遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった 作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。
デモンスミスとかいうティアラ並みの冬が来そうなので更新です(今回は3日3回)
第12話 多分5話アバンと前半くらいの話
小さな頃から私の足は、骨と肉を皮で包んだ名ばかりの棒切れだった。
まともに動いた試しは1度としてなく、けれど感覚がないという訳でもなく、冷えるし蒸れるし、傷付けば血だって流れる。みんなと違う、使えないゴミ。
そんな物が生えていた代わりに私には、昔から普通の人には見えないモノが見えた。
ジコバイト、プチリュウ、稲荷火、デーモン・イーター……後にカードの精霊だと知るみんなが、幼い私にとって唯一の遊び相手だった。
さてここで問題だ。
いつも車椅子に乗っていて、見えないものといつも戯れている、身体の弱い女の子。
そんな存在が小学生という集団の中にいた場合、一体どう扱われるだろうか?
無論、言わずもがな。
差別と暴力、暴言に失せ物、強制デュエルに無視と悪意。私のオリジンに刻まれたのは、そんな人間の悪性ばかりだった。
幸いにもデュエルの腕は確かだったおかげで、最悪の事態を迎えることはなかったけど……ウィン姉さんやヒータの姐さんに鍛えられてなかったら、きっと私はここには居ない。
そんな闇の中から私を救い出してくれたのが、聖と遊陽そして██ちゃんの3人2人だった。
3人2人は私に沢山の初めてをくれた。
お話ができることの暖かさを。笑っていていいことのの心地よさを。苦しくないデュエルを。一緒に買い物をする楽しさを。オシャレをすることの楽しさを。初めての『友達』という関係を。
ずっとずっと、大人になっても私達は変わらない。
そんな幻想を砕かれたのは去年のこと。
何かに手酷い敗北をしたらしい遊陽が、存在しないそんな筈はない!私は覚えている!妹を取り返す、なんて意味の分からないことを言い出した。
何度、そんな人間は存在しない違う、██ちゃんのことを忘れる訳がないと言っても聞く耳を持って貰えず、あれだけ楽しみにしていたクラシック路線の大会からも遊陽は姿を消してしまった。
許せなかった。
遊陽がじゃない。精霊が見えるのに、家の力もあるのに、デュエルの腕だって負けてないのに……何も出来ない、自分自身が。
だからここ最近、昔みたいに遊陽が戻り始めていたのは嬉しかったのだ。██ちゃんを否定した私のせいなのに
闇のカードに取り憑かれた聖を倒して以来、何もかもを諦めていた様な雰囲気に火がついていた。また昔みたいに、3人で一緒にいられると思っていた。
遊陽の傍にいる見慣れない精霊についても、だからこそ見逃していたのに……なのに。
聖は1週間も経つのにまだ目が覚めず、
遊陽も左腕が千切れかける大怪我を負った。
みんなに話を聞けば、何か違和感は感じる当たり前だ。██ちゃんがいないんだからがあの見知らぬ精霊が来てからおかしくなったと言う。
確かに調べれば結果は歴然だった。
あの精霊が現れたと逆算した数日前から、街の治安が悪くなる予兆のような事件が増えていた。
デュエルダストの活発化、シャークトレードを持ちかけられるアンティルールの増加、デュエルアンカーの不法使用、違法なライディングデュエルetcetc……
気持ちが悪いほど符合する。
決まりだ。
あの精霊が、
私の大切な幼馴染3人2人に手を出した落とし前をつけさせる。
そう強く決意して、私は今日ここにいる。
そこは小さな電子音が響く真っ白な部屋だった。
所謂VIP待遇の病室が1番近いだろうか? この世界の正しい知識がないトアには判別が付かないが、少なくとも
「ん、2人の容態は?」
「──幸い、命に関しては問題ない。鶏ガラのようなお前と違って2人ともよく鍛えられたデュエリストだ、峠はとうに越えている」
病室の中にある人影は4つ。
ベッドの上で眠る遊陽、聖、車椅子に乗った華奢な少女、執事服を身に纏った青年。別の病院に搬送された勇プロを除いて、闇のゲームに関わった全員がいる形だ。
「とはいえ2人とも重傷には違いないな。
聖少年は闇のカードに取り憑かれた影響が濃い。目を覚さますのは使い潰されたデュエルエナジーの回復次第、早ければ明日にも、長くとも1週間あれば問題ない筈だ……です。お嬢様」
「取り繕わないでいいのに。それで、遊陽の方は?」
「そうですね、なら遠慮なく。
彼は闇のカードによる影響を一切受けてない。何かに守られていたのは確かだ」
が、しかし。
そう前置きして執事が言葉を続ける。
「代わりに物理的な怪我が酷い。特に左腕はデュエル・ディスクが無ければ、お嬢様の家が誇る再生槽があっても間に合わなかっただろうな」
「……そ、無理して行った甲斐があった」
「こちらとしては、お嬢様にはもっと落ち着きを持って貰いたいのだがな」
「やだ」
深いため息を溢す執事を無視して、車椅子の少女はじっと虚空を見つめて言う。
「さて、私は3日も待ったよ。
回復したのも、そこに居るのも分かってる。全部、説明して貰うよ──精霊」
僅かな静寂。
やはりお嬢様の勘違いだったかと執事が口を挟もうとした瞬間、それは起きた。
静けさに包まれた病室の中、ふわりと生まれた光の粒。赤、青、緑、黄、紫、白、いろとりどりの輝きが集まり、弾け──
そんな突如現れた不審な少女に対して、咄嗟にデュエルディスクを構えた執事を片手で制し車椅子の少女が言う。
「………びっくりした。ずっとダンマリだったのに、まさか本当に出てきてくれるなんて」
「初めてだから、ちょっと力を溜めるのに手こずってたんだよ。
ただ、遊陽に怪我をさせたのはあたしの力不足が原因だから。あたしが直接謝るのが“スジ”ってもんでしょ?」
そう、だからもう俯瞰して見るのは止める。
あたしのミスだった、そこはもう認めるしかない。
遊陽と一緒なら負けるつもりは無かったし、あたしと遊陽の実力なら余裕を持って勝ち切れると思っていた。いやまあ、強さに関しては自信を持ってそうだと断言するけどそうじゃない。
あと1日、あと1日あれば煌臨できる。
そう油断をしていたのは事実なのだから。
「あたしの名前はトア。今は遊陽と契約させてもらってる精霊だよ」
「………ふぅん」
あたしが差し出した手を車椅子の少女が取った。
繋いだ手から伝わってくる感覚は、異様なまでに弱々しい。まるで骨と皮が殆どの様で、華奢で今にも折れそうな不安感がある。なのに、なのに嗚呼、何故だろうか。
まるで重い鉄の手錠でも掛けられたかのように、感じる気配は固く、重く、息苦しい。
「先ずは、本当にありがとう。そしてごめんなさい」
そんな雰囲気を受け止めながら、深々と頭を下げる。
事実は事実、遊陽がこうして短期間に2度も入院する羽目になったのはあたしが原因だ。だからこうしないと、最低限の会話のキャッチボールすら受け取って貰えないと思うから。
「そう。でも、私はその謝罪を受け取らない」
「……えっ?」
んんん?
