《第二防衛ライン被害甚大。対空ユニットを集中的に狙われています》
「分かっている……クソッ、流石に戦い慣れしているな」
敵の放つ弾丸を回避。
そうして、ブーストをして一気に距離を縮める。
そのまま回転を利用してブレードを振るい横一線に切り裂く。
後方で敵の機体が爆ぜる音が聞こえてきた。
瞬間、悪寒が走り緊急回避をする。
体に負荷が掛かり、横へとスライド移動すれば上方より光の線が走った。
それが島へと降り注ぎ、オープン回線越しに味方の悲鳴が聞こえた。
すぐさまをセンサーを動かして地上を見れば、大きなクレーターが出来上がっていた。
土が赤熱しドロドロに溶けていて――レーザー兵器だとッ!?
高速移動をし敵の追撃を躱す。
そうして、攻撃を仕掛けて来たところを見れば大型のバトルシップが数隻浮遊していた。
雲の中に隠れているが、レーザー兵器の使用で反応がしっかりと現れている。
恐らく、レーザー兵器を使用したのは中央のバトルシップであり。
他はそれを護衛する為のものだろう。
エネルギー兵器ではないが、レーザー兵器もかなり危険だ。
エネルギー兵器のように精製液を必要としない分、莫大な電気エネルギーを必要とするそれ。
暴発の危険性が無く、チャージにおいてもエネルギー兵器よりは時間が短い。
にも関わらず。貫通性や威力、そして何よりも射程が長い。
あそこから気づかれずに狙撃できたのもレーザーだからだろう。
エネルギー兵器に劣らず強力な兵器で――危険だ。
確実に今の攻撃で、南部の対空ユニットに甚大な被害が出た。
他の戦線の対空ユニットが残りどれほど残っているかは分からない。
だからこそ、なるべく被害を抑えなければならない。
――俺だけだ。次の発射までにアレを潰せるのはッ!
考えている暇はなく――機体を戦艦に向けて動かした。
加速。更に加速し――システムが警報を発する。
他の戦艦の砲塔をが俺に向けられている。
バトルシップの全力の砲火を躱す事は不可能だ。
全ての武装による全力の攻撃であり、熟練のパイロットであろうと全てを避ける事は出来ない。
縮地を使うしかない。しかし、タイミングを誤れば次弾で殺される。
見極めるしかない、初見で全てを看破し完璧に回避する。
大きく目を見開き未来視を発動。
そうして、心臓の鼓動が早くなるを感じながら飛翔する。
警告音が鮮明に聞こえる――まだだ。
全ての砲塔が俺に向けられていて、それらの武装にエネルギーがチャージされていく――まだ。
未来視を発動させながら、目の前の光景と照らし――今だッ!!
攻撃が発射されると同時に縮地を発動。
グゥンと機体が一気に前進し、俺を見失った攻撃が空を切る。
そうして、間髪入れずに迎撃用の自動機関砲が起動し、俺に向かって弾幕を張る。
俺はそれを視界に入れながらニヤリと笑う。
機体の速度を速める。
そうして、機体を回転させた。
耳元で響く弾丸が通過する音を聞き。
笑みを深めながら、無数の光の線を超えていく。
踊れ。踊れ踊れ――踊るんだ。
回転しながら、ブレードを振るう。
拳を回転させながら、降り注ぐ弾丸の雨を弾いていった。
そうして、無理やりに弾丸の雨を突破し――見えた。
分厚い雲の先に隠れていたバトルシップ。
中央の艦底が展開されていて、レーザー兵器となる銀色の砲塔が見えていた。
黄色い発光を確認し、ロイドからの報告で電気エネルギーがリジャージされていると認識した。
俺はそのままバトルシップへと更に加速。
全身が悲鳴を上げていて、体からミシミシと嫌な音が聞こえた。
俺は歯を食いしばりながら、バトルシップからの攻撃を全て回避する。
そうして、機体をのけ反らせなが全力の投擲にてブレードを二つ同時に放った。
激しく振動し赤熱するそれがくるくると回転しながら砲塔へと迫り、音も無くそれを切り裂いて貫通した。
瞬間、砲塔はスパークを起こしながら爆発。
バトルシップからけたたましいほどのサイレンが響いていた。
俺は爆発を起こすそれの下を潜り抜けて、返って来たそれを装着。
そのまま上へと上がりながらバトルシップへと突っ込む。
機体を回転させながら、ギャリギャリと甲板を削っていく。
確実に墜とす。
少しでも余力を残せば、確実に島に突っ込むであろう。
そんな気さえ起こさせずに此処でお前たちを――殺すッ!!
