【本編完結】ガンダム種運命 RTA ザフト軍人チャート   作:Damned

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#18 兄の願い

 海面が高速での飛行に波打っていた。制服のままで搭乗した黒いテセウスは、調整が違うらしく普段よりも強くGを感じさせてくる。

 対して追ってくるはデスティニー。粒子のごとき輝きを散らしながら飛行するオレンジの機体は、認めたくないとばかりに牽制射撃のみに留めている。

 

「何でこんなことになってんだよっ。何があったか知らないけど、どうして議長を撃った!?」

 ──議長を、私が? 撃たれたのは自分の方だ。それが捻じ曲げられている以上、戻ってもやれることは容疑の否認のみである。

 ブルーコスモス/ロゴスのスパイが、ザフトの最高権力者たるギルバート・デュランダルを撃った。そんなところだろう。銃殺刑は免れない。その上で、情報を吐かせるために手段は問わないだろう。

 

「救ってもらった命で、その恩人に銃向けて! 分かってるさ、軍人は命令に従わなきゃいけねぇってことは! だからこそ俺は、俺に……!」

「ハイネ」

「なあ、アンヘラ。あの時お前に救われて、世界が鮮やかになった気がして……。お前が何を考えてようが構わねぇ、だから、俺にタイマーが動きだしている(必 要 だ)って言ってくれよ……! そしたら、俺は!」

 

 それは、二人しか知らない合言葉。助けてくれと求めてくれれば、どこまででもハイネはついて行く覚悟があった。

 たとえそれが、脱走兵になったとしても。

 しかし、返ってきたのは拒絶だった。

 

「必要ない」

「何でだよっ、今こそ使ってくれよ! お前がいなきゃ死んでた命なんだ、それを使い潰すくらい──」

「必要ない」

「……これが、最後の警告だ。降伏しろ、アンヘラ・レズルタート」

 普段の爽やかなそれとは違う、背筋が凍るような無機質さと冷たさを感じさせる声だった。

 全てを抑制したテノールだった。

 

 そしてそれも、アンヘラは拒む。

「ハイネ・ヴェステンフルス。フェイスならば、その責務を果たしなさい」

 自分を殺せ、裏切り者を処断しろと、彼女は言っているのだ。それがどれほど残酷か、分かっていない訳もなく。

 軍人は、命令とあれば従わなければならない。たとえそれが、愛した女を殺せという内容であっても。

 

 操縦桿を軋むほど握りしめた。背中から抜いたアロンダイトを構え、加速するデスティニーは、ハイネの感情を表すように光の粒を溢れさせていた。

 そうして振るわれた刃は機体を深く切り裂いて、海中へと沈んでいく。

 誰かの絶叫が聞こえた。否、それが自分のものだと気づくまでに、数秒を要した。

 

 しかし、答えるものはなく。

 

「貴方はもう──」

 そこで、音声は途切れた。

 

 

 

 アンヘラ・レズルタートの議長殺害未遂と、アスラン・ザラ、メイリン・ホーク両名の脱走。同時に起こったその事案は、三人がロゴスのスパイであることを断定したも同然であった。

 痛みは薬で抑制しているのか、普段と変わらぬ表情のギルバート・デュランダルは、ハイネと向き合っている。

 

「君と彼女のことは、他のクルーからも聞いている。……酷いことを命令してしまったね」

 ──酷いこと、とデュランダルは言った。その言葉の通り、彼女のことを愛してさえいた男に、殺させるような真似はあまりにも残酷である。

 しかし、軍はそれを考慮するほど甘い場所では無い。分かっていても、飲み込めるほどハイネは冷静ではいられなかった。

 

「さて、ハイネ。君は大まかな概要しか知らないだろう、彼女の行いを含めて、何か聞きたいことはあるかな」

「アンヘラ・レズルタートの行動についての詳細を、教えていただけませんか。失礼ながら自分は、彼女がそんなことをしたとは信じられないのです」

 

 確かにアンヘラは、別の目的があるような振る舞いをしていたが、デュランダルに銃を向けるような愚かな真似をする人物ではない。

 付き合いは短く、共に戦ったのも一度だけ。そんな関係でも、わかる。

 私情と言われても仕方がないとは自覚しているが、本当に、信じられなかったのだ。

 

