遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった 作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。
『
猛り立て、星喰らう豪腕!
天に輝く星座よりいざ招かん、12宮Xレアの輝きを!』
渦を巻く混沌の中に2つの輝き吸い込まれ──爆発する。
『現れろランク6!
巨蟹武神キャンサードX、エクシーズ召喚!!』
緑と金の鎧を纏った、見上げるほど巨大な武者。
巨大なハサミの両腕を構え、背からは2対4本の細いアームのようなものが伸びている。
あの時見た、精霊と全く同じ姿が顕現した。
巨蟹武神キャンサードX
ATK2600
「来たね、キャンサード……!」
『更に
加えて装備された、長大な日本刀。それを握った瞬間、キャンサードの鎧が黒く燻み闇色に染まった。
「どうやら、汚染の原因はアレみたいだな」
「そうだねぇ。全く、因果なものだよ」
『続けてテッポウナナフシをキャンサード
キャンサードX ATK2600→3600
最後にトアの呟いた言葉。それを聞き返す前に、
『バトルフェイズ!』
乗り切らねばならない暴力が、形を持って俺たちに向け解き放たれた。
『巨蟹武神キャンサードXで指定アタック、対象は光星姫ヴァージニアだ!』
地響きを上げ、巨大な武者が突進してくる。
ソリッドビジョンだけでは説明が付かない恐怖に、思わず喉が引き攣った。
『そしてこの瞬間[巨蟹神刀カニキリ]の効果を発動!
魔星人シュタイン・ゴイルを対象に、2ターン後の相手スタンバイフェイズまで効果の発動・攻撃宣言を封じ、攻撃対象から除外する』
「ならその効果にチェーンして、手札から[天星12宮
手札のこのカードをリリースし、キャンサードを対象として発動!
キャンサードを手札に戻し、自分の《星座カウンター》を1つ取り除くことでバトルフェイズを終了できる。
守って、キャンサー・シェル!」
『させん、手札より魔法カード[バタフライジャマー]を発動!
相手がバトルフェイズ中に発動した効果を無効にし破壊する!』
「きゃっ!?」
トアの手元、渦巻く風を纏っていたカードが爆散。その際に暴発した風はトアの頬を、俺自身の腕を切り裂いた。
『逆順処理だ。
バタフライジャマーでキャンザムライの効果は無効になり、カニキリの効果でシュタイン・ゴイルは無用の置き物と化す』
緑色の重圧が纏わりついて、シュタイン・ゴイルが膝を付いた。疲労困憊といった様子で、しばらく動くことすらままならない。
「くぅ……ならその処理後!
[光導創界神アポローン]の効果は発動させてもらうよ!
アポローンのカウンターを3つ取り除くことで、互いのバトルフェイズに攻撃力4000以下のモンスター1体を破壊し、1ドロー!」
『だがその破壊は、テッポウナナフシによって身代わりにさせてもらう!』
アポローンの射撃がキャンサードを貫かんと迫るが、片腕にしがみついていたナナフシで受けることにより突破。ヴァージニアを切り捨て、俺たちの目の前に巨大な刀を振りかぶり跳躍した。
「ライフで受ける!」
トアの宣言と共に、6色の輝きで作られた防壁が出現。振り下ろされた大刀を弾くが……
「か、ぁ……!?」
「きっついなぁ、これ!」
トア LP3000→1700
思わず息が詰まるほどの衝撃が来た。
アクションデュエルで列車に撥ねられた時とすら比べ物にならない、命に響いているとしか言いようのないダメージ。霊体?の俺ですらこうなのだ、生身のトアは……待てよ?
「トア、身体は……」
「なん、とか無事。全身痛いけど!」
デュエルが終わった後のことは、考えないようにしておこう。うん。
『キャンサードXが戦闘ダメージを与えたことにより、第2の効果が発動。貴様にキャンサードの攻撃力の半分──1300ポイントのダメージを与える!』
「ッ、トア!」
「ッ、きゃぁぁぁぁ!!」
「っ、ぐ、ゥ……!」
トア LP1700→400
キャンサードの振るった刀から飛来した緑の風が、トアを庇った俺ごと斬り裂き吹き抜ける。
痛い。血が流れる。だけどああ、それでも。
「まだ、やれるよな?」
「とーぜん!」
諦める理由にはなっていない。
だって俺たちのライフはまだ、0になってはいないのだから。
『ならその希望ごと、
キャンサードX第3の効果を発動! このカードの
ORUを取り込んだキャンサードが両のハサミを打ち鳴らし、意気軒昂と言わんばかりに調子を取り戻す。さっき使われたダメージ効果にターン1の宣言がなかったということは、つまり!
