ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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2話 前世から言霊引き連れてきたかもしれない

 

 

 

 まっくろくろすけ基シドと出会ったあの夜から早数ヶ月。初めてできた友達と言うのが大きな補正になっているのか、シドと関わることは正直言って新鮮で、何をするのも楽しいと感じていた。

 カゲノー家に招待されてシドの家族を紹介され、盗賊に自分以外の家族が殺されたことを話すと養子として引き取ろうかとか言われたりシドの夢である陰の実力者とは何たるかを聞き続けたり、シドの姉に剣術を習ったりと一人だけで生きていたら得ることも聴くこともしなかったであろう日常を過ごす。

 向こうに日常を寄せるだけでなく逆にシドを俺の住む村に招待して工房を見せたり、拙いながらに料理をしてもてなしをしたり、あとたまに喧嘩したりと、振り返ると意外と年相応のことをしてるかもしれない。

 

 無論ただ一緒に遊ぶだけじゃない。お互いに納得のいくルールを設けての決闘を数えるのも億劫になる程に繰り返したり、互いの技術を用いて武装の改造や実験を幾度も挑戦を重ねたりもして研鑽は怠らなかった。

 

 一緒に過ごして分かったが、シドと言う男は奇行に走ることが中々に多い。陰の実力者なんてモノを目指している故に屋敷では無能を演じ、姉に毎日のようにボコられている。盗賊狩りをしてる時ですらリハーサルとか言って俺だけに戦わせて終盤くらいになると割り込んできておかしな話を聞いてもないのに語り始める。夢のために他の全てを投げ出してるため良くも悪くも実力者としては花丸なんだろうが、人としては欠陥品と言うのが素直な感想だ。まぁそれでも、亡くなった家族と比較しても素で話しても余計な衝突が無いと言うのはすごく大きいので友達として接する分には問題ない。

 

 

 ある日の夜、俺とシドはいつものように盗賊狩りへ向かって廃村に屯する盗賊団への奇襲をしていた。

 

「ヒャッハァァァァァ!!!テメェら金目のモノ出せぇぇぇ!!!」

「うぉ!?な、なんだこのガキ共は!?何処から来やがった!」

 

 前言撤回。盗賊へ強盗を仕掛けてた。

 

「シド、約束を忘れちゃあいねぇだろうな?」

「アッハッハッハッハッ!そんなワケないだろう?今夜はサポートに徹するから好きに暴れていいよ!」

「なら良いんだ。うぉら爆ぜろ賊共ォ!!」

 

 この数ヶ月、シドとの交流によって魔力の効率的な循環のさせ方や底上げのための肉体改造のやり方を教えてもらった。その効果と言うのは絶大なモノで、生まれた頃からそれを繰り返してるらしいシドのめちゃくちゃ魔力量にも頷ける。

 肉体改造後はシドと何度かやり合いはしたが、実戦経験を積むのは今日から、つまりこれが初陣である。

 

 足の筋肉に魔力を流し、力を溜めて解放する動きに合わせて魔力が効率よく移動する。二つの衝撃が同時に放たれることにより以前よりも格段に動きが速くなった。名前の呪縛から脱却を無事に果たせたと思う。

 

「ぼさっとしてんじゃねぇぞボンクラ共が!さっさと有り金置いておっちんじまえやッ!!!」

 

 弧を描くように振るわれた右脚が盗賊の身体を横切ると、胴体が真ん中から綺麗な断面を見せて地面に落ちた。返り血を浴びるよりも先に距離を置いて纏っているスライムスーツに一滴も鮮血を浴びさせない。

 

「ハッハッハァ!命じゃなくて金目のモノを置いて逝けつってんのが聞こえねぇのか!?」

「レイト。どっちが賊か分かんないよ」

「あ分かった?お前の真似してたんだけど」

「嘘僕普段そんな感じ??」

「これを機に治せよ盗賊狩る時チンピラになんの。同類だと思われんのゴメンだぞ」

 

 友達が道を踏み外さないよう教えてやるのも友達の仕事だって何かしらの本で読んだ覚えがある。ついでに前世含めると俺の方が歳上なので諭すのは義務だ。

 