「そうだね……まず、君たちが来てくれたあと、アンヘラだけを残しただろう。そこで、彼女がロゴスのスパイでないか問いかけたんだ。その結果」

 向けられたのは言葉ではなく、銃だった。

 MIAになったシンについて尋ねられて、あんな表情をするアンヘラがスパイであるとは思えない。しかし、仮に議長の勘違いであったとすれば否定するはずだ。

 だが、彼女は。

 

「これが、今の私が知っていることの全てだ。他には、何かあるかな?」

「……いいえ」

 

 アンヘラは本当にロゴスのスパイだったのか? だとしたらなぜ、今の今まで潜伏していたのだ? そしてなぜ、今になって銃を向けたのか? 分からないことが、あまりに多すぎる。

 その後も複数の言葉を交わしたが、詳細は分からぬまま。話せない内容があるのか、本当に不明なのか、それとも。

 

 一介の軍人である自分には、それ以上踏み込むことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 いい加減、この艦にも慣れてきた。

 ミネルバとは勝手の違うこのアークエンジェルだが、格納庫に降りなければ問題ないとのことで、カガリは自由な行動を許した。同じく捕虜のネオとは違い、だ。

 理由は分からないものの、ネオは相当警戒されているらしい。あるいは、シンにはステラという人質がいるからか。そもそも逃げる気もないし、整備士でないシンにも分かるほどインパルスは破損しており、オーバーホールとなるのは確定だ。故に、逃げようにも逃げられないのだが。

 

 ネオが時折『ムウ』と呼ばれているのは知っている。アークエンジェルのかつての乗員と瓜二つらしい。というより、遺伝子的にも同じだそうだ。死んだと思われていた彼が生存し、あまつさえ記憶も無くしているのだ。驚くのも無理はない。

 しかしこの男──立ち振る舞いも顔立ちも何もかも知らぬのに、どこかで感じた雰囲気がある。記憶もなければ名前も──もしかしたらだが──偽名。

 結局、考えたところで無駄であるが。

 

 夜が更けても明かりが灯るフリーダムのコクピットを眺めながら、シンはため息をついた。時折のぞく茶髪から、そこに座っているのはキラのようだ。

 こんな夜中まで。起きている自分が言えたことではないが、心中でそう呟く。これがここ数日だ、フリーダムのパイロットは一向に顔を見せないだけでなく、()()()()()()()に無理を強いているらしい。なんとも腹立たしいことだ。

 

 平和への理念を含め、シンにとってキラは好感を覚える存在であった。穏やかで、でも芯があって、カガリとも対等に言い合える青年。そのうえ、パイロット達が感謝する整備士の側の人間だ。その振る舞いには影があり、どこか危さを感じさせる。ステラとも似た脆さだ。

 ──そのステラは、いまだ眠ったままである。

 戦闘で負ったダメージだけでなく、『ゆりかご』での調整、そして長期間に渡ってそれが無いせいだろう。峠を超えることはなく、ひたすら維持をすることだけしかできないという。ミネルバで日に日に衰弱していった時よりはマシだ。

 

 これもすべて、アンヘラの残してくれたデータのおかげだった。エクステンデッドの()()()()、投与した薬物、拮抗剤の種類、段階的に()()方法まで。彼女が渡してくれたメモリースティックに封入されていた。

 一体どこで手に入れたのか──恐らく、ロドニアでの調査の折だろう。ステラがミネルバで衰弱していた事を考えるに、上層部には報告していないのは何故か。

 自分ならば解放する。そう、思われていたのだろうか。それにしてはやけに細かい分析だ。

 

 まず、あのタイミングでのステラの解放。もう数日遅ければ、ステラは死んでいた。シンが連れ出し、連合に返還しなければ彼女は既に。

 次に、『行動を起こすつもりなら手伝う』という言葉。営巣で貰った言葉の通り、それは役に立ってくれている。

 そして、先のデストロイとの戦闘だ。軍人として失格といえる『命令で人を殺せない』シンの代わりに、彼女を殺そう(止めよう)としてくれた。結果として、二人とも奇跡的な生還を遂げた訳だが、それを見越していたようなプレゼントであった。

 

 それが意図的であるならば──もはや、未来予知にも等しいのではないか。

 恐ろしさを覚えながらも、シンはただ、感謝することしかできない。いつか再会できれば、もう全財産を差し出す勢いで。アンヘラのことだから、きっと「では、これを買ってくれませんか?」と廉価なもの一つで済ませるのだろう。

