遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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バトスピ要素がこんにちは
盤面、カード名とかも入れたほうがいいですかね?


第3話 多分1話CM後とCパートの話-後編-


 Prayer:聖 手札:1

 LP:4000

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 

 

空白

空白

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

 LP:4000【Turn3】

 Prayer:遊陽 手札:1


 

「オレのターン、ドロー!」

 

 聖の手札は2枚。展開数は無限大。

 こちらの有効札は伏せ3枚、内ブラフが1。追加で防御札が手札に1。直接の妨害は墓地に1枚だけ。

 完全に手数不足だ。

 ただしこのターンを凌ぎ切らない限り、勝ちの目は回ってこない。

 

「墓地の[創造の聖刻印]の効果を発動! このカードを除外することで、墓地から[聖刻竜シユウドラゴン]を守備表示で特殊召喚する!」

 

「チェーンはない」

 

「ならば続いてレダメの効果、墓地より蘇れ[聖刻竜トフェニドラゴン]!」

 

 呼び出されたのは青と白の聖刻竜。

 1ターン目と同じ組み合わせである以上、アトゥムスから無数の勝ち筋に接続されているも同義。返しのターンを考えると、あと1体でも攻撃力1000以上が増えたら捌ききれないか。

 

「続いてシユウドラゴンの効果を発動! コストとしてトフェニドラゴンをリリースし……」

 

(さっきのターンに遊陽が伏せた2枚のうち、1枚は確実に[魔玩具補綴]のブラフ。最初のターンに伏せたカードは、バトルフェイズに動かなかった以上[拮抗勝負]ではない。[無限泡影]や[魔法の筒]ならエネアードで受けられる。タイミング的に[トラップ・トリック]で追加アクセスもない。恐らく奴のデッキの性質からして、何らかの攻撃反応罠。ならば破壊するのは、前ターンに伏せられたどちらか1つ!)

 

「貴様の貴様から見て左の伏せカードを破壊する!」

 

 対象にされたのはブラフとして伏せた[魔玩具補綴]。泡影ケアだろうか? 2分の1の択を外してくれた……が、しかし。ここで素直に通すのは、伏せにも未公開領域にも切れる札がないと知らせるのも同義。

 ならどうするか?

 ブラフにブラフを重ねるしかない。

 見える妨害から踏みに行って、不要な警戒に札を切らせる!

 

「チェーン、俺は墓地から[ブレイクスルー・スキル]の効果を発動。このカードを除外して……」

 

(妨害を踏みに行くだけなら対象はエネアード。ただそれたとあからさま過ぎる。同じ無効化でも後詰めがあると思わせるならここは、)

 

「対象は[聖刻竜シユウドラゴン]!」

「させん! 罠カード発動[抹殺の聖刻印]!

 シユウドラゴンをリリースし、再度貴様から見て左のセットカードを選ぶ!」

「!?」

 

 エネアードを切らせるつもりで吐いた妨害だったが、上から使われたのは不明だった伏せカード。[反射の聖刻印]じゃなかったのはマシか、いやそれでもエネアードを使わせられなかった方が大きいか。いや、余裕を与える方がいいか……?

 

「ふん、どうやら虎の子の伏せだったらしいが無駄だったな」

「俺はセットされていたカード………[魔玩具補綴]を除外する」

 

 少しの逡巡の後、見せつけるようにカードを除外する。

 カチリ、カチリ、錆びついていた歯車が動き出すような感覚。

 場があったまってきた、頭も動いてきた、そしてなにより──デッキが、必要最低限以下ながら動いてくれた。

 

「楽しいなあ、聖?」

「煽りやがってこの野郎……」

 

 こんなのいつぶりだろうか?

 初期手札が誘発5枚じゃないのは。

 上級が固まってこないのは。

 サーチ先とサーチ元が一緒に手札に来ないのは。

 本来の動きなんて欠片も出来ていないのに、嗚呼。このターンに入ってから、久し振りにデュエルが楽しい。

 

 

 本当に楽しんでいいのか?

