遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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お久しぶりです。
一般社会人に!3作同時更新は!
でぎない!!


あと前話で日和って変な感じになっていたので最後の数行が変わっています。よしなに。


Cross:5
第15話 多分6話アバンと前半くらいの話


 デュエルを、想起する。

 初手、引き、そしてそのプレイング。

 初手はそこそこ、引きはダメ、プレイングで頑張ったで賞。

 聖と戦ったときの構築はもう使えない。守りに偏りすぎていて根から腐っている。

 

 デュエルを想起する。

 初手はダメ、引きもダメ、プレイングもままならない。

 去年メインとして使っていたキマイラデッキは話にならない。運命力なんてものに頼り切るほど腕を捨てたつもりはないが、そう言いたくなるほどデッキがそっぽを向いている。

 

 デュエルを想起する。

 初手よし、引きはそこそこ、プレイングは慣れてないせいでガタガタ。

 スコルスピアと戦った時のリスト、これが今の自分に一番馴染んでいる。気がする。少なくとも他2つよりはずっと。

 

 畢竟、デッキメイクの方向性は絞られる。

 

 圧倒的な展開力と最終盤面の制圧力、そして前回のデュエルでも今引きから逆転へと繋げたカード群を──キマイラの主要パーツを抜く。それしかない。

 

 その数だけ空いたスロットに『てんとう虫』や『幻・魔・導』を入れれば、ゲームレンジは伸びるものの展開デッキからミッドレンジデッキとして安定する。

 

 デュエルを仮想する。

 シャッフル、ドロー、スタンバイメイン。

 vs 聖  ──勝率4割、負け越し

 vs トア ──勝率5割、引き分け

 vs スコル──勝率6割、勝ち越し

 

 うん、悪くない。

 軽く30戦ほど想定してみたけれど、大体グレード2くらいの賞デュエルまでは通用するだろう。

 あとはどれだけ今のデッキが手札誘発の混入を許してくれるかによるが……いまは体感3枚くらいか。専用札を含めてもいいならまだ入るが、グレード1の大会に出るには些か不安が残るところ。

 

「うっわぁ、マジか。運命力の出涸らしに負けたのかと思ってたけど、こんな化け物ならオレ様も納得だわ」

 

 カードと自分しかいない筈の精神世界、聞こえる筈のない別人の声がした。不思議に思って意識を向ければ、そこに居たのはギター型のデュエルディスクを構えた少女。

 青い髪と翼のような髪飾り、ライブ衣装にも似た格好、快活そうな雰囲気。随分と印象は違うが、その気配は間違えようもない。

 

「スコルスピア?」

 

 あの意外と小賢しいカードの精霊がそこに居た。まあでも一応精霊だし敬語で話しておくか。

 

「今どき流行りませんよ、安易な美少女化なんて……」

「そう呆れた顔をするな。我の元となったカードはな、今となってはこの姿からの派生の方が多くてな……」

「一人称戻ってますよ」

 

 悲しそうな雰囲気のスコルスピアの肩を叩く。仕方がないんだ、日本文化(P.U.N.K)よりも可愛いシスター(エクソシスター)謎ゲーム(ヴァリアンツ)よりもお姫様(ラビュリンス)……おお、諸行無常。

 あ、カードくれるの?

 蠍座の歌姫スピニア・スコール? 系統コンボ前提のカードはちょっと……

 

「スコルスピアのイラストこっちに出来ません?」

 

 シナジーはないけどまあ、EX空くし大型リンクは入れ得だし。頑張ればリンクのアウスから釣って出せるだろう。そのままだとリンク値1足りないけど。

 

「出来るが……何故!」

「召喚するモチベですね」

 

 蠍の怪物も不気味でカッコ可愛いが、うちのデッキに不気味さとかっこよさは足りている。俺だって男だ、強くてかわいいカードの方が頑張って盤面に出したくなる。

 