「キャンサードXは、実質2600の3回攻撃モンスター!」
『だが
相手フィールドに存在する攻撃対象になるモンスターが1体のみの場合、キャンサードXはダイレクトアタックすることが出来る』
なっ、それは。
『そして貴様らの場に攻撃対象となるモンスターは、ドラグ・タウラスただ1体!
トドメだ、行けキャンサードX!』
「まだだ! あたしは永続魔法扱いの[天星12宮 聖星使ジェミニック]の効果を発動!
ジェミニックをリリースすることで、このターンの間、自分のライフは1000しか減らない」
『だがもう遅い!』
「更にバトルフェイズ中にこの効果を発動した場合、自分の《星座カウンター》を1つ取り除くことでバトルフェイズを終了できる。
不足コストはドラグ・タウラスから確保!
双子の星よ、苦難を閉ざして──クローズド・ジェミニ!」
雷星獣ドラグ・タウラス(星座C1→0)
向かいくるキャンサードに対し、光の柱に包まれていた天使が突撃。輝く防壁を展開したことで、その歩みを押し留めた。
『ふん、凌ぎ切ったか。
だがこれで、貴様の場に破壊耐性は無くなった。
ライフが不足し蘇生はできず、伏せカードも既にない。たがだか1900程度の攻撃力のモンスターを並べるデッキで何が出来る!』
「──なんでも」
風で刻まれた傷から血を流しながら、獰猛な笑みでトアが答える。
「さあ、ターンENDの宣言をしなよキャンサード。
そしたらあたしが、完膚なきまでに叩き潰してあげるから」
『大言壮語も甚だしい! やれるものならやってみるがいい、ターンEND!』
③:巨蟹神刀カニキリ
⑧:巨蟹武神キャンサード
Prayer:聖 手札:0
LP:2100【Turn4】
LP:400
Prayer:トア 手札:5
①:創界神 星文学者リリア(↓)(星座C6)
⑭:天星12宮 魔星人シュタイン・ゴイル(星座C1)
⑮:天星12宮 雷星獣ドラグ・タウラス
⑱:光導創界神アポローン(星座C2)
「あたしの、ターン!」
力強くデッキからドローされたカードを見て、ニヤリとトアは笑みを浮かべた。
「──揃った。
あたしは手札の[天星12宮 樹星獣セフィロ・シープ]の効果を発動! 自分の場のカードに《星座カウンター》を2つまで置く、ただし1枚につき置けるカウンターは1つ……ドラグ・タウラスとシュタイン・ゴイルにそれぞれカウンターチャージ!」
雷星獣ドラグ・タウラス(星座C0→1)
魔星人シュタイン・ゴイル(星座C1→2)
「更に魔法カード[コズミックリターン]を発動。墓地から[天星12宮 風星士キャンザムライ]を手札に加える」
これで次のターンを凌ぎ切る可能性はできた。
だけどこの程度で終わるはずがない。そうだろう、トア?
「そしてあたしは……シュタイン・ゴイルの《星座カウンター》を1つ取り除くことでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
『馬鹿な、モンスター1体でオーバーレイだと!?』
向けた視線に応えるように、限られたテーマにしか許されない召喚方法が顕現する。
「エクシーズ召喚!
ランク6[地星兵リブライヴァ]、魔星人シュタイン・ゴイルに煌臨!」
地星兵リブライヴァ「グポーン、ピシューン!」
ATK2000
輝く光の柱に包まれて、闇色の魔法使いが青き装甲を纏った巨兵へと転身する。
「リブライヴァは星座カウンターを1つ取り除くことで、レベル・ランク3以上のモンスターに重ねてエクシーズ召喚し、素材となったモンスターの持っていた星座カウンターを得る!」
地星兵リブライヴァ(星座C0→1)
星文学者リリア(星座C6→7)
光導創界神アポローン(星座C2→3)
巨大な槌を持った巨兵がフィールドに着地し、大振りに構えを取る。
「続いてリブライヴァの煌臨時効果を発揮!
創界神の物を除くあたしの《星座カウンター》2つにつき1枚、相手フィールドの魔法・罠カードを破壊する。対象はカニキリ!
