遊戯王の世界に転醒したけど握ってるデッキがバトスピだった   作:みかんこ、アーイイ。実にイイ。

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翻訳・捏造カードテキストは後書きに投げます


第8話 多分3話後半くらいの話

 

「やあ、随分と調子が良かったじゃないか。もしかして君、経験者だったりするのかい?」

 

 軽く汗を拭ってDボードから降りると、出発前と変わらない好青年ぶりで勇講師が話しかけて来た。気安い態度からは、冗談でもデッキ否定なんて言葉を吐くような人物には見えない。

 

 が、アイツら(クラスメイト)は馬鹿でも冗談の区別くらいはつく。そして全員が、デュエリストとして一本芯を持った奴らだ。

 

 この嫌な気配のする眼と雰囲気が、きっとまだ表に出していない本性と言ったところなのだろう。

 

「ストリートで少し遊んでたくらいだよ」

 

 嘘だ。

 本当は朝陽とトリックを決められる程度にスピードデュエルはやっている。目の前の相手に言う理由は二重の意味で存在しないが。

 

「そっか、それでもスピードデュエルに興味を持ってくれるだけ嬉しいよ!」

 

 表面上はキラキラした笑顔を受け取りながら、頭の中でデュエルの算段を立てていく。

 

 以前までの融合を主軸としたデッキの場合、勝ち切ることには自信しかない。だが今の、未知のカードを交えた幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)主体のデッキでどこまでやれるか?

 

 黒野が言っていた通り、曲がりなりにも相手はプロ。ひと足先に、グレード1級の相手へ通用するのか、試金石にするとしよう。

 

「さあ、始めるとしようか!」

 

>>DUEL MODE -ON-<<

>>AUTO PILOT STANDBY<<

>>SOLID VISION ACTIVATE<<

 

 向こうがDボードに乗ったのを見てから、改めて俺自身もコースに入る。互いにスピードを得、風を切り裂いて疾りながら遂に──

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

Yuuhi

4000

Yuuhi

4000

VS

Isamu

4000

Isamu

4000

 

 

 デュエルの火蓋が切って落とされた。

 

「一応先達の義務として、スピードデュエルについて軽く説明をしておこうか!」

 

 先行する勇プロが、こちらを振り返りながら口を開いた。

 

「スピードデュエルはクラシックなデュエルと違い、メインフェイズ2が存在せず初期手札は互いに4枚!

 メインデッキは30〜40枚、EXデッキは最大6枚までの限定構築戦!

 そして最大の特色として、各々のデュエリストが《スキル》というデュエル中1度のみ使える必殺の刃を胸に秘めている!」

 

 加速を始めた勇プロに合わせてこちらも加速してみるが、流石にちょっと追いつけそうにない。学校の貸出備品とプロのカスタムメイド、比較をするまでもなくDボードの性能が違いすぎる。

 

「そしてライディングデュエルのルールに準拠し、先行はファーストコーナーを先取した者が得る!」

 

 言っている間に、向こうはすでにコーナーへ差し掛かっている。ふーん……

 

「先行、あたし達に譲る気はないみたいだね」

 

 その様子を見て冷めた視線でトアが言う。

 さもありなん、自分が勝つことしか考えていない。少なくとも、初心者側にいる自分としてはそう見える。他者から見てどうかは知らないが、少なくとも初心者からそう見える時点でナシだ。

 

「講師としては落第でいいんじゃないか?」

 

「どーかん」

 

「僕のターン!」

 

 悠々と先行奪取の宣言をするOBの姿は、先程までよりも燻んでみえた。

 

「僕は手札より魔法(マジック)カード[アラメシアの儀]を発動!

 効果により勇者トークンを攻撃表示で特殊召喚し、デッキより[運命の旅路]をフィールドに置く!」

 

 光り輝く魔法陣の中から、いかにも勇者と言わんばかりの人型が現れる。

 使用デッキは敢えて聞いてこなかったが、これならアイツらが負けるのも理解できた。

 

「そのまま[運命の旅路]の効果を発動!