「呑気に喋ってんじゃねぇガキが!!死にやがれぇ!!」

 

 シドと雑に談笑を交わしてると盗賊の一人が銃を取り出してこちらへ構えているのが見えた。引き金を引いて球状に整えられた鉛が真っ直ぐと俺目掛けて飛んでくる。勿体ない。そう遠く離れているワケではないので当てるのは難しくないのだろうが、キチンと狙ったところに撃てるのは才能か、努力の賜物か。盗賊なんかに堕ちていなければ何処かしらの屋敷の警備員とかになれただろうに。本当に勿体ない。

 本来今日使う予定の無かった銃を懐から取り出して飛んでくる鉛に銃口を構える。俺なりに慈悲を込めて、同業者になるかもしれなかった盗賊とその片手銃を葬るために引き金を引いた。今の俺なら、撃ち出された鉛より早く銃を抜いてそれを撃ち落とすことなど容易だ。

 

 放たれた銃弾は鉛を押し返し、盗賊の持っていた片手銃ごと首の中心を貫いた。撃たれた盗賊は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。

 

Dead in Piece(安らかに死ね). 来世は真っ当に頑張りな」

「おっ、何それ決めゼリフ?良いね、雰囲気バッチリ。僕も何か考えとこうかな」

「陰ながら活躍するのにお決まりのフレーズなんか用意したら目立つんじゃねぇの?」

「ふっふっふ、レイトはまだまだ想像力が足りないね。目立つ決めゼリフがあると、実力とお決まりのセリフ以外が謎に包まれた存在ってロールプレイができるんだよ!」

「ほーん。陰の存在ってのも意外と多様性に富んでるんだな」

 

 こういう妄想とはちょっと違うが発想力の点に於いてはシドにはいつも驚かされる。前に聞いた話だとシドは前世の頃から魔力と言うファンタジーな概念を追い求めていたらしいので、リアル思考な俺とは考え方が根本的に違うのだろう。その結果が魔力操作による肉体改造なのだからこの男は恐ろしい。

 

「そういえば、剣は使わないの?」

 

 素手で盗賊を穿ち、砕くを繰り返してるとスライムソードを伸ばして遊んでいるシドが尋ねた。

 シドお手製のスライムソードはどんな形態にでも変えられるという特性のおかげで荷物として嵩張らないため銃とは別に俺もスライムスーツのどこかに忍ばせてはいる。けれども俺はそれを使わず徒手空拳のみで戦うのにはワケがある。

 

 理由はシンプルで、俺に剣の才が無いからだ。無論、才能が無いからと言って一切練習をしないワケではないのだが、銃の制作や筋トレなどと他にも色々やっている。シドの方も色々なことをやっているので時間の制約は同じく存在しているが、俺と違いシドは超なんて言葉じゃ表せないレベルのショートスリーパーであるため使える時間が俺より多い。一方で俺は超ロングスリーパーなのでその分活動時間が短い。

 人間歳を重ねると寝ても簡単には疲れが取れない。今は肉体年齢こそ子供だが、社会人として長いこと働いた前世の記憶を継いでいるせいか短時間の睡眠では精神的に疲労が取れないのだ。精神の老いは肉体の若さだけでは補えないらしい。

 

「毎日のようにクレアさんに扱かれても成長しないのを見てんだろ?ナイフならともかく、ガンスリンガーに長物は不相応なんだよ」

「え、姉さんにボコられてるのあれ演技じゃなかったの?」

「演技なんて出来ねぇって。人によって話す内容こそ選んでるけど、普段から全部素だよ」

「それは困るなぁ。もう結構な種類の設定考えてるんだからロールプレイのためにも演技力も磨いてもらわないと」

「んー…一応善処はするけど期待はしないでくれ」

 

 雑談を交えながら盗賊を次々と蹴散らしているといつの間にか盗賊は一人も残っていなかった。最近戦いながら殺した人数(キルカウント)を数えることをしなくなっている。ちょっと道徳心が無くなってきてるな、宜しくない。

 

