顔に布のようなものがかかり、ドクノオトはそのくすぐったさで目を覚ます。
どうも、気づかないうちに気を失ってしまったらしい。
『なんだハンケチか…』
ドクノオトがゆっくりと上体を起こし、周囲を確認する。
石板は依然そこにあったし、ピニャータと禽竜も同じように倒れ伏していた。
ただ一つ、違っていた点は遺跡だった場所が、構造はそのままに隅々まで清掃の行き届いた施設へと変わっていたことだ。
石材に欠けも無ければ、層を成して表面を覆う植物も全く見当たらない。
おかしな表現ではあるが、『新築の古代遺跡』そうとでも呼ぶしか無い状況だった。
数秒後、ようやく我に返ったドクノオトが2人の肩を揺さぶる。
『…なんですかドク……お夜食なら文机の横に置いときましたよ…』
『寝ぼけないでくれピニャータ、君までマイペースになったら収拾つかない!』
『御自覚があるならちゃんとしてくださいませ!……あら?』
自分を棚に上げたその言葉に、思わず飛び起きたピニャータが周囲を見渡し首を傾げる。
『…リフォームでもなさりましたか?』
『ピニャータは時々突拍子もないことを言うね。』
『ドクはいつでも突拍子もないことを言ってますよ。』
カサリ、と衣の擦れる音がする。
目を覚ました禽竜が石板の絵をなぞっていた。
『なんらかの魔法に巻き込まれたようですな。警戒を怠りました。しかし、それ即ち解法の正しさの証明と言えるでしょう。本格的に、同時代同地域の見知った相手ではなく、ある程度の文明を持つ発見者全てに対する暗号である可能性が高いですな。さて、困った困った…』
禽竜の口角は上がりっぱなしである。
顔とセリフがまるで一致していない。
『ともかく、他の皆さんの安否確認が先決です。ベースに戻って信号弾を上げましょう。一行は、多少動ける禽竜を先頭にベースキャンプの方へ向けて歩み出す。
『む、曲がり角の向こうから足音が。早速合流できそうですな。』
『幸先いいなぁ、調査再開も早そうだ。』ヤルキ
スッと角を曲がった一行が対面したのは、抹茶色の法衣を着た柔和な顔つきの僧侶だった。
『いや誰ェェェェェェ⁉︎』
『そっちが誰ェェェェェェ⁉︎く、くせものォーー!』
一行と僧侶は、互いに正体不明の存在と遭遇した衝撃で、しばらく面白い顔を晒していたのだった。
『驚かせてしまい申し訳ございません。いやはや拙僧も未熟なものです。』
コトン、コトンとテーブルに緑色のお茶が注がれたカップが並べられていく。
ドクノオト一行は生け花が香る応接室へと案内され、緑黄色の僧侶から歓待を受けていた。
道中で受けた説明によれば、ここは『仔羊の楯』という慈善団体の寄り合い所であるらしい。
目的は神に見放された境遇の人々を救済することで、心身共に寄り添うことをモットーとして活動しているとのこと。
心意気は万人に賞賛されるべきであるし、後ろめたい事情の臭いもしない真っ当な団体だと感じ、援助してもいいという気分にさせられる。
………直後の発言さえ無ければ。
『お茶請けもどうぞお召し上がりになってください。申し遅れました、拙僧はジークフリート。この仔羊の楯でカウンセラーを務めております。』
僧侶の名乗りを聞いた瞬間、3人の体が強張る。
その名はとある書物では悪魔のように語られ、また別の資料に置いては鬼神の如く無双と記された。
現代においても、所謂忌み名の1つに数えられるそれは自らの子に付けようものなら、親戚一同から総スカンを受けるような代物である。
適当な子供を捕まえて聞いてみるといい、きっと全員がその名の意味を知っている。
ただ一つの場所を除いて公的に禁止はなされていないため、あり得ない名ではないが…
『少し、お聞きしたい。』
ドクノオトが慎重に話を切り出す。
『どうぞ、拙僧に答えられることであればなんでも。』
『ここは天界で、こちらの代表の方はルーク・ウープ氏で間違いありませんか。』
心拍が高まり、背中がじっとりと濡れる。
(踏み込みすぎたか…?)
