ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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4話 恐怖より来る悪夢

 

 

 

 イータを背負って一時間近く経過しただろうか。シドの住む屋敷の近くの森まで来ると、覚えのある魔力をいくつか感じ取った。七陰のみんなが具体的に屋敷の何処に集まってるかは聞いていなかったので途中から勘を頼りに歩いていたが、どうやら合流地点は森で間違ってはいなかったらしい。ちなみに背中にいるイータはぐっすりとネンネしてるので詳細は聞けなかった。走れば当然早く着くが、起こさないようゆっくり歩いたのでめっちゃ時間掛かった。アイツん家遠いんだよ。

 とりあえず、まだ今回何があったのかも聞いてないので話を聞こう。イータは…このままでいいか。

 

「レイト。遅かったね」

 

 何処からか声が聞こえてきた。森の中なので二人くらい木の上でスタンバイしてるのは魔力探知で分かるのだが、影の組織らしく俺にすら簡単には姿を表してはくれない。一人を除いて。

 

「……ふふっ、こっちこっち」

 

 右斜め上の木から声を掛けられる。目線を声のする方へ向けると、黒衣を纏った金色の少女が手を振りながら俺を見ていた。

 

「よっすゼータ。どっかから声がすんなと思ったらそんなトコにいたのか」

 

 木の上にいた金色の猫耳少女、ゼータが目の前に降りてきた。

 

「惚けないでよ。レイトのことだから、ホントはとっくに私の気配に気付いてたくせに」

「買い被りすぎだって。俺に出来んのは銃撃つのとナイフ刺すことだけだよ」

「だけって言うけど、その二つを完璧にこなすのは世界でレイトだけでしょ?」

「さーね。ところで、今回は何があったんだ?」

 

 適当なところで話を切り上げて本題に入る。何も話を聞いていないのかと怪訝そうな表情を浮かべるゼータに背中を見せると、ぐっすりと寝ているイータを見て状況を察してくれたのか今回の件について詳細を話してくれた。

 

「昨日の夜、主の姉が教団に攫われたみたいなの。しかも今回の首謀者は教団の幹部クラス。いつもの小さな拠点狩りと違って今回は大物、だから主が七陰全員とレイトを呼び出したの」

「クレアさんが攫われた?そりゃまた、連中も災難だな」

「被害者より先に加害者の心配?」

「あの人はそう簡単には殺されないし、何かされるにしても絶対暴れるだろうよ」

 

 シドの家に行く度に剣の稽古をクレアさんから受けているため実力が如何なものかは把握している上、あの人は家族愛が人一倍強く、特にシドに危険が及ぶとなれば阿修羅の如く暴れるに違いない。家族愛と呼ぶにはシドに必要以上に傾けられてる気もするが。

 

 クレアさんを教団が攫ったと言うことは、あの人も英雄の子孫の疑いを掛けられたのか。魔力暴走を起こしてる様子は見受けられなかったが、シドがどうにかしたのだろうか。だとしたらアイツもアイツで姉想いだな。

 

「拠点の場所と人数は?」

 

 攻め込む先を尋ねるとゼータは地図を広げてここからそう遠くまで離れていない地点を指差す。ここは…確か鉱物の類も何も無いからと放置されていた洞窟があるところだったかな。うーん、整備されてない洞窟内で発砲すると粉塵爆発起こる可能性があるから今回は何もしないで終えるかもしれないな。

 

「……今回俺要らなくない?」

「え? レイトが要らないなんてことある?」

「いやほら、銃火器使えないから」

「剣と違ってナイフなら使えるんでしょ?なら多分大丈夫じゃない?」

「ガンスリンガーって何なんだろうな」

 

 ガンスリンガー改めナイファーで今夜は凌がなくてはならない。もう帰ろうかな俺。作戦決行までまだ時間もあるし、このままイータ背負ったまま帰って屋敷の掃除した方が有意義な時間過ごせる気もする。

 

「ところで、いつまでイータのこと背負ってるつもり?」

「起きたら降ろすよ。昨日も研究してまともに寝てないだろうし」

「ふーん…?」

 

 不穏な雰囲気を出しながらゼータが服の一部をちぎって丸めた。スライムボディスーツはどのような形にも変形させることが可能なので一部分をちぎって武器にする、なんて芸当も可能なのだが…俺はゼータが何をする気なのかが分からなかった。

 丸めたスライムを手のひらに置いて、それを俺の背後にそびえ立つ大木目掛けて魔力を込めた右手で弾き飛ばした。そこそこの速度で弾かれたスライム玉は大木に着弾、その後ばいんと鈍い音を立てて跳ね返ってくる。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あうっ」

