TS美少女のロボゲーライフ   作:リナ

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宣戦布告

「もしもし母さん?」

 

 電話をかけた先は、まぁ、俺の父親だった。というか実家の電話だ。出たのは母さんだったけど。

 携帯にまんま登録されていたし、電話番号も俺の知ってるやつと同じだった。

 

「クロメ……あなたからかけてくるなんて珍しいじゃない」

 

 母さんの声だった。やっぱり隠し子なのだろうか。

 

「あの、兄のことなんだけど……」

 

「あの子、ほんとになにやってるのかしらね……就職もしないで、最近は連絡もないし……」

 

 そういえば、俺は賞金で一人暮らしを始めてから、親とは疎遠だった。確かに言われてみれば母さんの声を聞くのは久しぶりだ。

 

「連絡、つく?」

 

「いや、あなたから連絡しなさいよ? あなた、あんなにお兄ちゃんっこだったでしょ?」

 

 ――は?

 

 俺に妹はいなかった。そのはずだ。

 いや、俺がアイゼンフランメに熱中するあまり、頭がやられておかしくなって妹の存在を忘れてしまった可能性も……まぁ、ないとは言い切れない。いや、やっぱり絶対にないわ。

 

 周りが記憶をいじられたとか……? いや、そんな回りくどいことをするより……俺はもともと黒芽で、そこに白葉の記憶を植え付ける方が早いし単純だ。

 

 ただ、そうなれば、その白葉の記憶に、黒芽の存在がないというのが不思議でならない。

 

「もし、連絡ついたら、俺が話したがってたって言っておいて……」

 

「わかったわよ。あと、それと、人前で俺とか言ってないわよね? 女の子なのに……変に思われるわよ、まったく」

 

「あ……うん」

 

 いつものやりとりのように母さんは言った。

 黒芽って、俺っ子だったんだ……。

 

 ともかく、すぐさま電話を掛け直す。

 俺の電話番号へだった。俺が何者か、確かめないといけない。

 

「もしもし」

 

「にゃんだなー、クロメちゃん」

 

「ねこねこ……ぉ!?」

 

 なんで、ねこねこが俺の電話に出るんだよ。

 

「いつも言っているにゃん。お姉ちゃんと、呼びなさい」

 

「あはは」

 

 いつものおどけた調子なのは変わらなかった。

 マジで、なんで俺の電話に出てるんだ。

 

「シロちゃんに用事? シロちゃんなら、シングルトレモ中よ? 謹慎中だからにゃん。こもりっきり」

 

「へぇー」

 

 いるのか……!? 俺……。

 いや、まぁ、俺の話は普通に聞いたし……いない方がおかしいか。でも、そうなると、今の自分は何者……。

 

「なにか、伝えることでもあるかにゃ?」

 

「いや……――」

 

 ちょっと、待てよ? 自分が何者かは、大した話じゃないじゃないか。

 自分が二人いて、なにが悪い。思えば、アイゼンフランメをプレイしていて、俺はずっと孤独だった。充実していなかったわけではない。一つ山を登り切り頂上に立ったあと、また別の山を登り初めるような生活には、満足していた。けれども、孤独だった。

 

「伝えておいてくれないか? アリーナで、殺してやるって」

 

「本気?」

 

「本気」

 

「私のシロちゃんに、勝つ気?」

 

「勝つよ。必ず」

 

 

 ***

 

 

 

「いやぁ、嬉しいよ。入部してくれるなんて」

 

 まぁ、アリーナに行く手っ取り早い方法がこれだった。

 後期のEFCって、手もなくはないけど、俺は早く戦いたかった。

 

 完徹でストーリーをクリアし、武器を解放し、パーツを揃えた俺は、例のEスポーツ部に参加している。

 まぁ、メンバー登録の交代は、まだ間に合うだろう。

 

「部長! 酷いです。今まで私、頑張ってきたのに」

 

 ただ、そう。

 俺がメンバーになることで、外されるメンツが出てくる。確かに、練習してきたのに、急にやってきた人間のせいで大会に参加できないってなったら怒るだろう。

 

 プロチームでも、そうやってチームを辞めて行ったって話は聞く。

 

「私は、この子相手に中量機を使って負けた。あれは油断でもマグレでもない。この意味がわかるだろう?」

 