「さて、討伐完了っと。どうだシド、お前から見て俺の魔力制御はどっか甘い点とかあるか?」

「うーん……まだ攻撃の瞬間に流す魔力量の調節が甘いかな?さっきの銃撃の時はいいとして、攻撃が当たる瞬間にまだちょっと余計な力が入りすぎてると思う」

「なるほどな。まだまだお前レベルには及ばないか」

「そりゃ前世の頃から魔力コントロールの修行をしてるからね。むしろたった数ヶ月でここまで使えるようになるレイトの方がおかしいんだよ」

「銃の反動を抑えるためには筋肉の使い方とその他諸々が重要だからな。筋肉は全てを解決する」

「レイトってどっちかって言ったら理系なはずなのに結構脳筋だよね」

 

 そりゃそうだ。俺の原点を辿れば筋肉と銃を武器に戦うような輩に憧れてガンスリンガーを志したのだから、俺の根本にあるのは筋肉だ。銃を撃つにあたって弾道計算とかが必要になるからそこの計算はできる。けどそれ以外はちんぷんかんぷん。だって根本は筋肉だもん。

 

「当たり前のこと言ってないで、金目のモノと遺体回収してさっさと帰ろうぜ」

「人の言葉をあまり否定しないのはキミの美徳だけど、貶し言葉を当たり前って受け入れるのは良くないと思うんだ」

「何言ってんだ。脳筋は褒め言葉だぞ」

 

 ナイフのサイズに調節したスライムソードを使って遺体の首を落とし、纏めて同じ場所に纏めて埋葬し、手足を縛って大きな袋に詰めていく。金目のモノは盗賊のモノではなく知らない誰かのモノなので貰っていくのは少しでいい。

 

「…………………ん?」

 

 遺体を回収してる最中、何かが動く音が聞こえた。金目のモノを集めてるシドが出したのかと思ったがそうではなく、音の発信源は金品と共に近くにあった布を覆い被せられた檻からだった。

 

「シド、ちょっと来てくれ」

「んー?」

 

 布を退かすと檻の中身が明らかになり、中にいたのは獣の類ではなく、肉塊だった。腐敗が進んで周囲にハエが飛んでいる。だがこの肉塊は動いており、眼球の焦点がこちらに向けられている。

 

「……なんだこれ。生きてる…のか?」

「みたいだね。前に聞いたことあるけど確か…そうだ、『悪魔憑き』ってやつだ」

「悪魔憑き?」

「僕も実際に見るのは初めてだけど、ある日急に肉体が腐った人間を悪魔憑きって言うんだよ。治療法も無いから教会が買い取ってもらって浄化するしかないんだって」

「……あんま聞きたくねぇが、浄化ってのは隠語か?」

「そそ。浄化ってだけだと聞こえはいいけど、やってることは金を貰って病人の虐殺。こういうトコ中世って感じするよね」

「笑えねぇな…。喝采を得るための道具にされるくらいなら、ここで楽にしてやろうか」

 

 盗賊のクビ狩りに使っていたモノだと安らかに逝かせられないような気がして別途でグローブをナイフに変える。銃で撃ってもよかったが、肉塊の何処を撃ち抜けば一撃で楽にできるかなんて知るワケがない。

 ナイフを肉塊に入れようとした瞬間、シドが俺の腕を掴んで止めた。

 

「待ってレイト、殺さないでいい」

「なんだよ。教会に売って金に変えようってんなら反対だぞ?」

「違う違う。この肉塊、多分だけど魔力暴走を起こしてる」

 

 シドの言葉を聞き、ナイフを戻してから肉塊に触れてそれを実際に感じてみる。すると強い静電気のような衝撃が走って思わず手を離した。この肉塊、尋常じゃない量の魔力を有している。少なくとも俺より多く、それどころかシド以上に多い。

 

「…なるほど。悪魔憑きってのが魔力暴走が原因なんだとしたら、それを上手いこと調べれば治せるかもってことか」

「……………そゆこと。というワケだからこの肉塊僕が貰ってもいい?」

「おいなんだ今の間は」

「ま、まぁまぁ。とりあえずこの廃村に置きっぱなしだと危ないし、キミのトコの空き家借りてもいい?」

「……引っかかる部分はあるが、まぁいいか。魔力由来の肉体改造はお前の専門だし、任せるよ。空き家は好きに使ってくれ。掃除はしといてやる」

 