 

 跳ね返ったスライム玉はイータの後頭部に着弾。突然の衝撃に襲われたイータは目を覚ました。

 

「おはようイータ。気分はどう?」

「………最悪」

「時間ならまだ全然あんだし、寝かしてやりゃ良いのに」

「レイトはちょっと甘やかしすぎ。イータだってガーデンのメンバーなんだからもっとしゃんとしないと。はい、起きたんだから降ろして」

 

 ゼータの言葉にイータは渋々と言った表情で俺の背から降りる。無理やり起こされたことへの怒りか、ゼータの言葉へのせめてもの抵抗のつもりか、降りても俺から離れずにコートの裾を摘んで隣に立った。あ、ゼータの尻尾がバタバタ動き出した。機嫌悪くなってる。

 このまま二人を放置してたら喧嘩になりそうなのでひとまず違う話に切り替えて場を終わらせよう。

 

「そういやシドは?」

「主?主ならまだカゲノー家の屋敷にいるよ」

「そっか。まぁ今頃大騒ぎしてる最中だろうからすぐには出てこれねぇか…。他の七陰は?」

「バ…デルタとイプシロンは拠点の監視。ベータとガンマは主の屋敷で情報共有。あとは……」

 

 説明の途中でゼータが不意に視線を上に向けた。釣られて上を向いてみると先程まで姿を隠していた存在が視認できる距離まで接近していた。

 

「アルファか」

「ええ。最近はアジトにも戻ってなかったから会うのは久しぶりかしら?」

「だな。んで、作戦内容は?」

「サーチ&デストロイ。レイトの一番得意な作戦よ」

「りょーかい。この手に限る」

「その手以外の手札を持ってから言いなさいよ…」

「レイトのこういうところだけあのバカ犬と同じなのがなぁ…」

 

 なんか呆れられてる。悲しい。

 とりあえず、だ。やることは武器以外いつもと変わらない。それだけ分かればあとは好きに暴れられる。時間になるまで他のメンバーと一緒に監視しながらスタンバイしつつ、シドとの合流を待てばシャドウガーデンとしての活動が行われ、人質奪還のついでに拠点を潰せる。難しい話など何もない。

 ……普段とは違い明確な人質がいるから俺もついでに呼ばれたのだろうが、七陰だけでほんとに事足りるのではないのか?

 

「レイト」

 

 余計なことを考えていると隣のイータが袖をくいっと引っ張りながら俺を呼んだ。何かと思って隣を見ると、森の奥から誰かがすごいスピードで接近しているのが見える。一瞬何事かと思いホルスターに手を伸ばしかけたが、接近してる魔力に覚えのあるモノだったのですぐに警戒を解いた。

 

 俺たちのすぐ近くまで来て立ち止まった来訪者は同じくシャドウガーデンのメンバー、ベータだった。

 ベータはアルファと同じエルフの少女で、アルファとは対極に銀髪の美少女だ。メンバーの中でもとても発育が良く、一部メンバーから反感を買っているのはまた別の話。

 

「ようベータ。何やら急いでる様子だけど、緊急事態か?」

「あ、こんにちはレイト。お久しぶりですね……ではなくて!アルファ様、大変です!」

 

 余程慌てて来たのかすごい汗をかいている。コートに入れているハンカチを取り出して渡してあげると、顔を拭いながらベータはアルファに緊急の報告を行う。

 

「シャドウ様に教えていただいたのですが、今我々が監視している拠点はダミー、本当の拠点は……ここです!」

 

 発育豊かな胸の谷間から一枚の地図を取り出し、赤い丸が記された場所とは別の箇所を指で差して示す。先程までの目的地とは大きく異なり、ここからだとかなり遠い場所だった。

 

「何ですって!?じゃあ今我々が監視している洞窟は…」

「はいっ!人質は別の場所に捕らえられています!私は他の七陰にこれを伝えて作戦決行までに拠点に向かいます!」

「分かったわ。それにしても私たちでさえ欺かれたのに…さすがはシャドウね…」

 

 汗を拭い終えると同時に報告が完了し、アルファは本来の拠点の位置を見抜いたシドに驚嘆していた。驚くのはいいが事実確認が先な気もするが…まぁいい。こういう時アイツの言葉は間違えることがない。やはりアイツには言霊の力か何かが宿ってるような気がする。

