ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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忙しいシーズンだってのに忙しい出来事が二つ重なって進行していく。お気に入り人数が900を超えて頑張らないといけないタイミングだってのに、リアルはどうしようもない。


25話 罅割れてゆく歯車

 

 

 

 新しく改造された二挺の拳銃がぶっ壊れてしまったので修理のためにイータは帰還した。魔力が上手く使えない問題は未だ解決してないのでまだまだ作戦中ではあるが、まぁ全滅させることが目的ならイータがいなくても問題無い。問題があるとしたら俺がまた一人になったこと、弾が残り僅かだと言うことくらいか。

 

 改めて組み直したリボルバーを二挺、脇の下と腰の左側に装着して新手が来ないか待っている。よく分からんネームドはミンチになったから窓の外にぽーいと投げ捨てたが依然として敵に居場所は教えたままなので定期的に集団で訪れる。弾が無いのでスライムナイフでザクザクと、徒手空拳でボカスカと行ってるのだが……こんだけやってると歯応えの無い相手には飽き飽きだ。

 アレクシアの奴も俺のこと呼ばないので退屈だ。いっそ寝てやろうかとも思ったが、後で何言われるか分からないので欲求を溜め込む。

 

 位置を教えたので移動も出来ない。弾も少ないので銃も撃てない。オマケにシドは夜まで動かないと来たモンだから退屈極まりない。以前出てきた科学ガン無視の化け物みたいのでもいれば話は別だが、二つの意味で二度と出てこないでほしい。

 

 敵の遺体からマスケット銃を取り上げ、懐に隠してある火薬と弾丸と雷管を強奪、それらを順番に詰め込んでからスライムでライフリング加工を施して時間を潰す。

 本を読んで増援を待っていようとも思ったのだが、先程の戦闘で誰かが本を撃ち抜いてしまったせいで読めない。戦闘が終わった後でそれに気付いた時には思わず叫びそうになった。

 

 

「あ、ドレッドのレイトだ」

 

 

 マスケット銃を加工していると、背後から何か色んな物持ってるシドが現れた。

 

 

「よう。変わってくれ」

「僕を見て第一声がそれ?」

「雑魚には飽きた」

「気持ちは分からなくも無いけどさ、もう少しでいい感じの舞台が出来るからまだ堪えててよ」

 

 

 何だそれはと目線で説明を求めると、シドは自身の思い描くシナリオを語り始める。

 

 

「今ね、強欲の瞳ってアーティファクトのせいで学園全域で魔力を吸い取られているんだ。その制御装置をあの部屋でシェリーが作ってるから、それを裏道から大講堂に投げ入れると魔力が使えるようになる…らしい」

 

 

 断言はしてくれない。コイツにアーティファクトについて教えてくれと言っても話半分にしか聞いてないだろうし、そこまでの期待はしない。これから何があってどうすればいいかだけでも説明してもらえるだけで重畳だ。

 

 

「なら、決行はその強欲の瞳の制御装置が完成次第か。完成はいつ頃だ?」

「さてね。今僕が持ってるこれらを使ってどうこうするらしいからまぁ…三、四時間くらいかかると思うよ」

 

 

 夜を待つことなくこの騒動を解決させられるかと一瞬期待したが、その願いは儚く散った。

 

 

「………帰っていいかな」

「帰るならアレクシアも連れ帰ってくれない?というか何で彼女いるの?何でか知らないけど魔力量がアホみたいに増えてるし、レイト何かした?」

「重症から回復したんだ。魔力くらい増えるだろ」

「戦闘民族じゃないんだから…。人間じゃあ扱えないレベルの強すぎる魔力は吸収し切れないって説明してるところに平気な顔で魔力使ってるアレクシアがいるモンだからシェリーが化け物でも見るような目で怯えてたよ」

「その化け物が守ってくれてるんだからむしろ喜べよ」

「それもそっか」

 

 

 アイツと会った時ドレッドで良かった。もしその場に俺がいたら笑いを堪えられる自信が無い。

 

 

