【完結】死にぞこないの猟犬は世界を知る   作:オタリオン

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223:共鳴する強き想い(side:SQ)

 目の前で広がる白銀の光。

 奴からの攻撃が放たれて触れる瞬間。

 ナナシが暮れたお守りが強く発光し、私たちを守ってくれた。

 いや、それだけじゃない。

 そのエネルギーが私たちの機体に入っていく。

 機体とそれに乗る私たちは白銀の光に優しく包まれて行った。

 

 自らの手を見つめる。

 痛くない、苦しくない。

 今まで感じていた疲労も不快感も嘘のように消えていった。

 

 漲る力、あふれ出る程の白銀のエネルギー……感じる。

 

 ナナシの力を、ナナシの想いを感じる。

 自らの命を削ってまで、アイツは私たちを守ろうとしてくれた。

 それに助けられて、私たちは再び立ち上がる力を得た。

 私たちはアイツの想いを受け取り、それを使って機体を再び立ち上がらせる。

 迫り来るエネルギーは白銀によって弾かれて四散する。

 奴は困惑にも似た感情を視線を通して送って来た。

 

 

 

 今なら出来る――今なら奴とも本気で戦える。

 

 熱い。先ほどまで冷たかった体が――熱い。

 

 

 

 強い熱が全身に駆け巡り、機体に光が戻っていく。

 失ったエネルギーが戻り、それ以上の力が宿っていた。

 

 疲労も怪我も今なら感じない。

 本気で奴と戦える。

 そう感じながら、私たちは大空を翔けた。

 

 奴も私たちの力が戻ったのを察して向かってくる。

 SJと共に真っ向から接近し、ブレードを振るう。

 全力で振るえば互いにエネルギーが勢いよく流れていく。

 突風が吹き荒れて私たちは機体を激しく揺さぶられながら――ブレードを振るう。

 

 目にも留まらぬ速さ。

 全ての斬撃が光となって敵へと降り注ぐ。

 奴も槍を振り、それら全ての攻撃を捌いていく。

 私たち二人の全力であろうともその防御は突破できない――だが、私たちだけじゃない。

 

 左右からライオットとドリスが翔ける。

 二人はエネルギーガトリングガンを構えて放つ。

 一発一発が白銀になっていて、それが左右から奴の体に当たり爆ぜた。

 奴は体を揺らしてそのやり捌きに陰りを見せた。

 私たちはその隙を縫うように斬撃を飛ばす。

 奴は一気に後ろへと強制的に後退させられながら、空間を歪めてエネルギー弾を放つ。

 

 私たちは散開し、それらの攻撃を避けていく。

 機体を加速させながら、宙を縦横無尽に翔けていく。

 ブレードで迫るそれを払い、避けられない攻撃は仲間が打ち消す。

 ライオットとドリスも空を翔けて、互いに背を預けながらそれらを弾丸で消す。

 奴を見れば更にエネルギーを増大させて――その頭上にイザベラとHJの機体がいた。

 

《喰らいなッ!!!》

《吹き飛べッ!!!》

 

 限界までチャージされたエネルギー。

 それが一気に放たれて、二人の攻撃が合わさる。

 大きく巨大なエネルギーが空を駆け抜けて奴の頭から降り注いだ。

 激しく強いエネルギーの流れに押されて敵の機体が沈んでいく。

 地面に足をめり込ませながら必死に抗い――咆哮を上げる。

 

 びりびりと空気が振動し、白銀が一瞬で打ち消された。

 奴は槍を地面に突き刺し――地面から漆黒の光が溢れ出す。

 

 周囲一帯に広がっていく高められた灰燼。

 それを全身に浴びながらも、私たちは奴の元へと翔けていく。

 ブレードを振りかぶりながら、全力でそれを奴の機体に打ち込む。

 甲高い音が鳴り響き、バチバチと奴の灰燼と私たちの白銀が激しく衝突した。

 眩いばかりの光の中で、私とSJは叫ぶ。

 魂からの声に呼応し、白銀は更に輝きを増して――奴が槍を振るう。

 

「グゥゥゥ!!!」

 

 奴の槍が機体に当たり弾かれた。

 大きく後退しながら奴を見れば、私たちの眼前にいる。

 特大のエネルギーを纏わせながら槍を振りあげて――

 

《くたばれやァァァァッ!!!!》

 

