遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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第2話 多分1話CM後とCパートの話-前編-

 

「と、まあそんなことが朝あったんだけどさ。どう思う?」

 

「そうか……遊陽、お前ついに妹以外の幻覚まで。待ってろ、今ディアン・ケト病院の予約取ってやるからな」

 

「待て待て待て待て待て!」

 

 補習講義の休み時間、隣の席にいた(ひじり)に話題を振った返しがそれだった。

 いけすかない奴だが、今回は本気の同情の目を向けて来ている。

 

「今回はほら、ちゃんと写真もあるから」

「ハッ、そう言ってまた何も映ってない写真を──うぉ、でっか……」

 

 端末に映したのは、やたら美味しそうにご飯を食べているトアの姿。もしもの場合、通報する為の写真だったけど、我ながら結構よく撮れている。

 

「うぉ、でっかと聞いて。義によって助太刀致す──うぉ、でっか……」

「メシの顔をしておられ──うぉ、でっか……」

「──うぉ、太ももでっか……太くね?」

「太くねぇって!」

 

 そして悲しきは男子の(さが)。愛すべき馬鹿どもがあっという間に集まって来た。流石は補習授業組、座学かデュエルが疎かなだけはあるぜ。

 

「それで、結局この写真の子は?」

「この馬鹿が、朝不法侵入してきた美少女と飯食って学校に来たって話だ」

「おい遊陽ぃ……校庭出ようぜ、久々にキレちまったよ……」

決闘(デュエル)決闘(デュエル)!」

「デュエル、かぁ……」

 

 捲し立てるクラスメイトの声を聞きながら、デッキを収めたホルスターに手を当てる。

 小さな頃から、2人で調整を続けてきたデッキだ。思い出なんて言葉で語り尽くせないほど、重い全てが詰まったデッキだ。

 だけど肝心な時に手を届かせられず、今では答えてすらくれなくなった紙束でもある。

 

 

『そろそろ自分のこと、許してあげてもいいんじゃないかな?』

 

 

 朝、トアに言われた言葉が脳裏をよぎった。一体、どうやって飲み込めばいいんだこんな気持ち。半年経っても縛られ続けていると言うのに。

 

「──ふん。1学期、お前の言う通り待ったが結局は無駄だったか」

 

 やいのやいのと校庭に連行されかけた時だった。不機嫌だと目一杯に主張するように、(ひじり)が言葉を吐き捨てた。

 

「おい(ひじり)、幾らライバルだって言ってもそんな言い方はねぇだろ」

 

「お前だって、デッキにそっぽ向かれたことくらいあるだろ?」

 

「ある。だからこそ、無駄だったと言ってるんだ」

 

 クラスメイトの援護射撃を問答無用に切り裂いて、ライバルの顔をした(ひじり)が胸ぐらを掴み上げてくる。そこにはもう先ほどまでの男子高校生の雰囲気はなく、1人の決闘者(デュエリスト)の姿があった。

 

「前までのお前なら、1も2もなく決闘(デュエル)をしていた。そして勝っていた! だからこそオレはお前のライバルだったのに、その体たらくはなんだ!」

 

「はは……」

 

「チィッ、腑抜けやがって腹が立つ!」

 

 反論は、ない。

 自覚はありすぎる程にあるし、学業の成績という目に見える結果もある。加えて、言い返す気力すら今の俺にはない。

 腑抜け。まさにと言うべきだろう。

 

「その性根、オレがデュエルで叩き直してやる」

 

「……いいよ。どうせ今日1回は、実戦をやらなきゃいけなかった」

 

 だけど、ライバルにここまで言われて何もしないほど、俺自身の気持ちは死んじゃいない。

 

「今のお前をオレは認めない。だからこそ、オレに負けたときが最後だ。今日限りで、デッキを乗り換えろ遊陽(ゆうひ)

 

「なっ──!?」

 

 デュエルディスクを向けて言う(ひじり)の言葉に、一気に教室へざわめきが広がった。

 デッキとは、己の魂を賭けて乗せるもの。自分の分身そのものだ。それを否定する聖の言葉は、デュエリストにとって最大限の侮辱に他ならない。

 

「朝までの俺なら、別に迷わずにOKしたんだけどな」

 

 しかし今ではもう言えない。言わない。

 朝陽の存在が嘘ではないと分かった今、このデッキを諦めることは出来なくなった。

 それを否定するというのなら、全力で抵抗するのみ!

