【完結】死にぞこないの猟犬は世界を知る   作:オタリオン

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209:誇り高き戦士たち(side:SJ)

 最終決戦型特殊操魂式メリウス――”ロストワード”。

 

 神との最終決戦を前に開発された機体。

 ノイマンが密かに設計し、ハーランドの人間たちが作りあげた”神殺しの機体”だ。

 独自のエネルギー供給回路を持ち、性質変化を施したエネルギーを増幅する為のコアを内蔵。

 合計で四つの盾のようなスラスターはハイブースターを更に改良した”セル・ブースター”となっている。

 人間の細胞のように緻密な設計が施されて、ダメージを負っても自動で修復する機能を内蔵。

 装甲は極限までそぎ落とし、特殊システムを使う事によって質量を持った残像を生み出せる。

 相手が何かを考える暇も与えない、そんな意図で作られた”一手確殺”の機体だ。

 

 目の間で発生する暴風。

 奴が移動するだけで強力無慈悲な風が吹き荒れる。

 まるでカマイタチのようであり、それを中心で受ける俺は静かにその場に浮遊していた。

 

 奴は俺へと攻撃を仕掛けてくる。

 空気を蹴りつけるような動作をして、瞬間移動が如き速さで大きな距離を移動していた。

 残像が発生するほどの速さであり、奴は俺をかく乱しながら攻撃を放ってくる。

 無数のエネルギー弾が死角から迫り、それをスライド移動で回避。

 四方八方から同じような攻撃がなされて、俺は宙を舞うように移動した。

 

 爆発的な加速であり、常人であれば目で捉える事も出来ない。

 一発一発の攻撃も触れただけで機体を溶かしてしまうだろう。

 が、今の俺には奴の動きとその行動の先が予測できていた。

 

 回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避回避――全て回避。

 

 装甲のスレスレを奴の弾が飛ぶ。

 時折、その肥大化した腕による攻撃も仕掛けてきた。

 ギリギリで躱せば暴風が吹き、その腕から発生する灰燼が俺の機体を焼き焦がそうとする。

 それを受けながらも冷静に奴を観察する。

 奴はぎろりとセンサーを動かして俺を睨み――ぐぎりと体を動かした。

 

 軟体と呼べばそれまでだ。

 奴は機体を不自然に曲げて不気味な連続攻撃を放つ。

 その一発一発を先読みし回避。

 放たれた拳のインパクトで空気が激しく振動し。

 遠く離れていた奴の栄養源ですらも風だけで大破させられていた。

 

 荒れ狂う竜巻であり、自然災害と同じと言っても過言ではない。

 正に、神が遣わした兵器だ。

 恐ろしいまでの暴力であり、力のそのものと化していた――が、それだけだ。

 

 それら全ての未来を予測し、俺は的確に交わす。

 見える。見えているぞ――お前の全てがな。

 

 理性無き獣の攻撃だ。

 速さと威力だけのそれを今なら避けられる。

 空気が激しく振動し、奴の動きが残像になり無数の影が見える中で。

 奴の暴風と化した攻撃を全て紙一重で避けていく。

 

 流天が増幅されていく。

 己が意思が高まり洗練されていくようだ。

 それが奴の灰燼を阻み、この機体を守る鎧となっていた。

 

 無数のエネルギー弾が空間を走る。

 それら全てをブーストで回避。

 流れるように移動しながら、奴が放つ拳を躱す。

 避けて、避けて避けて避けて避けて――強い殺気を感じた。

 

 一瞬にして奴の姿が消える。

 無数のエネルギー弾の攻撃はそのままに。

 背後から強い殺気を感じていた。

 

 

 背後から迫った奴の攻撃の気配――が、俺は避けない。

 

 

 瞬間、背後から殺気が消えた。

 空間がブレてすぐ目の前に奴が立っている――その大きな手が目の前に迫った。

 

 

 その手は大きく開かれて、全てを焼き尽くすほどの熱量を秘めていた。

 至近距離に迫ったそれを見ながら、俺は機体を動かす。

 一瞬にして奴の動きがまるで止まっているかのようになる。

 そのまま流れるように奴の背後に立つ。

 瞬間、再び世界は速さを取り戻し、奴はそのまま機体を回転させて俺に向かって攻撃を放ってきた。

 

「――ふぅ」

 

