【完結】死にぞこないの猟犬は世界を知る   作:オタリオン

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157:希望の巨砲と似てない姉弟

 必要な情報を手に入れて、作戦は一週間後に決行すると決まった。

 その後にミランダに話しかけて、何故、親衛隊のメンバーだった事を隠していたのかと聞いた。

 彼女は一々明かして畏まられるのが嫌いだったからだと言い。

 丁度いいからと情報交換も兼ねて明日指定する場所に来てくれと言って来た。

 俺はどういう事なのかと思いつつ、言われた通りにミランダが指定した場所へと向かっていた。

 

 

 

 バイクを走らせながら、街の中へと入り。

 大きなドーム状の建物の中に入る為に、地下の駐車エリアへと侵入する。

 中心部から少し離れた場所にある街だが、工業地帯となっている場所なのか。

 民家や店よりも、工場や研究棟が密集している気がする。

 此処のドーム型の建物も調べてみればメリウスの開発を行っている場所のようで。

 ロボットからIDの確認を求められて答えれば、認証されていると言われ通された。

 

 俺はゆっくりと空いている場所にバイクを止める。

 そうして、ヘルメットを脱いでから後ろに乗っているヴァンに声を掛ける。

 

「……本当に良かったのか? 別に来なくても」

「いやいや。一応は俺も事情を知っているし……作戦当日は俺がお前のサポートに回るしな。一緒に戦う奴の事くらい知っとかないとだろ?」

「……まぁそれはそうだが……いや、そうだな」

 

 俺は納得する。

 そうして、俺たちはヘルメットを置いてから荷物を持って歩き出す。

 薄暗い地下駐車場には車が無数に停められていて。

 それだけ多くの人間が此処で働いている事が分かる。

 

 駐車場の奥へと行けばエレベーターがあった。

 それもかなりの数であり……十五か?

 

 適当な扉の横のボタンを押して少し待てば扉が開き。

 その中へと入ってから俺は渡されたメモを見る……A-13か。

 

 ボタンを押して待てば扉がゆっくりと閉められて。

 ガタンと大きく揺れたかと思えば、小さな駆動音と共にエレベーターが――いや、違う。

 

「おぉ」

「すげぇ」

 

 エレベーターだと思ったそれの壁が透けたように変わる。

 まるで、空の上のような風景が投影されて、その中をこれが縦横無尽に走って行く。

 揺れはほとんどないし、空の上を走っている訳でもないが。

 恐らく、本当に上下左右に進んでいっているんだろう。

 かなり巨大なドーム施設だと思ったが、無数の部屋が存在しそこへとこれを繋げているのか。

 だからこそ、駐車場の一端だけでも扉が十五もあり。

 ボタンに関しても百以上あるのか。

 

 仮初の空の旅を楽しむ。

 そうして待っていれば、ゆっくりと止まっていく。

 空の投影も消えてまた普通のエレベーターに戻って。

 チンと音が鳴り扉が開かれて……此処か。

 

 扉の外に出れば、様々な音が聞こえて来る。

 鉄を叩く音や溶接する音に、人の怒鳴り声や機械の駆動音など。

 かなり騒がしいエリアであり、思わず耳を塞いでしまった。

 

 黄色の柵が張り巡らされて、大きい通路の両隣には無数の作業用のアームがある。

 メリウスのようなものが吊るされていて、気性の荒そうなメカニックたちがてきぱきと動いていた。

 

「――!」

「何て言ってるんだ!?」

 

 ヴァンが耳を塞ぎながら何かを言っていた。

 俺も耳を塞いでいるので何も聞こえない。

 これでは会話も出来なければ、長時間いる事も出来ない。

 困り果てていれば一体のロボットが歩み寄って来た。

 四足歩行のロボットであり、背中の箱が開閉し何かを見せて来る。

 二人で中身を見れば……耳栓か?

 

 緑色の耳栓のような形状をした何かで。

 箱の側面には文字が浮かび上がっていて、装着義務とある。

 つけなければならないものならつけよう。

 いや、これほどうるさいのだから耳栓が無ければストレスで死ぬ。

 俺とヴァンは互いに視線を交わしてから頷いて、耳栓を取って耳に嵌めた。

 

《――コネクト》

「ん、何だ……あれ? 急に静かに」

「お? 今の声はナナシか? すげぇクリアに聞こえたぞ」

 

 ヴァンの声が鮮明に聞こえた。

 見ればヴァンも俺を見ながら不思議そうな顔をしていた。

 耳栓からコネクトと聞こえたかと思えば、急に騒々しい音が消えた。

 人の声は聞こえるが、機械の音などはあまり聞こえない……凄いな。

 

 恐らく、必要な音だけを選択し聞き取る為の小型装置で。

 調整さえすれば自分がしている作業の音や人の声だけを聴く事も出来るかもしれない。

 その証拠に近くを通る人間の足音やロボットの足音は聞こえている。

 

 全くの無音であれば事故に繋がるが。

 これは自分に近い物体などの音を聞こえるようにしている。

 それのお陰で人にぶつかる事も無ければ、機械と接触する心配もない。

 便利な道具に少しだけ感動しながら、ヴァンと一緒になってこもエリアの奥へ向かう事にした。

 

 見える範囲にはメリウスの部品が無数にある。

 くみ上げられたものもあり、作業服を着た人間たちがそれを見ながらアームを動かしている。

 主に、四肢のパーツを作っているのか。

 下半身だけのものもあり……モーションキャプチャーでもしているのか?

