遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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第16話 多分6話後半とCパートくらいの話

 

 夢を、遠い夢を見ていた。

 

 『あたし』が『あたし』になる前、まだ『私』と『僕』だった頃の記憶。無くしたはずの記憶を。

 

 █████を。

 この次元に呼び出された██の██を決死の思いで足止めするために、封印の楔になった ██ ██。彼女が施した封印を取り除くため造られた、数あるクローンの内の1体が『私』、名前もない生贄の巫女。

 

 だけど『私』には他の姉妹と違って、『僕』という存在が初めから混じっていた。デュエルモンスターズではなく、遊戯王を遊んでいた一般人の魂が。

 

 『僕』の魂はずっと眠りについていたけれど、そのおかげで『私』は他よりほんの少しだけ無垢ではなくて。

 

 封印を解除する儀式の贄に選ばれた時、同時に12宮Xレア達にも選ばれた。

 

 『僕』の魂が目覚めたのは、デュエルの「デ」すら知らなかった『私』が彼らの力を借りて儀式の場から逃げ出した直後。

 

 ひとつの体にふたつの心。

 誰もがよく知る遊戯王とその相棒、希望の使者とその半身のように、何度も奇跡を起こして闇の底から這い上がった。そして──

 

『我らと同じ異世界の力と聞いて勇んで来てみれば、この程度か』

 

 あの男に。██████になすすべもなく敗北した。

 アリエスとアクエリアスを踏み越えて、ジェミナイズとレオの連続攻撃を耐え切られて……そんな捨て台詞と、轟くバイクのエンジン音だけが記憶に焼き付いている。

 

『だが、力としては悪くない。引き剥がし分析、実験は続行する。外れ値は変数だ、あればあるほどいい』

 

 そのあと『私』と『僕』がどうなったのかは知らない。

 気がつけば『あたし』は『あたし』になっていて──

 

「んぅ……」

 

 目が覚めた。

 

「ここは、どこ……?」

 

 ぱちぱちと目を瞬かせながら、見慣れない部屋の中で身体を起こす。

 視界に映るのは見覚えのない部屋、印象としては子供部屋が一番近いだろうか? けれど自分はどうしてこんな見知らぬ場所に──と、回した思考に割り込むようなジャラリという鈍い音。

 イヤな冷たさに視線を向ければ、あたしの手足には鉄色に輝く手枷と足枷が嵌められていた。

 

「……そうだ。あたしは、あたし、は」

 

 ぶわり、一気に記憶が蘇った。

 デュエルで勝つ、あたしが持っていた唯一の意義を木っ端微塵に粉砕されたデュエルを。対話の通じない相手に削り殺され、そうだ! あたしをリース扱いした挙句、SOLテクノロジーでアースする(動詞)宣言をされていたんだった!!!

 

「に、逃げなきゃ。殺される……!!」

 

 ようやく使い方のわかってきたカードの精霊としての力。一度実体を失って魂状態になってから、もう一度顕現すれば錠なんで外せるはず。

 

「な、なんで!?」

 

 ……そんな思考を嘲笑うかのように、出来るはずの実体化の解除が失敗した。それから何度も試しても結果は同じ、妙な力に溢れた部屋の中であたしは1人動けないままでいた。

 

『無駄。貴方はそこから逃げられない』

 

 ガチャガチャと虚しい抵抗を続けている最中、頭の中に響いたのはそんな言葉。間違いなくあたしを打ち負かした、海音なるデュエリストの声だった。

 

『もう少しで貴方に尋問する準備が整う。それまで、どうか怯えて待ってて欲しい』

 

 ぶち、テレパシーにも似た声が途切れた。

 込められた敵意と、悪意と、真っ黒な思いに押し潰されて、思わずへたり込んでしまった。ぺたんと座り込んだままどうにも動けず、産まれて初めて感じた冷たい思いに涙が滲んでくる。

 

「たすけて、█████(お兄ちゃん)

 

 思わず口から溢れた言葉はなんだったのか。

 その意味すら理解できないまま、粉砕されたアイデンティティそのもののように動けない。終焉のカウントダウンは、すぐそこにまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 走る。走る。走る。

 

 明かりの落ちた薄暗い病棟を駆けていく。

 

 今度こそ間に合うために、大切なものを失わないために。最速で、最短で、真っ直ぐに。

 

「行き先はわかっているんだろうな!」

「当然!」

 

 聖の軽口に返す言葉も煩わしい。

 早く、早く、頭の中にあるのはそれだけだった。

 

「それで、あの精霊の様子はどうなんだ?」

「弱ってる、それもかなり!」

 

 普段は気にしたこともなかったが、デッキから闇のデュエルエナジーを表に出せばトアとの契約は分かりやすいほどよく理解る。

 