 俺は手のブレードを一呼吸の内に振るう。

 轟音と共に放たれた大質量のエネルギー弾が目の前で二つに分かたれた。

 灰燼を纏ったそれを両断すれば、その二つが空の彼方に消えていった。

 遠くで空が爆ぜて背後から強烈な黒い閃光が発生する。

 びりびりと空気が激しく振動していた。

 化け物は咆哮を上げながら、液化して機体を一気に四体に分裂させた――芸達者な奴だ。

 

 今の俺には限界が無い。

 本体である肉体は”仮死状態”に入っていた。

 俺は専用の端末を使って魂だけを機体にアクセスさせている。

 どれだけ加速しようとも、どれだけ無理な操縦をしようとも。

 本体は厳重に守られコックピッド内で管理されている。

 機体さえ無事であれば――何処までも飛んでいけるッ!!

 

 俺は目を光らせた。

 そうして、一気に上空へと飛び上がる。

 化け物はそんな俺を負ってきた。

 奴は手の平を此方に向けて特大の熱量を放つエネルギー弾を連続して撃ちこんできた。

 

 それらを機体を回転させながら避ける。

 機体スレスレを通過するそれ。

 増幅された流天により、その熱でさえも防ぎきっていた。

 俺は化け物からの攻撃を全て紙一重で避けていく。

 そうして、ぐんぐんと速度を高めながら遥か上空に向かって翔けて行った。

 

 雲を突き抜けて、空の青みが深さを増していく。

 星の輝きが見えてくる中で俺は笑みを浮かべた。

 そうして、限界高度を超えて機体が冷たくなっていくのを感じた。

 凄いな。機体の熱もちゃんと感じられる。

 俺は今、メリウスと一心同体となっていた。

 

 

 感じる。こいつの胸の鼓動を。

 感じるんだ。こいつが強敵との戦いに歓喜しているのを。

 

 

 ――ならば、共に行こう。戦いの向こう側へッ!!

 

 

 俺は機体を一気に停止させる。

 瞬間、化け物たちは一斉に反応して飛び掛かって来た。

 特大の黒いエネルギー弾を撃ち込んできて――ブースト。

 

 残像を生み出し、それが奴の放った弾に触れた。

 背後で黒い光が発生し、俺はそのまますれ違いざまに二体の敵を斬り付けた。

 化け物は悲鳴を上げる間もなく両断されて、べしゃりと液状化し浮遊している。

 そのまま機体を一気に旋回させて、残りの化け物の眼前に躍り出た。

 奴は空中に無数の武装を展開し、細長いレーザーのようになったエネルギー弾が迫って来た。

 

 逃れられない――否、避ける必要はない。

 

 俺は両手のブレードを勢いのままに振るう。

 そうして、全ての攻撃を刃で打ち消す。

 そうして、そのまま噛みついてきた奴の頭にブレードを突き刺した。

 

 一気に流天のエネルギーを流し込む。

 瞬間、奴の頭が膨張し破裂した。

 べちゃりと掛かった奴の肉片を移動しながら払う。

 

 残った一体は既に姿を消している……光学迷彩か。

 

 エネルギー兵器に光学迷彩に、機体の変形。

 まるで、ショーでも見ているような気分になる。

 そんな事を考えていれば、化け物の肉片が一点に集まる。

 それを見ていれば化け物の形状がまた変化し……ほぉ。

 

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「意識が戻ったのか」

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 二人分の声が同時に聞こえる。

 姿を変えた化け物はメリウスらしい姿になっていた。

 

 両手には折りたたまれたブレードを装備し。

 背中には大型のバックパックがあり、そこから複数のブースターが集まったものが生成されている。

 頭部には顔の中心から後ろへと延びるブレードアンテナがあり、二つの真っ赤な双眼センサーが光っていた。

 奴はブレードを展開し、背中のバックパックに収納されていた四つのブレードと一体化したサブアームが展開された。

 軽量型に分類されるような機体であり、何処となく俺のアンブッシュの面影を感じる……そうか。

 

「それで、いいのか?」

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「そうか……なら、何方かが死ぬまで存分に”死合おう”」

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 少年のように明るい声で奴らは叫ぶ。

 奴も理解したのだ。

 これで勝負が決まると。

 この先の流れで何方かが確実に死ぬと。

 だからこそ、最期は意識がある状態で戦いに臨もうとしている。

 

 最期は一人の戦士として――敵ながら天晴だ。

 

 奴は強くセンサーを光らせる。

 そうして、背中のブースターからエネルギーを一気に放出する。

 爆発的な加速で奴は星の表面をなぞるように移動を始めた。

 奴らは一気に此方から距離を離していく。

 

 速い。今までの比では無いほどに――だが、問題ないッ!!

