黒閃を狙って出せる呪術師   作:黒い閃光ってカッコいいよね

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キッショ、なんで続いてんだよ(頭パカー)


黒閃ラッシュ

 

 特級呪術師である九十九由紀はそこらを愛車でぶらぶらしていた。一応、見かけた呪霊は祓ってはいるが、現役の呪術師がその様を見れば昨今の人手不足の観点から彼女を非難したい衝動に駆られること間違いなしだろう。

 ご自慢のバイクに跨りながら風を感じていると、ふと、向こうで呪力が蠢いているのを九十九は感じた。

 九十九はそちらの方へ視線を向けてみると、遠くの方の廃病院が目に入った。恐らく、この呪力の出どころはあの廃病院からだ。

 

 (あそこで呪力が揺らいでいる……いや、衝突している?)

 

 考えられるのは呪術師が絶賛呪霊と交戦中か、それか呪霊同士で小競り合いでも起こしているのか、なんにせよ、重要なことはそこではない。肝心なのはその呪力量である。

 

 (呪霊側か、呪術師側か、どちらかの呪力量は特級に相当するねこりゃ。もう片方も一級レベル。でも、帳が降ろされてないし、呪霊同士のいざこざかな?)

 

 九十九はバイクの進路を変え、廃病院へ向かうことにした。もし呪霊同士が戦っているのであれば漁夫の利を狙って効率良く祓える。ここまで大胆に戦っているのだから放っておけばそのうち誰かが祓ってくれるだろうが、彼女は呪術師だ、祓えるのなら自分で祓う。

 

 「ふむ」

 

 九十九は廃病院の門の前に立ち、辺りを見渡す。ざっと見たところ、罠は無いようだ。ひとまずの安全を確認した九十九は帳を下ろし、廃病院の中へと目をやる。

 

 「ずいぶんド派手にやってるね」

 

 廃病院の中から聞こえてくる物音に九十九はそう呟く。轟音。そう表現するのが良いだろう。腹の底まで響くようだ。

 しかし、病院の奥から醸し出される呪力量からすると少し控えめな印象を受ける。となると、お互い生まれたてか、本気でないか、呪力出力は控えめと見た。つまるところ、会ってみなければ分からない。

 

 さて、突入しようかと歩を進めた瞬間、病院の天井が突き破られた。

 

 「!」

 

 天井から飛び出たのは無数の呪霊と人、それも子供だ。

 無数の呪霊の中には一際目立つものがおり、おそらく、その周りにいる何十もの呪霊たちを操っているのだろう。呪霊たちの見た目が蜂に酷似していることから、あのボス格の呪霊はいわば女王蜂。

 一方、子供の方はというと、見たところ、呪霊でも何でもないただの少女のようだ。その少女のほうに無数の蜂の呪霊が迫っていく。

 

 まずい。九十九はそう思い、少女を助けようとその時。

 

 黒い閃光が走った。

 

 何事かと目を凝らしてみれば、あの少女が黒閃を打ったことが分かった。それだけでも驚愕ものだが、驚きはまだまだ続く。

 

 「え?」

 

 九十九の目の前で起きる、()()()()()()()。それも、2回や3回ではない。5回、6回…10回。少女の拳が、脚が、蜂の呪霊に当たるたびに黒閃が起きていた。

 馬鹿な、と九十九は思う。黒閃を狙って出せる術師は存在しない。それは呪術界においての常識である。確かに、一度黒閃を決めるとゾーンに入り、連続で黒閃を決めることがある。しかしそれでもせいぜい2,3回程度。10以上も連続して出すことなど不可能だ。

 しかし、目の前の少女はもう20回以上は黒い花火を散らしている。

 

 「ありえない…。いや、待て。聞いたことがある。黒閃を自由に打ちまくる術師の噂を。ホラ話だと思ってたけどまさか……確か噂の出どころもこの近辺だった気がするし、ほぼ確定かな」

 

