遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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お久しぶりです。
バトスピ要素、ミラージュはあるけどまだカウントはありません。


Cross:3
第7話 多分3話アバンと前半くらいの話


「ちく、しょう……」

 

 夕闇に包まれ始めたシティ、その中でも一際闇の濃い路地裏。

 そこには、このデュエルが社会の中心に座したシティの闇にあたる存在が棲みついている。

 

「がは……」

 

 大会で1勝を挙げることすら出来ず、それでいて地方の大会などの道を選び取ることが出来なった者たち。

 大会中の事故により立ち直ることが出来なくなってしまった、或いはデュエリストとして再起不能になってしまった者たち。

 あるいは、大会において結果を出せない実力者が弱者をいたぶる様なデュエルを行う狩りから逃れる為に集まった者たち。

 そういった存在を始めとした、弱者が身を寄せ合った危険な違法デュエリスト集団──人呼んで【デュエルダスト】

 

「遂に手に入れたぞ、圧倒的な“力”を!」

 

 そんな彼らは今、たった1人のデュエリストに寄って地を舐めていた。

 デュエルボードから叩き落とされ、蹲る彼らの中心に立つのは1人の男と1体のモンスター(スピリット)。青い水晶で作られた昆虫のような、槍を背負った様なシルエットのそのモンスターには……明らかに禍々しい何かが宿っていた。

 

「く、はは、ははは! ハハハハハ!!」

 

 

 

ここにいい感じのOPとCMが入る

 

 

 

「いやぁ……そうなるとは聞いていたけど」

 

 退院手続きなどの諸々を済まして、我が部屋に帰ってきてからはや数日。なんとなく嫌な予感がし続けていたカードストレージを、遂に覚悟を決めて覗いてみることにした。

 

「まさか、本当に見知らぬカードが増えてるとは」

 

 その結果がこれであった。

『ヴァイオレットフィールド』『ガスベリックス』『隠者騎士ジルべスルト』etcetc……そんな系統すら知れぬカード達。

 しかも普段調整用で整頓してあるストレージでこれだ。押し入れに詰め込んである、新弾の余りが積み上がった山の方なんて覗きたくもない。

 

「うひゃー! すっごいカードの量。もしかしなくても、これ全部キミの!?」

 

 だがそれよりも、目下の大問題はこちらの方。カードストレージを目にした瞬間、ふよふよとマスコットサイズのまま飛んでいったトア。彼女の存在だった。

 

 いやまさか、思ってもみなかったのだ。契約した時は、聖を助けたい一心で。彼女と恐らく長い付き合いになるなんて。

 

 まあ家賃の都合で朝陽と暮らしていたから、幸いにもこの部屋は男子寮ではない。その点はまだマシだが、それだけである。

 

 彼女が以前会った時のような実体……実体?を取り戻した時、割と健全な男子高校生としては危険なことになる予感しかしない。

 

「一応そうだけど、押し入れにもっと山みたいに積もってるぞ」

 

「わはー!」

 

 馬鹿みたいな声を上げながら押し入れに突撃したトアが扉を開け、

 

「うわ……」

 

 服のスペースを押し除けて詰め込まれた大量のカードの山にドン引きしていた。

 

「もしかして、少年……かねも?*1

 

「聖とか海音に比べたらカスみたいな金額しか稼いでないはず……」

 

 結局、冬のデュエル・カーニバルには参加してないし。

 

「いいや、あたしの眼は間違いなく、少年は成金ゴブリン属に近いと言っている! はけぇ!」

 

「吐けと言われても」

 

 諸々の細かい手当て分は除外するとして。

 新人戦の優勝賞金が550万、東京スポーツ杯初年度限定戦が2位で1500万、ホープフルカップが4位で1100万、弥生杯・皐月杯・優秀デュエリスト杯が2位でそれぞれ2200万、8000万、1億2000万。菊花杯は6位で784万。で、この前の白富士杯の優勝を合わせて……

 

「丸っと残ってる訳じゃないけど、多分去年だけで3億ほど」

 

「ば、化け物……!?」

 

 それは断じて相棒とか契約者とか、そう言った間柄の相手に向ける言葉ではない、酷すぎる言葉だった。

 あと流石に半分くらい大会の登録料と学費とカード代で消えてるわ。あとおまけで生活費。

 

「それじゃあ、あたし……あ、あー……私、押入れのカード探してる……探してきますね! ご主人さま!」

 

「おいこら、負けるな。マネーパワーに負けるな。せめてカードの精霊ならパワカに負けろ!」

 

