TS美少女のロボゲーライフ 作:リナ
「く……なんで! 敵は一機……しかも軽量機なのに!?」
ブーストを吹かす。敵の撃ち出した弾はロケットだった。このロケットは、だいたい〇・三秒ほど低速で動き、その後誘導角六十度の範囲内にいた敵に加速して誘導をする、まぁ、言ってしまえば逃げ撃ちに無類の強さを発揮する弾だった。
こうして、最速で接近してしまえばなんの問題もない。
「ワンキル」
接近し、ブレードを振り抜き、ぶっ殺す。
逃げのフェイントに引っかかってくれてよかった。
「クソ……っ!?」
急に光がチラチラする。なるほど、ロックオンジャミングか。撃たれるのも久しぶりだ。
互いにロックオン不可の状態で、体勢を立て直そうってところだろう。
ブレード相手に意味ないでしょ、それ……。
「よっと……」
ブレードの攻撃ボタンを押す。そうすると、ブレードの攻撃モーションに入って機体が加速する。
攻撃モーションの後隙は機体のブーストを吹かすことで無理やりにカバーする。
ブーストとブレード加速で敵を翻弄する、軽量近接の戦い方だ。
「この……ちょこまかと……!!」
グレネードを連打で弾幕を形成してくる。
要するに、接近拒否だ。悪くない判断だろう。
「くらえ、遠心力アタック!」
ま、良いわけでもない。
ブレード加速にブースト加速を合わせて、さらには接地Uターン。プラズマ式榴弾を放り込む。回転したおかげか、気持ち榴弾がよく飛ぶ。弾幕を超えて敵にヒットだ。
「は……?」
爆破して、敵は大破する。
榴弾は当たれば大抵一撃で沈む。重量機でも二回も当てれば殺し切れる。
「ワンキル」
さらには、もう一人いる。
ただ、残ったのは、重量機のスナイパーだった。多分、この技量だったら、軽量機には当てられない。
「く……このぉ! なんなの! アンタ!?」
「ラストキル」
初手、この重量機は削ってあるから、上を取って、榴弾を放り込んで、おしまいだ。
「決まりました! 第二回EFC予選大会! 優勝はクロ選手!! では、表彰式に」
「あ、やべ……」
コックピットから、降りると、俺は全速力で駆け出して逃げる。
「え! クロ選手!? どこへ!」
「俺は優勝を辞退するぜ!」
そう言い残して、俺は会場を後にする。
いやぁ、危なかった。ちょっと遊んでいくだけのつもりだったのに、優勝してしまった。いやぁ、まずいまずい。
「どこへ行くおつもりですか?」
大会会場、出口。俺の前に立ちはだかる女の子がいた。
この子は……見たことがある。さっき、握手したもん。
「表彰式、あっちだよ?」
俺は、指をさした。
「それはあなたもでしょう!? なめてるんですか!?」
「いやー、俺はこの後、急ぎで用事があってさ……」
「いいですよ……あなたの正体、なんとなく分かってますから。戦えて光栄です、とでも言っておきましょうか」
「ひ……っ、人違い」
一応、別アカウントで偽名も使った。予選ガバガバだし、別に大丈夫だろうって、思ったんだ。
「あ……! いました! あれです! 見つけましたよ!? みんな、取り押さえて!!」
「え……リナちゃん!?」
振り返る。スーツ姿でメガネをかけた女性だった。よく知る人だった。キリッとした仕事できる系のクールビューティーだ。
彼女の一声で、黒服の人たちが俺のことを囲んでくる。これ、ダメなやつだ。
***
「副アカで大会登録とか、何考えてるんですか!」
「はい、申し訳ございません」
「あなた、プロですよね。スポンサーにはどう説明してくれるんですか?」
「返す言葉もございません」
アイゼンフランメ。俺のこよなく愛するロボゲーだった。VR空間で、コックピットに乗ってプレイする系のロボゲーである。
Eスポーツで、世界大会では総額で億を超える賞金も出るということで、アイゼンフランメの魅力に取り憑かれたみんながこぞって腕を競いあっている。
まぁ、俺は世界チャンピオンだった。
もちろんプロリーグにも参加している。
「副アカもそうですけど……今回の予選、アマチュア限定ですよね……! それをあなたは」
「本当に申し訳ございません」
「SNSも炎上してますよ? ほら!」
ピピッと、シュッと、やって、宙に浮く映像をリナちゃんは見せる。ジッと俺はそれを見つめる。