 そう言って二人で肉塊を檻ごと持ち帰り、しばらくの間空き家からおかしな波長の魔力が発生する日が続いた。

 

 やるのはいいけどせめて昼にやってくんねぇかな。眩しくて寝れないんだけど。

 

 

 

______________________________

 

 

 

 肉塊を持ち帰り月日は流れて早一ヶ月が経過した。ある日いつものようにシドが俺の村までやってきて貸してる家で実験を行っていた。俺は俺で新しい銃の制作を行っていたのでシドが肉塊に何をしてるか詳細までは聞いてなかったが、慌ただしく工房の扉を開けて肉塊の元へ来るよう指示されてそれに着いて行く。

 

 貸家の中に入ると肉塊が無くなっていた。代わりに一糸纏わぬ金髪のエルフの少女が気を失って倒れていた。

 

「……シド、5文字以内で説明」

「肉塊、完治。以上」

「よろしい」

 

 あれだけ腐敗が進んでいたにも関わらず、しかも人の形すらまともに保ててなかったのに完全に治療してみせた。本当にコイツの魔力操作の技術には脱帽させられる。

 

「……で、この子はどうするんだ?」

「そこなんだよね。もう肉塊じゃないから実験もできないし」

「とりあえず服着せてやるか。ちょっと村の中漁ってくる」

「あーうん。お願い」

 

 見た感じ俺らと同い年くらいだろうか。かつての村民に10歳の女の子がいたかは覚えてないが、多分探せばあるだろう。人はいないが、物はどこも襲撃のあったあの夜から何も手を加えてはいないからクローゼットなどの中身もそのままだ。

 

 いくつかの家のクローゼットを漁ると丁度いい大きさの服があったので埃が付いてないかを確認してから持っていった。

 数分後、貸家に戻って扉を開けようとしたところ、シドが誰かと話してる声が聞こえてきた。少女の目が覚めたのだろうか。何か話をしているなら邪魔してはいけないかと思い姿は見せずに入口の前に立って話を立ち聞きする。

 

 

「身体を蝕んでいた呪いは消えた。キミはもう自由だ」

「……呪いって?」

「魔神ディアボロスを倒した三人の勇者の話、知ってるかい?」

「…それはもちろん。けど、それは御伽噺でしょう?」

「いいや違う。あれは間違いなくこの世界の正史だ。まぁ、実際は御伽噺なんて優しい言葉で説明できるような簡単な内容じゃあないんだけどね」

 

 顔こそ見えないが、間を置いて話してるシドは多分それっぽい表情で笑いながら話してるんだろうなとか思うと逆にこっちが笑いそうになる。と言うか魔神ディアボロスってなんだろう。本を読むのは好きだが、御伽噺にまでは目を通したことがないので何も分からない。あとで調べてみるとしよう。

 

「勇者によって討伐された魔神は死の間際、三人の勇者に呪いをかけた。それがキミのように悪魔憑きと呼ばれた者達に訪れた病の正体だ」

 

 話が急に壮大になった。何処までが本当なのかは分からないが、とりあえずシドのやりたいことは分かった。俺を右腕として欲しがった時のように、あの子を自身の配下にしようとしてるのだろう。

 右腕になると言う話、まだ首を縦に振った覚えはないがまぁいいか。それでアイツの夢が前に進むと言うなら構わない。

 

「呪いが発現するのは英雄の子孫のみ。そしてそれを解呪する方法は確立されていたにも関わらず何者かによってその技術は失われ、しまいには英雄の子孫は何時しか悪魔憑きとして始末されるようになった。その正体は………いや、ここでその名を覚えたらキミまで巻き込まれる。無駄話はここまでにしよう」

 

 そこまで言ったら聞いてる側はもう着いて行くしかなくないか?彼女に選択肢を与えるのは良いが、自分からYESと言わせる詐欺の常套句みたいなやり取りだな。

 

「構わないわ!教えて、相手が一体何者なのかッ!」

 

 少女はシドの焦らしにすごい勢いで食らいついた。それに対しての回答は勿論用意しているのであろうと思い、シドの次の言葉を待つ。

 

「そ、そうか…なら答えよう。………だがその前に、だ」

 

 パンパンと手を叩いた。あ、先に服を着せろと?

