TS美少女のロボゲーライフ 作:リナ
「ヒャッー! 最高の気分だぜ! 殺してやるぅ!!」
俺は今、ランクマにいた。
俺がやったことといえば、アカウントを新しく作り、アイゼンフランメにログインをして、ランクマに潜ることだった。
俺は女の子になっていた。転がっていた財布に身分証が入っていたけど、そこにあった情報は、なんと、俺、羽山白葉の妹……羽山黒芽だった。俺に妹はいないはずなのに、おかしな話だ。
ま、ともかく。生体情報が違うから、別アカウントでログインができた。ランクマができた。
「なんだ! あいつは……っ! あの動き!」
「殺してやるぅ!! 次はお前だぁあ!!」
「うわー!?」
今ひとつ、しっくりこないが、初期装備のスチールブレードを使い、目の前の敵をぶっ殺す。
ユーウィンと、画面に文字が出てくる。
全戦全勝、十連勝中だった。そろそろランク昇格戦だろう。
「おいテメェ! 複アカだろ! 通報したぞ!!」
「うぇ? 対戦履歴から、ルーム追って来たのかよ? ヤバぁ」
たまにいるんだよなぁ、こういうやつ。
俺は有名だからこそ、アンチもたくさん抱えている。だから、対戦相手へのルーム開示をオフにしといたんだけどなぁ。
今はアカウント変わったから初期設定か。
とはいえ、目の前にいるのは女の子だった。珍しい。
というか、そうか。初期設定は、異性相手にはルーム非公開、同性相手には公開って、なってるんだったか。
全部非公開にしときゃいいのに。
「複アカでランクマッチするのはダメなんだぞ! 悔い改めろ」
「シングルトレーニングモードで、すっごく練習してー」
「プレイ時間五十分って、書いてあんだけど?」
そういや、プレイ時間も公開情報だったか。
プレイ時間五十分であの動きはおかしいわ。
「それがー、前のアカウント、ロストしちゃってー」
まぁ、よくある言い訳だ。
「そうか……辛かったな……。ロストしたなら仕方ない……」
通った!? 言い訳が通った!?
しかもなんか、肩をポンポンして慰めてくれる。優しい。良心が痛い。
「俺、これから昇格戦なんで……時間的にまだ一戦できるはずですし」
「あ、じゃあ一緒に組まない? ほら、フレコ」
「ん!? あぁ、いいっすよ……」
ちなみに、ランク戦は最上位になると完全に個人戦で、チームを組むのが禁止になる。チーム練習以外で、誰かと組むのは久しぶりだった。
キャリーになるんじゃないかとも思ったけど、まぁ、ラスト一戦だし大丈夫か。
このゲームは四人一チームだ。
ランクマッチでも、ある程度のランクまでなら四人まで組むことができる。
「クロちゃん、でいいか? 初期装備だろ? ブレード使うより、ミサイルとかの方がいいよ?」
「ブレード最強なんでいいっす!」
本当はシデンブレードの方がいいんだけど、あれは取りに行くのにストーリーかなり進めないといけないから、しんどい。
まぁ、初心者なら、ブレードなんて使わずに、中量機のミサイルを軽量機に換装して使えばいい。
このゲーム、軽、中、重と重量が増えていくにつれて、使える武装の種類が増えていく。重量級の武装は軽量機にはつけられない。中量級の武装は、軽量機に無理やりつけることもできるけど、弾数が激減する。
ま、そんな感じか。
「ブレード……当たれば強いけど、当たらないよね……」
「頑張るっす」
そう、最大のブレードの問題点は、縦横無尽に飛び回る機体に、当たらないということだ。
ただ、ブレードホーミングがあるから、単調な動きの初心者なら、当たると思うけど。
中級者帯から、ブレードホーミングを外されてカウンターで撃沈とか、あるけど。
ちなみに、今持ってるのは燃費の悪い初期装備ブレードだから、メイン、サブともにブレードをつけている。本当だったら、メインは別の武器にしたいんだけど、今はスチールブレードオンリーだ。シデンブレードが恋しい。ちなみに特殊武器はまだ解放してない。
「でも、軽量機でダブルブレードは、仲間から顰蹙でしょ。ピーキー過ぎるぞ?」
と言いつつ、重量機を彼女は選択していた。まぁ、初心者帯だとそうなるか。
このゲーム、重量機、中量機、軽量機で基本的には三すくみだ。
普通に遊んでいればダメージレースが始まり、装甲の硬く継続火力のある重量機が勝つだろう。
当然ながら、軽量機は、ダメージレースで絶対に勝てない。だからこそ、その高い機動力を活かして、鈍い重量機相手に一撃必殺を取るというのが軽量機の役割だった。
ただ、ここは初心者帯。
一撃必殺を取れるプレイヤースキルを持った軽量機使いが少ないからこそ、圧倒的重量機環境なのだ。
一応、軽量機には、機動力を活かしたアウトレンジ戦法もあるけど、このゲーム、射程の長い武器は軽量機に載せると弾数が少なくなってめっちゃ弱い。
「ん……マッチングしたっす」
ブリーフィングルームに飛ばされる。
仲間の情報が入ってくる。ここで機体の再選択も可能だ。
重、重、重、軽。
ま、こんなもんか。
「そっちも、ペア? その子、ちゃんとブレード使える?」
「私がみた感じ、使えてたから、大丈夫だ。たぶん」
「皆殺しにするから、だいじょぶっす」
「心配だなぁ……」
信用がない。