 妹を守りきれなかったお前が

 

 

 心に火がつきかけた瞬間、冷や水を浴びせられたように心が凍てついた。

 

「墓地には……いつの間にか、厄介なカード仕込みやがって。

 チェーンの解決後、リリースされたトフェニドラゴンとシユウドラゴンの効果をそれぞれ発動!

 蘇れ[ラブラドライドラゴン][エレキテルドラゴン]!」

 

 流れが変わる、不利な方向へ変わっていく。

 再度現れるレベル6通常ドラゴン組。聖はシンクロの12レベルを持っていない。ならば出てくるのはアトゥムスか、或いは。

 

「オレは2体のモンスターでオーバーレイ!

 エクシーズ召喚、現れろランク6!

 [死祖の隷竜ウォロー]!」

 

 死祖の隷竜ウォロー「キシャアアア!」ATK2400

 

 死霊に取り憑かれたドラゴンの遺骸……歪んだ鏡があるような、嫌なモンスターがそこにいた。

 

「ウォローの効果を発動! ORUをひとつ取り除き、貴様の墓地に眠る[幻惑のバリア-ミラージュフォース-]をデッキに戻す!」

 

 ウォローの羽ばたきにより、俺の墓地からカードが弾き出される。

 使える札が腐っていく。まるでいつかの自分のように。隠し通しせるなんて、甘い見通しを破るように。

 

「そしてウォローが存在する限り、オレの場のモンスターは貴様の墓地のカード×100ポイント攻守が上昇する」

 

 聖刻天龍エネアード 

 ATK3000→3800

 死祖の隷竜ウォロー 

 ATK2400→3200

 

「まず……っ!」

 

 忘れていた雑なパンプのせいで、完全にダメージ計算が狂わされた。

 現実は厳しいと、死を告げるように。

 

「すげぇ、合計攻撃力6000……」

「よくあんなバラバラの気持ち悪いデッキで凌げるよなぁ」

「バッカお前、元学年トップの2人だぞ?」

「マジで?」

 

 ざわざわとしたクラスメイトたちの言葉が、段々と遠くなっていく。

 聖の手札は残り2枚、妨害を握られていたら完全に負け。

 

(これは……サレンダーかな)

 

 思考を放棄する。

 勝ち目自体は無いわけじゃない。蜘蛛の糸をたぐるような細さだけど、あるとデュエリストとしての感が言っている。

 

 だけど同時に、俺がそれを選んではいけないとも言っている。

 

 聖に勝つ必要は、本当はないのだ。

 求められている勝利カウントは公式戦のもの。ここで勝利しても、意味なんてない。だから、そう。

 守れなかった俺なんて……

 

「何故そこで諦める、遊陽!」

 

 ……ディスクに手をかけた瞬間、必死な声が聞こえた。

 

「デッキに見放され、詰めデュエル以外で力は振るえず、成績も補習が必要なまでに堕ちた。このままでは進級すら危ない、それでもそのデッキに拘る理由があるのだろうが!」

 

 顔を上げた先には、怒りと悲しみとがごちゃ混ぜになって歪んだ聖の顔。

 

「架空の妹なんて到底理解できないが、それでも以前のお前には芯があった。デュエルを楽しんでいた。それなのになんだ、今のその様は!」

 

「腑抜けた。聖が俺に言ったことだ」

 

 でもそれでいいのだ、もう。

 ここまで来て振り払えないのなら、この呪いは一生付きまとう。

 自分で自分を呪い過ぎて、きっともう逃れられない。 

 

「約束していたんだろう? オレたちとも約束しただろう!

