遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった 作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。
「──やっと分かった、あの子の
ターンを返し、どう来るかと身構える中。確かな怒気を湛えた精霊に対し、これまで沈黙を貫いていたトアが呟いた。
「
『青』に染まったデュエルフィールド
海の生物にも似た取り憑き方
汝の
名が呼ばれた瞬間、ブワリと広がる圧倒的な存在感。精霊憑きの背後に、半透明で揺らぐソレが現れた。
青い水晶で形作られた巨大な虫、だろうか?
全身がそれぞれ針金が組み合わさったような細いシルエットで、3対6本の脚で立ち、中心に腕を持った人型が鎮座するアラクネにも似たフォルム。だがその中でも最も目を引くのは、背後に聳り立つ槍の穂先を持った尾。
故にソレを一言で表すのであれば──やはり、蠍なのだろう。
『ようやく気がついたか、元契約者。
だがもう遅い、我が玉体の顕現。その準備は既に整った!
相手の手札はトップ引きの1枚のみ。
場に勇者トークンは居れど、[
なのにそう言い切るということは、必然──
「──スキルか!」
『ご明察、元契約者より頭は回るようだ!』
こちらのセットしてあるスキル【オープン・アイズ】は使えない。
発動条件の問題ではなく、使う意味としての問題で。こうなるなら汎用の【アンチスキル】でも積んでくるべきだった。
『我は手札より[強欲で金満な壺]を発動!』
影帽子で止めるか? 今なら3枚無効、展開を止められるが……いや。ダメだ。スキルが未知数にすぎる。
ここでモンスターを除去され切った時の壁兼、相手のエースを封殺する札の1つを使わされるのは痛い。キャンサードのような破滅的攻撃力の存在が出てくる可能性が高い以上、ここは一旦温存が丸い!
『Exデッキのカードを6枚裏側で除外し、デッキからカードを2枚ドローする』
「チェーンはない」
2枚分のアドは取られてしまったが、そこはギリギリ許容範囲内。追加の1枚引きで全除去でも引かれない限りはいける。
『続けて[運命の旅路]の効果を発動。デッキから[
そして勇者トークンが
が、こちらが温存しているのは向こうも分かっている話。
影帽子による無効化と壁の展開、このタイミングで使わされにきた。
『そのまま[勇者トークン]へ[騎竜ドラコバック]を装備する』
「チェーンして
『ならばそれにチェーンして[外法の騎士]の効果を発動! 対象は[幻惑の隠者騎士バジャーダレス]と[影法師トップハットヘア]の2体だ!』
やはり最初の時点で旅路・禁呪を無効化して、うち1枚を割った方が良かったか? いやでも、結局それでも外法の騎士は通るか。厄介な。
『逆順処理だ。
外法の騎士「フン……」
ATK2000
「影帽子の効果、このカードを守備表示で特殊召喚する」
影帽子「ははっ!」
DEF600
『最後の処理としてドラコバックが勇者へ装備される』
勇者トークンwith騎竜ドラコバック
DEF2000
こちらの手札にあるカルマギアの発動条件はこれで満たした。まだ見えない相手の手札1枚が怖いが、ここは使って防御を固め──
「ダメだよ遊陽、それはまだ使っちゃダメ」
──デュエルディスクへ置こうとしたカードを、そっとトアが引き留めた。
「あの子がスコル・スピアなら、まだ使うのは早いよ。今使ったら多分、遊陽の勝ち目はゼロになる」
「信じていいんだな?」
「信じて」
………
「OK、トアを信じる」
相手の正体である天蠍神騎スコル・スピアがどんなカードで、どんな効果を持っているのか俺は知らない。だがそれを知っているトアがダメだと言うのなら、きっと駄目なのだろう。
「効果の処理後[影帽子]の特殊召喚成功時の効果を発動!
自分フィールドの幻想魔族モンスターの数まで、相手フィールドの表側のカード効果をターン終了時まで無効にする。俺が対象にするのは[騎竜ドラゴパック]!」
『おっと[外法の騎士]が回収出来なくなってしまったか』
「元から回収する気なんてないだろうに」
そうでなければ、最初から守備表示で特殊召喚している筈だ。
『折角の決闘なのだ、楽しまなければ損だろう? それに……
スコル・スピアの掲げた腕が赤光に包まれる。スキル名の通り、それは一番星の輝きか。けれど既に奴のExデッキは0枚。ここから大型モンスターの展開なんて、いや、まさか!?