 デッキより[流離のグリフォンライダー]を手札に加え、[聖殿の水遣い]を墓地へ送る」

 

「チェーンはない」

 

「ならばそのままグリフォンライダーの効果を発動し特殊召喚! このタイミングで再び[運命の旅路]の効果、デッキより[光の聖剣ダンネル]を勇者トークンに装備させる!」

 

 勇者トークンの手元へ雷が落ち、輝きの中から聖剣が現れる。

 グリフォンライダーも背後に控え、一瞬だが水遣いの姿も見えた。勇者御一行、正にそういうべき盤面である。遺跡の魔鉱戦士? 純構築か焔聖騎士くらいでしか彼の活躍の場は……うん。

 

 流離のグリフォンライダー「クケェ!」

 DEF2800

 勇者トークン「ハァッ!」

 ATK2000→2500

 

「ねぇ遊陽、ダンネルってなんだっけ?」

 

「勇者系装備魔法の1つだな。騎竜ドラコバック、光の聖剣ダンネル、星空蝶(スターリット・パピヨン)辺りがメジャー」

 

「あたし、ドラコバックしか見たことないや」

 

「同感」

 

 基本的に勇者というテーマは、他のテーマと組み合わされることが多い。よって必然、一番汎用性の高いドラコバックが最もよく見るカードになる。

 

「さらに僕はカードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

 


 Prayer:勇 手札:1

 LP:4000【Tern1】

 

 ①:伏せカード

 ②:運命の旅路

 ③:光の聖剣ダンネル

 ④:流離のグリフォンライダー

 ⑤:勇者トークン

 

 

 
 
 

 

 

 
 
 

 

空白

空白
 

 
 
 
 

 

 

 
 
 

 

 LP:4000

 Prayer:遊陽 手札:4


 

 だが、ここまでの動きから予測できる構築は出張型じゃない。

 間違いなく相手のデッキの構築は──

 

「純勇者かー……」

 

 呟きながらざっと思い返す、20余枚の関連カード。

 どれが何枚、どういった形で採用されているかは不明。

 

 相変わらず融合ギミックは来てくれないが、それでも手札は悪くない。

 

 なら、捲りきれる。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 まずは見える妨害から踏んでいこうか。

 

「スタンバイ、メイン。俺は手札から[闇の誘惑]を発動! 効果により2枚ドローしたい」

 

「させる訳がない! [流離のグリフォンライダー]の効果、このカードをデッキに戻し発動を無効にして破壊する!」

 

 闇色の力がデッキからカードを捲りかけた瞬間、飛んできたグリフォンライダーが闇を散らして帰っていく。

 

「くっ……」

 

 悔しそうな顔をしつつ、頭は冷静に。

 慢心してくれれば儲けもの。

 グリフォンライダーを先撃ちということは、手札に握っているカードは[灰流うらら]じゃない。いや、迷いなく先撃ちをした辺り、恐らく手札誘発でもないか。

 

「どうしたんだい? まさかこれで終わりなんてことは──」

 

多分通るな。続けて手札より永続魔法[旅団の摩天楼]を発動!」

 

「──なにッ!? 何だそのカードは!」

 

「発動時の効果処理として、フィールド・墓地に同名カードの存在しないレベル4以下の幻想魔族モンスター1体をデッキから手札に加える」

 

 チェーンは? と促すが返事はない。

 そのまま進行させてもらう。

 

 ずらりと、手元に表示されたデッキの中身。

 

 本当ならここから[コーンフィールドコアトル]→[ミラーソードナイト]と繋げてキマイラ融合からリーサルを取るルートがあるのだが……

 

「……やっぱり、まだ駄目かぁ」

 

 3枚ずつ採用している筈の2種類は、揃って6枚デッキボトムに固まっていた。ガゼルやバフォメットも中段くらいで纏まっている。一番下じゃないだけ、許されてきてて少し嬉しい。

 ではなく。

 効果で無理やり引っこ抜くことも出来なくはないが、そうした場合の後が怖い。ただでさえ拗れているデッキとの関係を、こんな相手のために悪化させる理由はない。

 

「効果解決、俺はデッキより[ナイトメア・ヴィジョンズ]を手札に加える!」

 

 よって当初の予定通り、幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)を主軸とした展開で持っていく。

 何かトアがメチャクチャに目を輝かせてるが、そんなに珍しいカードだろうか? マジシャンズ・ソウルズの幻想魔族版。30円くらいなんだが。

 

「そのままヴィジョンズの効果を発動!

