目の前で広がる白銀の光。
奴からの攻撃が放たれて触れる瞬間。
ナナシが暮れたお守りが強く発光し、私たちを守ってくれた。
いや、それだけじゃない。
そのエネルギーが私たちの機体に入っていく。
機体とそれに乗る私たちは白銀の光に優しく包まれて行った。
自らの手を見つめる。
痛くない、苦しくない。
今まで感じていた疲労も不快感も嘘のように消えていった。
漲る力、あふれ出る程の白銀のエネルギー……感じる。
ナナシの力を、ナナシの想いを感じる。
自らの命を削ってまで、アイツは私たちを守ろうとしてくれた。
それに助けられて、私たちは再び立ち上がる力を得た。
私たちはアイツの想いを受け取り、それを使って機体を再び立ち上がらせる。
迫り来るエネルギーは白銀によって弾かれて四散する。
奴は困惑にも似た感情を視線を通して送って来た。
今なら出来る――今なら奴とも本気で戦える。
熱い。先ほどまで冷たかった体が――熱い。
強い熱が全身に駆け巡り、機体に光が戻っていく。
失ったエネルギーが戻り、それ以上の力が宿っていた。
疲労も怪我も今なら感じない。
本気で奴と戦える。
そう感じながら、私たちは大空を翔けた。
奴も私たちの力が戻ったのを察して向かってくる。
SJと共に真っ向から接近し、ブレードを振るう。
全力で振るえば互いにエネルギーが勢いよく流れていく。
突風が吹き荒れて私たちは機体を激しく揺さぶられながら――ブレードを振るう。
目にも留まらぬ速さ。
全ての斬撃が光となって敵へと降り注ぐ。
奴も槍を振り、それら全ての攻撃を捌いていく。
私たち二人の全力であろうともその防御は突破できない――だが、私たちだけじゃない。
左右からライオットとドリスが翔ける。
二人はエネルギーガトリングガンを構えて放つ。
一発一発が白銀になっていて、それが左右から奴の体に当たり爆ぜた。
奴は体を揺らしてそのやり捌きに陰りを見せた。
私たちはその隙を縫うように斬撃を飛ばす。
奴は一気に後ろへと強制的に後退させられながら、空間を歪めてエネルギー弾を放つ。
私たちは散開し、それらの攻撃を避けていく。
機体を加速させながら、宙を縦横無尽に翔けていく。
ブレードで迫るそれを払い、避けられない攻撃は仲間が打ち消す。
ライオットとドリスも空を翔けて、互いに背を預けながらそれらを弾丸で消す。
奴を見れば更にエネルギーを増大させて――その頭上にイザベラとHJの機体がいた。
《喰らいなッ!!!》
《吹き飛べッ!!!》
限界までチャージされたエネルギー。
それが一気に放たれて、二人の攻撃が合わさる。
大きく巨大なエネルギーが空を駆け抜けて奴の頭から降り注いだ。
激しく強いエネルギーの流れに押されて敵の機体が沈んでいく。
地面に足をめり込ませながら必死に抗い――咆哮を上げる。
びりびりと空気が振動し、白銀が一瞬で打ち消された。
奴は槍を地面に突き刺し――地面から漆黒の光が溢れ出す。
周囲一帯に広がっていく高められた灰燼。
それを全身に浴びながらも、私たちは奴の元へと翔けていく。
ブレードを振りかぶりながら、全力でそれを奴の機体に打ち込む。
甲高い音が鳴り響き、バチバチと奴の灰燼と私たちの白銀が激しく衝突した。
眩いばかりの光の中で、私とSJは叫ぶ。
魂からの声に呼応し、白銀は更に輝きを増して――奴が槍を振るう。
「グゥゥゥ!!!」
奴の槍が機体に当たり弾かれた。
大きく後退しながら奴を見れば、私たちの眼前にいる。
特大のエネルギーを纏わせながら槍を振りあげて――
《くたばれやァァァァッ!!!!》
HQの声と同時に奴の機体に砲弾が当たる。
目の前で強力な爆発が発生し、私たち諸共吹き飛ばされた。
私たちは機体を回転させて何とか地面に足をつき、ガリガリと地面を削りながら滑るように移動。
そのままスラスターを噴かせて飛び上がり、ごろごろと転がっていき地面に大きな跡を作っていった奴を見た。
奴は勢いよく上へと飛び立ち、ばさりと背中の円形のエネルギーが広がり展開された。
その円の色は灰燼から虹のような輝きになっていた。
奴はカタカタと機体を揺らしながら、強引に口を開けて絶叫する。
激しい怒り。そして、強い憎しみだ。
全ての負の感情を滾らせながら、奴は空を驚異的な速度で翔ける。
狙われたのはライオットとドリスで、彼らの背後には既に奴が――槍が通り過ぎていく。
彼女たちはそこにいない。
一瞬にして加速したSJが彼女たちを連れて逃げていた。
私はそれを確認するよりも前に奴へと一気に加速する。
だが、奴は私から距離を離し――逃がさんッ!!!