「……っ!?」

 

「軽量機を続けたいなら、彼女から学ぶといいよ」

 

「…………」

 

 女の子は黙り込んだ。

 真面目に勝負をやるなら、ままあることだ。それはそうと学校の部活にしては、割と本気に感じる。顧問とかコーチとかいるんだろうか。

 

「とりあえず、チーム練習でもしますか?」

 

「そうだね。それじゃあチームに加わる手続きだけど」

 

「わかりました」

 

 ゲームに入って、手続きをして、チーム加入申請が受諾される。

 これで、俺も大会に出れるということだ。

 

「それじゃあ、新しい子も入ったし、とりあえず二、三戦かな」

 

「はい!」

 

 それぞれ、機体をカスタムする。

 重量機が二機、中量機が一機、軽量機が一機のテンプレ編成になる。

 

 まぁ、このゲーム、軽量機をちゃんと使える人間が、プロでも少ないから、軽量機対策の中量機は、基本的に一機でいい。中量機の仕事はダメージソースの重量機を、軽量機からいかに守るかになる。

 

 中量機四体なんてバカみたいな編成は、重量機二体で基本的に勝てる。まぁ、でも相手の軽量機が強すぎたら、やるしかない時もあるか。

 一機ずつキャッチしていく作戦だったんだろうな、あれ。

 

「そういえば、トウカ先輩は重量機なんすか?」

 

「ん? そうだよ? 私は基本重量機でスナイパーだね。中量機もちゃんと使えるけど」

 

 マジで、あれ、俺のことメタってたんだな。

 

「とりあえず、実戦を想定して、コックピットガードは積んどいてください。あと、できればブレードガードも」

 

「ブレードガードか、やっぱりあった方がいいのかい?」

 

 ブレードガードって言っても、まぁ、カスあたりを防げるだけだ。クリティカルに当たれば貫通して死ぬし、一回は確実に防げるコックピットガードほど汎用性は高くない。

 

「どうせ貫通してやられるからって付けない人もいますけど、あった方が相手の動きを制限できて周りが守りやすいんで」

 

 最近はこういうガード系の武装を、積載量をそこまで食わずに積めるようになってるから、積んどいて損はない思う。

 俺のチームも、俺以外、みんな積んでたはずだ。

 

 残りの二人のメンバーにも、ブレードガードとコックピットガードを積ませる。というか、彼女たち二人は二人で固まって話していて、ちょっと話しかけづらい。

 

「それじゃ、マッチ開始だ」

 

 開始するマッチは四人のチーム戦だ。

 まぁ、自分も相手もランダムに仲間が決まるのではなく、四人で最初から決めたチームで戦うモードだった。

 

「ラウンド・リバース……」

 

 マッチングが決まり、相手のチーム名が表示される。

 

「知ってるんすか?」

 

「いや、実況者のヒカルのチームだよ。今回のEFCの一回目の予選大会で、一位だった」

 

「あー。思い出しました。ツバメのとこっすか」

 

 ツバメは、何度か戦ったことのある相手だ。彼女は……まぁ、他の軽量機使いのプロと比べたら見劣りするってレベルかな。

 元ドラゴン・スレイヤーズの選手で、なんか揉めて契約を解除したって話だ。

 俺たちの部活で、さっき外された子のことを思い出す。ま、なんかいいことあるといいね。

 

 ともかく、有名な相手と当たる……こういうことも普通にあるか。

 

「それじゃ、俺は斥候に行くんで……。とりあえず、狙撃が飛んでくると思うんで、気をつけて」

 

 まず、軽量機が、敵の様子を見に行く。この時、機動力を活かして、接敵はせずに、敵の情報を掴むというのが、まぁ四人チームで戦う時の定石だ。

 あとは適当に隠れて、乱戦になったら奇襲ってね。

 

 そして、まぁ、同じく斥候として、やってきた敵の軽量機が見える。

 

「先手必勝!」

 

 ブラストライフルでのスナイプ。

 コックピットヒットだが、当然のように、一撃目はガードに防がれる。

 

「クロメちゃん。接敵かい?」

 

「斥候同士の小競り合いっすよ。ちょっと小突いてやっただけっす」

 