 先程見ていたゼータの地図にも同じように目的地を書き直し、それをしまうとベータは洞窟がある方へと向かい走り出した。それを見送ってから俺たちもすぐに森を出て本来の拠点がある方向へと走り出した。

 

 全力で走るとみんなを置いて行ってしまうので速度を二人に合わせて走る。走りながら緊急のミーティングを再度行って今後の方針を改めて定める。

 

「アルファ様、ここからだと到着する頃には夜になるけど、作戦はどうする?」

「いえ、作戦内容に変更は無いわ。……まさか、シャドウはここまで読んだ上で作戦の決行を夜にしたの…?」

「今アイツの真意が重要か?」

「……そうね。ゼータ、貴女は到着次第敵戦力の確認を。ドレッド、貴方は後から合流するメンバーに作戦内容に変更が無いことを伝達して。イータは……イータ、貴女なんでドレッドの背に乗ってるの?」

 

 先程走り出したのと同時にイータが俺の背に飛び乗っていたのだが、どうやらアルファはそれに気付いていなかったようでイータに現状の説明を要求した。が、それにイータは何か問題があるのかと言いたげな表情で答える。

 

「自分で走るより…この方が楽…」

「イータ…もっと状況を考えてから……」

「あーいいよ別に。と言うかイータ背負った方が二人に速度合わせやすいし、なんならもう一人乗ってくれた方が速度抑えやすいんだけど」

「ドレッド、貴方前から言ってるけどイータのこと甘やかしすぎよ…」

 

 アルファが頭を抑えながら呆れた様子で俺を叱った。うーん、甘やかしすぎてるつもりも無いんだがなぁ。

 イータに自分で走れと言いたげな目線をアルファが向けているが、先程までその隣で走っていたはずのゼータが消えていた。どこにいるのかと思ったら途端に背に重量が加えられた。首を回して背後を確認してみるとゼータが握力だけで俺の肩にしがみついてどうにかスペースを確保しようとしている光景が見えた。

 

「イータ、もうちょっとそっちズレて。それか降りて」

「……嫌。ここはわたしの場所」

「喧嘩すんなって。一応活動中だぞ?」

「甘やかさないで!!活動中よ!?」

 

 目的地到着後、想定してたよりも早く到着してしまったので俺たち三人はアルファに説教をされてしまうのであった。

 

 

 

______________________________

 

 

 

 薄暗い地下道の突き当たりに扉があり、その前には武装した二人の男が見張りとして立っている。その扉の中は牢屋となっており、中には二人の人間が何かを話していたかと思いきや、内の一人が暴れ、直後にもう一人の手によって沈められた。

 

 松明による最低限の明かりだけが薄暗い牢を照らして中を見せてくれている。牢の中には拘束され身動きが取れず、意識すら奪われた少女が一人と屈強な男が一人、小規模ながら諍いが行われた末少女は自身を縛る手枷から無理矢理外して攻撃を仕掛けていた。

 攻撃の結果、手痛い反撃を食らい意識を奪われた少女、クレア・カゲノーの右手からは手枷を外したことによる出血と抉れた肉が痛々しさを物語っている。それを前にする男、この牢、このアジトの長オルバはクレアの手からこぼれ落ちる鮮血を手で掬い、それを眺める。

 

 先程まで行われていたやり取りから、クレア・カゲノーも呪いが発現しているらしいので英雄の子孫である可能性が高い。しかし呪いの効果は完全には発揮されず肉体に異常は現れなかった。クレアの言葉を真に受けるのであれば、どうやら彼女の弟が『すとれっち』なる謎の技法でクレアに手を加えたことによって呪いは掻き消されたらしい。

 呪いは現れたが、掻き消された。少女の発言が虚言かを確かめる術をオルバは持ち合わせていない。だから、少し回りくどい手法ではあるが少女の血液を調べることで真偽を明らかにしようと考えた。疑念を確信に変えるべく、オルバは血液の採取を行おうとしていた。

 

「小娘が…手間を取らせおって…」

 

 生憎手元に血液を採取できるような道具がないため、牢を出て外で見張りとして立っている部下に取りに行かせようとする。尋問のために中に入って直接会話を行ったが、血液採取などはオルバの専門外である。面倒な作業は部下に任せるのが一番だ。

 

 だが、オルバが見張りに声を掛けるよりも先に外から大きな音が複数回響き渡った。

 

「ッ!何事だ!」

 

 目の前の見張りにそう尋ねるが、オルバと同じく音しか耳にしていない見張りにその正体が分かるはずもない。

 

