原神1から   作:烏森時雨

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魔神任務 序章第一幕 風を捕まえる異邦人
風物鳥瞰


 「――つまり、おまえたちは世界の外から漂流してきたのか? おまえたちがそこから離れて、次の世界へ行こうとした時、見たこともない神がおまえたちの前に現れたと?」

 

 穏やかな日差しの下、川岸で私は改めて自分の身に起きた出来事をパイモンに話していく。おぼろげになりつつある記憶を辿りながら、順番に……。

 

 「そう。あの神は何者だったんだろう……。白髪の女性で、赤黒く光る立方体の塊を武器にしていたのは確かなんだけど……」

 「立方体の塊?」

 「すごい速さで何本もの棒を作って、あらゆる角度から攻撃してきたの。それに、その立方体に捕まると、動けなくなって……それで、閉じ込められちゃうの。封印……なのかな」

 「ひえぇ!」

 

 砂に木の棒で簡単な絵を描きながら説明していく。絵を描こうとすることで、意外とあの神の細部まで思い出す事が出来る。腰ほどの長さの白髪で、金色の眼をしていた。衣服も白系統だったけど、腕などはあの立方体と同じく赤黒いものを纏っていた。それに……彼女には羽がなく、空を飛ぶというよりも空中を歩いていたような?

 

 

 ――あの日、見知らぬ神が、私の兄、空を連れ去っていった。

 そして、私も神に封印され、本来の力を失うことになる。

 数多の世界を乗り越えてきた私たちは、ここで囚われの身となった……。

 

 果たして、それから何年経ったのか? 私にはもう分からない。でも、いずれ必ず突き止めてみせる。

 

 

 「目覚めてから、ずっと一人で彷徨ってた。2ヶ月前、あなたと出会うまで……」

 「おう! あの時おまえがいなかったら、オイラはもうとっくに溺れ死んでたからな……。だから、オイラも案内役頑張るぜっ!」

 「パイモン……飛べるのに泳げないんだね」

 「オイラはカナヅチだからな!」

 

 まさか魚を釣ってたら人型の生き物を釣ってしまうとは夢にも思ってなかったけど……。

 

 パイモンは人型で、空を飛べる。ただ、身長は低くて、小柄な私の1/3くらいしかない。目線の高さを合わせてくれるからありがたい。……全く関係はないただの偶然だろうけど、パイモンもそういえば白髪だ。肩口くらいの長さで、かなりのくせっ毛。もふもふしていてかなり手触りが良い。頭上には淡いピンクの輪っかが浮かんでいて、同系色の飾りが袖口やお腹の辺りに付いている。三股に半ばから分かれているマントにはまるで星座の図面のような模様が美しく描かれている。本人曰く模様に特に意味はないらしいけど。あの神もマントを身につけていた気がするけど……ダメだ、うまく思い出せない。

 動きはいつもオーバーで、リアクションもいいから話していて飽きさせないのが一番の魅力。とても可愛らしいから、旅のマスコットとして癒やされてる。ただ……ちょっと、いやかなり大食いなのが玉に瑕。こんなにちっちゃいのに、下手したらお兄ちゃんよりも食べてる……。

 

 「そろそろ出発の時間だ、行こう!」

 

 パン、と手を打ち、パイモンは力強くそう言った。きっと、暗くなってしまった雰囲気を払拭したかったんだと思う。もう、変なところで察しがいいんだから。ありがたく乗っからせてもらおう。

 私も立ち上がって、軽く伸びをした後、先行するパイモンの背中について行った。

 

 「目指すは……『七天神像』! ルートを決めたら出発だ!」

 

 

 

 「そういえばおまえは、この世界にいる七柱の神のうち、どれを探してるんだ?」

 「どれって聞かれても……あの神がどれなのかは分からないからな……。そうだ、神様たちの写真ってある?」

 「写真? ……ああ! 写真機で撮影するやつのことか?」

 「うん、多分それで合ってる」

 「んー、オイラも聞いたことがあるだけで、見たことはないんだよな……」

 

 それは残念。ダメ元で聞いただけだからそんなに期待はしてなかったけど……でも、この世界にも写真があるのを知れたのは大きい。もしかしたら最短であの神に会うことも、お兄ちゃんと再会することも出来るかもしれない。

 やっぱり私も含めて人の記憶って不確かで曖昧だし、それに人の容姿を言葉で説明するのは本当に難しい。だからこそ、画像があれば誰にでも正確に伝えられるから写真の存在はありがたい。――お兄ちゃんの写真を持っていないことが悔やまれる。

 

 「おぉーー!」

 「きれい……」

 

 話しながら歩いていると、森を抜けて急に視界が開けた。

 今いる場所は小高い丘の上みたいで、遠くの景色までが鮮明に見える。

 緑豊かな平野の真ん中には湖があり、まぶしく水面が輝いている。その更に向こうにはうっすらと街の姿も確認できる。こんな景色の中では、さっきからずっと聞こえていた小鳥の声も急に美しいものに感じられてしまう。

 この世界――いや、この国だろうか、その豊かな自然と美しい景色に思わず足を止めて見惚れてしまった。

 

 「湖の真ん中にある島に生えてるでっかいのがあるだろ? あれが『七天神像』だぞ。神をかたどった像は七神の象徴として、この大陸に点在してるんだ。七つの元素の神のうち、これは『風』を司るものだな」

 「『七つの元素』で『七神』の『七天神像』……。ということは、全部で七種類あるってこと?」

 「そうだぞ! ……うぅ……そう! だと思うぞ!」

 「……見たことはないんだね」

 「オイラだって別に七国巡ってるわけじゃないからなぁ……」

 

 ――でも、だとすると、下手すると七カ国巡ることになっちゃうのか……。これは、なんとしても早く手がかりを見つけないと、時間がいくらあっても足りなくなりそう……。

 

 「おまえの探してるのが、この風の神かどうかは知らないけど……風神の領地に連れてきたのには、ちゃんとした理由があるんだぞ」

 「というと?」

 「ほら、言葉は詩となり、風と共に流れるだろ? その中に、きっとお兄さんの情報があると思うんだ。もちろん、神が答えてくれるかは、やってみないとわからないけどな……」

 「なるほど……。パイモンもちゃんと考えてるんだね」

 「おい! オイラをなんだと思ってるんだ!」

 

 と、いうのは冗談だとして。

 

 「ねぇパイモン。あの神像、湖の真ん中にあるじゃない?」

 「そうだな。それがどうかしたか?」

 「パイモンは飛べるからいいとして……私は?」

 「泳ぐしかないだろうな」

 「やっぱり!?」

 

 昔は自由に飛べたのに! 本来の力さえあれば高速で飛行しながら戦闘することだって余裕なのに!

 私はあの神への憎しみのレベルをもう一段階引き上げた。

 

 「ま、まぁ……おまえの服、なんかすごい乾きやすいじゃないか。これまでだって雨の日に傘なしで動いてたんだし、別にこれくらい……あ! もしかして、おまえもオイラと同じで泳げないとか!?」

 「そんなことありません! ただの気分の問題だから」

 「お、おう」

 

 

 

 ――お兄ちゃんを連れ去ったあの神の、今でも耳に残っているあの言葉。

 

 『余所者、お前たちの旅はここまでだ。この〈天理〉の調停者が、ここで〈人の子〉の驕りに終焉を』

 

 〈天理〉……。何を表しているのか分からないけど、今ある情報はこれだけしかない。

 でも、この旅の中で、たとえどれだけ時間がかかったとしても、必ず見つけ出し、お兄ちゃんを連れ戻す。




パイモン:最高の仲間!
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