遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった 作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。
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「と、まあそんなことが朝あったんだけどさ。どう思う?」
「そうか……遊陽、お前ついに妹以外の幻覚まで。待ってろ、今ディアン・ケト病院の予約取ってやるからな」
「待て待て待て待て待て!」
補習講義の休み時間、隣の席にいた
いけすかない奴だが、今回は本気の同情の目を向けて来ている。
「今回はほら、ちゃんと写真もあるから」
「ハッ、そう言ってまた何も映ってない写真を──うぉ、でっか……」
端末に映したのは、やたら美味しそうにご飯を食べているトアの姿。もしもの場合、通報する為の写真だったけど、我ながら結構よく撮れている。
「うぉ、でっかと聞いて。義によって助太刀致す──うぉ、でっか……」
「メシの顔をしておられ──うぉ、でっか……」
「──うぉ、太ももでっか……太くね?」
「太くねぇって!」
そして悲しきは男子の
「それで、結局この写真の子は?」
「この馬鹿が、朝不法侵入してきた美少女と飯食って学校に来たって話だ」
「おい遊陽ぃ……校庭出ようぜ、久々にキレちまったよ……」
「
「デュエル、かぁ……」
捲し立てるクラスメイトの声を聞きながら、デッキを収めたホルスターに手を当てる。
小さな頃から、2人で調整を続けてきたデッキだ。思い出なんて言葉で語り尽くせないほど、重い全てが詰まったデッキだ。
だけど肝心な時に手を届かせられず、今では答えてすらくれなくなった紙束でもある。
『そろそろ自分のこと、許してあげてもいいんじゃないかな?』
朝、トアに言われた言葉が脳裏をよぎった。一体、どうやって飲み込めばいいんだこんな気持ち。半年経っても縛られ続けていると言うのに。
「──ふん。1学期、お前の言う通り待ったが結局は無駄だったか」
やいのやいのと校庭に連行されかけた時だった。不機嫌だと目一杯に主張するように、
「おい
「お前だって、デッキにそっぽ向かれたことくらいあるだろ?」
「ある。だからこそ、無駄だったと言ってるんだ」
クラスメイトの援護射撃を問答無用に切り裂いて、ライバルの顔をした
「前までのお前なら、1も2もなく
「はは……」
「チィッ、腑抜けやがって腹が立つ!」
反論は、ない。
自覚はありすぎる程にあるし、学業の成績という目に見える結果もある。加えて、言い返す気力すら今の俺にはない。
腑抜け。まさにと言うべきだろう。
「その性根、オレがデュエルで叩き直してやる」
「……いいよ。どうせ今日1回は、実戦をやらなきゃいけなかった」
だけど、ライバルにここまで言われて何もしないほど、俺自身の気持ちは死んじゃいない。
「今のお前をオレは認めない。だからこそ、オレに負けたときが最後だ。今日限りで、デッキを乗り換えろ
「なっ──!?」
デュエルディスクを向けて言う
デッキとは、己の魂を賭けて乗せるもの。自分の分身そのものだ。それを否定する聖の言葉は、デュエリストにとって最大限の侮辱に他ならない。
「朝までの俺なら、別に迷わずにOKしたんだけどな」
しかし今ではもう言えない。言わない。
朝陽の存在が嘘ではないと分かった今、このデッキを諦めることは出来なくなった。
それを否定するというのなら、全力で抵抗するのみ!
「ただ、いいぜ。その賭けは乗った!」
俺の覚悟と運をこの一戦で試す。
もしこれで何も出来ないなら、思い出よりも強さをとる。勝てたのならばその逆だ。
「ハッ、萎びていても腐ってはいなかった様だな!」
「これでも今朝、いい出会いがあったもんでね!」
D・パッドにデッキをセット、展開したデュエルディスクを俺も突き返す。
元々広い教室に、補習ゆえに少ない人数。何が起きるのか察したクラスメイト共が、一気に空間を広げた事でフィールドは完成した。
「引導を渡してやる、遊陽!」
「やれるもんならな、聖!」
「「デュエル!!」」
「せめてもの情けだ。先行はくれてやろう」
「なら遠慮なく!」
相変わらず初手の5枚は事故も事故。
ただ珍しく今回は、最初からドローソース*1が来てくれている。なら、
「俺は手札から『手札断殺』を発動! 手札のカードを2枚墓地へ送り、デッキから2枚ドローする」
「オレも手札交換をさせて貰おうか」
それなりに入れている筈のモンスターは、案の定ほぼ引き込めない。デッキに見放された、その影響が嫌と言うほど滲み出ている。が!