『そのまさかだ。Exデッキが0枚の場合、EXデッキに[天蠍神騎スコル・スピア
スキル【アンタレス・ブライト】
自分のEXデッキが0枚の場合、任意のタイミングで発動可能。
メインデッキから装備魔法を1枚手札に加え、EXデッキに[天蠍神騎スコル・スピアX]をデッキ外から1枚追加する。
輝きはそのまま収束し、片方は奴のExデッキへ。もう片方はメインデッキへと宿り、手札へと加わっていく。
『
つまりこれで、準備は整ったということか!
『現れよ、星空に描くサーキット!
アローヘッド確認! 召喚条件はモンスター2体以上!』
緩すぎる条件に従って、サーキットにモンスターが吸い込まれていく。勇者トークン、トップハットヘア、そしてバジャーダレス。リンクマーカーが示す数字は4、向きは十字!
「鋭き尾に毒持つ甲殻の王者!
天に輝く星座よりいざ招かん、12宮Xレアの輝きを!」
サーキットを潜り、怪物が実体を取り戻していく。
「サーキットコンバイン、現れろリンク4!
天蠍神騎スコル・スピアX、リンク召喚!」
天蠍神騎スコル・スピアX「キシャァァァッ!」
ATK2400
アクセスコードより100高い素の打点。感じる圧は間違いなくフィニッシャーのそれ!
だが召喚時効果が存在しない?
嫌な予感しかしない。
そんな未知なるカードにフィニッシャー。多少狡さを感じる呼び出し方も気にならない。嗚呼、闇のゲームだというのに。思わず、ニヤけてしまう。
『さらに呪いの装備、[天蠍神槍スコルランス]を我に
加えて尾の針を強化するように発生した紫の結晶槍が、全身を透き通った青から紫に染め上げた。トア曰く、カードの精霊が汚染されている原因。数日前に見たカニキリ同様、怖気が走る気配をしている。
『続けて手札より[水月のアデュラリア]を特殊召喚! このカードは
水月のアデュラリア「はぁっ!」
ATK1000→3400
『[アデュラリア]の効果を発動! 自分の場に表側で存在する魔法・罠を2枚、禁呪と旅路を墓地へ送ることで、デッキからレベル4以下のモンスター[聖殿の水遣い]を墓地へ送る』
こちらの場にいるのは、戦闘破壊するために送りつけられた外法の騎士と戦闘破壊はされない影帽子の2体。だからアデュラリアの高打点が惜しくないのは理解できるが。
『墓地の水遣いの効果、自身を除外することでデッキから[アラメシアの儀]を手札に加え、そのまま発動! 三度蘇れ[勇者トークン]!』
狙いが見えない。
新たに旅路を持ってくることもなし、打点の下がったアデュラリアと勇者トークンが横並びしただけ。EXデッキは今度こそ0であるし、こんな動きをする理由なんて……
まさかと思いディスクを操作。スコルスピアX自体の効果は別世界の言語のようで読めないが、それにより発生している変化はわかる。勇者トークンと水月のアデュラリア、その2体に共通して追加されている効果。それが──!