砕け散れ呪いの
勢いをそのままに大地に槌が叩き付けられ、爆発するように巻き上がった岩がキャンサードを襲う。キャンサード本体は土石の波濤から逃れることはできたが、一手及ばず長大な日本刀は折れ砕けた。
『ぐぅ、だがリブライヴァの攻撃力は2000! キャンサードの2600には及ばない!』
「それはどうかな?」
「なに!?」
カン☆コーン、と何処からともなく音が響いた。
「そっちが呪いの装備なら、あたしは聖なる装備だ!
大いなる星の導き、悠久刻む魂の瞬き──その名を[銀河聖剣グランシャリオ]!
地星兵リブライヴァに
空から舞い降りた7つの輝きを持った剣を、リブライヴァが受け取り決めポーズを取る。昔からよく見るかっこいいパースだ、ふつくしい……
「グランシャリオはターンに1度、界放効果……相手のモンスター効果の発動を、創界神カードからこのカードにカウンターを移し無効にできる」
墓地効果のシャットアウト!
「バトルフェイズ、私は[創界神 星文学者リリア]の効果を発動!」
「リリアの効果は、ライフコストが必要なんじゃ!?」
「リリアにはカウンターが6つ載っている時の効果がある!
リリアのカウンターを5つ取り除くことで、自分のレベル・ランク6以上のモンスターの数まで、相手の場のカードを選んでデッキの下に送る。
呪いなんて振り払って、キャンサード!」
『ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!??』
創界神 星文学者リリア(星座C7→2)
リリアの放った魔法が直撃したキャンサードが、黒い色が剥がれ落ちていく。黒い装甲は瑞々しい緑に、燻んだ金色は輝きを取り戻し、重苦しい圧迫感以外の気配が取り戻されていく。
「続けて手札の[天星12宮 風星士キャンザムライ]の効果!
このカードをリリースすることで、このターン自分の《星座カウンター》を持つカードが戦闘を行うダメージステップ開始時から終了時まで、相手は魔法・罠の効果を発動できない!」
『クソ、こんなところで。
「アタックステップ!
行って、リブライヴァ! 相手プレイヤーに……ううん、巨蟹神刀カニキリの怨念にダイレクトアタック!」
『馬鹿な、馬鹿なぁぁぁ!!』
「更にこの瞬間、手札から
地星兵リブライヴァ「グォォォ!!」
ATK2000→2800
「これで、トドメだぁぁぁぁ!!」
『ぐわぁぁぁぁぁ!!!』
聖 LP2100→0
叫び声をあげて聖が吹き飛び、その拍子にばら撒かれたカードの中から1枚がこちらに飛来する。
「──、おかえり。キャンサード」
黒ずんでいたそのカードはトアの手に戻ると、浄化されたように緑の輝きを取り戻す。
「いぇーい! だいしょうりー!!」
花弁が散るようにはらはらと崩れ出した世界の中で、顔を出した朝日のような笑顔の彼女と拳を突き合わせ──意識が闇に落ちた。
「知らない天井だ」
次に気がついた時、そこは裏路地でも謎の空間でもなく消毒液の匂いが満ちた白い部屋だった。
ふらつく頭を抑えながら起き上がれば、病院の部屋だということは理解できた。身体もトアのものではなく自分本来のものに戻っている。
どうやら誰かが見つけて……多分
「夢では……ないか」
昨日からのことが夢であった、なんてこともないらしい。
ズキズキと痛む身体と、肩口からバッサリ言っているらしい傷跡がその証明だ。序でに手も痛むあたり、トアがデュエル中に受けた傷のフィードバックをモロに受けてるらしい。
「コトの経緯、教えてあげよっか?」
とはいえ今の状況を誰か説明して欲しい。そんな時に聞こえた声に振り返った先、居るはずの彼女の姿はなかった。
幻聴でも聞こえたか視線を彷徨わせる中、くいくいと服の裾を引っ張られる感触。
まさかと視線を落とせば──
「ら、ラッ様*1みたいになってる……!?」
──病院のベッドの上、2頭身くらいにまで縮みデフォルメされたトアの姿があった。
「いやぁ、ちょっと力を使い過ぎちゃったみたいで……というか、ラッ様って誰?」
「ヴィッ様*2の別側面……?」
「……スケアクロー・ライトハート? いや、うん、えぇ? あーうん。うん。うーん……そうかな、そうかも」
何やら複雑な表情を浮かべていたが、納得したらしい。くるくると宙に浮かびながら頷いていた……えっ、宙に浮かびながら? まあカードの精霊ってそんなもんか。多分。きっと。めいびー。
「それで状況の説明なんだけど、あたしがした方がいい?」
「頼む」
「まずキミが寝てたのはまる一晩、負傷具合は全治1週間。因みに救急車を呼んでくれたのはピンク髪の女の子だったよ」
「やっぱりかー……」
多分通話中に突然通信が切れたのもあって、車椅子を飛ばして駆けつけてくれたのだろう。悪いことをした、ありがたい話だけども。
「あとキミのライバルの
あっけらかんと言われたその言葉に、ほっと一息ついた。
あんな事で──いや、あんな事というのは当事者としてアレかもしれないが──聖の選手生命が脅かされるなんてあってはいけない。だからこそ、その心配が要らないというのは素直に嬉しい話だった。
「ということで!」
「ということで?」
「これからよろしくね、あたしの契約者さん?」
「これからよろしくね!?」
──直後にそんな、衝撃しかない宣言をぶち込まれなければ。
「えっ、あたしと契約してくれたじゃん!?