「さらに『闇の誘惑』を発動! デッキから2枚ドローし、手札の闇属性『D.D.クロウ』を除外する」
ならば、可能な限りデッキを圧縮すればいいだけのこと。その為のドロソも、時間稼ぎの罠も、多少構築を歪めてでも入れてある。
「続けて『
Prayer:聖 手札:5
LP:4000
LP:4000【Turn1】
Prayer:遊陽 手札:2
これでデッキは残り29枚。
セットと伏せを合わせれば、多分1ターンは稼げる筈だ。
「それだけのドロソを吐いて、デッキは回らず展開も出来ず……無様だな」
「足掻くさ、それでも」
「ならばその抵抗ごと粉砕してやろう!
オレのターン、ドロー!」
引き当てたカードを見て、ニヤリと聖が笑みを浮かべた。
「手札から魔法カード『召集の聖刻印』を発動! デッキより『聖刻竜トフェニドラゴン』を手札に加える!」
「チェーンはない」
「ならばそのまま、トフェニドラゴンを特殊召喚! 言わずと知れたサイドラ条件だ、攻撃は制限されるがな」
そんなもの、意味はないとお互いに知っている。トフェニから動き出した以上、間違いなく手札には初動がある!
「トフェニをリリースし、手札から『聖刻竜シユウドラゴン』を特殊召喚! 更にリリースされたトフェニの効果、デッキより現れろ『ラブラドライドラゴン』!!」
「レベル6のモンスターが2体、来るぞ!」
ギャラリーの歓声に応える様に、聖が片手を天に掲げる。
「オレはシユウドラゴンとラブラドライドラゴンの2体で、オーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!
ランク6・聖刻竜王アトゥムス!」
聖刻竜王アトゥムス「グオオオオォォォォ!!」
現れたのは黄金の鎧を纏った竜人。ドラゴン使いなら誰でも一度はお世話になる、あのカードへ繋がる中継地点。
「アトゥムスの効果を発動!
来い『聖刻竜ネフテドラゴン』!」
聖刻竜ネフテドラゴン「グルルル」
レダメ*2じゃない……?
「不思議そうだな遊陽。だがこれこそ、貴様のデッキを砕く最善手!」
「チッ、露骨な身内メタ貼りやがってこの野郎……!!」
お互いに半ばデッキ構築が割れているからこその選択だった。
伏せはガード・ブロック、聖の手札は残り4枚。通常召喚権は残っている。まずいな、これ負けたかもしれない。
「更に手札から『聖刻竜アセトドラゴン』を妥協召喚し、続けて『創造の聖刻印』をアトゥムスを対象に発動!」
魔法カードが輝くと同時に、アトゥムスを包み込む聖刻印。
「オレはランク6聖刻竜王アトゥムスで、オーバーレイネットワークを再構築!」
創造の聖刻印の効果は、自分の場のドラゴン族Xモンスターをカード名の異なる聖刻Xへと変える効果。ならば来るか、
「古の刻より甦りし聖なる龍よ、黄金の鎧を纏い再誕せよ!
ランクアップ、エクシーズチェンジ!
現れろランク8[聖刻天龍エネアード]!!」
聖刻天龍エネアード「ギャオオオオォォォォ!!」ATK3000
除外ゾーンまで含めた、珍しい対象耐性を付与する聖のエース。その1体。リンクを伸ばされるよりはマシだったが、それでもリーサルに届くのは変わらない。
「先にネフテの効果で除去をしてもいいが、変な除去を踏んでもつまらん。バトルフェイズ!」
よし、そのまま。そのまま……
「メイン終わりには何もない」
「ならば続行!」
よし来た!