 音が聴こえただけなら警戒レベルを上げるだけで済む話だ。しかし今オルバがいるのは地下道の最奥、それこそ近くの建物が爆発するかそれに近い事態にでもならない限り外の音が聴こえるなんてことにはならない。ましてやその音が何度も地下道にまで響いているのであれば、異常事態であることに疑いの余地は無い。

 

「じょ、上階で何かあったのかと思われます!」

「そんなことは分かってる!ちぃっ、お前たちはここで見張りを続けろ。私が直接確認しに行く!」

 

 舌打ちをしながらオルバは薄暗い地下道を全力で駆け出した。走っている最中も音源不明の破裂音は何度も響いた。

 聞き覚えのあるモノで一番近いのは銃の音だろうか。だがオルバの知る銃はここまで重厚感のある音ではなく、もっと軽い音だったと記憶している。大量の火薬を纏めて爆発させている?だとしたら一つ一つの音の感覚が短いことの説明ができない。思考の沼に嵌れば嵌るほど、オルバの不安と胸騒ぎは大きくなるのだった。

 

 この施設は当然オルバ、ディアボロス教団にとっても重要施設であるため、配備されている兵士は当然強力な者ばかり。全員ではないが、王都の近衛兵と比較しても遜色ない実力者も大勢いる。故に、侵入者が現れたとしてもそう易々とこの施設が落とされることは無いと断言できる。なのだが、オルバの胸騒ぎは収まることを知らない。

 

 外に近付く度に音は大きくなる。やはり、外で何かが起きているようだ。音の中に兵士の悲鳴も混ざり始める。何者かは分からないが、侵入者が現れたことは間違いない。

 上階に続く階段の近くまで来ると、何人かの兵士が階段を降りてオルバの元へと駆け寄ってくる。状況報告の兵士だ。

 

「オルバ様!し、侵入者です!」

「そんなこと悲鳴を聞けば分かる!侵入者は何者だ!?」

「わ、分かりません…!敵は約八名、ですが我々では全く歯が立ちません!特にその内一名は謎のアーティファクトで拠点のど真ん中で大暴れしておりますッ!」

 

 報告をした先頭の兵士は次の瞬間、両端のコメカミから血を流してその場に崩れ落ちた。他の兵士がそれを見て動揺したが次の瞬間他の者たちも先頭の兵士動揺に頭部からそれぞれ二箇所ずつ血が溢れ出し、絶命した。

 

「な、なななんだ…一体……何が起こっているんだ……!?」

 

 轟音が響く度に兵士が倒れ、原因も分からないまま絶命していく。報告だとアーティファクトを用いる者がいると聞いたが、突如命を奪うようなアーティファクトなんて聞いたことがない。報告のために降りてきた兵士は全員頭部に二箇所風穴が開けられ、遺言も残せず死んだ。

 倒れている兵の近くの床や壁に覚えのない凹みが複数あるが、これが原因であると到れるほど、今のオルバは冷静な思考が出来ていない。

 

 階段を駆け登り先へ進むと、この施設で唯一外の光が差し込むホールに出た。ここなら他と違って状況がよく分かる。だからこそ、異様な光景が広がっていることが分かりやすい形で視認させられてしまった。

 

 大勢の兵士が遺体となって囲む中央で、ロングコートを纏ったオルバと同じく灰色の髪をした仮面の男が銃のような形のアーティファクトを両手に、一人佇んでいた。

 

 死んでいる兵士の中には当然近衛兵に匹敵する強力な者がいた。それも一人ではなく何人も。オルバは目の前の男が全てやったのだと理解し、直後にこの男は危険だと全細胞がそう判断した。腰に携えていた剣を抜いて男に構える。そしてオルバは男に尋ねる。

 

「何者だッ!貴様は一体何者だッ!!」

 

 仮面の男はその場から一歩も動かない。

 葡萄酒のように紅いコート、遺骨のように灰色の髪、そして黒い仮面。更には両手にある鈍い輝きを放つ白銀と黒鉄のアーティファクトと、こんな装備をした奴がまともなはずがない。言葉が通じない悪鬼羅刹の可能性も大いにあるが、だとしてもオルバにとって眼前の男は明確な敵であることに変わりは無いのだ。

 

 

 

 

I'm your worst nightmare(俺は貴様の最悪の悪夢だ).」

 

 

 聞いたこともない言葉で男は答えた。意味は当然オルバには通じない。だが、その言葉に敵意が含まれていることは理解した。間違いない、この男は自分を殺そうとしていると全細胞と全神経がそれを理解すると、オルバは柄を握る力が更に強まった。