『そして[水月のアデュラリア][勇者トークン]それぞれを[天蠍神騎スコル・スピアX]へ
「なっ──ッ!?」
天蠍神騎スコル・スピアX
ATK2400→3400→5400
レベル -- →5→9
2体のモンスターが、結晶の中に取り込まれるようにして消える。直後リンクモンスターにレベルが生えるという異常自体に、トアが言葉を失ったようにフリーズした。
『我が第1の効果により、
それは間違いなく、デュエル・モンスターズでは見たことも聞いたこともない効果だった。
そして軽く[ユニオン]と言っているが、それは即ち自身の特殊召喚効果と、装備モンスターの戦闘・効果破壊耐性を内蔵しているのと同義。つまり天蠍神騎スコル・スピアXとは……
「自らのモンスターを取り込んで要塞と化す、高打点のフィニッシャーカード!」
『そうだ。加えて我は[天蠍神槍スコルランス]の効果により、我自身のレベル・ランク・リンク以下の効果を受けない耐性を得ている』
アクセスコードが攻めに特化しているなら、こちらは手間も多いが守りの特化型。決まってしまえば厄介極まりない存在が顕現していた。
『更に我の第3の効果を発動! ターンに1度自分の墓地のカード1枚を除外することで、このカードのレベル・ランク・リンク数を+10する』
天蠍神騎スコル・スピアX「キシャァァァッ!」
レベル 9 →19
ランク -- →10
リンク4 →8(MAX)
「レベル19!? モンスターのレベルは最大12じゃ」
「いや」
何でも知っていそうなトアがこんなに驚いているのは、なんとも知識がチグハグというか何というか。実戦しか、しかも強力なデッキとだけ戦ってきたようで面白さがある。
「テーマで言えばフォーチュン・レディや
エクシーズのランクにしてもそうだ。現状のカードプールにおけるMAXは
『そうだ、レベル19という圧倒的な力の前にひれ伏すがいい。バトルフェイズ!』
裁定を話している間に、遂にバトルフェイズへと突入されてしまった。
もうこちら側の動けるカードは手札の[カルマギア]1枚だけ。さっき意図的な飛ばされたスコルスピアの第2効果、その破壊力次第ではまずい!
『[天蠍神騎スコル・スピアX]で[外法の騎士]を攻撃、そしてこの瞬間、我が持つ第2の効果を発動!』
きた!
『レベル・ランク・リンク数がこのカード以下になるよう相手フィールドのモンスターを選び破壊する。破壊するのは……影帽子1体のみだ』
「なにっ!?」
『未だ使われぬ貴様のスキル、あるいは先ほど使いかけた手札のカード。それが[女教皇の錫杖]のような能力であった場合、興醒めだからな。確実な勝ちを拾わせて貰う』
どういうこと、だ?
スコルスピアの攻撃力は5400で、外法の騎士こ攻撃力は2000。よって発生するダメージは3400だが、俺のLPは3500。100ポイントだが、それでも残る計算だ。なのに。
「そうだ戦闘ダメージ! あたし達はライフで受ける! 遊陽は対ショック体勢!」
疑問に答えが出る前に、トアが紫のバリアを展開。こちらへ向けて突進してくるスコルスピアに踏み潰され、影帽子が消滅する。そうして振りかぶられた、巨大な紫槍と化した尾が振り下ろされた。
『喰らうがいい、スコーピオン・パイル!』
「──ッ!!? ガッ、ぁッ……!????」
紙でも破るように外法の騎士を貫いた大質量の一撃。トアが展開したバリアのお陰で直撃こそしなかったが、それでも。全身を感じたことのない衝撃が貫いた。
遊陽 LP3500→100
バチバチと視界が明滅し、これまで保っていた身体のバランスも崩れてしまう。
「──! ──!!」
何か叫んでいるトアの言葉も聞こえない。
そんな状態になってやっと理解した。
先ほどスコルスピアが宣言した確実な勝利とは即ち、LPを削り切ることで得られるデュエル・モンスターズの勝利ではない。
狙っていたのは、大ダメージとエフェクトによりクラッシュを誘発させ、本来は盛り上がり所を演出するスピード/ライディング・デュエルに於ける戦術的勝利。
全くプロの身体を乗っ取っているだけのことはある。
舞い上がる青い粉塵と爆炎に包まれるなか、最早クラッシュは止められそうもなく。
『お兄ちゃん! もういい、それ以上は死んじゃうよ!』
『まだ、だ……まだ、ライフは、残っている!!』
完全に気を失う直前、あの日の光景がフラッシュバックした。
戦闘だけでなく効果破壊も乱発され、必要以上に固めた防御ごと破壊されていく盤面。フィールドを侵略するように轟く、車かバイクの様な排気音。