 

 俺は奴らを追って加速する。

 ぐんぐんとスピードを上げながら、互いに黒と白のエネルギーを纏わせる。

 回転をしながら互いに接近し、それぞれの得物で攻撃する。

 一瞬の接敵にて二十を超える斬撃を放つ。

 バチバチとエネルギーが激しく迸り、空には巨大な光が何度も何度も点滅していた。

 

 翔ける――この広い空を。

 

 限界を超えて俺たちは翔けた。

 そうして、互いに心の底から笑いあう。

 互いの武器で相手の命を摘み取る事だけを考えて。

 俺たちは接近と同時に相手の動きを読みながら武器を振るった。

 

 加速し宙を翔けてぶつかり合い。

 時に軌道を変えて更に加速し、エネルギーを迸らせた。

 この広い宙で俺たちは自由で、純粋な命のやり取りをしていた。

 この時ばかりは互いの事情は関係ない。

 

 相手を殺し勝つ事――それだけで十分だ。

 

 ブーストし奴に肉薄する。

 至近距離に奴が迫り、一瞬にしてサブアームを含めた六つのブレードで斬りかかって来る。

 それら全てが残像を発生させるほどの速さで振るわれて、俺はそれを全て受け流す。

 全ての攻撃を瞬きする間もなく受け流し此方も流れるように斬撃を放った。

 奴はその斬撃を二つのブレードで捌き切り、そのまま灰燼を機体から発生させた。

 至近距離でのエネルギーそのものの爆発。

 しかし、俺は流天を展開する事でダメージを防いだ。

 が、機体が一気に後ろへと飛ばされて、奴は間髪入れずに斬撃を飛ばしてきた。

 

 鋭く速い斬撃が四つ――弾く。

 

 一撃目を弾き、二撃目はブーストによって回避。

 そのまま空の上をスライド移動しながら、迫り来る残りの斬撃をブレードで切り払った。

 灰燼の残滓が目の前で舞う。そうして奴は――いない。

 

「――ッ!!」

 

 背後から殺気を感じた。

 その瞬間に、俺は背後に向かって斬撃を放つ。

 

 

 

 が、そこには誰もいない――ブラフだ。

 

 

 

 側面からの攻撃。

 視線を動かせばすぐそこに奴がいる。

 六つのブレードには凄まじい熱量のエネルギーが巡っていた。

 刀身があまりの熱に白く輝くほどで。

 漆黒のエネルギーに白い刀身は中々に栄える。

 

 

 

 スローモーションに感じる世界で奴の攻撃を見つめる。

 

 避けられない。いや、避けても”無意味”だ。

 

 俺はただその光景を見つめるだけで。

 

 そのまま奴のブレードの切っ先が心臓に触れる。

 

 

 

 素直にそんな事を思って――コアを貫かれる。

 

 

 

 熱したナイフでバターを切るようにずぶりと装甲を貫いた。

 そうして、流された灰燼により機体が爆ぜてパーツがバラバラと舞う。

 オイルが飛び散って奴の機体を濡らした。

 双子は笑みを深めながら、勝ちを確信していた。

 

 

 今の攻撃は素晴らしかった。

 文句のつけようが無いほどに完璧なフェイクで――判断を”誤りかけた”。

 

 

《――ッ!?》

 

 

 バラバラになった俺の機体。

 それが霞のように消えていった。

 

 

 全て幻――奴が望んだ”幻想”に過ぎない。

 

 

 奴は動揺を露にして、背後から迫る俺の機体にブレードを叩きつけた。

 真っ二つに両断されたパーツの残骸が飛び散って――また消えた。

 

《これも――ッ!!》

 

 奴の四方八方からロストワードが迫る。

 全てが本物と同じ質量。

 全てに等しく同じ気配と殺気が込められていた。

 

 見分けはつかない――否、殺すまでは分からない。

 

 奴は全てのロストワードの攻撃を受け止める。

 全ての武装を使ったことによって攻撃の手を防がれた。

 その瞬間に、上空からもう一体のロストワードが勢いのままに翔け降りてくる。

 これで終い。これで武装は封じた――そうではない。

 

「――!」

 

