ガンスリンガーになりたくて!   作:御影玲夜

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あれよあれよでお気に入り登録人数300人を超えました。またいつも誤字報告や感想もありがとうございます。誤字に関しては読み返しても自分じゃ気付かないことも多々ありますので本当に助かります。今後も当作品をよろしくお願いします。


6話 屍の山の頂

 

 

 

 七陰のみんなとの別れから年月が流れて早二年。俺とシドはいつの間にやら王都の学園へ通う15歳になっていた。歳を重ねると時間の流れが早く感じるとはよく言うが、転生なんてしているせいか余計に早く感じてしまい何となく老いたような気もしてしまう。

 学園に通えるのか問題の方も意外と何とかなり、変な動きをしなくて済んだのは幸いだ。今の俺は領民のいない猿山の頂点的な扱いらしい。

 

 一緒の列車に乗って王都へ向かうことになったため前日の夜は少し早めに寝ようとしたのだが、未だに俺の家に居座っていたイータがめっちゃ駄々を捏ねたせいで若干睡眠不足気味だ。ちなみにゼータの方は1年程前に二度目のお別れを済ませ、七陰の当初の予定通り世界の何処かへと旅立った。

 

「ふぁぁ…」

「眠そうだねレイト」

「イータが寝かせてくれなくてな…」

「昨夜はお楽しみでしたねってやつ?」

「バカ言え…。日の出近くまで実験付き合ってから……ふぁ…寝かしつけただけだ…」

「相変わらず仲良いよねぇキミたち」

 

 昨日だけで何本薬飲んだかもう覚えてない。俺がいなくなるのが寂しいのか体のいい実験台がいなくなるのが寂しいのかは分からないが、三年もすれば戻るんだから耐えてくれと思った。刺激するといけないので思っただけで口にはしてないが、代償として持っていくつもりだった愛用の紅いコートも奪われてしまったので王都でコートを新調しないといけなくなったから困ったモノだ。

 

 現在俺とシドは列車に乗って王都へと向かっている。前世みたいな馴染み深い交通機関とは違って貴族しか乗らないような高級な乗り物であるため乗客もそう多くない。仮眠でもとろうかと思ったがロングスリーパーなので今寝たらシドに叩かれても起きられる自信がないため頑張って起きている。こんなことになるならイータから最後にエナドリ的な薬もらっておけばよかったな。

 

「眠そうなトコ悪いんだけどちょっと聞いていい?」

 

 向かい側に座っているシドが雑談がてら口を開く。何か話してないと今にも寝落ちしそうだったのでシドの問いかけが今はすごく有り難かった。

 

「眠いから手短にな」

「キミのことだから荷物なんて着替えだけだと思うんだけど、銃は?」

「ああ、それならここに入れてある」

 

 俺の隣に置いておいたコンパクトなカバンを膝に置いて中を見せた。そこには最低限の着替えと一緒に愛用している罪と罰(クライム&パニッシュメント)が収められている。旅の荷物としては少なすぎるかもしれないが、まぁ三年しか過ごさないんだからこれくらいで十分だろう。

 

「それだけ?キミのことだから全部乗せかってくらいに持ってくると思ってたのに」

「入学初日から大量の銃火器持ち歩いてるのを見つかってみろ。一発で退学させられるかもだぞ」

「スライムスーツは?」

「インナーはスライムスーツ。それ以外は学園指定品」

「真面目だねぇ」

 

 魔剣士学園ではあるが、俺はガンスリンガーだ。この二年で剣術はどうにか自分なりの技を確立できたのでそこまで浮くことはないだろうが、やはり俺はガンスリンガーなのだ。風呂場とベッドの上以外で銃を手放すつもりなんてサラサラ無い。

 とはいえ、学園に通うと言うことは今まで使っていた工房を使うことができなくなったので向こうでもどうにか土地を手に入れて新たな工房を手に入れないとすぐにガス欠になるだろう。今手元にあるマガジンが尽きるよりも先に見繕わないといけないのだ。銃を作るのも、弾を作るのも、手作業だと本当に疲れるんだよ。

 

「あと今日朝合流した時から気になって仕方なかったんだけどさ」

 

 シドが俺の隣を指差して尋ねる。指の向けられた先を見ると、俺の荷物が入ったカバンの横に更に置いてある荷物が置かれていた。

 

「そのデカいの、何?」

「何って、見りゃ分かんだろ」

 

 指差された荷物は俺の身長よりも少し短いくらいだろうか。言うほどデカくはないと思うが、荷物の封を外して中身を見せてやった。

 