ドクノオト一行の心配に反して、ジークフリートはさらりと
『え、ええ。相違ございません。我々のことはご存知でしたか、光栄です。』
頭でも打たれたんですか?そう言ってもらった方がずっと幸せでいられた。
心にかかるモヤのようだった最悪の予想が、その形を顕にしてくる。
『ジークフリート』、それが禁句とされているのは天界で、ルーク・ウープはかの不死身のマオウが頻繁に使用していた偽名の1つだ。
つまり、目の前にいる僧侶は俗に言うマオウ軍四天王が1人、『天装上人』ことジークフリートその人でほぼ確定ということになってしまった。
オマケに、膨大な時間さえ超えて神代へと来てしまった可能性も高い、中々に絶望的である。
世界そのものを塗り替えようとした神話最大の事件、マオウ戦争。
軍勢を率いた怪物マオウは天に向かって弓を引き、世界そのものに剣先を向けた。
天界が御伽噺を創ってまで周知するほど恐れられる、最悪の災厄。
目の前の存在は高確率でその片棒を担いだ、大大悪党ご本人様である。
恥も外聞も無く言ってしまえば、生きた心地がしなかった。
ギロチンの上で仰向けになって寝ているような、煙を噴く火山で寝袋にくるまって眠るような、いつ牙を剥くかわからない死が目の前にいる感覚だった。
この3人の中に暴力装置はいない。
一番動ける禽竜でさえ、本気の大型犬には勝てないレベルである。
目の前にいるのは怪物だ、それを認識してしまったがゆえにジークフリートがとる茶の香りを楽しむ仕草も、こちらの次の言葉を待つ姿勢も、全てが死の前振りに見えてしまう。
『…緊張しておられますか、無理も無い。大方、迷惑千番な術に巻き込まれて未知の土地から来られたのでしょう。では、こちらから話題をば。まずは…そう、お名前でも聞かせていただけませんか?いつまでも貴方やそちらの方では、寂しいですから。』
見かねたジークフリートの方から話が振られる。
『え、ええ…自己紹介が遅れ失礼しました。私はオーギュスト・ウル・ドクノオト・スカルノーズ、作家です。こちらは私の助手のピニャータ・キプレア、そちらは友人の禽竜氏です。』
『なるほど、作家様でしたか。拙僧は見識も浅く、経典しか知りませんゆえ話し下手やもしれませんが、どうぞご容赦ください。』
『いえ、そんな…お気遣いなどなさらないでください。私達はご迷惑をかけている立場ですので。』
『とんでもない、滅多なことではお客様などいらっしゃらないので、拙僧としてもいい刺激を受けておりますとも。はて、そういえばスカルノーズ様方がこちらにやってきた事情を聞いていませんでした。お教え願えますか?』
『ええ、まず我々は旅行の最中に貴方方の絵を見つけました。程なくそれに暗号が含まれていると悟り、解読した結果として未知の魔法に巻き込まれてここにいたという次第です。』
ジークフリートが目を閉じて考え込む。
『ふむ…その現象、実行犯に心当たりがあります。彼なら逆の効果を発揮する術式も用意していることでしょうし、呼んできましょう。スカルフォーズ様方もお急ぎでしょうが、しばしお待ちください。』
ジークフリートが柔和な笑顔で頭を下げる。
『あ、スカルノーズです。』
『!!…大変失礼しました。改めてお待ちください。』
ドアが閉まる寸前に見えたジークフリートの顔から微笑みさえ消えているように見えたのは気のせいだろうか?