「く、屈辱……!!!」

 

 でもやってくれるのはありがたい。ありがたく使わせて貰おう。出せるかは知らんけど。

 

「それで、人の精神に踏み込んでまで何か用でも?」

「ああ、そうだったな。貴様にも大いに関係することだ。心して聞くがいい」

 

 そんな仰々しい宣言に思わず背筋を立たせる。

 

「今しがた、かの忌々しい契約の巫女が敗北し、囚われた。このままでは遠からず消滅するだろう。いま目覚めねば再び取りこぼすぞ、我が仮初の契約者よ」

 

 

 

ここにいい感じのOPとCMが入る

 

 

 

「トアっ!?」

 

 不敵な笑顔を浮かべたスコルスピアに促されて目を覚ました時、見えたのは見慣れた病院の白い天井だった。

 同時に左手から伝わってくる突っ張るような痛みに、段々と何があったのかを思い出してくる。

 そうだ。久し振りに自分の身体で行った闇のゲーム。絶対に負けられないデュエルに、あの時とは違うと自分の安全より勝負の勝ちを取って──そこからの記憶がない。

 

「と、なると……あぁ、そういうことかー」

 

 いま自分のいる場所が病院という時点で、あの後なにがあったのか大凡の見当はつく。

 通報か、おそらく本人か。大怪我して現実世界に投げ出された俺を海音(かのん)が発見して搬送。俺や聖が倒れた原因を精霊、つまりトアに見出して倒したと。

 

「初見だとたぶん勝てないだろうしなぁ」

 

 勝つことが自分の仕事とは言っていたけれど、ロックバーン(コントロール)とミッドレンジ(コンボ)は相性が滅茶苦茶に悪い。

 

 それにそもそも海音のデッキはメガパーミッションでもある。あの全身を縛られるようなデュエルは、LP8000制のロングデュエルでもない限り突破の苦しみに喘ぐことになる。ロングデュエルはそれはそれで、持ち時間とプレミとの戦いになって息苦しいが。

 

 だからこそ俺や聖のデッキは展開に寄った訳だし……今から相性不利を承知の上で、戦いに挑むわけなのだが。

 

「さて、行くか」

「なにが『さて、行くか』だ。またお前は1人で抱え込むつもりか、遊陽」

 

 自分の蒔いた火種なのだ、自分でケリをつけに行かなければならない。そして当然、朝陽の行方に繋がるか細い希望たるトアの消滅も許せることじゃない。

 ならどうするか?

 決闘者(デュエリスト)なら選ぶ択はたった1つ。

 ディスクを手に取り、デッキをセット。全身に付けられていた計器を外し、いざ行こうとした時だった。

 

 声が聞こえた。

 

「ひじり……?」

 

 開かれたカーテンの向こう側。優しい月光に照らされて、あの日倒れて以来眠り続けていた親友の姿があった。批難と怒りをその双眸に確かに湛えて。

 

「目が覚めてよかった。でも悪い、今は先に行く。快方祝いは後でするから!」

 

 喜ばしいことだ。

 だが今、聖を相手にしている時間はない。スコルスピアの言を信じるならば状況は逼迫しているのだ。

 朝陽のことを覚えていない聖を説得するために、一から十までを説明している暇は──

 

「まったく、情けないものだな。朝陽がいないだけでこの有様とは。とんだ笑い者だ、お前も、海音(かのん)も、そしてこの俺も」

 

 ──この一年探し続けた、聞けるはずもなかった言葉に足が止まった。

 

「え……な、ん、なんで……?」

「さてな、貴様との闇のデュエルに負けたことくらいしか心当たりはないが」

 

 さも当然だと言わんばかりに言葉が続く。

 

「どうした、先攻1キルでも喰らったような間抜けな顔をして」

「だって、その言い方。絶対に嘘じゃない……」

「当然だろう。忘れるものか、我がライバルが溺愛する妹のことを────などとは言うまい。事実、今の今まで忘れていたのだからな」

 