奪われたカードを取り戻すのに協力してくれるって」
「したけど、あれってその場限りで──はっ!」
トアの使うデッキの根幹をなしていたテーマの名前は[天星12宮]、そして今回聖に取り憑いていたカードの名前は[巨蟹武神キャンサードX]。奪われたって話からして、2つのテーマには相関がある。
ジェミニ等の効果名、蟹、つまりキャンサー。そしてそもそも、奪われた12枚のうちの1つという最初にトアが話してくれた事情から察するに──
「もしかして、残り11枚分、全部……?」
「いぐざくとりー! 暫くの間、一緒の生活よろしくね!」
デフォルメされた身体で胸を張ってトアは答える。
1週間はデフォルメサイズのまま戻らないとか、この状態だとデュエルフィールド内でしか一般人には見えないとか、その他にも色々と説明はされたけど、全く耳に入ってこない。
「ふ、不幸だ……!!」
「こんな美少女を捕まえておきながら!?」
「不幸だぁぁぁ!!!」
朝陽に繋がる手掛かりではある。
あるけれど、しかし。
思わずそう叫ばずにはいられなかった。
同刻、闇に包まれた地下の空間。
ごうん、ごうん、と重苦しい機械音が響き、怪しいケミカル色のライトが点灯する場所にて。
『──契約の巫女が、キャンサードを奪還しました』
くぐもった、男の声がした。
ぬぅ、と闇の中から滲み出すように現れたのは、全身を黒いローブで包み、その下に軍服のような服装をした不審な人物。
『捨て置けい』
それに答えたのは、円筒状の装置の中に浮かぶ人物。
四肢にあたる部分を4つの杭で貫かれた、男のようにも、女のようにも
『既に12宮Xレアの力は蒐集が完了した。彼女の手に戻ることが厄介でないとは言わないが、さしたる問題ではない』
『承知いたしました』
『それよりも██、我らが悲願の調子はどうなっている』
『はっ、こちらに』
まるで封印されたかのように、塗り潰された名前に答えて男が指を弾く。その音を合図に天井へ浮かび上がったのは、微かな紫の線を除き暗く消灯したままの星座盤。しかし見る人が見れば、その違和感に気付くだろう。
その星座盤に描かれてるのは、誰もが見覚えのある夜空に在らず。
誰も見たことがない、言うなれば異世界の夜空であった。
『禁断の解放には未だ、デュエルにより描かれたサーキットが不足しております。また輝きを紡ぐ光の主達も、現状紫1色のみ。残り5色が目覚めぬことには……』
『……未だ成らぬか』
ごぼ、と円筒の中に泡が溢れた。
中に収められた人物の怒りに呼応するように、或いは落胆を示すように。
『ならば干渉を続けよ──我らが悲願を果たすために』
『我らが悲願を果たすために!』
復唱し、現れた時と同様に男の姿が掻き消えた。
後には低い機械の音と、静謐な闇。
そして変わらず円筒に囚われた存在がいる。
それだけの空間に戻るのだった。
W主人公の1話を書き終えたので、明日のカードリストの更新で一旦終わりです。続きは気が向いたら。
今回は遊戯王よりだったので、次はバトスピ寄りにしたいですね。
・相棒巫トア
【魂状態】【契約煌臨元】
・謎のラスボスっぽい封印されし存在X
この鼓動はフィールドを離れない