 奴のブレードアンテナが動く。

 真っすぐに此方へと狙いをつけてその先端が漆黒のエネルギーを収束させていく。

 増幅圧縮を一瞬の内に何度も繰り返して――放たれる。

 

 一直線に飛ぶそれは回避不可能。

 ブレードを向けた状態で突っ込んでいったロストワードはそのまま機体全てを焼かれた。

 後には何も残らない。

 欠片も存在しない。

 奴は笑みを浮かべていて――終わりだよ。

 

 

「――シィ!!!」

《――ッ!!》

 

 

 遥か上空から連続ブースト。

 気配を完全に断ち、距離を離す事によって奴の認識を誤認させた。

 質量を持った残像。しかし、その残像は動きによって生み出されるものじゃない。

 全ては俺の意思と相手の意思を受けて形成される幻で――お前は見誤ったんだ。

 

 爆発音が響き渡り、奴の放つエネルギー弾を縫うように移動した。

 装甲が軽く焼けて流天が少しだけ飛び散った。

 奴は向かってくる驚いていたが、すぐには動けない。

 

 そんな筈はない。今の攻撃で決める筈だったと思っているだろう。

 

 

 あぁそうさ。決める筈だった――だが、俺は”臆病”だっただけだ。

 

 

 そのまま奴の元へと肉薄し、ブレードをクロスさせた状態で突っ込む。

 奴はそのまま俺のブレードに機体をめり込ませた。

 灰燼を今の一瞬の内に機体全体に纏わせたか――見事ッ!!

 

 俺はそのまま機体を全力で加速させる。

 機体全体が激しく揺れて、俺たちの周りには熱のバリアが貼られた。

 互いに機体を真っ赤にしながら、大空を翔け降りていく。

 

 

 激しい振動、風を切り裂く音。

 強い熱に、コアから鳴る鼓動――全てに喜びを感じる。

 

 

 揺れる。激しく強く――機体全体が震えた。

 

 

 遥か地上を目指して俺たちは彗星と化す。

 奴は必死に手を伸ばそうとする。

 が、俺たちはそれを許さない。

 お前はこのまま俺の手で――叩きつけるッ!!!

 

 

 叫ぼう。叫ばずにはいられない。

 強く、高らかに――全力でッ!!!

 

 

 

「オオオオオォォォォォォォォッ!!!!!!!」

《アアアァァァァァ!!!!!》

 

 

 

 地面が迫る中で奴に全力で流天を流し込む。

 奴の機体の装甲に亀裂が走り、俺のブレードがめり込んでいった。

 奴は必死に手を動かそうとするが、これほどの加速では手が動かせない。

 そのまま俺は全力で叫び、全てのエネルギーを吐き出す勢いで空を降りていく。

 

 システムが警告を発する。

 地上がどんどんち近づいていく。

 奴はそれでも抗っていた。

 俺はギリギリまでブレードを押し込んだ。

 

 強く、強く、強く強く強く強く強く――全力でッ!!

 

 俺の意思を受けて更に流天が輝きを増す。

 ブレードから強い光が発生し、粒子が勢いよく舞う。

 喉が枯れるほどに俺は叫び続けて――

 

 

 ――貫く。

 

 

 奴の装甲を貫いてブレードが奴を斬る。

 そのまま奴の機体の残骸を抜けて、俺は一気に横へと移動した。

 機体全体が悲鳴を上げて、スラスターも限界を超えていた。

 それでも意地で機体を傾けて、そのまま地面を滑るように移動していく。

 

 ギャリギャリと地面を滑り、遅れて破壊音が響いた。

 まるで、巨大な隕石が地面に衝突したように大きな穴が出来ていた。

 俺は機体を完全に停止させて静かに中心に視線を向けた。

 土煙が舞い上がり、その中心で奴の残骸がもぞもぞと動いている。

 アレだけの攻撃を喰らった上に、想像を絶するほどのエネルギーを消費した筈だ。

 それでも尚、立ち上がり戦う意思を示す姿は――誇り高き戦士そのものだ。

 

《ま、だ……まだ、ま、だ…………ま、だだ、ま、だ、ぁ……まだ、まだぁ……》

 

 ボロボロの機体のシルエットが見える。

 その目の光は弱弱しくなっている。

 付けられた筈の足がポロリと取れて膝をつきながらも必死に起き上がった。

 ぐにゅぐにゅと奴の纏う装甲が蠢いていて、まだ戦おうとしていた……もう十分だ。

 