 シドの合図に合わせて扉を開けて中に入る。少女に服を渡すために歩み寄ろうとするとすれ違いざまにシドが俺にだけ聴こえる超小さな声量で耳打ちをした。

 

(敵の名前決めるからちょっとだけ時間稼いで!)

(バカかお前)

 

 あれだけ壮大な物語を語っていたのにまさかのノープランだったようだ。なんであんだけ普段ロールプレイをしてるのにこう詰めが甘いのか。だがまぁ一度始めた以上全部嘘でしたとは言えないので乗ってやることにした。

 少女のそばに近づいて、膝を付いて服を渡した。そして一言。

 

「まずは服を着ろ。怨敵の名を知るのはその後でも問題ないだろう?」

「?…………ッ!?そ、そうね…そうさせてもらうわ…」

 

 こっちはこっちで全裸だったの忘れてたのか…。

 俺たちに背を向けて少し慌てながら服を着ようとしている光景を見ないよう俺も振り返ってシドの方へ目線を向けて、口は開かずアイコンタクトで意思疎通を図る。

 

(これでいいか?)

(ありがとう助かったよ)

 

 俺と目を合わせるためなのかシドは着替える少女に背を向けないでいる。性欲云々の前に異性に対しての気遣いについて後で教えてやらんといけないな、なんて変なこと考えていると背後からわざとらしく咳き込む声が聞こえた。振り返ると着替え終わった少女が先程の回答をまだかまだかと身構えているのが見えた。

 

「………敵の名は呪いをかけた張本人、魔神ディアボロス復活を目論む教団、『ディアボロス教団』。それが敵の名だ」

「ディアボロス…教団…」

 

 少女は驚愕しながら組織の名を復唱した。俺もびっくりした。だって俺も知らなかったもん。

 というか最初こそシドしか知らない組織があるのかなと思っていたが、先程の耳打ちから察するに実在はしない組織なのだろう。なのに助けた少女に恩を着せながらアドリブで考えた組織が敵ですと教え込むのは今更ながら気が引けてきた。

 

「シド、そろそろ──」

「我等は決して表舞台に現れぬ教団の野望を阻止する陰の組織。陰の相手は、陰でしかできないからな…」

 

 俺の制止も虚しく、シドの語りは継続された。しかも今我等とか言ったから間違いなく俺も巻き込まれてる。右腕やらせるつもりならせめて自分の属する組織名くらいは教えてくれよ。

 

「我が名は──『シャドウ』。影に潜み、陰を狩る者」

 

 そう言うとスライムスーツを纏い、魔力を放出して演出を初めてしまった。ダメだ。完全に俺も名乗らなきゃいけない流れができた。シドがシャドウ名乗ってるし当然俺も偽名の方がいいんだろうが、その流れを汲むとバレット?いやそもそもバレットってのは誤訳だからここでそれを広めたくないし……ああもういい、シドだって適当なこと並べてるんだから俺も適当に名乗ろう。意味なんて二の次だ。

 

「『ドレッド』。恐怖の名を冠し、偽りを撃つ者」

 

 同じくスライムスーツを翻し、パッと思いついた言葉を無意味に羅列させた。ドレッド、恐怖を意味する言葉。バレットと何となく似てるしこんなモンで良いだろうか。少なくともシド基シャドウに見劣りはしないとは思う。

 

「英雄の子孫たる汝に問う。我等と共に、茨で創られた陰の世界を歩む覚悟はあるか?」

「…貴方達がそれを望むなら、私は貴方達と共に歩み、この命を捧げましょう。そして、咎人には死の制裁を……ッ!」

 

 どうしよう全部シドが適当に語っただけなのにこの子結構乗り気だ。

 

「…私以外の英雄の子孫も集めて保護する必要もあるわね。組織の拡張と並行して拠点作り、あとはその為の資金集め…やることはいっぱいね」

 

 やばいこの子思ってた以上にのめり込んでるし頭の回転も早い。これシドの話が全部出任せだってバレたらタダじゃ済まされないぞ。…解散した後色々話してみるか。

 