バトルシップから炎が巻き上がり。
中から飛び出すように無数のドローンが飛んできた。
それらを視界に収めながら、奴らの放つエネルギー弾を全て回避。
そうして、熱風による気流の乱れで体勢を崩したそれへとブーストで接近。
そのままブレードで切り裂き、全てのドローンを破壊した。
「まだ――まだァ!!!」
サブスラスターで機体を横に回転。
遠心力を利用してブレードを投擲した。
クロスする様に飛んでいったそれが艦内に沈んでいたブリッジへと侵入。
全てを破壊して、シップ全体が爆発を引き起こしてた。
爆風から逃れるように離れながら帰って来たブレ―ドを回収。
船の残骸が炎を纏いながら散らばっていき、脅威の一つがこれで消えた。
雲の中の反応を探れば、護衛についていたバトルシップの反応も消えている。
見れば、双子の機体の反応があり。
彼らが殲滅したのだと分かった。
ただの量産型であの攻撃全てを回避し、全て撃沈させたのか……想像以上だな。
敵であればゾッとすると思いながら。
俺は周りを念の為に索敵した。
第一陣となる機械虫の殲滅は完了した。
そして、第二陣となるメリウスやバトルシップからの攻撃も防いでいる。
対空ユニットや味方への被害は甚大だが、何とか防げた。
――そろそろか。そろそろ例の”アレ”が来る頃か。
計画の中で話された事実。
篝火という組織はただのテロリストではなく。
三大企業の一つである――SAWとの繋がりがあった。
俺には信用するなと言っていたアイツが。
SAWと手を組み手配していた代物。
それは――センサーが巨大な何かを察知した。
俺は上を見上げる。
すると、遥か上――空を超えた宇宙に浮かぶ何かが見える。
形はひし形上の金属の塊。
しかし、センサーで拡大すれば小さなくぼみが無数に存在すると分かる。
大気圏よりも上にあるであろうそれが、此処からでも視認出来るのならその大きさはどんなものかは分かる。
それが真っすぐに此方に向かってきていて、窪みが連動する様に動き始めていた。
アレだ。アレが聞いていた兵器であり。全ての人間に消えない”悪夢”を見せる悪魔の兵器――”ラフレシア”だ
ラフレシア――SAWが極秘に開発した最新の”制圧兵器”の一つ。
特殊なジャミング装置を内蔵し、発射から散布までの間に敵に発見されるリスクを限りなくゼロにし。
数分の間に、国一つを”支配”する為のものだった。
かつての時代の核に変わる抑止力として作られたもので。
アレを撃たれれば誰も防ぐ事は出来ない。
例えエネルギーフィールドであろうとも未知の細菌兵器やウィルス兵器を積んでいればそれを完璧には防げない。
アレは物理的な攻撃によって国を滅ぼし支配下におくものではない。
その国の人間たちを廃人にし、無理やりに支配下に置く為のものだ。
ジョットさんは言っていた。
十中八九、SAWが開発している兵器で間違いないと。
しかし、奴らはそれを開発しているという証拠を出さず。
可能な限り販売する人間を選んだうえで、アレを作り提供している。
だからこそ尻尾を掴む事も出来なければ、それを製造している場所も分からないと。
ラフレシアを使う事は条約で固く禁じられてる。
如何なる理由であろうとも、人道に反したアレを使用する事は許されない。
だからこそ、表立ってアレをSAWも売りはしない。
だが、ジョンはアレを何処からか手に入れた。そして、今、此処で使ってしまった。