 それが今、どれだけ弱っているのかも。

 

 それでも胸に感じる確かな繋がりは、あの時交わした『正』の力。ディスクに宿る『負』の力とはよく反発して、向かうべき先を照らし出してくれる。

 

「……光と闇の道標(ライトアンドダークネス・サインポスト)、射出!」

 

 ライフを500支払う覚悟でデュエルディスクを掲げれば、淡い光が天井を突き抜けて向かうべき道を指し示した。

 光がさし示した先は──上。まだ途切れていないだけの弱弱しい光が、胸をざわつかせる妙な焦燥感を更に焚きつかせる。

 

「どうよ、これで見やすくなったんじゃない?」

「上か。この病院で5階より上となると……確かあの馬鹿の隠れ家があったな。病院の立地そのものを利用した半異界、なるほど精霊を捕らえるには相応しい」

 

 聖もどうやら俺と同意見らしい。

 小さな頃から何度も訪れた、病院の屋上に建てられたファンタジーに片足を突っ込んでいる小屋。見えないナニカを合わせて遊んだ記憶のある彼処こそ、目的地で相違ない。けど……

 

「ツッコミがないと流石に苦しいんだが」

「その程度の安直なボケ、昇華も消滅もさせてやるものか」

 

 ドラゴン使いだからと振ったのが甘かったか、くそぉ。焦りで変なボケをかましてしまったことに歯噛みしていると、感心したように聖が口を開いた。

 

「しかし、お前がここまで本気になるとはな」

「あれからずっと、ずっと探し続けて見つけた希望なんだ。本気になるもなにも──」

「オレが言ってるのはそれだけじゃない。それくらいは理解していると思っているが」

 

 思わず推し黙る。

 確かにトアが今のトアじゃなかった場合、俺はきっと朝陽に繋がる手掛かりはいえ、ここまで身体を張っていない。後手の相手がメインを飛ばしてバトルフェイズに入った時の惨状くらい予測に確信がある。

 

 なら、何故ここまでやっているのか?

 

「やはり胸か、分かるぞ」

「違う」

「貴様、脚派だったか」

「ちがわい……単純に、なんかほっとけないんだよ」

 

 トアは全くの別人のはずなのに、時折どこか朝陽(いもうと)の姿が重なる。危なっかしくて放って置けない。見捨てられない。

 心の中の『兄』としての部分がなぜか反応している。

 それだけの話だ。

 

「慢性的な妹不足で遂に頭が……病院はここだ、今なら間に合う」

「本当に“そう”なら手遅れなんだよなぁ」

 

 そんな、何時ぶりかも分からない下らない話を。

 無くなってしまった日常の続きを語り──違うな殴り合いだわこれ。殴り合いながら走ること数分。俺たちはようやく、目的地へとたどり着いた。

 

 病院の屋上、幾度も通ってきた外へと繋がる大階段。

 

 その唯一の道を塞ぐように、想定通り俺たちを待ち構えている人影があった。

 

「ようこそいらっしゃいました。遊陽様、聖様。

 ご回復されたようで何より。ただ、あのクソお嬢様はもうネムレリアで夢魔鏡の世界にいる。もし用があるなら、日を改めて下さいますよう」

 

 結目(むすびめ) 海音(かのん)

 俺たち2人の幼馴染にして、デュエル医療グループ『ゴルディアス』の中核、結目家の当主代行。

 つまり彼女はごりごりのお嬢様であり、当たり前に使用人が周囲に存在するタイプであり……本人の体質や資質的問題で介助が必要という理由もあるが……そして、目の前にいる執事こそその筆頭。

 

 小さな頃から俺たち3人の頼れる兄貴分であり、相変わらず慇懃無礼の極みであり、海音を守る為につけられている護衛のトップだった。

 

「そうか、だが火急の要件でな。通して貰おうか」

「申し訳ない、それは出来ない相談です」

「さて、ならばオレたちは貴様をどう呼べばいい? 気の置けない兄貴分か、それとも」

「そうだな──今は、セバスと」

 

 聖の問いかけに執事が名乗ったのは仕事用の名前。

 セバス、それは結目家の筆頭護衛兼執事に代々襲名されているコードネーム。普段とは違いそう名乗ったということは、彼が未だに仕事中であることを示していた。

 海音は寝ている(本来の業務時間は終わった)と、先ほど言ったはずなのに。

 

「「……」」

 

 聖と小さく頷きあう。

 やるべきことは変わらない。ここが最大の関門、どうにか突破してトアが囚われている場所まで辿り着く。

 

「なら、押し通らせて貰います」

 

 警戒すべきはデュエルアンカー。

 アレを繋がれたら最後、デュエルが終了するまで身動きが取れなくなる。セキュリティ御用達、俺も使っている便利アイテムだが……アレにも2つ欠点が存在している。

 

 1つはそう、物理(デュエルマッスル)

 

 当たらなければどうということはなく、カード投げで迎撃する事も理論上は不可能ではない。取っててよかったアクションデュエル基礎Ⅱ、荒事の役に立ちすぎる!