 発動コストとしてデッキからレベル6以上の幻想魔族……幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)を除外することで、このカードを特殊召喚するか、除外ゾーンより幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)を特殊召喚できる!」

 

 ソウルズと違い、ヴィジョンズの除外効果には欠片も汎用性がない。いつか化ける、いつか化けると言われながら、埋もれて日の目が出なかった過去を持つ。地元じゃストレージの常連だった。

 

「俺はヴィジョンズ自身の特殊召喚を選択!」

 

 チェーンはなし。

 わざわざ攻撃力を上げるダンネルを装備した以上、恐らく伏せはあのトラップ。1対1交換を嫌ったか、或いはこっちの使うカードの知識が不足しているか。

 どちらにせよ好都合!

 

「続けて魔法カード[幻魔術の帷(ナイトメア・カーテン)]を発動!

 LPを1000支払うことで、手札・墓地・除外ゾーンから[幻惑の魔術師]1体を特殊召喚する!」

 

 遊陽 LP4000→3000

 

 幻惑の魔術師「フン……」

 ATK2500

 

 やれやれと言わんばかりの雰囲気で、黄金の衣を纏ううちのエースか降臨した。

 トアは無音ながら外人4コマみたいに盛り上がってる。

 なぜぇ……?

 

「続けて[幻魔術の帷(ナイトメア・カーテン)]の墓地効果を発動! このカードを除外することで、デッキから『幻惑の』魔法・罠カード1枚を手札に加える! その後、手札か場のカードをデッキボトムに戻す」

 

「何が使われるかは分からないが、これ以上好き勝手はさせない!

 僕は(トラップ)カード[サンダー・ディスチャージ]を発動! ステータスか僕の勇者トークンの攻撃力以下の相手モンスターを全て破壊する!」

 

「チェーン、幻惑の魔術師の効果を発動」

 

 ヴィジョンズの効果はよく見ている。が、流石にこちらを侮りすぎだ。こんなタイミングで、見える最後の妨害を吐くなんて。

 

「ばかな、そんな効果は幻惑の魔術師にはない筈──!」

 

「[幻魔術の帷(ナイトメア・カーテン)]で呼び出された幻惑の魔術師は『1ターンに1度、相手が魔法・罠の効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にする』効果を持つ。サンダー・ディスチャージの効果を無効に」

 

 フィールドに降り注いだ雷の雨が、揺らめくオーロラに阻まれる。

 

「逆順処理によって、デッキから[幻惑の眼]を手札に加え[旅団の摩天楼]をデッキの一番下に戻す」

 

 これで相手の伏せはなし。

 墓地効果は水遣いのみ。

 手札は推定誘発じゃない。

 ……妨害は踏み切れたか?

 

「続けてヴィジョンズの効果。除外されている魔法・罠カードを2枚までデッキの下に戻し、その分だけデッキからドローする。今回は1枚ドロー!」

 

 メイン戦場がクラシックルールの身としては、強烈に違和感があるが……

 

「カードを2枚セットし、ヴィジョンズ1体でリンク召喚[リンクリボー]!」

 

 ……バトルフェイズに入る前、忘れずにカードをセット。役割を終えたヴィジョンズもリンクリボーへ変換。

 

「バトルフェイズ!」

 

 リーサルは取れないが、盤面はこれで荒らし切れる!

 

「[幻惑の魔術師(ナイトメア・マジシャン)]で[勇者トークン]を攻撃!」

 

「迎え撃て、僕の勇者!」

 

 紫の炎を浴びながらも、聖剣を支えに懸命に勇者トークンが耐える。

 

 勇 LP:4000→3500

 

 が、しかし。

 

「このバトルでは双方のモンスターは破壊されず、バトル後に幻惑の魔術師の効果が起動。勇者トークンのコントロールを奪取する」

 

 ふらふらとした足取りで、勇者トークンかこちらのフィールドに移動する。聖の操っていたドラゴンと違い、人型だからか目がなんか危ない感じになっている。主に霊使いやエクソシスターとかがしたら、男性デュエリスト的に不味そうな眼だった。

 

「続けて[勇者トークン]でダイレクトアタック!