 HQの声と同時に奴の機体に砲弾が当たる。

 目の前で強力な爆発が発生し、私たち諸共吹き飛ばされた。

 私たちは機体を回転させて何とか地面に足をつき、ガリガリと地面を削りながら滑るように移動。

 そのままスラスターを噴かせて飛び上がり、ごろごろと転がっていき地面に大きな跡を作っていった奴を見た。

 奴は勢いよく上へと飛び立ち、ばさりと背中の円形のエネルギーが広がり展開された。

 その円の色は灰燼から虹のような輝きになっていた。

 

 奴はカタカタと機体を揺らしながら、強引に口を開けて絶叫する。

 激しい怒り。そして、強い憎しみだ。

 全ての負の感情を滾らせながら、奴は空を驚異的な速度で翔ける。

 狙われたのはライオットとドリスで、彼らの背後には既に奴が――槍が通り過ぎていく。

 

 彼女たちはそこにいない。

 一瞬にして加速したSJが彼女たちを連れて逃げていた。

 私はそれを確認するよりも前に奴へと一気に加速する。

 だが、奴は私から距離を離し――逃がさんッ!!!

 

 リミッターを全て外す。

 そうして、コアの鼓動を高めながら全力で空を翔ける。

 奴と互いに光となって大空を舞い上がり。

 互いに得物をぶつけ合いながら翔けていく。

 奴の振る槍の攻撃全てを往なし、私は奴の隙を探し――突っ込む。

 

 奴は四方から槍を振り、私は残像を残して消えた。

 そうして、奴の背後に回りまたしても残像だけを残す。

 連続してのブースト。命削りの技であり、私はアクセスの力も使用して機体のスペックを底上げした。

 奴の周りを一瞬にして移動しながら、私はブレードを振り無数の斬撃を放つ。

 奴は全ての攻撃を防げずに絶叫。

 気が付けば、私たちは空の高みにまで達していた。

 暗い空の中で、私は奴の頭上からブレードを振りあげる。

 

 限界まで。否、限界など存在しない――ありったけをッ!!

 

「――――ッ!!!!!」

 

 強く叫ぶ。

 そうして、奴に向かってブレードを叩きつけた。

 奴は咄嗟に槍で攻撃を受け止める。

 私はそんな敵の巨体をスラスターを全力で噴かせて一気に落下させる。

 奴も抗うが耐えられない。

 白銀の力だけじゃない。私は自らの命も捧げて――翼を広げた。

 

 白銀の翼を大きく広げて奴の機体を――押す。

 

 ぐんと奴の機体は一気に下へと落下し、私たちの周りには強い熱が掛かる。

 そのまま勢いよく奴を下へと強制的に落下さえながら。

 私は奴の槍に強い力を掛け続けて――ぱきりと罅が入る。

 

 奴は狼狽えていた。

 その感情を読み取りながら、私は更に叫びながら迫る地面に――奴を叩きつける。

 

 ブレードを全力で振り、大きな斬撃を放って奴を地面に叩きつけた。

 地面が激しく揺れて、地上を走行していたHQのタンクも大きく飛び上がっていた。

 彼女たちはそのまま着地しながら、砲身を奴へと向ける。

 煙の中では奴が揺らいでいて、HQはまだ冷却が完了していないにも関わらずに砲弾を撃ち込んだ。

 一直線に突っ込むそれが奴の機体に触れて――ッ!!!

 

 

 奴が槍を突き出して、それを空中で止めていた。

 ギャリギャリと砲弾が激しく回転し、接触した個所から火花が散っていた。

 奴は笑みを浮かべるような視線を渡しに向けてその砲弾を――

 

 

《もう一発だァァァァッ!!!!》

《行けェェェェェッ!!!!》

「HQッ!!」

 

 

 危険な光を放ちながら、砲身がスパークを起こしている。

 彼女はそれを無視して連続して砲弾を放った。

 瞬間、砲身は真っ赤に染まり先端からぐにゅりと裂けた。

 システムも故障し黒煙が上がっているが、彼女は笑う。

 敵は防いだはずの砲弾の上から更に砲弾を撃ち込まれて――爆ぜる。

 

 爆炎に呑まれ、奴の機体はボロボロになりながら後方へと弾かれる。

 ガラガラと転がれば砕けた装甲の一部が飛び散った。

 奴は大きなダメージを喰らいながらも、片手で地面に手をつき大きく跳躍――あぁそうか。

 