「それじゃあ、僕らの組織の名前は……『シャドウガーデン』。キミは組織にいる間は『アルファ』と名乗れ」

「ネーミングの落差激しいな。女の子の名前なんだからもうちょい真面目に決めてやれよ」

「アルファ…ふふっ、良い名前ね」

「あ、いいんだ」

 

 最近の若いモンの感性ってのは分からんね。いや、この世界のネーミングセンスってよく考えたらこんなモンだったな。

 

 

 ひとまず今日はこれで解散となった。後でシドと少女…アルファにそれぞれ話を聞いてみたが、シドはいつも通り深く考えず楽しんでる。アルファは恩義を感じてるのは勿論あるようだが、自分をあんな目に遭わせた連中を許せないとやる気と殺る気は満々だったので今更全部嘘ですとは言えなかった。対象がなんであれ、掲げられた目標を否定するなんてのは俺には出来ない。夢や目標は生きる原動力だし、折角助かった命なんだからそれを眩ませるようなことはしたくない。怒られる時は素直に怒られよう。

 

 

 

______________________________

 

 

 

 

 シャドウガーデン結成から数日後、俺とシドは以前から何故か拠点として使われてる俺の屋敷のリビングでアルファに呼び出された。シドの話の件についてだろうか。虚言であることの裏付けを調べるには十分な時間が流れたので、恐らく俺やシドなんかじゃ到底及ばないくらいに賢いアルファなら現実がどのようなモノかすぐ分かっただろう。

 

 だが、アルファの発言は俺の予想とは全く別だった。

 

「シャドウの言う通り、ディアボロス教団は確かに存在していたわ」

「…………What's?」

「二人には黙っていたけど、教団のことを独自に調べていたの。そしたら古文書に奴らの存在示唆する記述があったわ。……ごめんなさい、貴方達を疑うようなマネをして」

 

 アルファはテーブルにその古文書やその他ディアボロス教団の実在を証明する資料を広げ、申し訳なさそうな表情で頭を下げて謝罪した。

 

 どういう偶然だ。急に呼び出されたからいよいよ年貢の収め時かと思ったら、予想だにしない事態になっていた。頭を下げるアルファに止めてくれと頼むよりも先に困惑が脳を汚染する。

 まさかコイツ、適当に語ったと言うのは嘘で本当は実在するのを知っていたからその対抗組織結成のために動──

 

(すごいねレイト。こんな小道具作ってまで僕の話に乗ってくれるなんて)

 

 全然そんなことは無いようだ。だとしたらこれはいよいよ異常事態だ。アルファの方はシドと違って適当なことを言うようなタイプでないことはこの数日間一緒に訓練をしたりして過ごしたのでまだ大雑把ではあるがどういう奴かは把握しているつもりだ。そんなアルファがこう言うのだ、ディアボロス教団は本当にあるのだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これはいったいどんな奇跡が働いたのか。

 

「今更謝ったところで貴方達を疑ったことに変わりは無い。だからここで改めて、忠誠を従うことをここに誓うわ」

 

 全く信じてないシドのことはひとまず置いといて、膝を付いて先程以上に深々と頭を下げるアルファを見て頭を抱えそうになる反面、逆にチャンスなのではないかとも考えていた。

 シドの語った設定通りの相手なら、それを相手するシドは正しく陰の実力者になれる。問題があるとしたらそれをシドが認識できていないことだが、この際それは置いておこう。

 

 俺が夢の続きを歩むためにも、シドの夢が叶うように、そして今回結成されたシャドウガーデンのメンバーとなったアルファもほっぽり出すワケにはいかないので少なくとも独り立ちするまでは面倒を見ようと思う。しかもアルファは今後も英雄の子孫を保護すると言うので、人員は今後も増えていくだろう。そしてそれら全員の夢を聞き、叶えた先の未来がどのようなモノかと言うのを勉強させてもらおう。

 

 自分勝手な理由で申し訳ないが、夢の続きを歩くためにディアボロス教団とか言うワケの分からん連中には歴史の闇に永遠に眠っていて貰うとしよう。

 

 

 




文字数抑えたいんですけど、どうも癖で長くしちゃうんですよねぇ。
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