 この瞬間、幻惑の魔術師の効果を発動。1ターンに1度、このカード以外のモンスターが攻撃するアタックステップ開始時、場のカードを1枚破壊できる……選ぶのは[運命の旅路]!」

 

 仲間との絆を砕きながら、勇者トークンが元のコントローラーへ突撃する。聖剣を高く掲げ、一閃。

 

 LP3500→1500

 

「ぐ、ぁぁぁぁ!!」

 

 その衝撃で、大きく勇プロが体勢を崩した。

 先行していたリードがなくなり、そのままこちらへ迫ってくる。

 

 先ほど敢えて明言していなかったスピードデュエルのルールとして『コースでクラッシュした場合・デュエル中にボードから降りた場合は敗北となる』というものがある。主に安全面から制定されたルールだが、プロのデュエルでは互いにそれを狙いつつの攻防も見所になる……らしい。

 

 それ狙いの半クラッシュ。あまりにも大人気ない。

 

「まあ見せ場にさせて貰うけど、なっ!」

 

 Dボードの推力を急上昇。リンクリボーのアシストを受けながら、クラッシュした相手を飛び越えるように空へ飛ぶ。

 その際に、ボード後ろ側を掴んで(グラブして)軽く決めポーズ。速度を落とさないまま追い越し、前後を反転しながらコースに着地する。

 

「続けて、リンクリボーでダイレクトアタック!」

 

 デュエルの腕が思ったより大したことない辺り、こういった盤外戦自由でやられたクラスメイトも多い筈。ということで、仇討ちとさせてもらう。

 

「ちっ、避けたか……!」

 

 勇 LP1500→1200

 

 そう思ってのクラッシュ狙いのダイレクトアタックだったが、曲がりなりにもプロだったらしい。体勢を崩し切ることは出来ず、平然と耐えられてしまった。 

 

「ターンエンド!」

 

 最後に大きく円を描くように進路を反転。

 ターンを譲り渡した。

 


 Prayer:勇 手札:1

 LP:1200

 

 ③:光の聖剣ダンネル

 

 

 
 
 

 

 

 
 
 

 

空白

空白
 

 
 
 
 

 

 

 
 
 

 

 ❷:リンクリボー

 ⑦:勇者トークン

 ⑧:幻惑の魔術師

 ⑩ ⑫:伏せカード

 

 LP:3000

 Prayer:遊陽 手札:2


 

「君、僕を騙したなッ!?」

 

 クラッシュから復帰、追いついてきた勇プロの進路をブロックしている時。ふと、そんな恨み節が聞こえた。

 振り返ればそこにあったは、先ほどまでの好青年の皮を脱ぎ捨てた剥き出しの感情。勝利を求めて歪んだ、見知った斜陽のデュエリストの顔があった。

 

「騙したって?」

 

「シラを切るな! 妨害の打ちどころを知っているカード知識、こちらのカードに対する理解、そして効果確認のタイミングを取らせないテクニック! その全てが、他の補習が必須な雑魚どもとは違う!

 確実に、僕らプロ側の存在だ!」

 

「はははは! ご冗談を。俺はこの通り、8戦2勝程度の雑魚ですよ」

 

「くっ、僕のターン!」

 

 ディスクへ表示させ見せびらかした公式の戦績を見て、歯を食いしばって勇プロが引き下がる。だがどうせなら、ここで詰めきる!

 

「ならこのドローフェイズ、スタンバイ移行前にスキル発動!」

 

 これこそが、スピードデュエルの本懐。

 各々のデュエリストが持つ、必殺の隠し札。

 

「スキル発動【オープン・アイズ】!」

 

 自分自身、正直かなり陰湿だし見栄えが悪いのは分かってる俺の固有。その効果は──

 

「カード名を1つ宣言して発動できる。相手の手札に宣言したカードが存在している場合、そのカードを墓地へ送る。存在しない場合、俺は手札を1枚墓地へ送る。宣言するカード名は『強欲で金満な壺』!」

 


 スキル【オープンアイズ】

 2ターン目以降、自分・相手ターンの任意のタイミングで発動可能。

 カード名を1つ宣言して発動できる。相手の手札に宣言したカードが存在している場合、そのカードを墓地へ送る。存在しない場合、自分の手札を1枚墓地へ送る。


 

 所謂ピンポイントハンデス。

 1ドロー1000LPと言われるデュエル・モンスターズにおいて、かなり珍しい部類の効果。決まれば強いがしかし、この効果の本質はそこではない。

 

「僕の手札に該当のカードはない、自分の手札を捨てるがいい!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 実質的にこちらがメインの効果になる。

 

「手札のカードは[おろかな埋葬]と[遺跡の魔鉱戦士]……確認した。俺は手札から[モコモッコ]を墓地へ送る」

 

 そしてこの時点で、スキルという不確定要素を除けばこちらの勝利が確定した。

 

「好き勝手に動きやがって、僕のターンだぞ!」

 

「この程度なら動いてねぇよ!」

 

 罵倒を聞き流し効果を処理。

 さて、あとは相手のスキルと埋葬先次第だが……

 

「スタンバイ、メイン!