 俺は空を見上げた。

 遥か上空では一機のメリウスが浮遊している。

 その両手を双子の機体に向けていた。

 

 周りの空間が歪んでいるように見えるほどの熱。

 銃口から強い光が発せられていて。

 彼女は全ての怒りをアレに込めていた。

 

 黒く黒く――漆黒の意思を感じる。

 

 熱源反応で限界を超えてエネルギーをため込んでいるのが分かる。

 あの一撃を奴に見舞うのだ。

 その為に俺は奴を此処へと導いた。

 

 

 幕を下ろそう――その”最後の役目”は彼女が担う。

 

 

 俺は彼女を見つめて静かに頷く。

 彼女はセンサーを点滅させてから更に銃口の輝きを増幅させた。

 

 

 ――瞬間、彼女の機体から強い閃光が迸る。

 

 

《くたばれェェェェェ!!!!》

 

 

 両手から放たれた灰燼による攻撃。

 その大きさは戦略兵器をも凌ぐほどで。

 視界全てを覆うほどの黒い光で目の前が埋め尽くされた。

 上空に立ちふさがった無人機諸共消滅させて双子の機体へと向かって言った。

 

 俺は彼らに対して敬礼をする。

 そうして、彼らへと最後の言葉を送った。

 

 

「誇り高き戦士よ――安らかに眠れ」

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 双子の最期の言葉。

 ノイズ交じりの声であったが笑っていたように聞こえた。

 彼らは最後に掌を俺に向けて――そのままHJのエネルギー攻撃に飲み込まれた。

 

 機体全てがパラパラと粒子になっていき、塵一つ残すことなく消えていく。

 その様を見つめながら、俺は静かに終わりの時を待つ。

 

 

 大質量の攻撃が止む。

 そうした、光が消えたそこには大きな風穴が空いていた。

 まるで、地獄へ繋がる大穴のようで……勝ったか。

 

 障壁を見れば、ピキリと罅が入っていた。

 代行者を始末したことによって障壁を維持する事が出来なくなっていた。

 俺はHJに指示を飛ばし、ありったけの火力で障壁を突破し。

 そのまま中にある白光大石を完全に破壊する事を伝えた。

 彼女はほとんどのエネルギーを使ってしまったとぼやくが無視。

 俺は代行者の消えた後を一瞥してから、そのまま障壁に向かって飛んだ。

 

 ……俺たちは勝った。だが、他のカメリアに向かった仲間たちは……いや、ダメだ。

 

 俺たちが勝てたのなら他の仲間も勝てる筈だ。

 仲間を信じせずして、誰が信じてやるというんだ。

 俺は自らの不安を掻き消すようにブレードを構える。

 そうして、流天を纏わせたそれをクロスさせて――突っ込む。

 

 障壁に当たり、バチバチと激しくスパークする。

 阻まれているが――いけるッ!!

 

 俺は力の限りブレードを押し込む。

 すると、障壁の亀裂は徐々に広がっていって――ぱきりと砕けた。

 

 全面に展開されていた障壁が砕けていく。

 それを確認し、俺はそのままカメリア内部に侵入した。

 街の中には人気は無い。やはり避難させておいたようだ。

 それに安心しながら、俺は白光大石を視認する。

 

 他の仲間たちも無人機の包囲網を突破して街内部に侵入していた。

 皆が皆、白光大石へと攻撃を仕掛けてる。

 無数の弾丸が飛び、俺も脇の武装を展開して攻撃を仕掛けた。

 ガラガラと弾丸をバラ撒きながら全体に攻撃を放ち――音を立てて崩れ落ちていく。

 

 形を保てなくなり消滅していくそれ。

 オープン回線に繋いでいた兵士たちの喜びの声が聞こえる。

 俺はそんな仲間たちは敵がまだいるから油断するなと忠告する。

 通信を切りながら、俺は残りの無人機の掃討に向かう。

 

 ノース・カメリアでの目的は達成した……後はお前たちだ。

 

 此処にはいない仲間たちの顔を思い浮かべる。

 そうして、無事に再会できる事を心から願う。

 俺は神への決戦までに掃討を終わらせて、少しでも体を休ませようと考える。

 彼らは一緒に連れて行けないが、俺とHJと……可能ならライオットたちにもついてきてもらう。

 

 奴との戦いでは精鋭の中の精鋭を送り込む必要がある。

 俺はそう考えながら……少しだけ口角を上げた。

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