原神1から   作:烏森時雨

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前回のあらすじ:騎士団本部の中にある図書館に行き、リサから『森の風』という本を借りた蛍たち。図書館を出たところで、何やら知り合いの困っている声が聞こえた……。



伝説任務 孔雀羽の章第一幕 海賊の秘宝
ガイアの難題I


 「まずい、これはまずいことになったな……どうするか……」

 「「…………」」

 

 これさ、絶対に私たちに聞こえるように、というか聞かせるように言ってるよね。意図的だよね、このわざとらしくて胡散臭くて大げさなしゃべり方はそういうことだよね?

 隣にいるパイモンと顔を見合わせる。パイモンも私と同じようなことを考えているのかちょっと困ったような笑みを浮かべていて、同時に小さく溜息をついた。

 仕方がない、か。ここでスルーするのも得策じゃないよね。

 

 「ガイアー、どうかしたのかー?」

 「慌てるなんてらしくないね」

 「おお、旅人。これは千の風に感謝しないとな。今、お前に出会えたこと、これはきっと神の思し召しだろう。凡人を助けるため風神が遣わした使者よ、どうか手を貸してくれまいか?」

 「うわっ、なんかムカムカするぜ」

 

 同感。やっぱり話しかけなきゃよかったかな……。

 ここまでのやりとりで分かったように、図書館から出てきた私たちに偶然を装って露骨なアピールを仕掛けてきていたのはガイア。互いに互いのことをうっすら信用していない彼だ。……今日はどんな意図があって接触してきたんだろう?

 

 「手は空いてるけど……」

 「そりゃ、ちょうどよかった!」

 「とりあえず、話くらいは聞いてみようか」

 

 ガイアも騎士団関係者で、その上何かの隊長だったはず。モンドに来てすぐから目を付けられていたし、できるだけ信用を勝ち取りたい相手ではあるから無碍にもできない。例え、それがどれだけ罠のように思えるほど露骨なアピールだったとしても。

 

 「実は騎士団のヤツらの耳には入れられない話でな、お前にしか頼めないんだ。――ここじゃちょっと。場所を変えよう……そうだな、騎士団横の庭あたりがいいだろう。ついて来てくれ」

 「なーんか怪しいなぁ……」

 

 シッ! 言っちゃダメだよパイモン! 気持ちはこれ以上ないほど解るけど!

 わざわざ同僚の騎士団ではなく素性の知れない旅人の私たちに協力を依頼する。どころか騎士団の耳に入れられない内容だと言う。騎士団の隊長のくせに。更にはもはや演技であることを隠そうともしないこの態度。

 ここまで揃えばもう役満だよね。察しの悪い人でも、何か裏の意図があることは見抜ける。

 

 私たちを先導するように、スタスタと騎士団の正面出入り口に向かうガイア。その足取りは迷いなく、最初のまずいことになって困っているという言葉の信憑性が薄れていく。というか信憑性なんて元々なかったか。

 連日トラブル続きで気の休まる時がないけど……仕方がない。ついていくより他の選択肢はない。もし本当に厄介ごとだったら話だけ聞いて引き受けないようにしよう。でもまぁ善意として、ジン団長に報告して騎士団として動いてもらうようにお願いするくらいのことはしてあげようかな。

 

 

 

 「――この辺なら大丈夫だろう」

 「早く教えろよ、一体なにがあったんだ?」

 

 建物を出て階段を降り、ベンチのある中庭のような場所で落ち着くことになった。地面は手入れのよく行き届いた芝生で、龍災の被害を一切感じさせないくらいふかふかしている。

 日差しも暖かいし、なんだか眠たくもなってくるけど……ガイアに連れられてここまで来たんだ。うたた寝なんてできない。

 

 「何から話すか……そうだな、まず1つ、お前たちに秘密を教えてやる。俺個人の過去に関わることだから、他言無用で頼むな」

 「安心しろ! オイラの口は堅いぞ」

 「実は……俺の祖父は、海賊だったんだ」

 「へー」

 「ぷっ……」

 

 ちょっと、パイモン……その、何? 極限まで感情を殺した「へー」は?