 自身を嘲るように口にしながら、聖は深々と頭を下げた。

 

「謝って許されることはしていない。だが、ケジメとして謝罪をさせて欲しい」

「いいよ、許す」

 

 自分でも思ってみなかったほど軽く、その言葉は口からこぼれ出た。だけどそれは、決して同情や焦りなんて理由ではなくて。

 

「遊陽、貴様そんないい加減な生返事が通るとでも──」

「だって、最後まで聖は手を差し伸べてくれた」

 

 元々、俺たちがいたジュニアユースクラスの連中とは違う。俺が補習クラス落ちになっても、なんだかんだで着いてきてくれた。それだけで、嫌う理由がない。

 

「それに、これで分かった。カードの精霊だけが特別じゃない、普通の人間でも朝陽のことを思い出せる。それが分かっただけで、報われたよ」

 

 無いとすら思っていたか細い希望が繋がったのだ、こんなに嬉しいことはない。滲む視界の中で、胸ぐらを掴んでいた聖の手が段々と力なく降りていく。

 

「だからこそ、ここで希望は絶やせない」

「なおさら海音の暴挙は見過ごせない、か?」

 

 こちらの言葉の展開を遮るように、そんな言葉が差し込まれた。

 

「なんで、」

「いったい何年お前らの幼馴染をやっていると思っている」

 

 この程度は考えるまでもなく理解できると言わんばかりに肩をすくめた返事だった。

 

「相手は海音、それも時間がないときた。セキュリティはともかく、今のお前にあの慇懃執事を短時間で突破できるか?」

「それは、いざとなればなんとか……」

 

 もう使うことはないと見切りをつけていたが、俺単独で闇のゲームを行えない()()()()()()()()

 かつて何かの役に立つと思い手を出した闇の力。それは今もこの手とデッキに、変わらずカードとして宿っているわけで。それを悪用すれば、デュエリスト1人くらいならなんとか……

 

「やめておけ。闇のカードを使う程度ならともかく、その使い方を多用すれば幻想魔族にすら見放されるぞ」

「ならどうしろって!」

「簡単な話だ。お前の目の前には誰がいる?」

 

 堂々と宣言するのは1人のデュエリスト。

 共にクラシック路線で腕を磨き合い、そのうち最も権威のあるレースの1つである『皐月杯』の頂きに輝いた同期の星。

 数日間の昏睡明けにデュエルなんて危険なことはして欲しくないが、俺の個人的な思い以外に止める理由はどこにもなかった。

 

「手を貸そう、我がライバルよ。

 貴様のシスコン語りがないのも、朝陽の煩いまでの明るさがないことも、気付いてしまった今は我慢ならん。

 そして海音のバカも、思い出せばそうなるだろう。泣かしてやれ」

 

 ついでに言って止められる顔をしていない。幼馴染としての勘がそう告げている。

 

「……分かった。精霊を、トアを取り返しに行く。

 あの慇懃執事は任せた、最速のデュエリスト」

「そっちこそ、海音を夢から覚ましてこい。闇のデュエリスト」

 

 お互いのデュエルディスクを打ち合わせて、夜の病室で密かな共闘の誓いが結ばれた瞬間だった。

 

「その最速のデュエリストって呼び方は辞めてくれないか? 権威主義がすぎる」

「なら闇のデュエリストってのも止めてくんない? 事実だけど」

 

 ……

 

「お前の†闇の力†がないと海音の記憶を取り戻せないだろうが」

「昏睡明け低血糖脳みそで展開デッキを回せるのはグレート1勝ちでもなきゃ無理だろ」

 

 ……

 

「「なにをぉ!」」

 

 秒で破綻の危機を迎えていた。

 

デュエルの強度(難解さ・戦術等)は

  • このままでいい
  • もっと難しくていい
  • もっと簡単でいい
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