 

「ただ、いいぜ。その賭けは乗った!」

 

 俺の覚悟と運をこの一戦で試す。

 もしこれで何も出来ないなら、思い出よりも強さをとる。勝てたのならばその逆だ。

 

「ハッ、萎びていても腐ってはいなかった様だな!」

 

「これでも今朝、いい出会いがあったもんでね!」

 

 D・パッドにデッキをセット、展開したデュエルディスクを俺も突き返す。

 元々広い教室に、補習ゆえに少ない人数。何が起きるのか察したクラスメイト共が、一気に空間を広げた事でフィールドは完成した。

 

>>DUEL MODE -ON-<<

>>SOLID VISION ACTIVATE<<

 

「引導を渡してやる、遊陽!」

「やれるもんならな、聖!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

Yuuhi

4000

Yuuhi

4000

VS

Hiziri

4000

Hiziri

4000

 

「せめてもの情けだ。先行はくれてやろう」

 

「なら遠慮なく!」

 

 相変わらず初手の5枚は事故も事故。

 ただ珍しく今回は、最初からドローソース*1が来てくれている。なら、

 

「俺は手札から『手札断殺』を発動! 手札のカードを2枚墓地へ送り、デッキから2枚ドローする」

 

「オレも手札交換をさせて貰おうか」

 

 それなりに入れている筈のモンスターは、案の定ほぼ引き込めない。デッキに見放された、その影響が嫌と言うほど滲み出ている。が!

 

「さらに『闇の誘惑』を発動! デッキから2枚ドローし、手札の闇属性『D.D.クロウ』を除外する」

 

 ならば、可能な限りデッキを圧縮すればいいだけのこと。その為のドロソも、時間稼ぎの罠も、多少構築を歪めてでも入れてある。

 

「続けて『魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)』を発動、デッキから『融合』と『エッジインプ・チェーン』を手札に加える。そのままカードを2枚セットして、ターンEND」

 


 Prayer:聖 手札:5

 LP:4000

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 

 

空白

空白

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

 LP:4000【Turn1】

 Prayer:遊陽 手札:2


 

 これでデッキは残り29枚。

 セットと伏せを合わせれば、多分1ターンは稼げる筈だ。

 

「それだけのドロソを吐いて、デッキは回らず展開も出来ず……無様だな」

 

「足掻くさ、それでも」

 

「ならばその抵抗ごと粉砕してやろう!

 オレのターン、ドロー!」

 

 引き当てたカードを見て、ニヤリと聖が笑みを浮かべた。

 

「手札から魔法カード『召集の聖刻印』を発動! デッキより『聖刻竜トフェニドラゴン』を手札に加える!」

 

「チェーンはない」

 

「ならばそのまま、トフェニドラゴンを特殊召喚! 言わずと知れたサイドラ条件だ、攻撃は制限されるがな」

 

 そんなもの、意味はないとお互いに知っている。トフェニから動き出した以上、間違いなく手札には初動がある!

 

「トフェニをリリースし、手札から『聖刻竜シユウドラゴン』を特殊召喚! 更にリリースされたトフェニの効果、デッキより現れろ『ラブラドライドラゴン』!!」

 

「レベル6のモンスターが2体、来るぞ!」

 

 ギャラリーの歓声に応える様に、聖が片手を天に掲げる。

 

「オレはシユウドラゴンとラブラドライドラゴンの2体で、オーバーレイネットワークを構築!

 エクシーズ召喚!

 ランク6・聖刻竜王アトゥムス!」

 

 聖刻竜王アトゥムス「グオオオオォォォォ!!」

 

 現れたのは黄金の鎧を纏った竜人。ドラゴン使いなら誰でも一度はお世話になる、あのカードへ繋がる中継地点。

 

「アトゥムスの効果を発動! ORU(オーバーレイ・ユニット)を1つ取り除き、このカードの攻撃を封じる事でデッキから攻守を0にしたドラゴン族を特殊召喚する。

 来い『聖刻竜ネフテドラゴン』!」

 

 聖刻竜ネフテドラゴン「グルルル」

 

 レダメ*2じゃない……?

 

「不思議そうだな遊陽。だがこれこそ、貴様のデッキを砕く最善手!」

「チッ、露骨な身内メタ貼りやがってこの野郎……!!」

 

 お互いに半ばデッキ構築が割れているからこその選択だった。

 伏せはガード・ブロック、聖の手札は残り4枚。通常召喚権は残っている。まずいな、これ負けたかもしれない。

 

「更に手札から『聖刻竜アセトドラゴン』を妥協召喚し、続けて『創造の聖刻印』をアトゥムスを対象に発動!」

 

 魔法カードが輝くと同時に、アトゥムスを包み込む聖刻印。

 

「オレはランク6聖刻竜王アトゥムスで、オーバーレイネットワークを再構築!」

 

 創造の聖刻印の効果は、自分の場のドラゴン族Xモンスターをカード名の異なる聖刻Xへと変える効果。ならば来るか、

 

「古の刻より甦りし聖なる龍よ、黄金の鎧を纏い再誕せよ!

 ランクアップ、エクシーズチェンジ!