 九十九がそう呟いている合間にも、少女は黒閃を打っていた。

 蜂の呪霊はその黒閃の餌食となり、砕ける。それと同時に、少女は空中で軌道を変えた。どうやら黒閃を放つと同時に蜂の呪霊を踏み台にしたらしい。黒閃によって衝撃が2.5乗されているおかげか、そのスピードは速く、あっという間に女王蜂のもとに着いてしまった。

 

 「黒ラッシュ!!」

 

 ひどい技名と共に女王蜂に拳の雨が降り注ぐ。当然の如く、その拳の全てが黒閃を発生させ、瞬く間に女王蜂は粉々に弾け飛んだ。それと同時に、式神だったらしい周りの蜂たちが消えていく。

 少女は九十九の前に降り立ち、九十九に背を向けながら声高らかに叫んだ。

 

 「よし!!」

 

 「君、ちょっといいかな」

 

 「ぎゃ!?…黒パンチ!!」

 

 「おっと危ない!」

 

 九十九の声掛けに驚いたのか振り向きざまに拳を振りぬいてきた。九十九はこれを避け、少女から距離を取った。

 少女はここで今、九十九の顔を見たらしく困惑した様子で言った。

 

 「おねえさん…?」

 

 「うん。おねえさんだよ。君は何をしてるんだい?」

 

 少女―――倉山クロは突然現れた九十九を怪しんだ。なんせ、今の時刻は夜の11時。こんな時間帯にいる大人など怪しいに決まっているのである。

 ちなみに、クロ自身はというと、両親に秘密で外に出ていた。理由は黒閃をするためである。呪霊に黒閃を打ったあの日、黒い閃光が走ると同時に呪霊がバラバラになるのは爽快感があった。ただでさえ決めるのが気持ちいい黒閃に爽快感が追加されるのだ。何度でも味わいたい。言ってしまえば、クロという少女は黒閃ジャンキーになっていた。

 今だって彼女のボルテージは最高潮。彼女に語彙があれば、天上天下唯我独尊と言ってしまいそうである。

 

 「おねえさん不審者?」

 

 「えーひどいなー。そんなわけないじゃん」

 

 「いや、不審者だね!黒パンチ!!」

 

 「おっと!乱暴だね」

 

 九十九はクロの拳を避け、その手を掴む。すかさずクロは九十九の足を蹴り、黒閃。最近”正当防衛”という言葉を覚えたクロの蹴りはすさまじい威力となるが、九十九はすでに呪力でガードしておりダメージは最小限に抑えられた。

 放せ放せと暴れるクロに九十九は穏やかに言う。

 

 「大丈夫、心配しないで。ほら、私は君と同じだよ?」

 

 そう言って九十九は手に呪力を纏わせ、クロに見せつける。クロはそれを見てハッとした表情を見せた。

 

 「おねえさんもそれを使えるの?」

 

 「そうだよ。これのこと呪力って言うんだけど、知ってた?」

 

 「知らなかった……」

 

 「一応聞くけど黒閃は?」

 

 「なにそれ?」

 

 「……なるほど」

 

 クロの回答を聞いて、九十九は思案する。

 彼女に呪術の知識は無し。彼女の見た目は中学生くらいで、呪術師の家系出身だとそれくらいの歳であれば呪術関連の知識は親などから教えられているはず。だから、おそらく彼女は一般家庭出身だ。そして彼女が持つこの特級レベルの呪力量に、呪術史上初の黒閃の才能。

 このまま放置してしまえば、高い確率で呪詛師になってしまうだろう。(というか、今もすぐに殴り掛かってくるから片足突っ込んでる)

 ……ここは私が導いてやるべきだろう。

 

 「君の名前はなんだい?」

 

 「……倉山クロだよ」

 

 「おーけークロちゃん。―――――私の弟子になってみる気はないかい?」

 

 クロはしばらく考えた後、頭を縦に振った。

 

 

 

  




一般家庭出身主人公を呪術界に引き込む時に便利な女、九十九由基。
主人公の生得術式は次回あたりにやります。
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