 僕は魔法カード[愚かな埋葬]を発動!」

 

「通しで」

 

「効果によりデッキから[ネクロ・ガードナー]を墓地へ」

 

 これで状況は、詰めろ*1から必至*2へ変化した。

 

 相手が展開を行う場合、必須となるのは[アラメシアの儀]だ。けれどこちらの場には魔法をターン1で無効にできる幻惑の魔術師がおり、相手の抱えている札にそれを防ぐ手立てはない。

 

 よって詰みだ。

 

「墓地の水遣いの効果。デッキからアラメシアの儀を手札に加え、ターンエンド」

 

 プロである以上サレンダーはしない筈なので、あとは精々派手に散って貰うだけ。

 それに向こうも気付いたのだろう。

 信じられないといった様子で叫んだ。

 

「……ふざけるな! 僕は1億以上を稼いだプロデュエリストたぞ!」

 

「残念ながら。お前の目の前にいるのは、3億は稼いだプレイヤーだ」

 

 とりあえずトアのカンペ通りに言ってみたけど、こんな感じでいいの? OK? そう……

 

「──ッ! そうか思い出したぞ、去年のクラシック戦線で活躍したデュエリスト!

 竜王、ジェイルクイーンの2人と最後まで接戦を繰り広げた、クラシック三巨星最後の1人!」

 

「残念だけど」

 

 2つ名を言い切られる前に、無理やり言葉をねじ込んだ。

 思い返すのは、先ほどサーチのために開いたデッキの状態。キーカードが軒並みボトムに沈んだ、正しく死んだデッキの姿。

 

「あんたの言うデュエリストは、半年前に死んだよ」

 

 失われてはいけなかったものと一緒に。

 とっくの昔に。

 

「ドロー、スタンバイ、メイン経由でバトルフェイズ。

 勇者トークンでダイレクトアタック」

 

「ネクロガードナーの効果、戦闘を無効にする!」

 

「続けて[幻惑の魔術師]でダイレクトアタック!

 幻・魔・導(ヴィジョン・マジック)!」

 

 勇 LP1200→0

 

 最後の一撃はあっけなく通り、決着のブザーが鳴り響く。

 けれどそれを聞く胸の内は、数瞬前までの燃え上がる興奮は消え失せて。嫌なほどに凪いで、冷え切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば。昼のデュエル前にトアが言いかけてたことって、結局何だったんだ?」

 

 夕方。

 クラスの奴らとラーメン屋に立ち寄り祝勝会をした帰り道。人もまばらな帰路を歩きながら、気になっていた事を尋ねた。

 

「え? 言いかけてたこと──って、

 あーーーー!!!」

 

 キーンと耳に響く絶叫。

 そしてだらだらと汗をかくトア。

 案の定、重大な案件でかつ伝えるのを忘れていたらしい。

 

「そうだった! そうだった!

 デュエルが楽しくて忘れてたけど、こんなことしてる場合じゃなかった」

 

「どうどう」

 

「落ち着いてなんてられないよ!

 だってこのままじゃ、人類は滅亡する!」

 

「な、なんだってー⁉︎」

 

 思わず古典的な反応をしてしまったが、トアの目はマジだ。本気と書いてそう読む方の。

 

「あたしのデッキに居た12枚の精霊。12宮のカード達は、遥かな過去から星に存在した力のあるモンスター(スピリット)。全てを揃えれば、世界を作り変えることもできる力がある!」

 

「それはまたなんともご大層な」

 

 けれどまあ、トアのいた場所と同じような話は知っている。

 いつか蘇るデュエルの王や、世界の終末に現れるという時を戒める神の逸話。天の地の錠前を外すことにより現れるという赤き竜の神話。光と闇の決戦による滅亡の予言。魂のランクアップ、AIの暴走。