「アレクシアがいるから僕が敵倒す必要無くて楽なんだけどさ……一緒の部屋にいると気まずいんだよねぇ…」

「なら変わってくれよ。こっちも弾が無いからガンスリンガーじゃなくなってんだ」

「何言ってんのさ、映画とかで見るガンスリンガーこそみんな最後ステゴロで戦ってるじゃん」

「……それ言われると弱いな」

 

 

 何ならコイツが一番とか言ってるガンスリンガーもいたなと前世の記憶を甦らせる。やはり筋肉か。

 

 

「ま、とにかくまだ頑張ってよ。なるべく僕もこっそり手伝うからさ」

「へいへい、ウチの頭領は人使いが荒くて困るね。……あ、そうだ」

「どうかした?」

 

 

 先程の戦闘で得た情報を共有しておこう。少しでも多くシドが情報握らせておけば例の如く奇跡が連なりあって正解に導かれるから。

 

 

「どんな奴かは知らねぇけど、『痩騎士』って呼ばれてる奴がいるらしい。多分、そいつができる親玉…だと思う」

「痩騎士…?」

「さっき元気に自己紹介した奴がいてな、シャドウガーデンの誰でもいいから捕まえてそいつの前に差し出せみたいな指示があったらしい」

「……ふーん。痩騎士、ねぇ」

「見つけたら撃っとくつもりだがまぁ一応報告しとくよ。そいつさえどうにかすれば実質勝ちみたいなモンだし」

 

 

 敵の頭を潰せばあとは消化試合なので、それさえ殺れば生き残りを全滅させればゲームセット。コールド勝ちだ。

 

 だと言うのに痩騎士の話を聞いてるシドの表情はあまり良いモノではない。作戦に懸念点があるのか、或いは痩騎士に心当たりがあるのか。

 

 

「ねぇレイト、頼みがあるんだけどさ」

「ん?」

「その痩騎士、僕に譲ってくれない?」

 

 

 シドの言葉に少し驚いた。頼み事なんてのはいつものことではあるのだが、その内容は普段のモノとは別物だった。

 獲物を譲れだなんて、今まで一緒にいて初めて言われた。俺が横取りしようとするならともかく、最初から寄越せだなんて、何があったのか。

 

 

「なんだ、因縁持ちか?」

「ううん、そういうのじゃないしまだ確証も無いんだけどね」

 

 

 ワケを語るシドの表情は暗い。俺らだけで話をする時は特に喜怒哀楽の表現があまりハッキリしないシドが、明確に不快だと顔に書いてある。

 

 これは持論だが人間の本質は怒りの中に隠れていると考えている。涙も笑顔も偽ることは出来ても、自己を持つ者ならば心の底から湧き上がる怒りだけは偽れない。

 

 だから、何かに怒りを抱いてそれをぶつけようとしているシドを止めることなんて俺には出来やしない。

 

 

「いいよ。珍しいモノも見れたしそれで満足しといてやる」

「ありがとう。今度夕飯でも奢るよ」

「OK、たらふく食って破産させてやろうじゃあないか」

「レイトが言うと洒落にならないって。っとと、そろそろ戻らないと心配されるな。それじゃ、また後でね」

 

 

 痩騎士はシドに譲る、作戦決行は数時間後、場所は大講堂。これが決まればあとはもう待つだけだ。退屈な時間が終わるワケじゃあないが、カウントダウンを設けられたのはありがたい。

 

 必要なやり取りは終わったのでシドは副学園長室へと戻って中にいる少女に諸々を押し付けに帰った。

 また一人になってしまったが、定期的に来る敵を殴り倒して時間を潰そう。残り何人いるかは分からないが、そのうち終わるだろう。

 

 ひとまずは先程やっていたマスケット銃の弾込め作業とライフリングの加工をして遊んでいよう。単純な作業なので無心でやり続けられる。敵殴るよりこっちのが正直楽しい。

 

 そんなこんなで二桁目のマスケット銃を加工しようと手を伸ばすと、再び背後から声をかけられた。

 

 

「ドレッド」

「あ、化け物だ」

 

 

 アレクシアが無言で剣を一閃した。ブリッジの体勢でそれを避ける。

 あぶね、無心で作業してたから気を抜き過ぎて素が出た。

 

 

 

 

______________________________

 