 

 電極が無数についた黒い服を着ながら、男が足を動かしている。

 その動きに連動する様に足が動いており。

 俺はその光景をハーランドでも見たと思っていた……やっぱり、そうなのか。

 

 俺はそれらの光景を見ながら、ヴァンに声を掛けた。

 

「……ヴァン」

「あ? どうした?」

「……その、俺の勘違いだったら謝る……ハーランドは、その……シャンドレマと関係があるのか?」

「……あぁ……まぁ、見てたら分かるよな……そういう噂もあるし」

 

 俺は以前から知っていた。

 異分子の国シャンドレマと三大企業の一つであるハーランドはお互いに協力関係を結んでいるという噂を。

 根も葉もない噂というほどでもない。

 西部地方ではハーランドの影響力が大きいが、彼らが異分子の国から損失を被ったという記録は無い。

 そもそも、自国だけであらゆる分野において成長する事は実質不可能な筈なのに。

 シャンドレマはカメリア青騎軍からの攻撃を耐えるだけの国力がある。

 

 単純な武力もそうだが。

 メリウス開発の技術や武装の類も他の勢力と差は無く。

 兵士の練度もかなり高い事はこの目でハッキリと分かった。

 そして、今、俺の目の前で行われているメリウスの開発の光景は……間違いなくハーランドの影が見える。

 

 確信はない。

 だが、そうであるのなら色々と辻褄が合う。

 西部地方の国々が統合し、そこから一気に成長し激しい攻撃に耐えるだけの国力を生み出し。

 外からの物資も少なからず此処へ流れ着いているのなら……間違いなく、ハーランドレベルの企業が支援をしているのだろう。

 

 ヴァンはゆっくりと答えを明かす。

 

「……俺も知らねぇんだ。実はな」

「……ヴァンはどう思う」

「……まぁ全くの無関係はあり得ねぇだろうな……個人的にも、あの人なら率先してやりそうだし。先代もアイツに似てたってのは聞いたことがあるな……セシリアにとっては異分子も人間も等しくビジネスを行える可能性があってさ。もしも、会社にとって利益があるのなら、喜んで神にも背くと思うぜ? ま、バレるようなミスは絶対にしねぇけど」

「……そうか……うん、分かった。この事はもう聞かない。忘れてくれ」

「おう」

 

 ハーランドが関りを持っていても別にどうこうするつもりはない。

 今や俺はシャンドレマで根を張っているんだ。

 此処から外に行くことは出来ないからこそ、ハーランドが協力者である事に少し期待した。

 もしも、セシリアさんやバーナー博士にウッドマンさんが此処にいたのなら……だが、もういい。

 

 関係あろうと無かろうと、彼らを巻き込む訳にはいかない。

 ただでさえ代行者の件でまた不穏な空気が流れているんだ。

 何も無いのならそれでいいが、十中八九が神は何かを企んでいる。

 それを知り、事前に防ぐことが急務で。

 俺はハーランドがこの件に関わる事無く平穏に過ごせる事を祈っておくことにした。

 

 エリア内を進み。

 俺たちはようやく目的の人物を発見した。

 多くの作業服を着たメカニックたちが動いていて。

 巨大なそれを調整している……デカいな。

 

 大きな筒状のそれ。

 バトルシップの主砲ほどあり、かなりの大きさだ。

 三十サンチ……いや、四十か?

 

 ただの主砲と言う訳ではなさそうで。

 展開された内部には細かい調整が施されていた。 

 切れ込みが入っており、開かれたその内部には見た事も無いような凹凸や機構がある。

 システムが組み込まれた砲身であり、普通のものだと侮るのは危険だ。

 

 俺たちがそれをジッと見ていれば、額を小突かれる。

 慌てて前を見れば、にしりと笑みを浮かべながら上でを組むミランダが立っていた。

 黒いタンクトップは筋肉質な胸部が張っていて、作業服の下はオイルなどで汚れていた。

 前と違い今回頭に巻いているバンダナは赤、青、黄色の三色で中々に派手だった。

 

 彼女は親指で背後のそれを指し示しながら声を発した。

 