 夏のデュエル・カーニバル、プロへの切符を掴みにいくと!」

 

 アカデミアに入学することで参加可能になる大会システムにおいて、大まかな区分は5つ。

 1つは未勝利戦──初参加を含めて、公式戦で1度も勝利していない者の為の区分。

 次が○勝の条件戦──1〜3勝までの区分があり、それぞれ勝ち上がっていくことで位を上げていく区分。

 次がオープンクラス──ここからが所謂テレビ中継が入り始める。名前のついた大会が始まる、全デュエリスト上位数%しか入れないセミプロに当たる区分。

 次が重賞クラス──グレードクラスとも呼ばれる完全なプロの世界。有名な大会のおおよそがここ。大凡グレードは3〜1に分かれており、数が少ない方が勝った時の名誉がある。稀に○勝クラスやオープンクラスの決闘者も参加するが、完全に実力主義の真剣勝負が行われる区分。

 そして最後が、マスタークラス──厳密な区分ではないが、俗にそう呼ばれる上位コンマ数%の世界。国のトップグレードがそう呼ばれている。

 

 セミプロになるための王道路線。年3度の大会デュエルで聖達にギリギリの勝負で負け続けた結果……今の俺の立ち位置は条件戦クラス。

 

 そして俺の世代の条件戦が実施されるのは、今年の夏の初めまで。そこまでにオープンへ上がれなかった場合、アカデミアからは退学が勧告される。

 

 つまり、この春がラストチャンス。

 

 故に春は敗残兵達が、互いに互いを食い潰す地獄のデュエルが繰り広げられるとなる。そこを勝ち上がっていかねば、プロへの道は完全に閉ざされることになる。

 

「だとしても」

 

 そう、だとしてもだ。

 

「やっぱり、俺は。俺だけは自分が幸せになるのは許せないみたいだ」

 

 朝陽との約束は守りたい。

 自分を許すことは出来ない。

 二律背反で戸惑う感情に、半年かけても決着は付けられなかった。

 

「それはもう、デュエリストとして死んだも同然だよ」

 

 デッキが答えてくれないのも当然だ。

 勝とうとしてない乗り手に、着いてきてくれる筈がない。

 

「そうか……ならば、引導を渡してやる」

 

 失望、ライバルだった男はその言葉が似合う顔をしていた。

 

「レダメを攻撃表示に変更!」

 

 レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン

 ATK0→800

 

「バトルフェイズ!

 レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンで攻撃。

 ダークネス・メタルフレア!」

「ぐぅっ……」

 

 遊陽 LP:4000→3200

 

 闇色の炎が直撃する。

 吹き荒れるエフェクトと軽い衝撃に思わずたたらを踏む。

 たかだか800ポイント。この程度で倒れていたら、デュエリストなんてやっていられないが……耐え切れず、思わず膝を突く。

 

 ざわざわと、うるさい喧騒が聞こえてくる。

 

 あんなものかと。

 やっぱり雑魚かと。

 理論しかできないやつだと。

 

 否定しない。できない。気力がない。

 

 

『でも、どうしてもダメだったらさ。少しくらいは手助けしてあげる』

 

 

 まるで、俺が結局乗り越えられないことを見越したような言葉。

 

「やれ、死祖の隷竜ウォロー! 直接攻撃だ!」

 

 おあつらえ向きの状況に、伏せカード。

 それも全く、信じられなくて。

 

(トラップ)発動、[ガード・ブロック]

 戦闘ダメージを無効化し、カードを1枚ドローする」

 

 諦めるために、最適なタイミングではない防御札を切った。

 無駄に生きながらえて、機械的にデッキからカードを引く。

 

 そうして手にしたそのカードは────()()

 

「は……?」

 

 思わず、呆けた声が出た。

 

 デッキに融合モンスターが混じったままだった? ありえない。

 そんな状態でデュエルを開始しようとすれば、ディスクがエラーを吐き出してプレイできない。

 

 カードがインクか何かで汚染された? ありえない。

 このデッキを最後に調整したのは昨日の晩。そんなことがあれば、デュエリストの端くれである以上絶対に気づく。

 

 ならばこれはなんだと、注視して初めて気がついた()()()()()()

 


 

 ⚫︎⚫︎⚫︎

 

mマジック〉 カルマギア

 手札にあるこのカードは、自分のの繧ケ繝斐Μ繝?ヨが相手によって??/破壊されたとき、███を支払わずに使用できる。

 ⚡︎フラッシュ:

〔ターンに1回:同名〕自分の手札/?????にある、系統:「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」/「  」を持つ、███4以下か███6の紫1色の繧ケ繝斐Μ繝?ヨカード1枚を、霆ス貂帙す繝ウ繝懊Νすべてを満たして召喚できる。

 


 

 文字が抜けている。

 文字がバグっている。

 文字が塗り潰されてる。

 

 カードを持ってから嫌な感覚が伝わって、ゾワリと全身が総毛だった。

 

 なんだこのカードは。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『でも、どうしてもダメだったらさ。少しくらいは手助けしてあげる』

 

 

 脳内で繰り返される、朝トアに告げられた言葉。

 

 ああ、そっか。

 

「そっか……そんな単純なことで良かったのか」

 

 この不明なカードの名前は、今の俺にとってはまさしく劇薬だった。

 

 どれだけ、どんな(カルマ)を背負ってしまっても。

 歯車(ギア)を止める必要なんてない。

 その結果に、許すなんて魔法(マギア)は無くていい。

 闇・滅び・復讐……紛い物でも紫のシンボルを背負うなら、それもまた側面として存在しているのだから。

 

 カードから感じる奇妙な感覚が、頭の中に何かが染み込んでいく。

 

 自分で話したら意味がないなんて言ってたのに、随分と親切じゃないか。

 

「まだ何かあるか?」

「いや、ない。ちょっと引いたカードが意外だっただけだ」

 

 デュエル憲章には『デュエリストが対処出来ない不測の事態によりデッキの内容が変更された場合でもそのデュエルは続行しなくてはならない。』と記されている。

 ディスクがエラーを吐き出していない今、素直に激励だと受け取っておく。カードに問題はないのだと信じよう。

 

「なら今度こそ貴様の未練は、オレが断ち切る!

 速攻魔法[竜皇神話]!

 ウォローの効果で攻撃力3900となっていたエネアードの攻撃力を、更に倍にする!」

 

 聖刻天龍エネアード「ギャガアアァァァ!」

 ATK3800→3900→7800

 

 輝く光を浴びたエネアードが眩いオーラを纏い、表示されている攻撃力が跳ね上がる。7800、例え倍のライフがあっても耐えきれない超攻撃力。機械族とドラゴン族はこれがあるから怖いと言われる、決戦火力の代名詞。

 

「トドメだ、エネアードで直接攻撃!

 ヘリオポリス・インパクトッ!」

 

 だがそれも、直撃すればの話だ。

 

「手のひらくるくるで悪いけど、デッキに怒られたよ。諦めるなって」

 

「なに!?」

 

「だからもうちょっとだけ、足掻くことにした。

 攻撃宣言時、俺は手札から[幻蝋館の使者]の効果を発動!」

 

 どうせ諦めるなら、全てをやり切ってから。

 そういう風に俺は受け取った。

 

「エネアードのダイレクトアタック宣言時、このカードを守備表示で特殊召喚する」

「ソイツは……!!」

「ああ。幻想魔族はその殆どが、自分自身と相手に戦闘破壊耐性を付与する効果を持っている」

 

 幻蝋館の使者「ケヒヒ」

 DEF1800

 

 眩い光に立ち向かったのは、青い炎を灯した蝋燭の怪人。

 半透明に揺らめく姿は、ブレスを受け止めるも小揺るぎもしなかった。

 

「ふん……デッキに立ち直らせてもらうか。馬鹿馬鹿しい」

 

 じっとこちらを見る聖を見つめ返す。

 相変わらずあるのは失望の色──ではなく。

 

「だが、目に火がついた。先ほどまでの腑抜けでは無くなったか」

 

 ライバルとしてこちらを見る視線に戻っていた。

 

「それでこそ我がライバル、手間ばかりかけさせやがって!」

「はいはい悪うござんした」

 

 モンスターの数が変動したことで、バトルフェイズの巻き戻しが発生する。

 

「オレの場に攻撃できるモンスターはもういない。バトルフェイズを終了する」

「ならこの瞬間[幻蝋館の使者]の効果を発動!