 

 そして次の瞬間、男は右手に握っていた白銀のアーティファクトを上空に構え、それを使って月明かりの差し込む天井のガラスを破壊した。

 

 ガラスの雨が男に降り注ぐ。その直後、破壊された天井から新たな人影が複数侵入して男の後ろに並んだ。

 

「新手か…ッ!」

 

 現れた人影の数は七人。そしてその七人は全員黒いボディースーツに身を包んではいるが、その身体の膨らみからいずれも小柄な少女であることが分かる。だがその小柄な少女にも警戒を怠らない。

 少女たちは男とは違い大きく目立つような装備ではないのだが、それを加味しても気配が希薄なのだ。一瞬でも気を抜いたら見失いそうに感じるほど、幻でも見ているかのように。

 

 自身の身に宿る魔力を制御し上手く操作することによって気配を消す技術は確かに存在しているが、そのためには気が遠くなるような訓練を積むか類稀なる才能が必要になる。それを七人の少女は全員が行っている、それが如何に異常事態なのかは説明する必要もないだろう。

 

 

「──我らは、シャドウガーデン」

 

 先程と違い今度は理解できる言語で男が名乗りを上げる。恐らくこの男が七人の長なのだろうとオルバは推測する。

 男が一歩前に出る。そしてまた新たに言葉を発した。

 

「主の命に依り、ディアボロス教団の拠点壊滅及び攫われた少女の救出に来た」

 

 ディアボロス教団、その言葉にオルバは一瞬動揺したがそれを表に出すことはなかった。

 

「貴様…その名を何処で聞いた…?」

 

 態度では動揺を見せず抑え込めたが、言葉が漏れてしまった。この施設には大勢の兵士がいたが、ディアボロス教団の名を知る者はその中でもオルバを含めても数人しかいなかった。教団はその名前すら極秘のモノであり、外部に漏れる可能性はものすごく低い。にも関わらず、男はその名を口にした。

 

「──我々は総てを知っている」

「──魔人ディアボロスを」

「──ディアボロスの呪いを」

「──英雄の子孫を」

「──悪魔憑きの真実を」

 

 男の背後にいた少女たちが更に言葉を紡ぐ。それは、教団の幹部クラスであるオルバですら詳細を聞かされてはいないトップシークレットの機密事項。外部に決して漏らしてはいけないモノだ。

 

 

「──そしてそれを壊す者を」

「──総てを終わらせる者を」

 

 残りの二人は教団に関するモノでなく、この集団について語る内容であった。本来であればこの集団について詳しく尋ねてから殺して情報の漏洩を防ぐべきなのかもしれないが、この連中の一人だけが相手だとしてもオルバは敵わないと言うことを本能が理解してしまっている。

 

 故に、オルバは戦って相手を殺すことではなく、生き残って逃げることに全力で策をめぐらしていた。

 ここで犬死するより、情報漏洩を見逃すより、生き残ってこの危険な集団、シャドウガーデンの存在を本部に報告することが最優先事項であると判断した。

 だが目の前の男が先程地下道で見せた芸当、アーティファクトによる突然の死を見舞われるワケにはいかない。先程天井を破壊する動作を見るに、あのアーティファクトは銃と同じ使い方をすることは見て学んだ。

 

 もっと冷静に考えることが出来ていれば、放たれた弾丸が壁や床を通じて跳ね返った弾丸、()()()()()()()であったことに気付けたのかもしれない。だが銃が弱いこの世界でその発想に至ることができるのはオルバの目の前の男を除いたら、一人しかいないだろう。

 

 

「来いよ、幹部クラスなんだろ?少しは楽しませてくれ」

 

 

 男はオルバを誘うように煽る。その言葉を皮切りにオルバは強く踏み込み、男に斬りかかった。それを男は左手で握る黒鉄のアーティファクトで防ぎ、オルバの腹を蹴って踏み込んだ距離以上に飛ばす。

 自身の剣を受け止められた力と今の蹴りの威力で格上なんて言葉では言い表せない力量差をオルバはその身で感じる。同時に、逃亡の選択肢に間違いは無いと確信した。

 

 

C'mon, wimp(来いよノロマ). Let's rock(楽しもうぜ)!」

 

 紅いコートの男、ドレッドは仮面越しにニヒルな笑みを浮かべて戦闘の開始を高らかに合図した。

 

 

 

 




自由に跳弾当てるのってロマンあるよね。
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