 デッキケースから引き抜いた、幻爪の王ガゼル、コーンフィールド・コアトル、大翼のバフォメットの3枚を片手に構えた。

 

「夜這いですか? とんだマセガキだな。

 まあ俺としては世継ぎができる分には一向に構わないが、最初から #不適切な言葉# とは業が深い。あの湿気った鶏ガラのどこにナニを見出したのか……出来ればご教授願いたいところです」

 

 とんでもないこと言い出したコイツ!!!

 

「なにを!」

 

 思わず前のめりになりかけた直後、聖の手が俺を制した。

 流石にこう、駄目だろ。幼馴染として、ここは言い返さなきゃ!

 

「乗せられるな、向こうの思う壺だ。

 それに…………悔しいが、アイツがオレたちに対して“だけ”じっとりとした雰囲気を向けてくるのは事実だ!!」

「それは、確かにそうだけど」

 

 使っているデッキも相まって、正直ちょっと怖い部分は多分にある。きっともう逃げられないだろう確信も。

 

「隙あり!」

 

 動揺した刹那、飛来するデュエルアンカー。

 くそっ! 汚い、さすが執事汚い。

 だが来ると知っていれば、俺も聖も躱わせないほど弱っている訳じゃない。

 

「気を抜くな! 連続してくるぞ!」

 

 左右に別れた直後、防犯カメラから飛来する2つ目と3つ目のアンカー。バフォメットを犠牲にこちらも弾いたが、その時にはセバス本人のアンカーが回収済み。やはり地の利は向こうにあるか。

 

 向こうは地の利を得た万全な手練れ。

 こちらは昏睡明けと再生治療明けの病人が2名。

 

 いずれは消耗して押し負ける。ならば!

 

「前衛任せた!」

「カードは後で拾って置いてやろう!」

 

 打ち合わせの通り、聖を前面に再度大階段の突破を試みる。

 デュエルアンカーもう1つの欠点。それは、捕まえた相手とはデュエルをしなければならないこと。要は1vs1に持ち込む機構なのだ、1つのアンカーで複数人は捕縛できず──

 

「さらばキマイラ達!」

 

 ──このように、予備も弾いてしまえば突破は出来る。

 執事のアンカーに捕まった聖を踏み台に、舞い散るキマイラカード群を突っ切って、一気に大階段を駆け上がっていく。

 

「行ってこい!」

「ぶん殴ってでも止めてくる!」

 

 背中を頼れるライバルに任せて、今は真っ直ぐ目的の元へ。

 胸に感じる繋がりはまだ残っている。出来れば間に合って欲しい……いや、間に合わせる!

 

 

 

 

多分ここにEDとCMが入る

 

 

 

 

「……行ったな」

「ふん、わざと通しておいて何を言う」

 

 遊陽が走り去った後、光の落ちた大階段にそんな言葉が響いた。

 

「何度提言しても聞かない大馬鹿に効く薬はない。精々、大切な幼馴染にぶん殴られて落ち込めばいい」

 

「ならば最初からそうしてくれれば、オレたちも無理をしないで済んだのだがな」

 

 嫌味を込めた聖の言葉に、肩をすくめてセバスが答えた。

 

「残念ながらそれは出来ない相談だ、聖少年。

 弟分たちの奮闘とクソお嬢様への憂さ晴らしは果たしたい、むしろそれを肴に酒でも飲みたい気分だが……悔しいことに、それでは給料の査定に響く」

 

 大階段の先を見つめる執事の目は冷たい。

 執事を見つめる聖の視線も同様に冷たい。

 

「つまり、職務は果たさねばならないということだ」

 

 それでも、ディスクを構えたら変わるのがデュエリストという人種だった。

 

「参考までに聞くが、オレが貴様を足止め出来なければどうなる?」

 

「そうだな、遊陽少年は2vs1の絶望的なデュエルに挑むことになるだろう」

 

「そうかそうか……ならばこちらも、起き抜けの調整に付き合って貰おう」

 

>>DUEL MODE -ON-<<

>>SOLID VISION ACTIVATE<<

 

「「デュエル!!」」

 

 

Hiziri

4000

Hiziri

4000

VS

Sebas

4000

Sebas

4000

デュエルの強度(難解さ・戦術等)は

  • このままでいい
  • もっと難しくていい
  • もっと簡単でいい
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