 相手バトルフェイズ終了時、相手の全ての攻撃表示モンスターは次の相手バトルフェイズ開始時まで、表示形式を変更できず、EXデッキからの召喚の素材に出来ず、効果は無効化される。

 イリュージョン・フレイム!」

 

 聖刻天龍エネアード(効果無効)

 ATK7800→3900→3000

 死祖の隷竜ウォロー(効果無効)

 ATK3300→2400

 レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(効果無効)

 ATK900→0

 

 反対にエネアードとウォロー側は、使者の振り撒く青い炎の煌めきに若干萎縮した様子。レダメはフリーズしている。

 

「お詫びとして、久し振りに見せてあげるよ。ここからの逆転!」

 

「いいだろう、魅せてみろ。ターンENDだ」

 


 Prayer:聖 手札:1

 LP:4000【Turn4】

 

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 

 

空白

空白

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

 

 LP:3200

 Prayer:遊陽 手札:1


 

 奇跡的に返ってきた自分のターン。

 

 とは言ってもどうする? 今からうららケアは出来ない。

 いや、ここまでドロソは通ってきた。

 そもそも使われたら負けな以上、握ってない前提で考えよう。

 

 このターンで捲り切るにはどうしたらいい?

 

 一番丸い*1択はなんだ?

 伏せからアプレを呼んで後手ワンキル狙い?

 それともうちのエースを呼ぶいつものムーブが板*2か?

 

 考えろ考えろ、手はある。

 そう直感が告げている。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引き込んだのは[醒めない悪夢]

 そっか。本格的にやれって言ってくれるのか。

 なら、期待に応えないわけにもいかないか!

 

「スタンバイ、メインにターンを進行して」

 

 誘発の発動確認ヨシ!

 

(トラップ)カード[廻る罪宝]を発動!」

 

 罪を背負って宝を求める。

 自分をディアベルスターなんて言うつもりはないけれど、アレくらい振り切れてしまう。きっとそれも正解の1つだ。

 故に、まずはこの盤面を捲りきる。

 

「来るか、お前のエースが!」

「黄昏れの魔術師よ、(かすみ)(とばり)を払い真実を照らし出せ! 来い、[幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)]!」

 

 幻惑の魔術師「フン……」

 ATK2500

 

 実際のデュエルで呼び出せたのは、おおよそ半年ぶり。黄金の衣をまとう、昔から変わらない俺達のデッキ不動のエース。

 一瞬、幻惑の魔術師が振り向き俺を見た。

 その表情こそ窺い知れないけれど、漸くかと。そう言われた気がした。

 

「続けて[幻蝋館の使者]を攻撃表示に変更」

 

 幻蝋館の使者「イーッ!」

 ATK800

 

「バトルフェイズ!

 この瞬間[廻る罪宝]の効果でかかっていた[幻惑の魔術師]の効果無効が解除される!」

 

 厳密には少し効果が違うが、うちのエースはメインフェイズに発動する効果もないしこんな説明で問題ない。

 

「バトル![幻惑の魔術師]で[聖刻天龍エネアード]に攻撃!」

 

「おいおい! 攻撃力で負けてる相手に攻撃なんて、元トップも焼きが回ったかぁ〜?」

 

 ヤジが飛んでくるが気にしない。

 

 

『この子はねぇ、この力があるから1枚だけでも十分なエースなんだよ!』

 

 

 うちのエースの使い方は、俺自身がよく心得ているから。

 

幻・魔・導(ヴィジョン・マジック)!」

「迎え撃て、エネアード!」

 

 爆裂する闇の魔術と、光のブレスがぶつかり合う。

 ほんの僅かな拮抗の後、押し切られたのは紫炎の魔術。

 

 遊陽 LP:3200→2800

 

 だが、これでいい。

 

「この瞬間[幻惑の魔術師]第1の効果を発動!」

 

 

『ヴァレルロードみたいでカッコいいよね!』

 

 

「この戦闘では互いに破壊されず、戦闘を行ったダメステ終了時にその相手モンスターのコントロールを得る。幻魔導──マインドブレイク!」

「チィッ、相変わらず厄介な効果を……だが易々と通すつもりはない! オレは手札より[幽鬼うさぎ]を墓地へ送り効果を発動!」

 

 なにっ、ここで手札誘発!?