「あた、私は負けたんだよ少ね……ご主人様。あなたのカード、そう、クレジットカードに」

 

「この、おま、この……!!」

 

 半年ぶりに賑やかになった部屋での生活は、割と前途多難な予感がしてならなかった。

 

 なんて茶番もあったがそれはそれ。

 

 トアが押し入れに突っ込んでカードを漁る中、俺は俺でやらなければならない事があった。

 

「確か申請はここからやって、費用の振り込みは、まあ余ってるから引き落としで設定。単位取得は……今年はフルは無理か」

 

 言わずもがな、学業の方の諸々である。

 

 デッキの調子が完全に治りきってない今、大会出場による実績確保は重要だ。しかし前回の勝ちで最低限には達した以上、学業のカリキュラムを疎かにも出来ない。履修する講義を登録せねばならないのである。

 

「おぉー、なんか大学みたい」

 

 ひょっこりと顔を出したトアが言う通り、アカデミアは割とHigh schoolよりはUniversity的な側面も持っている。専門学校なんてそんなもんである。

 闇のゲームに巻き込まれることを考えると、空きは作りつつアクション系を1つは取っておくか……

 

「実際、今のうちに慣れさせる目的でもあるらしいぞ」

 

 プロデュエリストは基本、己のスケジュールは自分と精々サポーターと決めることになる。そういう意味で、自主性を重んじているらしい。

 

「それで、何か良いカードでも見つかったのか?」

 

「それはもうね! はい、取り敢えず3種類」

 

 そう言って手渡されたカードは

 

幻惑(ファントマギア)隠者騎士(ハーミットリッター)バジャーダレス

・龍面鬼ビランバ

・旅団の摩天楼

 

 といった、やはり知らないカード郡。

 ざっと効果を読んでみたが、どれもなんか結構便利だ。貴重な幻想魔族と手札誘発、割とデッキに入れるのは有りかも知れない。

 というか、条件付きとはいえ幻想魔族サーチって初めて見た*2。フィールド魔法ゾーン使う変な効果といい、いいな摩天楼。宇宙だ。

 

「ところで、新カードに夢中になってるのはいいけどさ。この予定表に書いてあることは無視していいのかな〜、少年?」

 

「予定?」

 

 そんなもの、今日あっただろうか?

 ツンツンと突っつかれながらD・パッドの予定表を開けば、そこには堂々と存在感を発する文字列が。

 

 補講者向けスピードデュエル(スタンダード)講座、プロ決闘者(デュエリスト)来校!

 

 明らかに自分の筆跡で書かれた文字を見て、そんなものあったわと思い出す。

 

「スピードデュエルっていうとアレだよね? メイン20、EX6枚でペンデュラムが殺された状態でやるやつ」

 

「大体合ってるけど、メインの枚数が違うな。その旧ルールの枚数じゃ、大会の盛り上がり的に問題があるってことで30〜40になっている」

 

 スピードデュエルとは、デッキ枚数がメイン30〜40、Ex7枚、ペンデュラムゾーン並びにその同列が存在しない形態でのデュエル。Exモンスターゾーンは存在する。

 

 デッキに嫌われた果てに、いっそデッキ枚数を減らせばキーカードを引き込めるのでは。そんな考えで、クラシック路線からの転向も視野に入れていた。そんな記憶。

 

「ただこれ、今は転向考えてないしなぁ……」

 

 何となくだがデッキが復調傾向にあるし、刺激にはなるけれどそこまで優先すべきではない様に思える。

 

 それに、スピードデュエルというのもあまり食指が動かない理由だった。

 俺が辿っているクラシックから連なる王道路線や、一昨年『スピード・ワールド3』が実装されたことで盛り上がってきたライディング路線と違って、スピードはここ数年人気が低迷気味だ。

 理由は明白、ヒーローの不在。

 よく言えば群雄割拠だが、圧倒的な個人がいない環境。それは競技者ウケは良くても、ツウ以外の一般人ウケが非常に悪い。

 

「んー、そっか。それなら仕方ないね。あたしとしても、出来れば遊陽と聖くん?以外のデュエリストが、どのくらいの実力なのか見たかったんだけど……」

 

「あー、そういう狙いで」

 

 忘れかけていたが、トアはカードの精霊だ(自称)。デュエリストの実力を把握したいと言う気持ちも分からなくない。

 

「ならいいぜ、行こうか」

 

「いいの!?」

 

「話してたら久しぶりにデュエルボードに乗りたくなってきたし、実際択として残しておくのは有りだと思うしな」

 

