「はあ……これだけ調査したのに、目ぼしい手がかりを見つけられなかったな。さすがは神剣の隠し場所だ」
「……いや、もう原因解ってるんじゃない?」
「いやいや! 神剣がそう簡単に見つかるような場所に隠されないってのはおまえも分かってくれるはずだ! 絶対にオイラだけの責任じゃない!」
声裏返ってるし、よ-く解ってるじゃん。
両手を必死にぶんぶんと振って違うとアピールしてくるけど、完全に自分のやらかしを理解した人の仕草だ。かわいいし、端から神剣なんてないと思ってるから期待なんてしていなかったから、別に許すも許さないもないからいいんだけどね。
「とりあえず、もう1度ガイアに会いに行こう。それで、明日以降どうするか考えようぜ」
「そうだね、ガイアと話すのはいい選択だと思う」
神剣があるというパイモンの夢を壊したくない。少なくとも私からは神剣なんてないであろうという考えを伝えられないから、責任持ってガイアにはネタばらししてもらわなくちゃ。
……でもそれでネタばらしされなかったら、ガイアは騙すだけ騙して真実を言わない最悪な人間か、本当に神剣があるのかの2択になる。私だってそりゃ神剣があるものと期待したいけれど……どうなんだろう?
今朝ガイアと一緒に騎士団から出たのをしっかり目撃してもらっているから、門衛の2人は顔パスで通してくれた。そういえばガイアに報告してなかったな、右の人をクビにした方が良いってこと。
朝とは違ってエントランスにはいなかったので、手がかりを掴むために、最初ここに来たとき連れられたジン団長の執務室に行くことに。
「おーい、ジン団長いるかー? 今、ガイアを探してるんだけど……」
「ノックするのはいいけど、返事もなしに開けるのは――あ」
「ああっ!」
部屋の中には、奥の席で難しい顔をしているジン団長と、少し離れたところに立つガイアの姿があった。
やっば……完全に大事な仕事中じゃん……。それもそうか、普通に日中はみんな働いているか。私たちが会ってきた人たちが特殊なんだよね。働く時間が不定期な冒険者だったり、昼間から酒場にいたり――それは私たちも同じか。
「ふむ、すまない。ガイアは今独自に頼んでいた調査の結果を報告してくれていたところなんだ。もしや先約だったか?」
「そ、そうじゃないんだ! まさか仕事の邪魔しちゃうだなんて……ごめん……」
「まあいいさ。ちょうど報告も終わったところだ。俺を探してるってことは、朝に頼んだことが一段落したんだろ? ここじゃなんだから外で聞こうか」
「が、ガイア~!」
いい人すぎる……。明らかに相手の時間や都合を無視して仕事の邪魔をしてしまったのは私たちなのに。前のように「何か裏があるんじゃ?」とは思わないけど、それがない分余計に申し訳なくなるな……。
後でジン団長には菓子折とかを持って改めて伺おう。――その時はパイモンはいない方がいいかな? 「オイラにも1つくれ!」とか言うイメージがあるし。
「旅人に? ガイア、それは私たちの助力も必要だろうか」
「いやいや、ただの個人的な依頼だよ。騎士団として動く必要はない」
「そうか」
「じゃ、とりあえず外に出ようか。朝話をした庭で待っていてくれ。すぐに追いつくから」
5分くらい待っているとゆったりとした足取りでガイアが来た。右手を挙げて「よお」ってしてきてるけど、それよりももう少しだけ速く歩いて待たせる時間を短くする方がいいんじゃないかと思う。こうして焦らしたりするのがこの人の得意戦術、というか癖なんだろうけど、なにも今しなくてもいいじゃん。
「待たせたな。何か分かったか?」
「うーん……酒場や冒険者協会で聞き込みはしたけど、手がかりなしだった」
「ふふ、当然だな」
「ん?」
「いや、手に入れ難いものほど、手にした時、喜びを感じられるものだろう?」
……ん? ネタばらしは? ないの? ――もしかして、これは本当に神剣があるパターンだったりする?