 

「砕け散れ[幻想の魔術師]!」 

 

 うちのエースがエネアードに放った幻の炎と、突如現れた半透明の少女が放った雷が交錯する。

 直後、発生したのは爆発。

 結果として爆炎が晴れた時には、竜と、少女と、魔術師と。3体のうち2体の姿がフィールドからは消えていた。

 

「やられた……!」

 

 これでまずは1面処理。

 と、言いたいところだが劣勢に戻った。

 この状況での最大打点は3000+800で3800。

 除去が足りず、ウォローかレダメが場に残る。

 

「だが、エネアードのコントロールは貴様に映る。尤も、リンク素材には出来ない制約付きだがな」

 

 つまり、ほんの少し打点が足りていない。

 あと200ポイント、僅かに手が届かない。

 リンクは繋げられず龍皇神話が聖の墓地にある以上、次のターンは耐えられない。

 こちらにある妨害はもう[醒めない悪夢]のみ。

 なにか、なにか手はないか?

 そう思考を巡らせた瞬間だった。

 

 

 ドクンッ

 

 

 いやな感覚に、心臓が脈打った。

 

 何か繋がってはいけない場所に繋がってしまったような、目を逸らさなければいけない気配。その発生源は……やはり、先ほどドローした紫色のカード。

 

 否、紫のカードだったもの。

 

 それはバチバチとノイズのようなエフェクトを走らせ、カードが見慣れたデュエル・モンスターズの形へと描き変わっていく。

 

カルマギア

速攻魔法

 このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

 手札にあるこのカードは、自分の闇属性モンスターが相手によってフィールドから離れた時、相手ターンにも手札から使用できる。

①:自分の手札・墓地に存在する「戦士族」「獣戦士族」「サイキック族」「天使族」「恐竜族」「魔法使い族」「獣族」「アンデット族」「雷族」「悪魔族」「幻想魔族」のレベル4以下か7以上の闇属性モンスター1体を特殊召喚する。

 

 見れば一目で理解できた。

 使えば勝てると。

 

 けれど直感が叫んでいた。

 使えば何かに巻き込まれると。

 

「上等……!」

 

 だがそれはきっと、何かに繋がる筈だから。

 躊躇うことなくカードをディスクへ叩き込んだ。

 

「コントロール変更後、俺は手札から速攻魔法[カルマギア]を発動!」

 

 瞬間、感じたのは何かを吸い取られるような違和感。

 自分の中にある何かが消費された気味の悪い感覚。

 

「効果により墓地のレベル7以上の幻想魔族を特殊召喚する。蘇れ[幻惑の魔術師]!」

 

 幻惑の魔術師「ハァッ!」

 ATK2500

 

 何か致命的な歯車がズレた感覚を浴びながら、紫色の魔法陣から飛び出すように、黄金の衣をまとった魔術師が再び現れた。

 

「なんだそのカードは!?」

 

「とっておきだよ!

 バトルフェイズは続行!

[幻蝋館の使者]で[レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン]に攻撃!」

 

 聖の言葉に笑みで返しつつ、バトルフェイズの続行を指示。

 こちらの様子を伺う幻惑の魔術師に、静かに頷きを返す。

 

「この瞬間[幻惑の魔術師]の効果!

 1ターンに1度、このカード以外のモンスターが攻撃するアタックステップ開始時、場のカードを1枚破壊できる! 対象は[死祖の隷竜ウォロー]!」

 

 先ほど破壊された仕返しと言わんばかりに、幻惑の魔術師が呼び出したナイフがウォローに殺到する。

 

「幻魔導──サウザンドナイフ!」

「クッ、ウォロー……!」

 

 聖 LP4000→3200

 

 爆散するウォローの影で、幻蝋館の使者による炎が聖に到達。ライフを僅かながら削り取った。

 これが戦術的に間違っているのは知っている。

 だがこれで良い。これでいいのだ。

 

「続けて[聖刻天龍エネアード]でレダメを攻撃!