「俺の剣」

「デカくない??何センチあんのそれ??」

「この状態で160近くだっけかな?展開した時の長さ測ってないからあれだけど」

「展開すんの??」

「折りたたみ式なんだよ」

「レイトそれ剣じゃないよ。剣と呼ぶにはあまりにも大きすぎだよ」

「分厚くはねぇぞ。重いし俺の身長より長いけど」

 

 確かにデザインは少し無骨すぎるかもしれないが、色々考えた末に閃いた至高の逸品だ。これを見たイータは『???????』って顔をしていたが、俺向きの最高の剣だ。同じような悩みを抱えてる奴が使えばみんなきっと気に入るだろうとも思えるくらいには素晴らしい武器だ。

 小回りは効かないし、機敏には動かせない。だがコイツは他の剣と比べても、デカくてゴツくて頑丈だ。ロマンがあるだろう?

 

「ちょっと前から剣の練習風景見せてくれなくなったけど、前に言ってた秘策ってそれのことだったりする?なんと言うか、レイトってほんっと変なトコが根本的にズレてるよね…」

「凡人の剣なんてこんなんで良いんだよ。努力だけじゃなくて、創意工夫とその他諸々も重ねないと勿体ないからな」

「その他諸々って?」

「それはまた後々」

 

 重要な部分をはぐらかして質疑応答を無理やり終わらせた。別に話してもいいのだが、実際に見せた方が分かりやすいと思うし、この剣を作った理由も理解できるだろう。まぁこれを学園で使っていいのかは分からないが、ダメならダメでその時どうにかしよう。

 

 剣の封を解いたからか、隣の席に座ってる乗客が俺の剣をチラチラと見ているのが目に映った。そういえば、列車に乗る前も色んな人がチラ見やガン見、小さい子供は指差して親にあれが何かと尋ねていたな。剣を持ち歩くのなんてそんなに珍しいことじゃあないだろうに。いつの世もロマン溢れる武器と言うのは民衆の目を引くと言うことなんだろうか。存在感があるのも考えモノだな。存在感…存在………

 

「…コイツの名前は『存在(イグジスト)』にするか」

「他の銃もだけど、レイトのネーミングセンスって僕のこととやかく言えないくらいには患ってるよね」

 

 

______________________________

 

 

 

 ミドガル魔剣士学園、大陸最高峰の学園であり、国内外問わず将来有望な魔剣士が集う名前の通り魔剣士のためにある学園だ。同時に、貴族のための学園でもあるので剣術や学問以外にも作法の授業もある。学園は全寮制なので貴族の子息息女を安心して送り出せるように警備も万全で、一番驚いたのが銃を装備した兵士も配置されていることだ。単発式でライフリングすら施されてないアンティーク品なのが銃の立場の低さを如実に表しているのが悲しいところ。

 

 入学してからそれはそれは色んなことがあった。王都の街は俺やシドが暮らしていたような村などでは比較することすら烏滸がましいと感じるくらいに大きな街並みに圧巻され、人の多さに驚愕し、年甲斐なく興奮してしまった。15歳だけど。

 作るのに苦労した硝酸が普通に手に入ったり、火薬も簡単に買える。大量購入しても何も言われないのがありがたい。剣を持っているのでこんなんで遊んでないで鍛えろみたいな目線で見られるが、気にする必要もないのでガン無視だ。目に見えるモノだけが真実だと思い込むなよと言ってやりたい。

 

 学園生活は当初心配していた魔剣士の中に馴染めるのか問題はあったが、今のところ楽しい日々を過ごせている。問題の種の具現化のような存在であるシドといつも一緒にいるが、シドのモブ力?のおかげで貴族間の派閥争いみたいなのにも巻き込まれないし、何よりモブとして背景に溶け込む能力のおかげでめちゃくちゃ平穏な日々を過ごせる。主人公探しやそのライバル探しなど具体的な特徴が無いモノを探す手伝いをしなきゃいけない以外は珍しく手放しで褒められる。

 平均的な学力で剣術は苦手、デカい剣をたまに持ち出すけど使ったところは数回しか見たことない奴。それが現状の俺の評価だった。まぁガンスリンガーじゃない俺の評価なんて正直どうでもいいんだが。

 一方シドの方も俺と似たような評価で、名前を聞いても「あれ、そんな奴いたっけ?」みたいな反応をされる程度の評価なので擬態はバッチリのようだ。

 

 新生活が始まってから二ヶ月くらい経過した頃だろうか。ある日俺はシドが友達との罰ゲームで学園の大物に告白をすることになったのを本人から聞いた。トイレ行ってる間に何かしらの勝負が行われていたようで、何をしたのかは知らないが、コイツのことだからわざと負けて自分から罰ゲーム受けに行ったんだろうなってことしか分からない。