リミッターを全て外す。
そうして、コアの鼓動を高めながら全力で空を翔ける。
奴と互いに光となって大空を舞い上がり。
互いに得物をぶつけ合いながら翔けていく。
奴の振る槍の攻撃全てを往なし、私は奴の隙を探し――突っ込む。
奴は四方から槍を振り、私は残像を残して消えた。
そうして、奴の背後に回りまたしても残像だけを残す。
連続してのブースト。命削りの技であり、私はアクセスの力も使用して機体のスペックを底上げした。
奴の周りを一瞬にして移動しながら、私はブレードを振り無数の斬撃を放つ。
奴は全ての攻撃を防げずに絶叫。
気が付けば、私たちは空の高みにまで達していた。
暗い空の中で、私は奴の頭上からブレードを振りあげる。
限界まで。否、限界など存在しない――ありったけをッ!!
「――――ッ!!!!!」
強く叫ぶ。
そうして、奴に向かってブレードを叩きつけた。
奴は咄嗟に槍で攻撃を受け止める。
私はそんな敵の巨体をスラスターを全力で噴かせて一気に落下させる。
奴も抗うが耐えられない。
白銀の力だけじゃない。私は自らの命も捧げて――翼を広げた。
白銀の翼を大きく広げて奴の機体を――押す。
ぐんと奴の機体は一気に下へと落下し、私たちの周りには強い熱が掛かる。
そのまま勢いよく奴を下へと強制的に落下さえながら。
私は奴の槍に強い力を掛け続けて――ぱきりと罅が入る。
奴は狼狽えていた。
その感情を読み取りながら、私は更に叫びながら迫る地面に――奴を叩きつける。
ブレードを全力で振り、大きな斬撃を放って奴を地面に叩きつけた。
地面が激しく揺れて、地上を走行していたHQのタンクも大きく飛び上がっていた。
彼女たちはそのまま着地しながら、砲身を奴へと向ける。
煙の中では奴が揺らいでいて、HQはまだ冷却が完了していないにも関わらずに砲弾を撃ち込んだ。
一直線に突っ込むそれが奴の機体に触れて――ッ!!!