「私は、お前を[リース]みたいな奴だと思ってる」
なんか不穏な気配になってきたな???
「リースって……もしかしなくても[星杯の妖精リース]? 流石にあんなのとは違──」
「違わない」
流石にアレの同類扱いされるのはごめん被る。あたしだって悪いことをした自覚はあるけど、流石にあんなのとは……
「私の大切な幼馴染を騙して、戦わせて、戦わせて、怪我をさせた。あの邪悪とお前は、なにも違わない」
「ッ、あたしは騙してなんかいない!」
「いいや騙した。遊陽の『妹がいる』なんて存在もしない嘘に乗って、利用して、自分の目的のために戦わせた」
「それは──」
確かに、外から見ればあたし達の関係はそう見える。
共に存在しない敵を居る筈だと信じて、か細い手がかりの為に手を組んだ。だから一方から見れば、彼女の意見は間違っていない。むしろ正しいとすら言えるだろう。
「──そう、見えるのはッ、確かだけど!」
「私の名前は
聖と遊陽の幼馴染で、デュエル医療グループ『ゴルディアス』の中核、結目家の当主代行」
改めて名乗った少女の……海音ちゃんでいいか。その立場がどれくらいの物なのか、この世界の知識がないあたしにはイマイチぴんとこない。
ただ医療グループの当主代行なる肩書き、そして今ここで名乗るという以上とんでもない事だけは予測できる。
「私が調べられる限りの全てに於いて、遊陽の妹[想間 朝陽]という人間の存在した記録はない。戸籍、病歴、学歴、デッキの変遷、私の立場で調べられる全てにおいて欠片も存在の痕跡を拾えなかった。
CCコーポレーションという企業の話も同じ。直接会いに行ったけど、CEOという役職が存在した過去すら見つからない。これだけ手を尽くしても存在しない存在がいるとするなら──それは間違いなく、幻覚か妄想の類」
目の前の彼女から感じるのは、もはや息苦しさすら感じるほどの尋常じゃない圧。
うそ、私の契約者(の幼馴染)……グラビティすぎ!? などと巫山戯ている場合じゃない。
正直わからない事の方が多いが、これアレだ。ダメなやつだ。間違いない。
私とあの子の関係を分かりやすく落とし込めば、向こうがSOLテクノロジーで、私がイグニス!
捕まったらアース(動詞)される!
ならば遊陽から離れるのは心苦しいけど、多分悪いようにはされないだろうしここは……!
「そっか分かったじゃあバイバイ!
謝罪も受け取ってもらえないみたいだし、あたしはもう行くね! アデュー!」
「逃がさない、セバス!」
「承知!」
仕方がないと窓から逃走しようとした瞬間、飛来したのは────スリケン!? アイエ!? ニンジャ!? シツジ=サンガニンジャナンデ!?
そんな私の思考を置き去りに、強制的に起動させられたマイデュエルディスク。
しまった! デュエルアンカーだった!?
しかも繋がってる先は……あのお嬢様のディスク!
「貴女を、デュエルで拘束する。話はその後で、ゆっくり聞かせてもらう」
ああもう、カードゲームの世界ってこんなのばっか!
けど確かに、こんな世界じゃ言葉を交わすよりデュエルで語る方がよっぽど分かりやすいか。
「仕方ない! あたしが無実で貴女が間違ってるって、デュエルで証明してあげる!」
それにさっきから言われっぱなしで、あたしだってちょっと頭に来てたんだ。このモヤモヤごと、何もかもを晴らしてくれる!
「正直怪我人の隣でデュエルするのは気が引けるけど、あたしにそうさせたのはそっちだからね!」
「──ん、それについては問題ない。
少し古めかしい技法だけど、実力者同士のデュエルなら怪我人の回復は早まる」
つまりデュエリストとしての生存本能を刺激することで身体機能を活性化し、熱く燃え盛る抗体が血中の毒素を焼き尽くすと。
ならいいか!
「「デュエル!!」」
デュエルの強度(難解さ・戦術等)は
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このままでいい
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もっと難しくていい
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もっと簡単でいい