 告白して振られる、そんな目に遭うのは確かに如何にもモブと言った感じだが、まさか自分から率先して振られに行く奴がこの世に存在いるとは思わなんだ。恐るべし、モブ力。何なんだよモブ力って。

 相手の名前を聞いて更に驚いたのだが、今日シドが告る相手の名は『アレクシア・ミドガル』。学園と同じ名前、つまるところ王女様だ。学園のアイドル云々なんて可愛らしいモンじゃなく、振られるために告ったなんてのがバレたら最悪不敬罪で首チョンパだぞ。

 名前こそ知っていたが興味こそなかったので聞いてみたところ、品行方正で眉目秀麗、文武両道とシドが好きそうな要素のてんこ盛りだった。姉がいるらしいので第二王女だが、これだけの要素が集まってたらアイツのことだから「おいあれ主人公かヒロインじゃね?」みたいな感じで目を付けてたりするんだろうなぁ…。余談だがアレクシア王女にはこの二ヶ月間に既に何人もの命知らずが告白してるらしく、断った数は百を超えるらしい。バカしかいないのかこの学園。

 

 

 その日の放課後、シドは早速アレクシア王女を学園の屋上に呼び出した。いつも思うがアイツ行動力の化身かよ。

 近くに植えてあった草陰に隠れて挙動不審なシドを遠目に見守る。実際のトコめっちゃ冷静なんだろうが、アイツの事を知らない奴から見たらめっちゃ緊張してるように見えるんだろうな。アイツの演技力には毎度驚かされる。

 

「あ、来た」

 

 階段を登る足音が聞こえたので息を殺してシドを見守る。姿を表した彼女を見て、シドは更に挙動不審になりながら深呼吸をして息を整える演技をしながらアレクシア王女と一定の距離を保ちながら対面した。

 

 白銀の髪に赤い瞳、なんかもう如何にもって感じだ。100人中100人が美人って言うんじゃないだろうか。七陰のみんなのが可愛いけど。若干の圧を発しながら何も言わずにシドを見るアレクシア王女、美人なのは間違いないだろうが、まぁシドのことだからそれ以外ビジュアルの感想は無いだろう。七陰のみんなのが可愛いし。

 

 

「ア、ア、ア……アレクシアおうにょ…!」

 

 瞬時にインナーの内側を刃物に変えて突き刺し笑いを堪えた。不意打ちが過ぎる。こういうことすんなら事前に言っておいてほしいと愚痴が生まれるくらいにシドの演技は完璧だった。あと一瞬でも遅れていたら高らかに笑って隠れているのがバレていただろう。

 

「す、すす好きです…!ぼぼぼぼくとぅぉお!?付き合ってください!」

 

 更に刃物を増やして身体に深く突き刺す。ダメだ面白すぎる。マネージャーやるから陰の実力者やりながら俳優になってほしい。絶対売れる。

 全力で笑いを堪えていると、頭を下げながら手を伸ばしているシドの手をアレクシア王女が取った。そして先程まで無言だったアレクシア王女が口を開き、シドに無表情のまま返事をする。

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 ……………………………ん?

 今なんかおかしな返事が聞こえた気がする。お断りしますって言ったよな?断られたんだよな?耳を澄まして二人の会話を真剣に聞き取る。

 

 

「あなたのような人を待っていたの。よろしくね」

 

 

 どうやら聞き間違いではないようだ。なんかOK貰っちゃってる。アドリブが苦手な当の本人もめっちゃテンパってる。とりあえず一緒に帰ろうとか言ってその場をどうにかしたが、なんと言うかとんでもない事態になってしまった。

 冷静になっても理解ができないが、一旦今分かっていることを纏めよう。シドの告白が成功し、ミドガルの第二王女が彼女になった。………宇宙の法則が乱れでもしたのだろうか。モブらしく散るつもりだったシドの思惑は見事に崩れ、隠しルートに移動してしまったようだ。

 

「学生とは言え一国の王女様だぞ?アイツ絶対なんか面倒なことに巻き込まれただろこれ…」

 

 誰もいなくなった屋上で一人、誰に届くワケでもない愚痴をぽつりと零すのだった。ひとまず寮に戻ったらどうするつもりなのかをシドには尋ねてから明日以降の動向を考えるとしよう。

 

 

 

 




本当は今回の話で収めたかったのですが、剣の使い方はまた次回。ちなみにモチーフにした武器は対艦刀です。

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