 ヘリオポリス・インパクト!」

 

 今度は聖へ向けられた光のブレスが、レダメごとライフを焼き尽くす。手札は使わせ切って、墓地にネクロガードナーのようなカードは無し。伏せはなく、今壁となるモンスターも焼き切った。

 

 聖 LP3200→200

 

「これでトドメだ、[幻惑の魔術師]でダイレクトアタック!

 幻・魔・導(ヴィジョン・マジック)、第二打!」

 

「待っているぞ遊陽。次は公式戦の舞台でな!」

 

「三連勝で行ってやるよ、聖!」

 

 聖 LP200→0

 

 

 


 

 

 

(あのカードは一体、なんだったんだ)

 

 陽がとっぷりと暮れ、朧げに電灯が照らすシティの道。そこを1人立沢(たつざわ) (ひじり)は歩いていた。

 なんてことはない自宅への帰路。しかし頭の中を占めているのは、やはり昼間のデュエルのこと。

 

「幅は狭いが汎用性と即効性のある、テーマ外の蘇生魔法……そんなもの、どこにも存在しない筈」

 

 自分が負けたことはいい。

 ライバルが本来の調子を取り戻した、それだけの話なのだから。

 だからこそ、気掛かりなのは[カルマギア]なる謎のカード。

 あの後、公式のカードデータベースを確認したがそんなカードは存在していなかった。

 

 遊陽のデッキ事故は本物だった。

 折れ、腐り、沈み掛けていた魂も本物だった。

 

 ならばアレが、違法な偽造カードということはあり得ない。

 デュエル・ディスクがエラー判定を出していないのもそうだが、十年来の親友がそんなものに手を出す筈がないと信じている。

 だからこそ思考は最初に立ち戻る。

 

「あのカードは、なんだ……?」

 

「お教えしてあげましょうか?」

 

「誰だ!?」

 

 突然かけられた声にデュエルディスクを装着し、咄嗟に振り返った先。そこにいたのは全身を黒いローブで包み、その下に軍服のような服装をした不審な人物。

 

「ワタシ? ワタシはそうだね、しがない占い師だとも」

 

「冗談! お前のような占い師がいるか!」

 

「うーん、信じてくれないか。困ったなぁ」

 

 まるで本意とは思えない言葉に、聖はデュエルディスクを操作。セキュリティに通報しようとする……が。

 

「ああ、通信は封鎖させて貰ってるよ。しかしまあ、そういうことをするならワタシにも考えがある」

 

「ッ、デュエルで勝負を──」

 

「ごめんね。ワタシの世界じゃ、カードゲームだけが勝負じゃないんだ」

 

 言って、不審な男が禍々しい色をしたカードを投げつけた。

 デュエリストとして鍛えられていても避けられない速度のそれは、(ディスク)を通り抜けて聖へと直撃し──

 

「君には、彼と彼女を釣り出す“引き鉄”になってもらう。期待してるよ、立沢 聖くん?」

 

 倒れ伏す聖の前から、黒衣の男は姿を消した。

 

 セキュリティに行方不明者の通報が入ったのは、翌朝9時のことだった。

*1
TCG特有の用語。無難な、裏目が少ない、妥当な。などの意味

*2
TCG特有の用語。○○が鉄板、とかと同じ使われ方をしている




・立沢 聖
 聖刻竜使いのライバル、男、幼馴染。
 多分髪は青い。やめろと言われたらやめるタイプ、ドラギアスは存在していない。
 デュエル・ディスクは最新式(VRAINSの旧式)

・結目 海音
 今回は出なかったラスト幼馴染。女。
 多分髪はピンクい。幼馴染2人からの評価は「コイツとデュエルはしたくない」
 デュエル・ディスクは自作
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