 理解した。理解してしまった。

 奴のボロボロの姿を見て、奴の視線を浴び続けて。

 ようやく奴の気持ちが分かった。

 

 アイツも必死なんだ。

 自らの過ちを悔い。間違いを正す為に、奴は命を懸けて戦っている。

 アイツは神ではない。

 だが、神の意志で作られたものだ。

 だからこそ、奴自身の強い怒りや憎悪も己に向けられたものだった。

 

 自らに怒り、自らを憎しみ……もう十分だ。

 

 間違いを正したい。もう二度と悲しませない為に。

 だが、私たちにだって強い想いと願いがある。

 

 この世界を救う事。

 そして、ノイマンの夢を叶える事――ナナシの気持ちに応える事。

 

 

 

「私は私だ。誰の願いでもない。私は、私の為に――お前を倒すッ!!!」

《――ッ!!!》

 

 

 

 そうだ。最初からそうだった。

 誰かの為に戦うんじゃないんだ。

 私の気持ちはシンプルで。

 ただ愛する人の為に、自らの愛の為に戦っていた。

 

 身勝手で理不尽で――誰にも負けない思いがあった。

 

 私は大空を翔ける。

 奴は槍を振るい、接近した私に連撃を放つ。

 それらをスレスレで回避。避け切れなかった攻撃が、私の外套諸共装甲を抉る。

 肩を抉り取られて片腕が吹き飛び、私はそれでも進み。

 全力で奴の心臓に目掛けてブレードを突き立てた。

 

 迸るエネルギーを奴へと流し込む。

 奴はもだえ苦しみながら、私を乱暴に腕で払いのけた。

 機体が強く打ち付けられて、私の横を通ってSJが翔ける。

 ライオットとドリスも彼を援護し、奴は彼らの攻撃をエネルギーの障壁で防ぎながらSJの連撃を全て往なす。

 

 イザベラとHJがチャージを完了し奴に照準を定めて――奴の視線が飛ぶ。

 

《――ぅ!?》

《――な!?》

 

 彼女たちの機体からエネルギーが掻き消える。

 一瞬推力を失ったそれが落下するが。

 彼女たちはシステムを普及し、地面スレスレを滑るように移動し空を翔けた。

 今のはアクセスの力だ。奴自身もやはり使えるのか……そうでなくてはな。

 

 互いに命を懸けているんだ。

 全力で、互いに殺し合う。

 生き残った者たちの願いが叶う。

 シンプルであり、ハッキリとしているそれが――後腐れも無い。

 

 私は地面を滑るように移動する。

 そうして、大きき笑みを浮かべて声を張り上げた。

 

 

《――まだまだァァァァッ!!!!》

 

 

 手も足も動く。

 目だって見えている。

 意識も残っていて、エネルギーだって残っているんだ。

 

 まだ戦える。まだ舞える。

 こんなもんじゃない。

 私たちの今までに比べれば、苦痛も絶望も――全然足りないさッ!!!

 

 強い希望の光。

 それを迸らせながら、私は大空を翔けた。

 皆の想いに呼応し、それぞれの機体の白銀が強く輝いた。

 感じる。皆の想いが一つになっていく。

 互いの気持ちが合わさる事で共鳴し、更なる高みへと至るのだ。

 

 

 

「「「「――オオオオォォォォォッ!!!!!!」」」」

 

 

 

 全員が叫ぶ。

 強く強く。大きく声を張り上げた。

 私たちは空を自由に舞う。

 そうして、ありったけの力を注いで攻撃を繰り出し続けた。

 

 例え手足を失おうとも、目が潰されなようとも。

 私たちの心に宿る光は――絶えやしないッ!!!

 

 

 奴は四方八方からの攻撃を防ぐ。

 だが、奴は少しずつ傷を増やしていく。

 私たちも奴の攻撃を捌き切れずに被弾して、バラバラとパーツが飛び散っていく。

 

 互いに譲らない。

 互いに一歩も退かない。

 私たちは最後の願いを翔けて、互いを正しく認識していた。

 

 

 ナナシ、勝つぞ。絶対に勝って――皆でッ!!!

 

 

 最後の戦い。

 希望と絶望の衝突。否、互いの希望をぶつけ合った戦争だ。

 正義と正義をぶつけながら、私たちは叫び続けた。

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