ジークフリートが重量感のある鉄のドアをノックすると、数百キロはくだらないであろうそれがワイヤーで巻き上げられ開いていく。
『また一段と錆びつきましたか?(友愛の挨拶)貴様のイタズラにかかったお客様です。速やかに対応してきなさい。』
部屋の中にいた長身の男が振り向く。
『おー不細工な鉢植えかと思ったら。(友愛の挨拶)ほう、なら異軸間輸送実験の第一段階は成功か。どう、原型は保ってたか?』
『自分でご覧なさい。引きこもりではサビどころかカビも生えてきますよ。』
『黙れクソ坊主。説法でもその不協和音を垂れ流してるのか?』
長身の男は渋々外に出る。
ドアが閉まり、2人の男は応接室の方へと向かうのだった。
『ぶっちゃけ、帰れるのかな僕達。』
『…過度な期待はできませんな。わっし達はいわば巻き込まれた実験動物。生殺与奪を握るのは、彼等でしょう。』
『ドク、禽竜さん、諦めるには早いですよ。いざとなれば手当たり次第火でも点けましょう。』
肝心なことは話していない。
盗聴の可能性を考えたドクノオトは、ジークフリートが退室した直後、ノートの切れ端に書いたメッセージを回していた。
その内容はマオウ軍だとか四天王だとかの、具体的な単語は一切口に出さず、無知で運の悪い旅行客を演じること。
『愚者は長生き』、大嫌いな社交界で伝わる諺だが、今は無二の金言だ。
結果的にいえばそれは紛れもない正解だったのだろう。
応接室のソファー正面、その壁に飾られていた羽ばたく鷹の絵の翼には、ごく小さな映像中継装置が埋め込まれている。
仔羊の楯改め、マオウ軍前駆体組織が独自に開発した最新型であり、コウモリもその起動音には気づけないだろう。
少し離れた部屋、モニターの前に座る男が興味深そうに映像を眺める。
『ふーむ、まあ生きているようには見えるな。首が増えたり減ったりもしていない。理論と結果が一致するほど嬉しいことはないなああ。そんじゃまぁ話だけ聞かせてもらって、帰してあげようか。』
『お待ちなさい。もっと見るべきものがあるでしょう?』
ジークフリートが呆れたように言う。
『?………!彼は…』
男の目に留まったのは禽竜だった。
『ええ、アーユラー様の分霊です。悪童のような精神性の方とはいえ真なる神の1柱、その手の者がいるということは、彼等が未来から来たスパイの可能性があります。』
『…情報は抜けたのか?』
『彼等が何かを知りつた隠しているようには見えましたが、詳しいことは何も。あと、こちらは彼等の名前です。些細な言い間違いを訂正しようとしたことからみて、本名である可能性は高いかと。』
『弁論はお前の領分だろう生臭坊主。昼行燈か?ふむ…どれも聞かない家名だな。それにアーユラーの分霊以外種族の判別もつかん。…対面してくる他なさそうか。』
『ええ、早いとこ解決してくださいよ。情報抜かれでもしたら、拙僧の中ですでに地の底の貴様への評価が突き抜けますよ。』
『小煩い奴め。数珠でも触ってろ。』
応接室のドアが再び開き、長身の男が入ってくる。
『この度は大変ご迷惑をおかけしました。私、仔羊の楯で設備管理責任者を務めております、インペル・モーン・シュワルツィツィと申します。どうぞよしなに願います。』
にこやかに微笑む男と対照に、ドクノオト一行は更なる絶望を味わっていた。
インペル・モーン・シュワルツィツィ、その名もまた天下に轟く大悪名である。
もう疑いようが無い、3人の前に立つ男はマオウ軍四天王が1人、『奇匠のインペル』その人だ。
インペルの片目がキュルキュルと不自然に動く。
(ふむ、脈拍の上昇を確認…このインペルに直接会った興奮でそうなった、というなら感心だがまぁありえない話かな。何か隠しているというのは本当らしい。)
『鉢植……ジークフリートの方から事情は伺っております。ええと、そちらがスカルノーズさんで、順にキプレアさん、キンリュウさんで間違いありませんか?』
『はい。』
『ありがとうございます。まずは、意思確認もせず巻き込んだことをお詫びします。大変、申し訳ありませんでした。』
インペルが深々と頭を下げる。
その姿に全く謝意を感じないのは単なるバイアスだろうか?
