【本編完結】ガンダム種運命 RTA ザフト軍人チャート 作:Damned
投稿しないと、キラキラの向こうに連れていくって言われたので、投稿します。
《く、これがフリーダムの実力だというのですか……!? 》
すれ違いざまの一閃。回避すら許されず、
さらに、グフイグナイテッドの右腕とガイアのライフルも破壊される。手当たり次第かよ、と呟くのが聞こえて、アンヘラも愚痴っぽく言葉を返した。
《俺が背後を取る。頼むぜ》
ハイネの提案に、頷く。彼の実力は、フェイスに任命されていることからも証明されているが、何よりガイアとの戦闘からも読み取れていて。急増のコンビにもかかわらず息があっている──否、合わせてくれている。
撃墜は無理であろうとも、ガイアを押さえてほしいのだとアンヘラは読み取った。アスランに加勢しに行くのだろう。
変形したガイアが、その形態にふさわしくこちらに飛び込んでくる。それをひらりと交わした後、最後の一発になってしまったレールガンを放つが──回避された。やはり、新型を奪取したのはジブリールの子飼いなのだろう。連合は先の戦争でも生体CPUなる者を使用していたし、今も昔も後ろ暗い所は変わらないということか。見た事があっても、反吐が出る。
テセウスをすり抜けていくガイアに腕を切り裂かれて、は、と気づく。
背後にはフリーダム。討ってくれるというならありがたいが、たとえ生体CPUであっても彼に攻撃を当てることは難しいだろう。
そして、アスランに加勢して、フリーダムを攻撃しようとしているハイネが──ハイネはきっと、ガイアに気付いていない! たとえ気付いたとしても、
まずい、と気づいたところでもう、言葉が出ていた。
《ハイネ! 後ろ──!!》
その言葉に、ハイネは振り返った。直後に鳴り響いたアラートに、全力でバーニアを吹かせる。恐ろしいGに蝕まれながら感じたのは、機体が破壊されるおぞましい音と感触。
「うお──」
《ハイネさんっ》
液晶が両足の全損、それからバーニアが傷付いているのを知らせる。これではバランスを取ることもままならない。
落ちる。
そう理解したハイネの耳に、ガリガリと金属がこすれ合うような音が届き、先程通信を飛ばしてくれたテセウスが──アンヘラが、自機を受け止めてくれたことに気付く。とはいえ、二機を抱えられるほどのパワーはないのだろう。乱暴な着地に大きくコクピットが揺れた。
はっはっと荒い呼吸を繰り返し、ハイネはアンヘラに通信を飛ばす。
《助かった、アンヘラ……》
本当に、死ぬところだった。少なくも、この状態で海面に叩きつけられてしまえば、否、彼女の声がなければ今ごろ、自分はガイアの餌食になっていたのだろうから。
《すみません、ハイネさん。乱暴な口調になってしまいました》
対するアンヘラの反応は、どうでもいい事案と、その謝罪だったのである。
ハイネが離脱するRTA、もう終わってる!(錯乱)
あれから両軍とも撤退になり、グフイグナイテッドを抱えて帰投しました。ここでモタモタしているとお礼だったりで時間を取られてしまいます。とっととロッカーに駆け込みます。生死にかかわらず機体がダメになったハイネはここで離脱ですし、次に会うのは宇宙。ここさえ切り抜ければ問題ありません。
着替えたら、真っ先にシャワーを浴びに行きましょう。疲れているのに間違いはありませんので、寝ていれば戦闘や訓練以外で起こされることはないです。だから、とっとと自室に帰る必要があるんですね。
と、思っていたのですけれど。
>アンヘラ。今いいかしら?
グラディス艦長から直々の連絡です。これは拒否できないので素直に出ましょう。何だお前(素)。
>どうされましたか?
>ハイネから、この紙を渡すようにと言われたの。……もちろん中身は見ていないわ、安心して頂戴ね。
お礼を言ってさっさと退散してもらいます。さてさて、手紙の中身は……。
アンヘラへ
明日、この艦を下りることになった。その前に話したいことがあるから、会議室に来てくれないか? 時間はそっちに合わせるから、艦長か俺に連絡をくれると助かる。
それから、助けてくれてありがとう。お前のおかげで、また戦うことができる。
…………(絶句)。
ヌゥン! ヘッ! ヘッ! (助走)
ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!
ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!
フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!
フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!
「アンヘラ、今日は時間取ってくれてありがとな」
ミネルバに備えられて、四人ほどしか座ることのできない会議室。
主にヒアリングに使用されるそこで、ハイネとアンヘラは向かい合っていた。
「さすがに、上官からの手紙を無視するほど尖ってはいませんよ。シンくんでもあるまいし」
「なんだあいつ、そんな事してんのか?」
「冗談ですよ。ツンケンしていますが、ちゃんと弁えている子です。……多分」
アンヘラはくすりと笑った。呼び捨てを求めた時にも「くん」や「さん」付けだけは崩さなかった彼女であるが、意外にもウィットに富んだ性格のようである。よく考えれば、一つとはいえアンヘラはハイネよりも年下なのだが。
それで、とアンヘラは声のトーンを戻した。いったい何の用事なのか、彼女は見当がついていないのだろう……当たり前ではあるが。
「お礼はお手紙でも口頭でもいただきましたし、何かあったのですか?」
「艦を離れる前に、改めて言っておきたくてな。──助けてくれて、ありがとう。俺がここにいられるのも、話せているのも全部、アンヘラのおかげだ」
「ハイネさん、」
「ハイネ、だ。あの時だってちゃんと呼んでくれただろ?」
ハイネ、後ろ。普段落ち着き払った口調のアンヘラとは思えない、乱雑な注意喚起に、彼は救われた。その一言に救われた瞬間を、忘れられないでいた。
「ですが……」
「……無理言って悪かった。押し付けるような言い方になるが、俺はお前に恩を返したい。……力に、なりたい」
普段飄々としているハイネであるが、この時は、それが嘘のように真剣な表情でそう言った。
だからこそ。
「ふふ、そんな言い方をしてはいけませんよ? 貴方にそう言われては、口説かれていると思ってしまいます」
アンヘラは、冗談っぽく返した。
しかし、ハイネも譲らない。眉一つ動かさず、変わらない態度で続けるのに、アンヘラは気圧される。
「そう思ってくれたって構わない」
「何を馬鹿なことを、」
「本気だ」
返す言葉を失って、アンヘラは口を噤む。
ハイネは何も言わず、ただ彼女の答えを待っていた。冗談でも何でも笑い飛ばしてくれればいいのに、彼が沈黙を保っていることが、アンヘラの圧力となる。小さく息を詰め、俯くこと数分──アンヘラは、聖母のような穏やかさで微笑んだ。
「恩を返したい、力になりたい。その気持ちは、とても嬉しいです」
その言葉に、きっと嫌悪されたと思ったのだろう、ハイネの瞳には後ろめたさに似た何かが宿っている。が、ここで言い返すほど、人間としてできていない訳ではない。
「ですから、こうしませんか? ──「『タイマーが動き出している』。これが合言葉です。もしあなたが窮地に陥った時も、こう伝えてくださいね?」
それは、使う気のない約束。
少なくとも、アンヘラからは、発することのない合言葉。
「『タイマーが動き出している』──」
「ええ。二人だけの秘密ですよ、ハイネ」
秘密。
その言葉の響きに、得も言われぬ感情が揺らぐのを感じる。秘密と言うのはお互いに共有しあう罪であり、契約である。互いの信頼の上で成り立ち、抱え続ける責任を伴うものだ。
「分かった。そう危険なことがないほうがいいが、もし何かあったら、その時は頼ってくれよ」
務めてさわやかに、ハイネは返した。
「それじゃ、またどっかで会おうな。できれば、戦場以外だといいな」
立ち上がったハイネが、アンヘラの肩を優しく叩く。
確かに、自分は彼を助けた。ただそれだけで、何かしてほしかった訳でも、お礼を言われたかった訳ではない。
だからこそ、彼に返せたのは、社交辞令的なものでしかなかった。