 

 

 化け物、もとい、アレクシアが経過報告にとさっきシドに教えてもらったこととまんま同じ内容の話を聞かされた。アーティファクトのことも、この後どうなるかも全部知ってるから聞かずにスルーしても良いのだが、ここで全部知ってますよと言えばきっとシドが内通者として処されそうなので何も知らないフリをした。

 けど嬉しいことに、中で待つ必要もないので副学園長室防衛にアレクシアも参加してくれるそうだ。雑魚狩りも押し付けられるし、話し相手もできた。制御装置が完成するまでの間の空白期間は少し楽しくなりそうだ。

 

 時折部屋からシドが出てきて外の様子を訪ねに来ては、その度にアレクシアに俺が見つかるとまずいからどっか隠れろと掃除ロッカーの中に押し込まれたり窓の外に放り投げられたりしたが、これはこれで新鮮な体験だった。

 

 そんなこんなを続けていると、敵の来る頻度がどんどん減っていることに気がついた。打ち止めだろうか。魔力を上手いこと使えない状態はまだ続いているので撤退したワケじゃあないのだと思うが…ちょっとやり過ぎたかもしれないな。

 メインディッシュこそシドに譲ったが、それ以外は全部貰うつもりでいるのでここでやり過ぎてもつまらない。大講堂にはあと何人残っているのか、さっき捕まってた時に見た限りじゃあ残り12発の弾丸でも十分片付けられる人数だったか。まぁ何にせよやることに変わりは無い。楽しむだけだ。

 

 そんなこんなで時間は流れていき、いつの間にやら外は茜色に染まってシドが好みそうな影の濃さになっていた。

 学園内に明かりを灯す人もいないので遺体が散乱して血生臭い廊下も、暗くてうっかり肉塊を踏んでしまう。アレクシアも「うげっ…」と嫌な感触に心底嫌そうな声を漏らす。

 最終的には遺体から剣を奪い、床や天井に刺すことで簡易的な手すりや足場を作ることでどうにか問題を解決していた。……おかしいな、初めて会った時と比べてだいぶワイルドになってる。俺が教えたのは闘い方だけなので、これは俺のせいじゃあないよな…?

 

 誰にするでもない言い訳を心の中で唱えていると、副学園長室の扉が開く音が聞こえた。それと同時にアレクシアに身体を掴まれて積み重なった遺体の山の中に投げ込まれた。

 

 

「アレクシアー。シェリー終わったってー」

 

 

 どうやら中での作業が終わり、ようやくこの事件に幕を下ろす時が来たようだ。

 

 

「……ふぅ、ようやく終わったのね。私は大講堂に行って捕まってる人の救援に向かうけど、貴方は?」

「僕はもう少し中で休んでるよ。背中斬られてまだ痛いし」

「そう。なら後で救援を呼んであげるからそれまで寝てなさい」

「そーする」

 

 

 会話を終えてパタンと扉の閉まる音が聞こえたので、遺体を退けて中から這い出る。死んで間もないので腐敗こそしていないが生臭さの根源に突っ込まれたせいで臭いが多少移ってしまった。全身を魔力で覆うのも間に合わなかったせいで血が全身にべっとりと染み付いた。

 元より紅いコートを着ているので赤いのはいつも通りだが、仮面から髪まで全て赤く染められてしまったのでアレクシアが俺を見て鼻で笑う。

 

 

「あら、アンデッドの復活だわ。こわーい」

「お前も中に入ってみろよ。暖かくて快適だぞ」

「死んでも御免よ」

「………………ブラッディスプラッシュ!」

「キャア!ちょっと、血を飛ばさないで!」

 

 

 嫌がらせもここまでにしてそろそろ行こう。俺らがここに滞在してる限りシドも副学園長室から出られないだろうから、制服が汚れて心底嫌そうなアレクシアを置いて先に向かった。一人でどんどん進んでいく俺に気付いて後方から待ちなさいと命じる声が聴こえているがきっと気のせいだ。

 

 それと歩いてる最中に大講堂のある方角からふと大きな魔力を複数感じ取った。大きなモノだが七陰の面々程ではないが、恐らくはシャドウガーデンが待機しているのだろう。先程までは分からなかったのにそれを急に感じ取れるようになったと言うことは───