 真偽はともかく、あげればキリがない。

 

「遊陽やライバル君、あとはデュエルチェイサーの人たちクラスの力があるなら、溢れる力の余波にも耐えられる。勿論、それでも心が不安定だったりすると別だけど……それでも。だからあたしも安心して、腰を落ち着けて探す方針でいたの!」

 

「でも、実際は違ったと」

 

「強さの基準が、あのプロ辺りが平均だって言うなら────」

 

 と、話しながら大きな交差点に足を踏み入れた瞬間。

 

 ────パキン

 

 なにか、硬いモノが砕ける音がした。

 

「こうやってカードの精霊に呑まれる、と。あの時の聖みたいに」

 

 なるほど厄介な話だ。

 まさか1週間も経たない間に2回目を経験するなんて、思いもしなかった。

 

「トア、デュエルする力は残ってるか?」

 

「……ううん。ごめん、まだ煌臨出来るほどじゃない」

 

「マジか」

 

 急激に景色が塗り変わっていく。

 市街の大通りが青い結晶に侵食されていく。

 既に人の姿はなく、聞こえるのは結晶が砕ける奇妙な音。

 そして──遠くから聞こえる、Dボード特有の機動音。

 

「ただ、精霊(スピリット)との結びつきが弱くなったところを、あたしに再契約させることはできる……と、思う。

 ううん、やってみせる。

 だから!」

 

 一呼吸置いて、真剣な眼差しでトアが叫んだ。

 

「勝って、あたしの契約者!」

 

「なるほど、分かりやすくなった!」

 

 近づく機動音をBGMに、デュエルディスクを展開。

 闇のゲームを受けるのはあの日以来、半年ぶりだが……もう、あの時の俺とは違う。いい意味でも、悪い意味でも。

 けれど1つだけ、はっきりしていることがある。

 

「こんなところで、立ち止まっていられるか」

 

 たった今、予定外の光明も見えたのだ。

 トアは以前『勝つことが仕事』と言っていたが、俺も『負けることは許されない』。

 

「契約の巫女、トアの名において命ずる」

 

「「ゲートオープン、界放!」」

 

 そんな決意をしかと刻み、俺たちは戦場へと飛び込んだ。

 

*1
対処次第で詰みにならない状況のこと。将棋用語

*2
どう足掻いても詰みですありがとうございました。将棋用語




【今週のキーカード紹介!】



《ナイトメア・ヴィジョンズ》
 闇 レベル1 ATK0/DEF0
 幻想魔族・効果
 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:このカードが手札に存在する場合、デッキからレベル6以上の幻想魔族モンスター1体を除外し、以下の効果から1つを選択して発動できる。
 ●このカードを特殊召喚する。
 ●このカードを除外する。その後、「幻惑の魔術師」1体を自分の除外ゾーンから特殊召喚できる。
 ②:自分の除外ゾーンから表側の魔法・罠カードを2枚までデッキの一番下に戻し発動できる。自分はデッキに戻した数だけドローする。
 ③:このカードがモンスターと戦闘を行う場合、その2体はその戦闘では破壊されない。


幻魔術の帷(ナイトメア・カーテン)
 通常魔法
 このカードの①②の効果をそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
 ①:LPを1000払って発動できる。手札・墓地・除外ゾーンから「幻惑の魔術師」1体を特殊召喚し、そのモンスターは以下の効果を得る。
 ●1ターンに1度、相手が魔法・罠の効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にする。
 ②:墓地のこのカードを除外して発動できる。自分のデッキから「幻惑」魔法・罠カード1枚を手札に加え、その後手札・場のカード1枚を選んでデッキの1番下に戻す。



 一見強そうに見えるデザイナーズコンボとも取れるカード達だけど、前者はコストになるカードの汎用性が皆無なこと。加えて除外を経由することによる①②共に活用が難しい悲しみ。
 カーテンは弱めの未来龍皇と言えなくもないが、加速する現代デュエルで1000LPも払って召喚範囲にデッキがないこと、サーチにそもそも対応していない致命的な欠点があるぜ!

サラッと登場する謎のオリジナルカード(ナイトメア・ヴィジョンズ等)は

  • あり
  • なし
  • わたしは一向に構わんッ!
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