『【アイゼンフランメ・アリーナ】現役チャンピオン、シロ。またも大会荒らしか』
「いやーどうしてバレちゃったかな?」
「当たり前でしょ! 四人で一チームですよ、四人で! それを一人であんなに見事に全員やっつけるなんて、あなたをおいて他にはできないでしょ! 偽名もクロで安直ですし!」
「いやぁ、褒めるの上手いね。リナちゃん」
「褒めてねぇですから、今回ばかりは……マジでです」
記事を読み進めていけば、今回の大会は繰り上げで優勝で、俺にぶち殺された奴らで敗者復活トーナメントを後日やるらしい。
割と真面目だなぁ。
「リナちゃん、リナちゃん。もうすぐ夜のランクマの時間なんだけど。そろそろ行かなきゃ」
「いけるわけねぇでしょ。今回の件で、マッチング禁止措置ですよ? あと、一ヶ月の謹慎。今期のEFCは当然出れないですね。まぁ、今年のアリーナの出場は決まってますから、頭を冷やすことです。これでも、私、頑張った方なんですよ?」
「そんな……ぁ」
「自業自得!」
俺、戦えないのか。悲し過ぎる。
「いいもん……配信で有志募るもん……」
「だから謹慎ですって……。配信もSNSの投稿も禁止!」
ありえない。戦えないなんて、俺は何をして生きれば良いんだ……。
「いやぁ、シロちゃんやっちゃったにゃあ」
「ネコネコ……ぉ」
チームルームにログインしてきた猫耳アバターの女の子だった。VRアバターは色々法規制とかができて、ネカマとかできないから、少なくとも心は女の子なのは間違いない。
チームメイトで、女の子では珍しいトッププレイヤーだった。
「ていうか、大会荒らし何回目よ。どうせ、見てたら参加したくなったってとこだにゃ。優勝しなきゃ大事にならなかったんだから、適当に切り上げればよかったにゃ」
「出たからには、全員殺したいじゃん」
「やばぁ」
ドン引きされる。
そんなに、おかしいこと言ったかな。要するに俺たちは仮想的な命の取り合いをしてるわけだし、これくらいの意気込みでみんなやってると思うけど。
「そうだ! ネコネコ!! 相手してくれよ! マッチング禁止なんだ! フレンド部屋ならいけるだろ!」
「これからランクマだにゃ。シングルトレーニングでもしてろにゃ」
「そんな……っ!?」
「それにシロちゃんと戦ったら惨殺だからマッチ拒否だにゃ」
「くそ……!? マナー違反だろ!」
ちなみに俺はランクマ配信を基本的にしてない。なぜなら、ランクマ配信をすると、マッチ拒否をされるからだ。マッチ拒否のペナルティを負ってでも俺とは戦いたくないらしい。なぜだろう。
「ネコネコ……ぉ」
「じゃあにゃ」
ネコネコはランクマに消えていく。
「それじゃあ、私は定時なので」
「あ、リナちゃんお疲れ」
リナちゃんはログアウトで消えていった。
一人、俺は残される。
とりあえず、シングルトレーニングルームに向かった。
NPCに、ひたすらスナイパーする。榴弾投げする。ブレード当てする。ランクマとチーム練習、大会以外では、時間の許す限り、これをするのが日課だった。
謹慎明けたら、みんな殺してやる……ぅ。
***
は……!?
朝起きる。VRヘッドセットが付いたままだから、シングルトレーニングモードをしたまま寝てしまったのだろう。
操作がないから自動ログアウトされたってところだ。
まぁ、このままログインだ。
朝のランクマといこう。決められた時間しかランクマはやってないが、ランクマには必ず起きるよう、体が覚えている。
いや、そういえば、マッチング禁止措置なんだったか。じゃあ、シングルトレーニングモードかな。
俺は働いてないから、一日の時間まるまるアイゼンフランメだ。
――生体認証、登録中。
「んんん?」
ログインできない。
VRは生体認証を使っているが、失敗することはあんまない。というか、登録中って最初のやつじゃん。ついに壊れたかな……。ヘッドセットを外して眺める。
――ん?
「ここ、どこ?」
なんというか、俺の部屋じゃない。
すごく女の子女の子した……というか、ぬいぐるみいっぱいのメルヘンな部屋だった。
鏡が目に入る。
さらっとした銀髪ストレートの美少女がそこにはいた。