 ははっ、余裕。ツバメのスタイルは知っている。アウトレンジ特化、古き良きダブルスナイパーだ。

 

 かつて、第一回アリーナの時代、猛威を奮ったのが、軽量機のアウトレンジスナイパーだ。

 軽量機のスナイパーライフルは撃ち得だ。一方的に敵の射程外から攻撃ができる。近づかれても逃げればいい。

 

 まぁ、やられる方は普通に面白くなかっただろう。あの時は、重、中、軽、みんなスナイパーライフル積んでたし、みんなスナイパーだったから、大会とか見てる方も面白くなかったと思う。

 

 当然、お手軽防御のコックピットガードの実装、軽量機のスナイパーライフルの弾数の削減により、今ではダブルでスナイパーをやるやつはもうほとんどいなくなってしまっていた。

 

 だが決して、その戦法が有効じゃなくなったわけじゃない。

 ロックありのスナイパーライフルの弾数が三発。メインとサブを合わせたら、六発になる。

 

 繰り返すが、軽量機の役割は、重量機を倒すことにある。軽量機は、基本的に敵に二体いる重量機を倒せばいい。

 そう、二体倒せばいいのだから、コックピットガードを剥がす分も含めて、弾なんか四発あれば十分だ。スナイパーを二本持てば六発で、お釣りがくる。

 

 まぁ、だからだろう。

 ツバメからの反撃はない。自分の役割を理解しているからだった。

 無駄にしていい弾は二発だけ。回避性能の高い軽量機相手に、撃ちたくはないのだろう。ブーストをふかして撤退していく。

 

 ちなみに、俺のよく使うブラストライフルは、ロックオンできない分、弾数は五発ある。ダブルスナイパーをやるなら、メインとサブで十発だ。

 じゃあ、なんで俺がダブルスナイパーを辞めたかといえば、まぁ、一機撃墜にスナイパー二発当てるのは手間だったし、ブレードを振った時の加速が使いたかったていうのがある。

 

 そう、こっちにはブーストに加えてブレードの加速がある。

 ツバメは、ブーストをふかして逃げたが、俺はブレードを振ることで追いつけてしまうのだ。

 

「じゃあな」

 

 ブラストライフルで撃ち抜かれて、ツバメは死んだ。殺してやった。

 やっぱなぁ、ブレードは積んどいた方がいい。

 

「軽量機、倒したのかい?」

 

「倒しました」

 

「やるねぇ。ツバメだろ?」

 

 ま、ツバメが腹を決めて、こっちがブレードを振ったのに合わせて、未ロックオン状態でスナイパーライフルを撃っていればわからなかった。

 それでも、ロックオンありの武器を未ロックで当てるのは元々ロックなしの武器を当てるのより幾分か難しい。ロック暴発でズレる可能性があるからだ。俺でも五分五分かな。

 

 さてと、これでこっちの重量機が自由に動ける。あっちはきっと大慌てだろう。

 敵の位置を確認する。これは、アレだ。オブジェクトに籠城して動かない感じか。

 

「西の決戦場に籠城してますね。突っ込みますか?」

 

「いや、こっちが攻める道理もないんじゃないかい?」

 

「俺、特殊武器で榴弾あるんで、上取って爆撃とかなら」

 

 軽量機は、一番高く飛ぶことが可能だ。籠城する相手に、真上から爆撃するのは結構、有効だったりする。

 相手が陣取っているのも高所であるが、建物伝いにいけば、じゅうぶん上を取れる。

 

「そうだね。それじゃあ……」

 

「あ、上取れるルートに中量機を置いて警戒してるっすね。先輩たち、こっちきてください。この中量機キャッチしましょう」

 

「了解」

 

 いい感じに離れてから、挨拶代わりにスナイパーライフルを撃って、中量機のコックピットガードを外していく。

 これで、まぁ、警戒を続けてくれるだろう。

 重量機が出てきたら出てきたで、このポジションは地形的にもそんな相手が有利でもないし、問題はない。

 

 しばらく、待っていたら、先輩たちが到着する。

 

「調子はどうだい?」

 

「スナイパー警戒して、ブースト無駄にふかしてくれてるのはありがたいっすね。多分、先輩たちが来たから、相手はこっちを目視したはずっす。先輩たちが、あの中量機に圧をかけたら、引っ込むと思うんで、そしたら俺が上取って爆撃します」