「ボード?」

 

 首を傾げるトアを見て、何か合点がいってない様子に納得した。知っているものだと思っていたけれど、ああ、そっか。

 スピードデュエルが持っている他のデュエルにはない特徴を、トアにまだ説明してなかった。

 

「スピードデュエルは、お互いにスケボーみたいなデュエルボードに乗ってやるんだよ。競技場に流れるフィールの流れ(ストリーム)に乗って」

 

「おお! それってもしかして、スキルとかもあったり!?」

 

「当然」

 

 むしろ、そこがメインの見どころになる。

 各々のデュエリストが、固有のスキルといういわば必殺技を持った状態──つまり切り札を1枚、非公開、或いは公開情報として抱えた状態でのデュエルになる。

 

 スキルはデュエル中一度のみ使える、デュエリスト1人1人が固有で持つもの。

 有名どころで言えば、『シークレットキュア*3』や『Storm Access*4』だろうか?

 市販されている方は『ダブルドロー*5』や『○○○・ペンデュラム*6』がよく使われている。

 

 とまあ。

 デュエリストからの好き嫌いは分かれるが、ド派手は見どころは一般人が嫌いになる筈がない。

 

 問題はそのド派手なスキル持ちが、ここ数年いないことなのだが。

 

「因みに俺のスキルは──」

 

「や、言わなくて大丈夫。あたしそういうのは、実際のデュエルで見て楽しむタチだから!」

 

 説明をする前にトアが手で制した。

 普段使いは市販スキルの『ダブルドロー』にするくらい陰湿なスキルだから、あらかじめ説明しておきたかったが……気持ちはデュエリストとして理解できる。

 

「じゃあ行くか。1回くらいは実習でデュエルする機会もあるだろ!」

 

「いえーい!」

 

 なんて話もあって。

 軽くハイタッチをしながら、改めて実習へ向かう準備を始めたのだった。

 

 本当にこんなことをしていていいのか?

 今も朝陽は行方すら知れないのに

 

 そんな、半年間脳裏に響き続ける自罰の言葉を、今は気づかないふりをして。

 

 

 

 

 

「ふおおおお!! これが、世にも名高きデュエル・アカデミア!」

 

 寮を出発して歩くこと数分。アカデミアの正門が見えてきたあたりで、耳元からそんな奇声が上がった。

 

「GXよりはハートランド寄りだけど、あれほど派手じゃないしむしろDen Cityみがあるスタイリッシュさ……わくわくするなぁ!」

 

 あちらこちらを飛び回りながら食い入るようにアカデミアを眺めている辺り、相当興奮しているのは分かる。何を言ってるのかはまるで理解できないが。

 

「あっちに見える建物は!?」

 

「アクションデュエル用の体育館だな、利用者はそんなに多くない」

 

「ならあれは!?」

 

「ライディングデュエル用のトレーニングコース、結構人気はあるぞ」

 

「あそこは!?」

 

「大図書館、OBも普通に利用できるから稀に野生のプロがいる」

 

「あそこ……は、見るからに大講堂だね」

 

「アカデミア本校と同じ作りだからなぁ」

 

 校内を一歩進むたび、新しい光景が見えるたび、トアはキラキラと目を輝かせる。

 去年は自分もそうだったと、懐かしい記憶が蘇ると同時に……

 

 

『これからこんなに色々ある場所でべんきょーできるなんて、楽しみだね! お兄ちゃん!』

 

 

 ………どうしてか、その姿に朝陽(いもうと)の姿が重なって。

 

「もう半年……どうすれば、俺は」

 

 また朝陽との日常を取り戻せるのだろうか。

 

 思わず、胸中に言葉を投げた。

 

 とっくに正攻法での詰問は全滅済み。

 けれど不正なアクセスをするには技術もデュエルの腕も足りていない。

 忍び込むには仮にも相手は大企業。個人では相手にすらならない。

 

 約束だけに縋る現在(いま)を続けてはいけない。

 朝陽を取り戻すことを諦める理由にはならない。

 

 理解している。

 決意だってある。

 だけど、解決の方法は未だ見つからない。

 

「どしたの? なんか気落ちしてるみたいだけど」

 

「うぉあっ!?」

 

 目の前に現れた顔に思わず飛び退いた。

 いつの間にやら、トアの興奮もおさまっていたらしい。どうしたのかと言わんばかりの表情で、ペチペチと頬を叩いていくる。

 

「いや、なんでもない」

 