「伏せのチェーンごと粉砕してやる、エネアードでセットモンスターに攻撃!」
エネアードが咆哮を上げ、輝くブレスをセットモンスターに向け解き放つ。
「ありがとう聖、俺の引きの弱さを信じてくれて。お陰で首の皮一枚繋がった!」
セットモンスターが
「セットしていたのは[モコモッコ]!
このカードが戦闘を行う場合、モコモッコと相手モンスターは破壊されない」
モコモッコ「もこー!」DEF300
輝く光に呑まれながらも消えることなく、揺れる幻のように黒いもふもふが現れる。
「そして[モコモッコ]のリバース時効果、デッキから1枚ドロー!」
「ふん、引き当てていたか。だとしても、置きドロソとしては利用させん、メイン2!」
引いたのは展開用の罠カード。
破壊耐性持ちが引けなかった以上、モコモッコの出番はここまでか。
「[ネフテドラゴン]の効果を発動! アセトをリリースし、モコモッコを破壊!」
「くっ……」
ネフテドラゴンの吐き出した炎が、ふわふわと浮かぶモコモッコを焼き尽くす。そして当然、聖刻がリリースされた以上展開が続く。
「リリースされたアセトドラゴンの効果、デッキより[エレキテルドラゴン]を特殊召喚!」
ドラゴン族が2体。光属性レベル5で揃えられるよりはマシだが、捌き切れるかこれ。
「オレはネフテドラゴンとエレキテルドラゴンをリンクマーカーにセット!
アローヘッド確認、召喚条件はドラゴン族モンスター2体!
リンク召喚、現れろリンク2[天球の聖刻印]!」
現れたのは、惑星系のような空間に浮かぶ聖刻印。
ドラゴン族汎用みたいなイメージが強いけど、れっきとしたテーマカードでもある。
「カードを1枚セットして、ターンEND」
Prayer:聖 手札:1
LP:4000【Turn2】
LP:4000
Prayer:遊陽 手札:3
伏せ1、バウンス1、中身がわからない手札が1、対象耐性1。身内メタに展開を割いたとはいえ、今の俺とデッキには大分キツい妨害数だ。
「俺のターン、ドロー!」
だが、まだ舞える。
サレンダーには早過ぎる。
「魔法カード[融合]を発動!
手札の闇属性・悪魔族の2体、[エッジインプ・チェーン]と[カプシェル]を素材に融合召喚!
来い、[共命の翼ガルーラ]!」
共命の翼ガルーラ「「ピィィィィ!!」」
ATK1600
まず通らないだろうが自爆1ドローの可能性をちら向かせつつ、サーチと1ドローは確実に通させてもらう。
「融合素材として墓地に送られた[カプシェル]の効果をチェーン1、[エッジインプ・チェーン]の効果をチェーン2で発動!」
「チェーンはない」
「なら逆順処理を解決。チェーンの効果で2枚目の[
引いたのは防御札として入れてあったカード。
いいタイミング悪く来てくれる……ッ!
「だが遊陽、貴様のデッキに2枚目の[融合]は入っていない筈だ」
「ああ、確かに入ってない」
だとしても、魔法カードというだけで使い道はある。
「バトルフェイズ!」
「駄目だ、バトルフェイズ直前に[天球の聖刻印]の効果を発動!
このカードをリリースすることで、貴様のガルーラにはデッキに戻ってもらう」
自爆特攻寸前、宙に浮いていた聖刻印が光り輝いた。眩い光が去った後には、いざ羽撃かんとしていたガルーラも、聖刻印の姿も消えている。
「続けてリリースされた天球の効果、オレの手札・デッキより攻守を0にする代わりにドラゴン族を呼び出す。
出でよ[レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン]!」
レダメ「グルルル」DEF0
これで次のターン、展開を伸ばされるのが確定した。
「カードを2枚伏せて、ターンEND」
さて、どうしたものか。