 彼女はいつもそうだ。後ろめたさを抱かせないように立ち回る。理由は分からないけれど、ことシンにはそれが色濃かった。天涯孤独であると何かの折に聞いたので、似た境遇の自分を気にかけてくれていたのかもしれない。

 

「……だれ?」

 水分もとっていなかったのだろうか。僅かに掠れた誰何の声に、シンは答える。

「もう遅いし、寝ないとダメだよ」

「キラさんこそ。ずっと調整していたんですか……?」

 ずっとじゃないよ、調整してる最中に少し眠ったから、とキラは言うが、そんなもので疲れが取れるとは思えない。

 

「キラくん」

 そこへ、穏やかな女性の声が降ってくる。ブラウンのウェーブヘアの女性だ。名前は確か、マリュー・ラミアスといったか。

「そろそろ休まないとダメよ。キリのいい所で休んでね」

「はい、マリューさん」

 

 母子のような会話を聞きながら、でもきっとこの人は続けるのだろうな、と思ってしまう。この日だけではなく、ずっと。シンが見ているだけでも、片手で収まらない頻度でこのような生活を送っていた。

「貴方もよ。シンくん」

 拒否権はない。穏やかでありながらも案ずる彼女に、これ以上気を使わせまいとシンは頷き、ベッドへと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 これからどうすればいいんですか!? なRTA、はっじまっるよー!

 前回は、デストロイからのちかえしの如くコクピットをグッサリ@イグニスターされたレズちゃんですが、なんと生きています。帰ってこれたよ~ア~ッハッハッハッハッハ!

帰ってこれた~ハッハッハッハッハ! 生きてる~! 帰ってこれたよッハッハッハ生きてるゥ〜! ハッハッハ、生きてるよ〜!

 

 さて、ここからはエンジェルダウン──ではなく、ヘブンズベース戦になります。少し早めの基地入りでしたので、時期は原作通りかつアークエンジェルの介入の可能性が残っていますが。連合もといロゴスとの戦いになりますし、情けなく敗走したジブリール達がオーブに匿われたことによってあちらにも戦火が広がりますね。どれもこれもやり方が過激すぎる両上層部のせいです。お前ら酷いよ、もう殺すしかなくなっちゃうよ。

 

 本来ならここでデストロイを市中引き回しにしたり、ジブリールを仕留め損ねたりするんですが。残念なことにレズちゃんは裏切り者になって、ハイネに殺されてしまいました。もう許せるぞオイ!(ホモは寛容)というわけで、動いていきたいと思います。

 

 こ、ここどこ? 目を覚ましたらなんかごっつい部屋でガラスのポッドにぶち込まれてるんですけど……(困惑)。あの手の脱走イベントはアークエンジェルに拾われることが多いのですが、今回は違いそうです。

 ところてこのゲームには日付の表記がなく、起きたイベントから大まかな日時を把握するか、頑張ってカウントするかのどちらかしかありません。なので、もうヘブンズベース攻略戦が終わっていたら経験値も貰えないし、なんならみんな宇宙に行ってるで〜って言われる可能性もあります。ふざけんな!(声だけ迫真)

 

 どこだここ? 誰かー!? バイタルを確認されていたのか、すぐに人が来ましたね。白衣のオッサンです。名前とかいろいろ聞かれてるので答えていきましょう。私はホモだ(自己紹介)。

 

>──意識明瞭。不安定な言動が見られるが、処置の副作用と思われる。

 

 しょ……処置だぁ!? こいつまさか……酷いことしたのか!? エロ同人みたいに!

 

>私は、何故ここに?

 

>先の戦闘で負傷したそうだ。身体の具合は良さそうだね。

 

 現状把握のために色々聞いていきましょう。あ、ザフト関連はいいっす。

 

 オデ、ギチョウニ、ウタレタ。アイツラ、タオス。はいOK。どうせメサイアしばきに行くからどうでもいいです。

 

 ──それで、大まかに理解したんですが、ここは連合の艦らしいです。時系列的には、本編でヘブンズベースに到着したあたり。意外と経っていませんでしたね。

 一番問題なのは……ここがブルーコスモス派の艦であることです。

 

 あああああああああああああああああ!!!!!!!!!

 ほんとにやめてよ!!!!

 うわああああああああ!!!!!!!!