「そっか」

 

 意外にもあっさりとトアは引き下がってくれた。

 踏み込まないでくれたのはありがたい。おかげで、今自分があたるべき事に向き直れる。

 

「そしてこの、ライディングのコースと併設されてる場所が──」

 

「今回、スピードデュエルのプロが来てる場所ってことだね!」

 

「正解」

 

 そうして俺たちは、プロデュエリストの講座が行われている会場に到着した。

 中からは既に歓声とデュエルの音が聞こえてきている、どうやら既に始まっているらしい。

 

 早く早くと急かすトアに背中を押され、扉を開けた会場の中では──

 

「おらぁ! ヤールングレイプの効果でクレイヴソリッシュの攻撃力は倍! ヒロイックコールで+2500! 自身の効果でさらに倍! おまけにダブルアップチャンスでもう2倍! 30000の攻撃力でダイレクトアタック! くらえ即死パンチ!」

「ぐわー、やーらーれーたー!」

 

「いけぇ! シャインブラック3連撃!」

「底知れぬ絶望の淵へ沈めぇ! 聖なるバリア、ミラーフォース!」

「ぎゃぁぁぁ!?」

 

 気のいいバカ共による割としょーもないデュエルが、至る所で繰り広げられていた。

 右を見ればハイビート、左を見ればハイビート、偶にバ火力、霊獣、閃刀姫、霊使い。うーんいつもの面々である。

 そんな内容は一旦置いておいて、彼ら全員が普段のデュエルでは見ることのない状態にあることの方が重要だ。

 

 D・ボード

 

 スケボーサイズのデュエル機器であり、デュエルにより発生するフィールの流れ(ストリーム)に乗るための必須アイテム。

 この場にいる全員がソレに乗り、思い思いのトリックやアクションを決めながらデュエルをしている。

 

 スピードデュエル、その特質の一端がそこにはあった。

 

「やあ、君もこの講義の受講者かい?」

 

 感動と困惑が混じり合った面白いトアの顔を眺めていると、いかにも好青年といった感じの声が掛けられた。

 

 短めに切り揃えた割と珍しい黒髪(どうるい)、清潔感のある服装、現行最新鋭のディスクとボード。そして首から下げた来校証──なるほど。勝負服じゃないから気付かなかったが、この人が講師か。

 

「ええ。久し振りにスピードデュエルもありかなって思いまして」

 

「あー、敬語はいいよ。OBってだけで、そんなに偉いわけじゃないから」

 

「そうか、なら遠慮なくタメ口で」

 

「僕の名前は、(いさむ)。今日はここで、スピードデュエルの講師をやってる」

 

「遊陽だ、今日はよろしく」

 

 へらへらと、なんて言うのは失礼だが。どうにも覇気がない先輩だった。

 

「さて、自己紹介もしたこともと、これ以上はデュエルで話ろうか」

 

 そんな態度はそのままに、先輩がデュエルディスクを構える。デュエリストとしては普通の流れなはずなのに、どこか感じる嫌な気配。その発生源は──眼。

 こちらを侮っている以上に、軽蔑しているような、そんな雰囲気。心なしか、気のいいバカ共から避けられているようにも思える。

 

「ボードに乗るの、久しぶりなんだ。先にコース一周して、勘を戻ししてきてもいいか?」

「ああ、もちろん!」

 

 そんな相手の誘いを素直に受ける程、俺の性格はよくない。それに、先ほどから渋い顔をしているトアのこともある。

 

「じゃ、お先」

 

 言いつつ、貸出備品のボードを受け取り、コースへ足を踏み入れる。

 

「せーの!」

 

 Dボード乗り方は、スケボーやサーフボードとさして変わらないない。Dボードには推進装置が乗っているという一点を除けば。

 体勢が整うのを待ってから、一気に踏み込み最大加速。サーフィンでいうエアリアルを決めて、気分をアゲながら加速を続ける。

 

 ──さて。ここまで離れればもう十分だろう。

 

「遊陽」

 

 風を切って駆ける中、徐にトアが口を開いた。

 

「あたし幾つか、聞きたいことが出来たんだけど」

 

「それはデュエリストの技量について、で合ってるか?」

 

「うん。もしかして、この世界のデュエリストって──」

 

「……まあ、大半が」

 

 あちゃー、と言わんばかりにトアが額に手を当てる。

 

 別に彼らも悪い奴らではないのだ。断じて。

 あれで一般人に比べればデュエルの知識は多いし、当然その分だけ強い。

 