『愚問とは存じますが、なぜ我々などをお呼びになったんですか?』
(コイツ…演じるつもりか?さしずめモデルは何も考えてない旅行客ってところか。だが、相手が悪かったな。このまま情報を絞らせてもらうぞ。)
『いえ、ほんのごくつまらない理由でして。私は未来の世界に人一倍関心があるんです。そこで、頑丈な遺跡に暗号として圧縮した魔法陣を仕込んだんです。獣が偶然発動させても困りますからね。あ、もちろん逆効果のものも用意してあるので、ご安心ください。』
(心拍数低下…もっと油断してもらうか。にしても、この体組織の構成成分…なんだこれは?天人とも神々とも違う、どういう種族だ?)
インペルは少年のような眼差しを浮かべつつ、遠慮がちに尋ねる。
『えーそれで…不躾なお願いではありますが、差し障り無い範囲で未来の特に工学技術についてご質問させていただいてもよろしいでしょうか?』
その目に宿る光をピニャータは知っている。
蒐集品に向き合う時のドクノオトはいつもそういう目をしている。
腹の探り合いであるこの場で、その言葉だけは純粋な探究心から出たものだった。
そのことを似た者同士のドクノオトと禽竜も感じ取ったらしい。
『ええ、構いませんよ。あまり長居はできませんが。』
雰囲気は一転して、和やかな会話が始まった。
インペルは話を聞くたびに目を輝かせ、感嘆の声を上げる。
ドクノオト達も、マオウ軍の戦力強化に繋がりかねない技術は伏せつつ、時を超えて出会った同志と議論を深めるのを楽しんでいた。
流れるように時は過ぎ、気づけば時計の針は3時間以上進んでいた。
『名残惜しいところですが、そろそろ帰していただけませんか?ホテルのチェックインに遅れてしまいますので。』
ドクノオトが多少強引に会話を切り上げる。
『そうですか、まぁ私達としても終業近いですしね……ではトイレの石板へと参りましょうか。』
『…………へ、トイレ?』
『そうですよ?水洗トイレとしては天界1、衛生的に仕上がってる自信があります。』
竜人の青年の言葉がよぎり、なんともいえない感覚が込み上がってくる。
スクっと立ち上がったインペルがテーブルにつまづき、よろめく。
『ああ!大丈夫です…か…?』
インペルの顔の一部が落ちていた。
もう少し正確に言うなら左目を覆っていた偽装パーツが落ち、肉体と置き換わっている金属の肌と赤一色の光学センサーが露出していた。
『ああ、言ってませんでしたが…私、体弄ってるんですよ。特にこの目なんか便利で、体温や脈拍を触れずに測れます。こないだも、部下の仮病を見抜いて減給処分にしちゃったりなんかして。』
ドクノオトの思考が焦燥に支配される。
(盗まれていた…僕達の情報は、嘘は…会話なんかよりもずっと完璧に盗み取られていたってことなのか?だとしたらマズイ…僕達は何個嘘を吐いた?何個ごまかした?)
『ああそうだ、お帰りになる前にもう一つ質問よろしいですか?貴方達ィ、私のこ…』
突然ピニャータが倒れ込んだ。
インペルも含め、その場に居た全員がポカンと口を開ける。
『ピニャータ?おい!しっかりしてくれ!頼む!ピニャータッ!』
インペルの目はピニャータの体調不良が演技でも何でもなく、本物であることを示していた。
(バカな!タイミングが良すぎる…‼︎絶対にこれは欺瞞だ!仕込みは無い…だがあの女が1人でやったことだッ!)