 ガイアの言葉よりもパイモンの反応の方が面白すぎて笑いをこらえることが出来ないじゃん。私が笑っちゃったのはパイモンが悪いよ。不可抗力だって。

 

 「……いやいや、反応薄くないか? さては信じてないな? ほら見ろ、この眼帯は海賊である祖父の遺伝なんだ。血が繋がってる証だろ」

 「眼帯って遺伝するものなの?」

 「あははっ、旅人、そんなの常識だぜ? 母親のくせ毛が子供に遺伝するのと同じ理屈さ」

 「へぇー……」

 「おい! 嘘に決まってるだろ騙されるな! まったく……普段は『私の方が冷静ですー』みたいな顔してても、時々オイラより酷いじゃないか」

 

 いやいや、たまにはボケとツッコミのバランスを逆にしてバランスを保たないと。

 それに、ガイアほどの人間が大真面目な顔をして語ったら、それもあり得るかもしれないと少し思わされたのも事実だし。

 

 「それで昨日、祖父が残した手記を読んでいて、偶然見つけたんだ。お宝についての記述をな」

 「……お宝!?」

 「パイモン」

 「手記によると、お宝の隠し場所は『失われたアルカディア遺跡』っつうところらしい」

 「お宝……」

 「パイモン」

 「けどな、遺跡の所在については、未だ手がかりがないんだ」

 「おたから! ガイア! それはどんなお宝だ? 金塊か? 宝石か?」

 「パイモン……」

 

 直後にコレはちょっと酷すぎるんじゃない……? 私に対してとやかく言える立場にないと思うなぁ……。

 ガイアはふふんと得意げに笑い、まんまと食いついたパイモンに対して嬉々として語る。

 

 「金目のものなど、三流のお宝さ……祖父の宝は――剣だ!」

 「おぉーー!」

 「元々は天空の島にいる神がうっかり海に落としたもんでな、それを祖父たちが引き上げたんだそうだ。その剣を手にした瞬間、雷鳴は轟き、海は荒れ狂い、晴天だった海原に突如として竜巻が現れる……。神剣の力で、祖父は8つの頭を持つ海蛇や、銀髪のサキュバス、深淵の邪竜を倒したそうだ」

 「ノリノリなところ申し訳ないけど……信じられない話が多すぎて……」

 「いやぁ、信じがたい大冒険だよな。これぞ海賊のロマン、だろ?」

 「8つの頭の海蛇に、銀髪のサキュバスも?」

 「世界は未知に満ち溢れているからこそ、面白いんじゃないか」

 「おい旅人! こんな時に野暮なこと言うなよな!」

 

 うん、まぁ、そういうことにしておこう。私もこの世界のことをまだよく知らないし、きっと話に出てきたようなこともあるんだろう、きっと。

 パイモンはお宝の神剣の話に夢中ですっかり役立たずと化してしまっている。腰に手を当てぷんすか私に注意していた、あのしっかり者の面影はどこかに消え去ってしまっていた。そこには欲に目を輝かせる金の亡者の姿しかない。

 ガイアも自信がついたのか勢いづいて、どんどんその神剣がいかに素晴らしく歴史があり何を成してきたかをペラペラと語っていく。詳細は割愛するけれど、どれも眉唾としか言いようのない話だったことは付記しておく。デタラメだと言えない自分の知識不足が今は恨めしい。相棒が騙されているのをただ横で黙って見ていることしかできない。

 

 「――しかし、あまりにも強大な力であったため、他の海賊たちがその剣を奪おうとしてきた。争いを避けるため、祖父は神剣を隠したんだ」

 「うんうん。おまえのじいちゃんは正しい!」

 「でも俺は、その『アルカディア遺跡』もヤツらに見つかっちまうんじゃないかって心配なんだよ。そしたら、神剣もきっと……」

 「そりゃダメだ! 悪いヤツらに盗られるくらいなら、いっそオイラたちが……コホン! とにかく安心しろ! オイラとこいつが力を貸すぞ!」

 「ほお~助かるぜ。くれぐれも内密にな。良い知らせを待ってるぜ」

 

 あ。

 

 

 

 「なあ、どうだ蛍? ワクワクしないか? すっっっごい神剣らしいぞッ!」

 「本当に?」

 「おまえなあ……前から思ってたけど、もっとガイアのことを信じてやれよ……」

 「本当に本当?」

 「ああもう! おまえにはロマンってものがない! 少なくともオイラは信じて調査するから、おまえも一緒だぜ?」

 「えぇ……」

 

 んじゃ、と華麗に手を振りながら去るガイアの後ろ姿を見送ってからの話。未だ興奮冷めやらぬパイモンの相手に苦慮していた。

 ――まぁ、いいか。こういうのはダメ元が基本だし、特に予定もないからいい暇つぶしにはなるか。多分風魔龍関係で何か進展があったらジンさんとかから連絡がくるはずだし、それまではゆったりしているのも悪くない。

 

 「でも、どこに行って調査するの?」

 「酒場だ!」

 「酒場?」

 「聞き込みといえば酒場だと決まってんだ!」




ガイア:西風騎士団において、代理団長が最も信頼を置いている右腕的存在。
彼が任務を請け負うことで、その解決が約束されるほどの実力者。
ユーモア溢れるガイアは、モンドの人々に好かれている。しかし、この騎士には人知れぬ秘密があるようだ。
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