禪院家の面汚し 〜ゴリラとドブカスを添えて〜 作:とある禪院家のブラコン
そのままつらい日々を過ごしていたある日。
いつだったか血を分けてくれた男の人にガチでボコボコにされた後、術式の特訓って名目で低級呪霊が満載の懲罰房に入れられちゃった。
昨日この人に殴られた時にあんまり効いてない感じ出しちゃったのが不味かったかなぁ。
でも咄嗟だったから演技できなかったんだよね。
というか六歳児の寝込みを襲撃するな。びっくりするだろ。
危うく警察に通報するところだった。
ま、しても意味ないけど。だって禪院家だからね。
それにしても呪力操作が上手くなったのは良いことだけど、それで余計なトラブル呼んでちゃダメじゃん。
反省しなきゃ。
まあ、次があればだけど。
「二日後には迎えが来る。しかし人の身でありながら血を吸いたがる姿……まるで呪霊のようだ。そのような汚らわしいお前にはお似合いの場所だな。二日と言わずここをお前の自室としても良いかもしれんな」
「はい……はい?」
「ではな。禪院家の面汚し」
いや、二日後て。自室て。
こちとらまだ六歳ですけど? 実質死刑宣告だよね?
あとその捨て台詞は心の内に留めておいてよ。
せめて特訓の体であることは最後まで守ってよ。
「オンナダ」
「ワシハメヲモラオウ」
「ツメヲイチマイズツハガソウ」
呪霊こわすぎ。数多すぎ。でも泣かないもん。
痛む全身に呪力を纏わせる。戦うんだ。
「まだ私はなにもできてない。タダで死んでやるもんか」
それにしても体力と呪力を削った上で戦闘用の術式も持たない六歳児を呪霊の群れの中に放り込むとか人の心とか無いんですか?
ま、無いよね。禪院家だもん。
必死の抵抗も虚しく、多勢に無勢過ぎた私は数分後には血反吐に塗れて床に転がっていた。
呪霊たちも禪院家イズムに染まっているのか、人間を殺さずに甚振ることに随分慣れているみたいだ。
本当に嫌。なんなのこの家。
滲む視界でぼんやりと床を捉える。
そこには古くなって黒く固まった血が見えた。
「あ、これ……甚爾お兄ちゃんの血」
キッショ、我ながらなんでわかるんだよ。
でもやっぱり甚爾お兄ちゃんもここに入れられてたんだ。
多分、もっと強い呪霊と戦わされてたんだろうな。
お兄ちゃん強いし。
「すごいなぁ。甚爾お兄ちゃんは……」
私はすぐ死にそうになってるのに、お兄ちゃんは少なくとも私が姿を見かけた時はいつもピンピンしてた。
呪霊をボコボコにしてる姿が想像できちゃうよ。
色々大変そうだけどお兄ちゃんって凄い。
そしてやっぱり私は役立たずなんだなぁ。
無様に床に転がされた私は、そのまま床にこびりついた赤黒い塊に舌を這わせる。
呪霊はそれを止めない。
気が狂ったかと、ゲラゲラと私を嘲笑う。
すっかり固形と化した血を舌で転がし、自分の唾液と体温でゆっくり溶かしていく。
「あー……おいし」
人の血を味わうなんて我ながらどうかしてる。
そんなことするからこんな酷い目に遭うのにね。
馬鹿みたい。
でもやめられない。だっておいしいし。
それに最期に味わうのがお兄ちゃんの血なら悪くないかも。
そうして甚爾お兄ちゃんの血液が私の体内に取り込まれた時、私は"バグった"。
「あ……ヤバ。なに、コレ……なんか体の中で暴れてる……あっ」
そのまま私の意識は途切れた。
形成されるは、"圧倒的な暴力"を宿した肉体
「……んあ? なんで俺この部屋に居んだ? まあ……良いか」
低級呪霊を前にした男が浮かべるは獰猛な笑み。
狩る側と狩られる側が逆転した瞬間だった。
しかし本物と寸分違わぬ天与の暴力を有していた
少し待てば少女が命乞いをするだろうと懲罰房の扉付近で待機していた男は、突然響き渡った轟音に慌てて房の扉を開け放った。
そうして中に入った男が見たのは呪霊を蹂躙する少年の姿。
紛うことなき天与の暴君が降臨していた。
トラウマを呼び起こされ狂乱した男の叫び声により人々が駆けつけ、事態は収拾がつけられた。
※偽甚爾お兄ちゃんは小さい頃から素手で呪霊と戦わされることに慣れてるので『呪霊を鷲掴みにしてその呪霊で他の呪霊をぶん殴る』という方法で呪霊を寄せ付けず、ついでに嫌がらせで懲罰房を破壊するためにわざと派手に暴れ回りました(という独自設定)。
※今回トラウマを呼び起こされた人は扇ではないです。禪院甚爾によって気まぐれにボコられた多くの禪院家の術師のモブそのいち(独自設定だけど絶対いるだろ、とのことで登場させた)。