ジョットさんたちのお陰で、必ずアレが来る事は知っていた。
その結果、センサーを強化する事によってアレを発見する事は出来た。
「来る。悪夢の花が……咲くッ!」
オープン回線越しに仲間たちの慌てふためく声が聞こえる。
俺はそれを無視しながらたらりと汗を流す。
ラフレアシアの窪みから何かが射出される。
それが花のように広がって、空を覆うほどに展開された。
無数の花弁のように宙を舞いながら、それがゆっくりと降り注ごうとする。
アレ等一つ一つが。異分子化を促す為の薬が入れられている筈だ。
アレが一発でも島に撃ち込まれれば、何処に隠れていようとも全ての人間に影響を及ぼすだろう。
此処に集まった時点で逃げ場はない。
地下だろうと空だろうと、もう手遅れだ。
だが、この為にジョットさんは――アレを持ってきた。
《――諸君、地上の残存戦力の掃討を任せる。空のアレは――私が引き受けよう》
「……!」
ジョットさんの声が聞こえた。
俺はそれを受けてすぐさま島へと戻る為に降下を始めた。
何故、戦略兵器を三つも手配したのか。
それは空に上がるアレらを全て瞬時に迎撃する為で。
ジョットさんはこうなる展開を予見した上で、同じ戦略兵器を用意していた。
どんなに非難されるかは分かっていた筈だ。
これを三つも持ってくるだけでも、相当に難しかったかもしれない。
それでも用意できたのは、皆が理解していたからだ――使わざるを得ないと。
来る。再びあの光景を見る事になる。
大空を飛ぶ全てを消し去る無慈悲な光。
戦略兵器として存在するものの中で、絶対的な力を持った”暴力そのもの”が――起動する。
防ぐ事は出来ない。
一度光が目に映れば、次の瞬間には全てが消える。
恐ろしいと思う事もあるが。それ以上に、頼もしい。
アレさえあれば、ラフレシアでさえも封殺出来る。
皆が知っている。アレの威力を、アレの恐ろしさを。
下へと降下し雲を抜ける。
島の中央で光が集まっていた。
俺はそれをモニター越しに見ながら、ぼそりと呟いた。
「やれ。やってくれ……この戦いを……終わらせてくれ」
もう十分だ。
これ以上の戦いは無用だ。
ジョンの野望は、願いは……決して叶わない。
どんなにアイツが優れていようとも。
どんなにアイツが偉大であろうとも。
アイツの夢が叶う事は絶対に無い。
この世界には存在する。
理不尽なまでに絶対的な存在が。
ノイマンを超えられず。神をも越えられないのなら……誰も、何も出来やしないんだ。
俺はギュッと拳を握る。
そうして、島へと上陸し周りに敵がいない事を確認した。
これで終い。これで幕引きだ。
ジョン・カワセ。
お前であろうとも、勝つ事は出来なかった。
人間が神に勝つ事なんて出来ない。
当たり前だ。当たり前なんだ。
島中に甲高い音が響く。
エネルギーが極限まで高められている。
空を見ればラフレシアが散布したミサイルたちが空を覆っている。
雲を切り裂き、青を塗り潰すほどに無数の点が存在し……それでも、俺は心の何処かで期待していた。
アイツなら、もしかしたら……神すらも欺けるのかと。
地獄を作り出した張本人で、無垢な命でさえも殺した悪魔。
だが、俺が初めて会ったアイツの瞳は綺麗だった。
吸い込まれるような黒で、引力すら感じた。
そんなお前が此処で敗れるなんて――俺は。
瞬間――光が走った。
視界を覆うほどの白。
全てを塗り潰す光で。
それを見つめながら、俺は小さく口を開けて――――