奴が槍を突き出して、それを空中で止めていた。
ギャリギャリと砲弾が激しく回転し、接触した個所から火花が散っていた。
奴は笑みを浮かべるような視線を渡しに向けてその砲弾を――
《もう一発だァァァァッ!!!!》
《行けェェェェェッ!!!!》
「HQッ!!」
危険な光を放ちながら、砲身がスパークを起こしている。
彼女はそれを無視して連続して砲弾を放った。
瞬間、砲身は真っ赤に染まり先端からぐにゅりと裂けた。
システムも故障し黒煙が上がっているが、彼女は笑う。
敵は防いだはずの砲弾の上から更に砲弾を撃ち込まれて――爆ぜる。
爆炎に呑まれ、奴の機体はボロボロになりながら後方へと弾かれる。
ガラガラと転がれば砕けた装甲の一部が飛び散った。
奴は大きなダメージを喰らいながらも、片手で地面に手をつき大きく跳躍――あぁそうか。
理解した。理解してしまった。
奴のボロボロの姿を見て、奴の視線を浴び続けて。
ようやく奴の気持ちが分かった。
アイツも必死なんだ。
自らの過ちを悔い。間違いを正す為に、奴は命を懸けて戦っている。
アイツは神ではない。
だが、神の意志で作られたものだ。
だからこそ、奴自身の強い怒りや憎悪も己に向けられたものだった。
自らに怒り、自らを憎しみ……もう十分だ。
間違いを正したい。もう二度と悲しませない為に。
だが、私たちにだって強い想いと願いがある。
この世界を救う事。
そして、ノイマンの夢を叶える事――ナナシの気持ちに応える事。
「私は私だ。誰の願いでもない。私は、私の為に――お前を倒すッ!!!」
《――ッ!!!》
そうだ。最初からそうだった。
誰かの為に戦うんじゃないんだ。
私の気持ちはシンプルで。
ただ愛する人の為に、自らの愛の為に戦っていた。
身勝手で理不尽で――誰にも負けない思いがあった。
私は大空を翔ける。
奴は槍を振るい、接近した私に連撃を放つ。
それらをスレスレで回避。避け切れなかった攻撃が、私の外套諸共装甲を抉る。
肩を抉り取られて片腕が吹き飛び、私はそれでも進み。
全力で奴の心臓に目掛けてブレードを突き立てた。
迸るエネルギーを奴へと流し込む。
奴はもだえ苦しみながら、私を乱暴に腕で払いのけた。
機体が強く打ち付けられて、私の横を通ってSJが翔ける。
ライオットとドリスも彼を援護し、奴は彼らの攻撃をエネルギーの障壁で防ぎながらSJの連撃を全て往なす。
イザベラとHJがチャージを完了し奴に照準を定めて――奴の視線が飛ぶ。
《――ぅ!?》
《――な!?》
彼女たちの機体からエネルギーが掻き消える。
一瞬推力を失ったそれが落下するが。
彼女たちはシステムを普及し、地面スレスレを滑るように移動し空を翔けた。
今のはアクセスの力だ。奴自身もやはり使えるのか……そうでなくてはな。
互いに命を懸けているんだ。
全力で、互いに殺し合う。
生き残った者たちの願いが叶う。
シンプルであり、ハッキリとしているそれが――後腐れも無い。
私は地面を滑るように移動する。
そうして、大きき笑みを浮かべて声を張り上げた。
《――まだまだァァァァッ!!!!》
手も足も動く。
目だって見えている。
意識も残っていて、エネルギーだって残っているんだ。
まだ戦える。まだ舞える。
こんなもんじゃない。
私たちの今までに比べれば、苦痛も絶望も――全然足りないさッ!!!
強い希望の光。
それを迸らせながら、私は大空を翔けた。
皆の想いに呼応し、それぞれの機体の白銀が強く輝いた。
感じる。皆の想いが一つになっていく。
互いの気持ちが合わさる事で共鳴し、更なる高みへと至るのだ。
「「「「――オオオオォォォォォッ!!!!!!」」」」
全員が叫ぶ。
強く強く。大きく声を張り上げた。
私たちは空を自由に舞う。
そうして、ありったけの力を注いで攻撃を繰り出し続けた。
例え手足を失おうとも、目が潰されなようとも。
私たちの心に宿る光は――絶えやしないッ!!!
奴は四方八方からの攻撃を防ぐ。
だが、奴は少しずつ傷を増やしていく。
私たちも奴の攻撃を捌き切れずに被弾して、バラバラとパーツが飛び散っていく。
互いに譲らない。
互いに一歩も退かない。
私たちは最後の願いを翔けて、互いを正しく認識していた。
ナナシ、勝つぞ。絶対に勝って――皆でッ!!!
最後の戦い。
希望と絶望の衝突。否、互いの希望をぶつけ合った戦争だ。
正義と正義をぶつけながら、私たちは叫び続けた。