重量機相手にブレードを外し、撃沈していった軽量機たちの姿を彼らは見てきたのだろう。
「そんなにブレードダメなんすか? 皆さん、詳しいんっすね」
「あぁ、ヒカルちゃんの動画見てきたから」
「俺も俺も! ヒカルちゃん、わかりやすいよね」
「なるほど……ヒカルちゃんっすか」
実力派実況者のヒカルちゃんだ。俺も公式番組で共演したことがある。すごーい、つよーい、しか言ってくれなくて、何戦かしたら、マジ泣きされた思い出だった。
たしか、『メスガキヒカル、世界チャンプにボコられる』みたいな動画が一千万再生超えてるんだったか。もともとメスガキロールプレイみたいな企画があって、その動画をなぜか、公式番組で共演した映像と繋げて編集した動画だった。
ちなみに、俺と共演した数日後、初心者はブレード絶対に使うな。みたいな動画が上がってたと思う。たぶん、この人たちはその動画見たんだと思う。
ヒカルちゃん考案、『軽量機以外には絶対負けない! 初心者用テンプレ構築』だし。
「そうそう、絶対見た方がいいよヒカルちゃん」
「了解っす」
ヒカルちゃん見てる時間があるなら、シングルトレーニングモードでシデンブレードの練習してた方がいいと思うんだけど、それは言わない。
時間の使い方は人それぞれだ。
「あ、時間だ。頑張るぞ!」
時間になって、ブリーフィングは終了する。
というか、まともな作戦もなかった。まぁ、初心者帯だし、こんなもんか。
「んじゃ、俺、裏取り行くんで……」
正面から行っても、全員殺せるけど、それじゃあ初心者のみんなが楽しくない。
適当に一機ぶっ壊したあと、ぷらぷらして、ピンチになったらその都度フォローかな。
地形に隠れる。しばらく待つと敵がやってくる。えっと、敵の編成は……。
「重量機三体……それをカバーする中量機が一体。なるほどね」
中量機くらいの速度があれば、ブレードは基本、当たらない。中量機がヘマすれば別だが、大抵はカウンターを決めてくるだろう。
いっそ重量機四機なら、楽だったけど……仕方がないか。
このまま地形に隠れて、重量機同士のエンゲージを確認したら、しかけることにしよう。
座標を味方に送っておく。機動力の高い軽量機は、斥候としても、あるていどは働ける。
相手は、ばらける感じはなく、まとまってるな。ちゃんとしてる。
奇襲、とか、そういう感じもなく、エンゲージだ。
重量機同士がドンパチする。
「クク……隙あり……! と……」
「させない!」
背後から奇襲をかけたと思ったけど、中量機がやってくる。
なるほど、マシンガンか。
ブーストでロックオンを外しつつ、空中を回遊する。
「さて、どう殺そうか」
重量機同士が一対一交換。そして、俺がこいつを殺す。それでおしまいだ。
ブレードの攻撃モーションでひねりを加えて、中量機に接近する。
「嘘!? 空中でそんな自由に!?」
そんな反応をしながらも、迎撃用にショットガンに切り替えていた。近距離戦において、中量機のショットガンはかなりの強さを発揮する。
「よっ……と」
「くらえ!」
「ざーんねん」
ショットガンの射程ギリギリで、ブレード攻撃を逆ブーストと接地でキャンセルする。フェイントだ。初心者は、まぁ引っかかっちゃうよね。
「え……っ!?」
「ワンキル」
ブーストとブレード攻撃を合わせて、ショットガンが連射される射線をかわしながら急加速する。
うわ、ブレードホーミング……違和感あるなぁ……。
ともかく、中量機は爆散した。
「こっちはやったっすけど、そっちはどうっすか?」
仲間に連絡を取る。
まぁ、うちはテンプレ軍団だし、最低でも一対一交換はやってくれるだろう。
「なんとかだぞ! ていうか、中量機倒したの!? ブレードで!」
「そうっす。運が良かったっす」
「へぇ……」
複アカ疑惑が高まった声だった。
「とにかく、そっち向かいます」
「了解」
ブーストはもったいないから、歩いて向かってみる。
着いた頃には互いに一機ずつ落ちてる状況だ。ダメージは、相手は均等に受けてるようだが、こっちは集中して一人が受けていた。これは、ダメそうだ。
「よ……っ」
「うわー! 軽量ブレードだ! ぐわっ」
「とお!」
「あいつ、軽量に負けるなんて……ぎゃー!」
ユーウィン! これで、ランクアップだ!
なんとか、朝のランクマッチで、ランクを一つ上げることができた。
対戦後、ルームに移動する。
「あのさ、思ったんだけど……ブレードってそんな強かったのか?」
「まぁ、使いようっすよ」
「練習してみようかな……。あ、それじゃ、私はこれでさよなら。ありがとうね、クロちゃん」
「お疲れっした」
朝のランクマ終わりだ。さて、シングルトレーニングモードこもるぞ!!
――ふぁ!?
この感じは……強制終了。生命の危機に陥るような、地震とか泥棒とか異常事態の時に起こる。
明るい世界が目の前にある。
眩しい……眩し過ぎる。
「もー、クロちゃん。もうすぐ学校だよ? 買ったばっかりだからって、夢中になって……」
制服姿の女の子がいた。
どこか見覚えがあるが、今ひとつ記憶と一致しない。
「……ん?」
「今から支度して間に合うかな? 早く学校行こ?」
「学校……」
手元には、ログイン前に確認した身分証がある。私立リリーエ女子学園の学生証だった。