『予言をしよう、想間 遊陽』
『──ッ!!』
『貴様は、何も守れない。これまでも、これからも、失い続けることでしか貴様は進むことが出来ないだろう』
ふざけるな。冗談じゃない。その██顔を歪ませてやる。
そう決意した闇色の炎は、今でも胸の内で燻っている。
だから。
「甘えてんじゃねぇぞ想間 遊陽」
朝陽を取り戻すと。これ以上誰も失わせないと決めたのだ。
なら、こんな相手に
現実時間で換算して、おそらく数秒。粉塵も晴れぬ大クラッシュの最中、片腕を壁に叩きつけ無理やり制動。激痛で意識を繋ぎ止め、回転運動を急ブレーキと体幹で押さえ込む。
「自分の闇属性モンスターが相手によってフィールドから離れたことで、この瞬間! 手札より[カルマギア]を発動!」
停止の直後に加速を全開にして舞い上がった粉塵を突破。驚愕に目を見開くスコルスピアを前に、カードをディスクに叩きつけた。
『バカな、何故生きている!? 常人であれば3度は意識を失う程のダメージだぞ!』
「効くか、俺はお兄ちゃんだぞッ!」
嘘だ、ほんとはめっちゃ痛い。
気持ちよくトリック決めようとして、やべータイプのクラッシュした時より痛い。長男じゃなきゃきっと耐えられなかった。
「効果により手札か墓地に存在するレベル4以下か7以上の闇属性モンスターを1体特殊召喚する。来い、[ナイトメア・ビジョンズ]!」
ナイトメア・ビジョンズ DEF0
だが痛みに耐えるだけで勝てるなら、それだけで十分に価値がある。ライフポイントなんて、1ポイントでも残っていれば勝てるのだから。
「ゆ、遊陽! 血! すごい勢いで血が! 腕も変な方向に曲がって!」
「安心してくれトア。証明してみせるから、俺が、俺だけの力で精霊くらい倒せるって。トアが一方的に力を貸すだけの存在じゃないって」
そして、
「12枚の精霊が宿ったカード、その全てを集めても……正気を失わずに、願いを叶えられることを!」
『ッ、だがその野望はここで阻む!
我は[天蠍神槍スコルランス]の効果を発動! 装備モンスターが攻撃したダメージステップ終了後に相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。装備モンスターは続けて攻撃でき──何故発動できない!?』
「タイミングを逃してんだよ! 優先権があったタイミングで発動できず、俺のカルマギアによる処理が割り込んだ以上、今は既にダメージステップ終了後ではなく、次のアタックステップ開始前!」
『なんだと!?』
事実はどうあれ、デュエル・ディスクの判定は絶対だ。これが覆ることはない。
「ターンエンドだ虫けら。ターンエンドしろ!」
『ぐっ……クソ! ターン、エンドだ』
Prayer:勇 手札:0
LP:1800【Turn4】
①:水月のアデュラリア
②:天蠍神槍スコルランス
③:勇者トークン
❷:天蠍神騎スコル・スピアX
⑨:ナイトメア・ビジョンズ
⑩:旅団の摩天楼
LP:100
Prayer:遊陽 手札:0
「俺のターン!」
回ってきた手番、盤面は絶望的。
互いに墓地の展開札はなし、除外からも動けない。
全ては、このドローにかかっている。
でも。
「負ける気はしねぇなぁ! ドロー!」
勢いよくドローしたカードは──
わたし、魔女のキキ!
こっちはよりにもよってエースがバトスピとの相性悪くて翻訳の危機!
『幻惑の魔術師ナイトメア・マジシャン』
スピリット
7(紫3白1極1)/ 紫 / 占征・冥主
〈1〉Lv1 5000〈2〉Lv2 8000
〈5〉Lv3 11000
●Lv1・Lv2・Lv3【幻想】
このスピリットがブロックされた時、互いのスピリット/アルティメットはBP比べで破壊されない。
●Lv1・Lv2・Lv3『自分のアタックステップ』
【幻想】を持つ自分のスピリットがアタックしたとき、相手のスピリットかネクサスのコア1個をリザーブに置く。
●Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
このスピリットをブロックしたスピリット1体を、回復させ自分のフィールドに移動させる。移動したスピリットは、自分のスピリットとして使用できる。このとき、移動させたスピリット上のコアは持ち主のものとして扱い、新たにコアを置けず、取り除くこともできない。
サラッと登場する謎のオリジナルカード(ナイトメア・ヴィジョンズ等)は
-
あり
-
なし
-
わたしは一向に構わんッ!