ顔を見せるイータが今は女神にも見えてしまう。神なんてのは信じやしないが、今だけはキャンドル片手に賛美歌を唄うこともやぶさかではない。

 

 左右の銃を適当に投げては魔力で引き戻し、宙に浮いてる最中に戻してブーメランのようにもできる。まぁ人にはぶつからないのでこれの応用はまた別の機会に考えるとする。

 今優先すべきはあの副学園長室の防衛なワケだが、実地試験のためには何人かおびき寄せないといけない。ここら辺の見張りはシドが粗方片付けてしまい、増援も俺とアレクシアで一人残らず片してしまったので次がいつ来るかは不明だがまぁ、そのうち来るだろう。

 

 けど、念には念を入れておこうか。

 

 先程敵から奪ったマスケット銃を手に取り、窓から大講堂の方角目掛けて一発だけの弾を撃つ。その後、使い終えたマスケット銃を槍投げの要領で投げ捨てる。

 

 

「………?」

「敵に位置を教えてやった。余程の馬鹿じゃあなけりゃ、誰かしらこっちに飛んでくるだろうよ」

「今してるのは…防衛…じゃないの……?」

「ああ。けどコイツの試し撃ちもしなきゃだし、何か起きてもまぁ…大丈夫」

 

 

 コートを纏い、スライムでリボルバーを元のパーツまで分解しながら教室の扉を開ける。服の中にそれぞれパーツをしまってから、首を回してイータに答える。

 

 

With you, it's no problem(お前と一緒なら何も問題はない). Right(だろ)?」

 

 

 一人なら余裕。二人なら楽勝。困難らしいモノも今まで訪れたことも無いが、何があったとしても問題ない。

 

 

I agree(そうだね) . Nothing is impossible with us(わたしたちなら不可能はない).」

 

 

 イータも合わせて英語で返した。なんか、良いなこれ。シドの奴もたまーに俺見たくどっかで聞いたフレーズを返してくることはあるが、ここまで滑らかに話してくれやしないのでたまに寂しくなったりする。イータみたく何の言語で話しても理解してくれる子がいると有難いね。

 

 よし、テンションも上がりきったところでそれぞれの銃にマガジンを入れてチャンバーチェック。弾は正常に入っているのが確認できたので準備完了だ。

 

 仮面を付けて、おびき寄せた敵を使って新装備の慣らしをしに行くとしよう。

 

 

 

 




いつの間にやら総合評価が1000を超えました。感謝です。感謝しかない。
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