『よかった!目を覚ましたかピニャータ!』
未だ朦朧としているピニャータが譫語のように繰り返す。
『くすり……くすりを………』
『わかった!どれの薬だい⁉︎』
『悪阻のを……お願い…します。』
ドクノオトのカバンをひっ掻き回す手が止まる。
『へ?あ?つわり?はえ?』
『ベースに…瓶が………うぅっ!』
『マズイ、嘔吐だ!血も混ざっているっ!インペル殿!どうか我々を戻す魔法を‼︎』
禽竜の気迫に押され、インペルがあたふたと魔法陣を展開する。
ドクノオト一行の姿は光の中に消え、後には呆然としているインペルだけが残されていた。
密林特有の香りを孕んだ生ぬるい風がドクノオトの鼻腔をくすぐる。
『戻って来た…ピニャータ!大丈…』
先程の死にそうな感じはどこへやら、ピニャータはバスケットの中からナプキンを取り出して自分の口周りを拭いていた。
『ああドク、お目覚めですか。ちょっと髪汚れてないか見ていただけません?』
『ああ、いいとも……って、そうじゃあないだろ!悪阻は!相手は!いつどこでぇー!』
『あ、あれ嘘です。うまくいってよかったですね。』
『でも!本当に気を失っていたんだぞ!君は副業で役者でもやってるのかい⁉︎』
『副業なんてする時間ありませんよ。ドクがだらしないんですから。ただ、こういうのを使っただけです。』
ピニャータが鞄から取り出したのは、コルクで栓がされた小さなガラス容器だった。
『節足動物採集用の毒瓶…まさか!』
『ええ、酢酸エチルです。人間が吸引すれば嘔吐感や麻痺、炎症などの症状に苛まれて意識を失うこともあります。量をミスしたら戻って来れなくなるとこでした、生還のVです。』
真顔のピニャータが右手でピースサインをつくる。
『ピニャータ…フゥ…とにかく、生きてて良かったよ…………』
『ありがとうございます。とにかく、禽竜さんが起きたら一旦ベースへ戻りましょう。日付けと時刻、他にも罠を踏んだ方がいないかを確かめる必要があります。』
『タフだねぇ…助かったよ、ありがとう。』
『…貴方の助手ですので。』
結局、アーチ・ド・アストローヴォについて誌面には、マオウ軍の前身となる組織が建造したちょっと広めのトイレエリアと記された。
世の中の失望は想像に難くないが、当事者達から聞いたのだから仕方がない。
そして、本物のマオウ軍幹部と座談を行ったことは一切伏せておいた。
調度品や食物は人間にとって無害な物であったことや、言語による意思疎通が支障無く遂行できたことなど、驚くべき点は数多くあったが証拠の写真1つ持って来られなかった以上、泣く泣くカットもやむなしである。
ただ、遺跡そのものの様式やその他の遺物は高く評価され、近々王立の調査隊が組まれるらしい。
(石板の暗号は解かないように言っておいたから、大丈夫だとは思うが…)
今度飛ばされた者は逃してもらえないだろう、そう確信できるほどに最後のインペルは恐ろしかった。
正直、インペルが未知の現象に対して当惑していなければ自分は帰還できなかっただろう。
部屋のドアがノックされる。
『んー、いいよ。』
『失礼します。お茶が入りました、休憩されてはいかがです?』
『そうだねぇ…』
ふと、茶菓子に目が留まる。
『ねぇ、これって…』
『収穫が無いというのもアレでしたので、お三方の会話中にお茶請けをいただいてきました。代わりにビスケットを詰めておいたのでまぁ泥棒には当たりませんよ、たぶん。』
頼もしいと呼ぶべきか、恐ろしいと呼ぶべきか、ピニャータのそんな言葉に苦笑いしつつドクノオトは香り高い紅茶を楽しむのだった。
『楽しかったですか?仕事もせず世間話に興じるのは。』
『連れ出したのはお前だろクソ坊主。しかし、してやられた。インスピレーションは沸きまくってるが許せん。』
『まぁまぁそう荒れると足りてないネジがまた外れますよ。美味しいビスケットもいただいたんで、いいじゃないですか。』
『そこが一番腹立たしい!今回のお茶請け、賞味期限が切れたら用意した人が食べていいルールだったのに!』
『あと2週間ちょいでしたねえ。まぁそういうときもありますよ。』
『他人事扱いしやがって。人の不幸で茶を飲む坊主なんぞもう新手の魔物だろ。』
『声にノイズが入って聞こえませんねぇ。スピーカー直されては?』
『喉は自前だクソ坊主。』
シナモンの香りが腹立たしいほどに部屋を満たしていた。
プリングルスのハイチーズからしか得られない脳内麻薬がある。