 

 

「───魔力が戻った」

 

 

 血液のように全身に漲る不思議パワーを改めて感じ取りながら、すぐ後ろにいるアレクシアを見る。彼女も同じように元に戻った魔力を確かめていた。

 シドの魔力は……既に移動したのか、副学園長室からは感じられない。制御装置を作ったシェリーも中から出てきていないし、俺の知らない裏道があるのかもな。

 

 それより気になるのはアレクシアだ。

 

 

(さっきまでの状態でも問題なく戦えてたからまさかとは思っていたが…魔力の量がとんでもないな。今の時点で七陰クラスだってのにまだ増え続けてる?)

 

 

 やれやれ、こりゃ下手したらシドの言うところの主人公の覚醒イベントを俺がやっちまったことになるのか。アルファにバレたら怒られそうだ。

 

 ………そういや、なんでアレクシアはここにいるんだろうか。どっかの誰かと違って謹慎期間伸びてるから学園に来れないはずなのに、連中に拘束されることもなく俺と合流した。

 そもそもコイツは王族だ。普段俺といる時は誰もいないが普通なら護衛に誰かしらが付いているのにそれもいない。魔力が使えないせいで騎士団も入れないのに平気で入り込んでるのに使えてることを誰かに報告した素振りもない。

 

 

「……………………」

 

 

 人が夢を抱くのには必ず何かしらきっかけがある。それと同様に世界には理由があり、そして物事も理由があって初めて存在する。例外なんてモノは一切無い。無論、俺にも、シドにもだ。

 だから、アレクシアがここにいることにも必ず理由がある。シドに倣った言い回しをすれば主人公としての覚醒か、王女として剣を握る彼女の前に陰の実力者を投入するための道化か、それとも弾の無い俺を助けるために────

 

 

「……まさか、な。流石にそれは都合が良すぎる」

「何か言った?」

「いや、何も。それより先に行ってくれ。そろそろ元の関係に戻らないと本格的に反逆王女様になっちまうぞ」

「……言われてみれば、さも当然の様に着いて行ってたけど貴方敵だったわね」

「おーいおい…しっかりしろよ王女様。確かに俺らは明確に敵対してるワケじゃあねぇが、キバは研いで貰わねぇといざと言う時引き金を引けないぞ?」

「安心なさい。何時如何なる時でも貴方の首を斬ることに躊躇いなんて無いから」

 

 

 それを聞いて安心した。壁にもたれかかって先に行けとジェスチャーをすると、文句も言わず素直に従って進んで行った。

 

 今日何度目か分からない一人の時間が訪れた。思い返せば、銃を握ったばかりの頃は一人で行動することの方が多かったのにいつの間にやら隣に誰かしらがいる時間が長くなった。変化の原因はシドとの出会いがきっかけだから、きっとアイツがいなければ俺は今も一人だっただろう。

 

 

「……………」

 

 

 シドと出会ったから、俺の人生は大きく変わった。夢との向き合い方やその後の歩み方。夢の先にあるのは何かを探しながらひたすら前へと向かい続けている真っ最中な俺。ゴール地点こそ違うが、同じ進み方をしていたはずなのに道が違いすぎる。

 今の地位も強さも、良く考えれば全部シドと出会わなければ得られなかったモノしかない。

 

 アレクシアがここにいた理由も分からないが、段々と俺がいる理由も分からなくなってきた。良くないな、十分に睡眠がとれてないせいで深夜に眠れない時みたいな思考に至ってやがる。さっさと全滅させて飯食って寝よう。こういう時は朝になれば全部どうでもよくなる。

 

 唐突に感じた不安を適当にあしらいながら、俺は窓から外へ飛び出して大講堂の屋上の方へと向かって糸を伸ばして夜を駆ける。

 

 

 

 




改めましてお気に入り登録者数900人、総合評価1200、高評価ありがとうございます。感情の赴くままに描き殴って制作している当二次創作品を応援いただき本当に感謝しています。気持ちが変わるまでの間でも大丈夫ですので、今後ともよろしくお願いします。
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