 だが、デュエルは非情だ。

 

 勝負の世界である以上、勝者と敗者の間に横たわる壁は絶対的で、深い。

 

 毎年、俺も所属しているアカデミアに入学するデュエリストの数は凡そ7000人強。そこから中央のリーグでデビュー出来る人数は6500人程度。そこから大会で1度でも勝つ……優勝できる人数が3500人。

 オープン戦の出場資格を持つ者となると、そこから300人にまで急激に減少する。

 

「あたしはてっきり、世のデュエリストはみんな遊陽とかあのライバル君くらいのレベルだと……」

 

「まさか。自分で言うのはアレだが、同世代で比較するなら上位1〜3%位には入ると思うぞ。俺も聖も」

 

 先ほどの資格者の中から、グレード1の大会へ出場出来るのは更にその内から多くて100人程に絞られる。

 まあ、そんな場所から今は補習組まで来てる訳なのだが。

 

「だとしたら……だとしたら、相当まずいかも。平均がその程度の力しかないなら、精霊(スピリット)の力はあんまりにも──!」

 

 そう、トアが何かを口走り掛けた瞬間だった。

 

 風を切って、一台のDボードが接近してきた。

 

「よう、シスコン。また幻覚か?」

 

「黙れ名誉シャインブラック、精霊だよ」

 

「マジか」

 

「マジマジ」

 

 中身のない会話をする相手は、さっきミラフォにやられていたゴキ使いの級友、黒田だった。

 また揶揄いにきたのかと思ったが……どうにも、顔が真剣だ。

 

「真面目な話だ。さっきお前、あの講師にデュエル誘われてたろ?」

 

「まあな。嫌な予感しかしなかったから、こうして先に遊んでる訳だが」

 

「正解だよ。アレ、講師の器じゃねぇわ」

 

 話している内容に気づかれたくないのか、加速したG使いに併せて加速。競い合っているように見える形で会話を続ける。

 

「俺のGデッキが馬鹿にされるのは、まあ理解できるんだが……アイツ、(れい)のやつが霊獣回しミスった時になんて言ったと思う?」

 

「普通ならミスの指摘と改善点の提言とかじゃないのか?」

 

「『そんな地に足のついてないデッキを使ってるからキミは勝てないんじゃないのか? スピードに転向しても、きっと変わらないよ』だ」

 

「いや、それは講師の器以前に人としてダメだろ」

 

 人のデッキを否定すること、それ即ち相手の魂を否定すること。

 アニメや漫画の悪役ですら滅多に口にしない、すれば炎上必至の暴言だ。そんなことを平然と言う奴を呼ぶなんて、アカデミアも質が落ちたか?

 

才羽(さいば)(しのぶ)と怜の3人で通報したから、遠からず処分はされるだろうが……」

 

「流石サイバース使いと忍者使い、手が速い」

 

「……ああ。やっぱり、腹の虫が治らねえ」

 

 ああ。ここまで来れば、黒田が言いたいことは分かる。

 というか、俺も同じ気持ちだ。

 

「仮にも相手はマジもんのプロだ……勝てるか?」

 

「勝つさ」

 

「よしきた! 俺のトリシューラプリンがかかってるんだ、やっちまってくれよ!」

 

「帰り道に火麺のところで一杯な!」

 

 バシィと手を打合せ、進路を別々の方向に取って解散する。

 これで一般的な練習に見えるよう誤魔化せた筈だ。

 

「まって遊陽! あたしの認識が甘かった、このままじゃ間違いなく大変なことに──」

 

「──悪いトア」

 

 その焦りを湛えた表情から、きっと本当に伝えなければまずいことなのだろう。短い付き合いだがそれくらいは理解している。だが、だがしかしだ。

 

「流石に友達を馬鹿にされて、黙ってはいられねぇわ」

 

 ドン底に落ちた時、一緒に遊んで支えてくれた友人たち。その無念を晴らすことの方が、いまの俺には重大だった。

 

 今度こそ失わないために

 

「……わかった。でもこのデュエルが終わったら、きちんと聞いてもらうから!」

 

 そうしてコースを一周して俺は、俺たちは、講師の目の前へと戻ってきた。

*1
恐らく金持ちか?の意

*2
オタク特有の誇張

*3
VRAINSよりゴーストガールのもの

*4
VRAINSが広がってないか?

*5
ドローフェイズのドローがそのターンのみ2枚になる

*6
ペンデュラムゾーンを生やす+何種類か効果が選べる




明日明後日明明後日と投稿予定です
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