正直ガイア節が強くて何が言いたいのかをいまいち掴みきれてないけど、話の流れ的に「実は神剣なんてないんだ。全部俺の嘘なんだ」と明かす雰囲気ではなさそう。そして、もし嘘を明かすならこのタイミング――私たちが色々と聞き込みをして報告に来た時――が一番だと考えているから。
……これは、もしかするともしかする?
「そこでだ、俺の方でちょっとした情報を仕入れてきてやった。知り合いに頼んで裏の情報屋に行ってもらってね…どうやら『アルカディア遺跡』について知っている人間がいるらしい。」
「本当か!? そいつは今どこにいるんだ?」
「そう慌てるな。情報屋にもルールがあってな。情報の漏洩を防ぐために、まずは連絡係に会わないといけない」
「ぬぅ……ま、まぁそうか……」
おぉ、お宝モードに入って盲目的になっているパイモンを上手く丸め込んで落ち着かせた……。
というか情報屋? 騎士という公的な人間がそういう裏の業界と繋がっているのは少し意外ではあるけど、そこはまぁガイアだからという理由で納得するとして。これはガイア個人の問題で、さっきのジン団長とのやりとり的にも騎士団として動いている訳では決してない。
もしかして、騎士団じゃなくてガイア個人として繋がっている情報屋? 金銭的な負担なんかはもちろん、世間体などのリスクもかなり孕んでいると思うけど――本当にガイアって何者なんだろう……。
「待ち合わせ場所は囁きの森、時間は明日の午前10時だ。向こうもリスクを冒しているもんだから、時間厳守で頼むな?」
「任せろ!」
「立場上、ガイアは一緒に行けないよね」
「その通り、さすがだ。俺も一応騎士だからな、そういう裏社会と繋がりを持つわけにはいかない、だろう?」
じゃあどうやって依頼したのか、なんて野暮なことは聞かない方がいいんだろうな。ただの揚げ足取りになる。
きっとガイアが言っているのは「堂々と情報屋から情報を仕入れたり依頼したりするのは立場上見られたらマズい」ということなんだろう。「知り合いに頼んで」というのがもし本当だったとしても、そんな裏社会と繋がりのある人と繋がってる時点で大差ないだろうし。
ガイアのことだから、バレなければ良しという姿勢なんだろう。
「分かった。パイモンと2人で情報を聞いてくる」
「助かる。頼んだぜ。――もちろん情報料については、こちらが持つから安心しろ」
「へへっ、任せろ!」
「まだ外が明るい時間に宿に戻ってくるのは、なんだか新鮮だな」
「初めてだからね」
あの後、ガイアと別れた私たちは、図書館で借りた本をさっさと読み終わるため宿屋に戻ってきていた。正直、もうカバンの中にある魔物の素材も心許なくなってきているから魔物狩りを少しする予定だったんだけど、ガイアとの会話で優先順位がひっくり返った。
「そういえば、ガイアは風魔龍について何か知ってることはある? 朝に図書館でそれについての本を借りたんだけど」
「風魔龍? 俺から言えることはあまりないな。その本を読めばいいんじゃないか?」
「なるほど……やっぱり昔の伝承なんかはあまり知られていないってことだな」
「強いてアドバイスできるとすれば、何があっても期日までに本は返せよってことだ。この前、そのことでリサを怒らせちまってさ、今でも左腕の骨が痺れてるんだよ」
「ひえぇ!」
こんなやりとりを別れる直前にガイアとしてしまったせいで、読書の優先順位が1位になった。恐ろしい。
忘れてはならないのが、ガイアは軽薄そうな頭脳派ではあるけど、ちゃんと胸板も厚く腕も脚も太い屈強な男性だということ。隊長というだけあってか、そこらを巡回している騎士よりも体格がいい。
そんなガイアを、リサさんという雷魔法を使うお姉さんは少なくとも数日は響くダメージを簡単に与えているのだ。当然魔物相手じゃないから雷の出力は抑えているだろうけども。……抑えていてこのダメージな方が正直やばいか。
西風騎士団:モンドの秩序とモンドの「自由」を守る組織。騎士だと言われているが、誰かに命じられたわけではない――高い責任を背負っている西風騎士団は自慢できる肩書きである。