「どうだ。すげぇだろ」

「……あぁ……これはバトルシップに付けるものか?」

「いや、メリウスだ」

「はぁ!!? こ、こんなバカでかいもんをつけたメリウスだって!? 聞いた事ねぇぞんなもん!」

「だからだよ! 私と弟は誰も作った事も乗った事も無いメリウスを駆る。こいつは希望だ。運命を切り開くためのな」

「ね、姉さん。知らない人たちに話しちゃ……ぅ!」

 

 ミランダの背からひょこりと顔を出した青年。

 ぼさぼさの黒髪に、たれ目がちな瞳はパープルであった。

 彼は俺の視線にきがついてまた姿を隠す。

 しかし、ミランダに首根っこを掴まれて強制的に前に出される……まるで、猫と飼い主だな。

 

「こら。お前も挨拶しろ……すまないね。こいつはどうも人見知りするもんでさ。私以外の人間に心を開かないんだ」

「ね、姉さん! 離してよ! ぼ、僕は仕事がぁ!」

「仕事仕事って少しは交流しろ! そんなんだからダチの一人も出来ないんだよ!」

「ぅ、ぅぅ!!」

 

 顔を真っ赤にしながら頬を膨らませている。

 背が百五十センチほどと低いためか。

 下手をしたら少年にも見える。

 が、彼は恐らく俺と同い年であり、最近では同じ異分子なら何となく年齢が分かる気がした。

 

「まぁまぁいいじゃねぇか。無理して話ししても仲良くはなれねぇからな……こいつはアンタが作ったのか?」

「……ち、違います……設計したのは姉で……ぼ、僕はシステムに手を加えただけで……その……」

「へぇ、そいつはスゲェや! こんな巨大な兵器のシステムを作るなんて並みのメカニックには出来ねぇ。アンタ、相当な腕だな!」

「……っ! あ、あの。ぼ、僕は……っ……しゅ、趣味でシステムを……か、開発しています……だから、その……」

「お? じゃあさじゃあさ! ロケットパンチも出来るのか? こうぎゅんと飛ばしてがしんって戻してさ!」

「……マシンダーみたいなものかな?」

 

 彼がぼそりと言う。

 すると、ヴァンは瞳をキラキラと輝かせながら怯える彼に顔を近づけた。

 

「――え!? マシンダー知ってんのか!? マジで!?」

「ぅ!! い、いや。その、名作だから」

 

 彼は怯えながらも、ヴァンの言葉を肯定する。

 すると、彼は何度も頷きながら親指を立てる。

 

「いいねいいね! 俺も大好きなんだ! どこ!? どこのシーンが最高だった!?」

「……やっぱり第二十四話の宿敵ミラージュとの戦いかな。片腕を犠牲にして、残りの腕に全エネルギーを回してのロケパン。そこにかけつけた相棒のネクスト・マシンダーが命を削って放ったロケパン。二人の力が合わさったダブルロケットパンチでミラージュを倒したシーンは最高だと」

「だよなァァァァ!! 分かる分かる!! そしてその後の崩壊した街で。沈みゆく太陽をバックにジョーとの熱い握手!! まさに友情で、それを陰ながら見つめるアンリの切ない表情がまた!」

「――っ!! そうです!! そうなんですよ!! その表情こそが最大の伏線で――」

 

 ヴァンとCQが話をしている。

 互いに趣味が同じであり、共通の話題があるからか。

 かなり奥の深いマシンダートークに花を咲かせていた。

 俺はそんな二人を見つめて……ん?

 

 肩を叩かれて見れば、ミランダが奥の方を指さす。

 ついて来いという意味であり、俺はヴァンとCQから静かに離れる。

 ミランダと肩を並べて歩いていれば、彼女は後ろを確認してからにしりと笑う。

 

「アイツ、良い奴だな。シリルがあんなに楽しそうに話しているところ初めて見たよ」

「……俺も、ヴァンがあんなに語っているところはあまり見たことが無い。互いに良い友が出来て良かったよ」

「だな……と、ここいらでいいか」

 

 ミランダが足を止める。

 そうして、コンテナのようになった場所にある扉横のパネルに触れた。

 彼女の指紋を認証したのか、ロックが解除されて彼女は中に入っていく。

 俺も続いて中に入れば、中はそれなりの広さで。

 モニターとデッキなどがついているものが設置されていた。

 専用のコンソールらしきものもあり、彼女はその前に立ち俺を見て来た。

 

「さて、それじゃ。互いに情報交換と行こうか。ナナシ」

「……では、先ず俺から話そうか」

「あぁどうぞ」

 

 彼女は頷きながら掌を向けて来る。

 俺は何から話そうかと考える。

 

 自分の事はそんなに話さなくてもいい。

 彼女は知ったような感じであったからな。

 ならば、今回の一件についてミヤフジから聞いた情報を話そう。

 俺はゆっくりと口を開き、確認が取れている情報を伝えていった。

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