 現れろランク8[聖刻天龍エネアード]!!」

 

 聖刻天龍エネアード「ギャオオオオォォォォ!!」ATK3000

 

 除外ゾーンまで含めた、珍しい対象耐性を付与する聖のエース。その1体。リンクを伸ばされるよりはマシだったが、それでもリーサルに届くのは変わらない。

 

「先にネフテの効果で除去をしてもいいが、変な除去を踏んでもつまらん。バトルフェイズ!」

 

 よし、そのまま。そのまま……

 

「メイン終わりには何もない」

 

「ならば続行!」

 

 よし来た! 

 

「伏せのチェーンごと粉砕してやる、エネアードでセットモンスターに攻撃!」

 

 エネアードが咆哮を上げ、輝くブレスをセットモンスターに向け解き放つ。

 

「ありがとう聖、俺の引きの弱さを信じてくれて。お陰で首の皮一枚繋がった!」

 

 セットモンスターが反転(リバース)する。現れたのは、黒くてフワフワ、もこもことしたうちのマスコット。

 

「セットしていたのは[モコモッコ]!

 このカードが戦闘を行う場合、モコモッコと相手モンスターは破壊されない」

 

 モコモッコ「もこー!」DEF300

 

 輝く光に呑まれながらも消えることなく、揺れる幻のように黒いもふもふが現れる。

 

「そして[モコモッコ]のリバース時効果、デッキから1枚ドロー!」

「ふん、引き当てていたか。だとしても、置きドロソとしては利用させん、メイン2!」

 

 引いたのは展開用の罠カード。

 破壊耐性持ちが引けなかった以上、モコモッコの出番はここまでか。

 

「[ネフテドラゴン]の効果を発動! アセトをリリースし、モコモッコを破壊!」

「くっ……」

 

 ネフテドラゴンの吐き出した炎が、ふわふわと浮かぶモコモッコを焼き尽くす。そして当然、聖刻がリリースされた以上展開が続く。

 

「リリースされたアセトドラゴンの効果、デッキより[エレキテルドラゴン]を特殊召喚!」

 

 ドラゴン族が2体。光属性レベル5で揃えられるよりはマシだが、捌き切れるかこれ。

 

「オレはネフテドラゴンとエレキテルドラゴンをリンクマーカーにセット!

 アローヘッド確認、召喚条件はドラゴン族モンスター2体!

 リンク召喚、現れろリンク2[天球の聖刻印]!」

 

 現れたのは、惑星系のような空間に浮かぶ聖刻印。

 ドラゴン族汎用みたいなイメージが強いけど、れっきとしたテーマカードでもある。

 

「カードを1枚セットして、ターンEND」

 


 Prayer:聖 手札:1

 LP:4000【Turn2】

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 

 

空白

空白

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

 LP:4000

 Prayer:遊陽 手札:3


 

 伏せ1、バウンス1、中身がわからない手札が1、対象耐性1。身内メタに展開を割いたとはいえ、今の俺とデッキには大分キツい妨害数だ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 だが、まだ舞える。

 サレンダーには早過ぎる。

 

「魔法カード[融合]を発動!

 手札の闇属性・悪魔族の2体、[エッジインプ・チェーン]と[カプシェル]を素材に融合召喚!

 来い、[共命の翼ガルーラ]!」

 

 共命の翼ガルーラ「「ピィィィィ!!」」

 ATK1600

 

 まず通らないだろうが自爆1ドローの可能性をちら向かせつつ、サーチと1ドローは確実に通させてもらう。

 

「融合素材として墓地に送られた[カプシェル]の効果をチェーン1、[エッジインプ・チェーン]の効果をチェーン2で発動!」

 

「チェーンはない」

 

「なら逆順処理を解決。チェーンの効果で2枚目の[魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)]をサーチ、続いてカプシェルの効果で1枚ドロー」

 

 引いたのは防御札として入れてあったカード。

 いいタイミング悪く来てくれる……ッ!

 

「だが遊陽、貴様のデッキに2枚目の[融合]は入っていない筈だ」

 

「ああ、確かに入ってない」

 

 だとしても、魔法カードというだけで使い道はある。

 

「バトルフェイズ!」

 

「駄目だ、バトルフェイズ直前に[天球の聖刻印]の効果を発動!

 このカードをリリースすることで、貴様のガルーラにはデッキに戻ってもらう」

 

 自爆特攻寸前、宙に浮いていた聖刻印が光り輝いた。眩い光が去った後には、いざ羽撃かんとしていたガルーラも、聖刻印の姿も消えている。

 

「続けてリリースされた天球の効果、オレの手札・デッキより攻守を0にする代わりにドラゴン族を呼び出す。

 出でよ[レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン]!」

 

 レダメ「グルルル」DEF0

 

 これで次のターン、展開を伸ばされるのが確定した。

 

「カードを2枚伏せて、ターンEND」

 

 さて、どうしたものか。

 

*1
手札増強カードのこと

*2
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンのこと

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