 もうやめてよ!!!!(発狂)

 

 許さねぇ……タァッー↑許さねぇ……! 殺してやるぞデュランダル!!

 ザフトの機体に乗ってたのはバレ散らかしてるし脱走も不可。どうしろってんでぃ(江戸っ子)。画面の向こうで走者も台パンしていますが、手を傷めましたので良い子も悪い子もやらないでね。

 

>えっ、はい。……彼女を、ですか? まだ治って──……はい、はい。分かりました。代わります。

 

 電話ですかね? いやでも今のレズちゃんに連絡取るような人はいないんじゃないですかね。はい! どうされました?

 

>久しぶりだな。アンヘラ。

 

 ……あっ、そっかぁ……。

 

 

 

 

 向けられた端末の画面に、アンヘラは目を見開いた。

「久しぶりだな。アンヘラ」

 色素の薄い髪にエメラルドグリーンの瞳、そして紫色のルージュが目を引く、神経質そうな顔立ちの男。

 ──現ブルーコスモス盟主、ロード・ジブリール。

 

「……どう、して?」

「どうしても何も、()()()()が負傷したとあっては心配になるだろう」

 早く目覚めないのか、と不安になっていたのかもしれない。

「銃弾を受けたと聞いているが、大丈夫か?」

 

 腹に、と言われ、違和感のある場所を撫でてみるが、少しばかり引きつった感触があるだけだ。

「問題ありません、兄さま。私はどうして、ここにいるのです。 たしか、あの男に素性がバレて、それで……」

 モビルスーツに乗って、逃亡したはずだ。

 

「申し訳ありません、兄さま。私の不手際で、お手を煩わせてしまって」

「大丈夫だ、何も心配はいらないさ。お前が無事なら、それでいい」

 いずれザフトからは脱走するつもりであった。それが早まったということは、掴めるはずの情報を減らしてしまったということ。普段であれば「いけませんね、それは。期限を守るのは、ビジネスでは常識ですよ」と叱責されているところだ。

 画面の向こうで、緑の瞳が伏せられた。くすんだブロンド──否、ねずみ色のまつ毛がその色を暗くする。どうしてブロンドではないのだろうか。兄のそれは金の糸のようで──あぁ違う。そうある必要などない。兄の髪はくすんだグレーではないか。華やかさと淑やかさを持ったシャンパンゴールドなわけがないだろう。

 そもそも自分は、何故それほどに色へ拘るのだ? 何かこだわらなければならない理由があるのか?

 頭が働かない。病み上がりなのである、当たり前だ。だから、こんなにも思考が回らないのである。そんな場合では、いやあるはずだ。アンヘラ・レズルタートは、そうして兄のためと生きてきたのだ。

 

「……ィ、さま」

 無意識のまま、アンヘラは呟く。

 糸が絡み合い、蠢くような感覚に落ち着かない。全身を()()()()に這い回られているかのような違和感と不快感が、目が覚めた時から続いていた。

 

「どうしたんだ、アンヘラ」

「……いえ。問題ありません。次の命令を、いただけませんか」

「命令──あぁ、命令。そうだ。お前にそれを伝えに来たんだ」

 

 苦々しい顔で、兄は語った。デュランダルに一杯食わされたこと、それにより、ヘブンズベースへと撤退する羽目になったこと、そして、もうしばらくでそこにザフト・連合の同盟軍が侵攻してくること。

 自分に与えられた命令は、それを退けること。通常の艦隊に加えて、新型の巨大モビルスーツ『デストロイ』を投入するそうだ。戦力は十分である。

 

「期待している。私の大切な妹よ」

「はい。兄さま」

 画面の向こうで、兄が口角を吊り上げた。それから。

 

 

 

 気付けば、見慣れた空間が広がっていた。テセウスのコクピットの中だ。疲れが溜まっていたのだろうか、どうやって移動したのか、パイロットスーツを着たのかさえ覚えていない。これから戦闘だというのに、注意散漫もいいところである。

 

『X57Sテセウス、発進スタンバイ』

 オペレーターの声が聞こえる。どうやら、自分の番らしい。

「アンヘラ・レズルタート。テセウス、出撃します」

 換装機たるテセウスに、各シフターの装備を搭載した全領域型モビルスーツ。

 RGX-05 ディザスターストライカー。便宜的に与えられたそれは、破壊(デストロイ)と近しい意志を秘めた『災厄(ディザスター)』であった。

 

 

 

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