 

「じゃあ、武運を祈るよ」

 

 先輩が前に出て、スナイパーライフルを連射する。

 やっぱり、重量機の継続火力は圧巻だ。コックピットに当たらずとも、回避性能がそこまでじゃない中量機ならすり潰されて死んでしまう。

 

 それにあの中量機はコックピットガードを剥がし済み。横を向けばコックピットには当たらないとはいえ、何かの拍子に事故って一撃死も怖いだろう。たまらず、後退していく。

 そうかと思えば、敵の籠城地点から、壁越しロックの曲射ミサイルが飛んでくる。重量機はオブジェクトを透かしてロックオンできる兵装もあるから、それだろう。このゲーム、高所からなら、ミサイルの射程はスナイパーとタメはるくらいに伸びるから、それを最大限に利用しての攻撃だった。

 

 ま、その間に俺は走る。建物伝いに登っていく。

 

 飛び上がりのポジション、スナイパーライフルで地面を撃つ。この場所は必ず接地が必要だから、確認しないといけなかった。オッケー、地雷なし。ブーストで駆け上がる。

 

 上空、開けた視界で、三機、確認できる。

 

「ハローみんな」

 

「あなた……シロ……?」

 

 独り言を言っていたら、敵側からの通信が届く。この声、聞き覚えがある。

 

「ヒカルちゃんか……」

 

「女の子……!?」

 

 空からの急襲に備えていた中量機だ。

 合わせて、こちらにビームマシンガンを撃ってくる。ブレードで加速して避ける。

 

 プラズマ榴弾、投下。

 籠城をしている分、オブジェクトに阻まれて、重量機は逃げ遅れる。ほぼ壊滅か。

 

 マシンガンが当たらないと見て、早々と逃げ出した中量機だけが残っている。

 中量機だけ残っても、どうしようもないんだから、やられとけばいいのに。

 

「すぐに仲間のところに送ってやるぜ!」

 

「ひ……っ」

 

 ビームマシンガンで応戦してくるけど、当たらない、当たらない。

 というか、通信オンのままだったか。独り言が聞かれてしまった。ま、殺すから関係ないか。

 

 ま、それでも、こっちには仲間がいるし、ラスイチだから、雑に突っ込むことにする。

 

「ラストキル」

 

「いや……っ、来ないで……ぇ。ひぁあ!!」

 

 敵のマシンガンに、耐久は削れるが、ゴリ押しで突っ込み、ブレードを当てる。

 

 ユーウィン。耐久値もミリ残し、ダメ管理もバッチリだ。

 

 チームルームに戻ってくる。

 これ、練習になったのか……? ほとんど俺がやったわけだし。もう少しチームプレイを意識してもよかったかもしれない。

 

「いやぁ、クロメちゃん。ナイスだよ。セミプロの、あのいけ好かない女どもを倒してくれて」

 

「さいですか……」

 

 というか、部長、いい性格してるなぁ。

 

 ん? 通知がくる。

 差出人はヒカル……ヒカルちゃんか。フレンド申請だった。

 

 メッセ付きだ。ファンメールかよ……。

 開いてみる。

 

――――

 

 拝啓。

 あなたを一目見た時に、運命を感じました。あなたの軽量機捌きは美しく、かのシロにも劣らないと感じました。私のハートはあなたのスナイパーライフルに撃ち抜かれてしまったようです。激しくブーストをふかし、こちらに迫る雄々しい姿は忘れられません。

 どうか、一度会っていただけないでしょうか? リンク先は日時と座標データです。どうか、末永くよろしくお願いします。

 敬具。

 

 追伸。

 ファンのみんなには秘密ですが、私は強い女の子が好きです。

 

 あなたのアイドル、ヒカルちゃんより。

 

――――

 

 送り先のIDを確認する。

 動画のページを開いて、ヒカルちゃんのIDを確認する。大文字のアイが小文字のエルになっていないかも、念入りに確認しておく。

 たまにいるんだよな。こういうやばい成りすまし……。今思えば、ラウンド・リバースの伸ばし棒も、ダッシュかなんかだった気がしてくる。

 

 ヤッベェ。本物だ……。

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