Muv-Luv Alternative×創世奇譚アエリアル とある確率分岐世界    作:†バレット†

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会合

 

――――――中央作戦司令室

 

「それではまた二時間後に……」

 

メインモニターに表示されていた行政庁長官オレアナ・エインズレイの姿がぷつりと途切れる。

 

「通信切れました!」

 

通信兵の言葉には特に返事を返さずに、香月夕呼は目を閉じて黙考を続ける。

 

どうやら彼等は別の平行世界の、しかも未来から迷い込んで来てしまった存在らしい。

 

話を聞いて見れば、彼等の地球陸地全てが水没してしまい、更にはスプークという化け物に襲われ、まともな補給すら見込めないという極限状態にあったらしい。

 

補給も救助も見込めないなんて、冗談抜きで先が見えない状況だった訳だ。

 

(そして彼等は未来人の力を借り、地球から残された10万人の人々を乗せて脱出した……)

 

状況はまるっきり違う、彼等の話を聞いた限りでは大勢の人々を見捨てて一部の人だけが逃げ出した訳では無いのだろう。

 

けどこれは……

 

(厄介ね……もしあの船の管轄が私の手の元を離れて、米国の元にでも行ってしまったら……いや、奴等ならどんな手段を使ってでも自分の陣営に引き込もうとするわね)

 

 

そうなれば第五計画が彼等の情報提供を受けて飛躍的に進行を早めることは間違いない。

 

彼等を……確実に此方へと引き込まなければならないのだ。

 

「ピアティフ、急いで会談の準備を。それと伊隅に状況の報告、A-01部隊には会場の警護をさせなさい。大事なお客様を受け入れる準備をしなくちゃね」

 

「ハッ!」

 

敬礼をして即座に去って行くイリーナ・ピアティフ中尉。

 

(全く……敬礼は必要ないって何時も言っているのに)

 

若干呆れながらも、少しばかり真面目過ぎる部下を見送った夕呼は、一拍置いてから中央作戦司令室を後にした。

 

(私は私で彼等に渡す資料の作成でもしようかしらね、今彼女達がもっとも知りたいのはこの人類が置かれている状況でしょうし)

 

こんな事、普段なら部下に適当にやらせるような書類作成ではあるが、如何せん相手が相手だ。

 

 

万に一つの抜かりも無い様に、地下深くにある静かな執務室へと向かうのだった。

 

 

「……いつもなら真っ先に来るような馬鹿が居ないってのもつまらない話ね」

 

 

 

 

――――――スター・ノアブリッジ

 

『通信を終了しました』

 

AXIAの言葉に、エインズレイ長官はようやく緊張を解くことができ、胸を静かに撫で下ろす。

 

他のクルーも同様なようで、緊迫した空気が幾ばくか緩んだ気がした。

 

しかし、これからが本番、この後の会談が最重要なのだ。

 

自分達が他の平行世界……しかもこの世界の西暦から考えれば未来から来たと言える自分達を即座に理解し、受け入れてくれた香月副司令官には驚かされたものだ。

 

あの若さで副司令官、そして腹の内を悟らせない凛とした立ち振る舞い。

只者ではない事を悟るには、この短い通信時間でも十分だった。

 

「……東郷少佐と工藤少佐に至急ブリーフィングルームに出頭するように伝達、これより緊急ブリーフィングを行います」

 

「ハッ!」

 

(スター・ノアが宇宙に発ってから約3年……まさかこのような形で地球の大地を踏み締める形になるなんて思いもしなかったわ)

 

 

 

 

――――――横浜基地第一滑走路

 

既にとっぷりと夜の帳に包まれた空の下、周辺を警護するように青の国連カラーに塗装された不知火が滑走路の脇に配置されていた。

 

存在自体が機密扱いのA-01部隊がこうまで表立った場所に出るのは初めてのことかもしれない。

 

「大尉! 来ましたよ!! ヘリが一機にその横に護衛と思わしき人型のロボットが2機。サイズは不知火よりかは小型ですね」

 

「武装は右手のライフルと左腕に持った盾だけのようですね。それにしてもあのスラスター、まるで翼のようだ。跳躍ユニットではこうはいかないだろう」

 

「速瀬、宗像此方でも確認した。しかし翼のようだとは言い得て妙だな。確かに私にもそう見えるぞ」

 

 

暗闇の中、サーチライトに照らされているヘリと機体がゆっくりと此方へと向かって進んで行く。

 

午後にあった事件が事件だけに、周囲の警戒体制は万全を期している、ベータの生き残りが潜んでいる事なんてあり得ないし、基地内の雰囲気も今朝までとはまるで違って張り詰めたものだ。

 

(唯一の心配の種が新人達のメンタル面なのだがな……)

 

トライアル終了後にA-01に編入された元207B訓練小隊。

 

しかし、午後の事件で自分達の恩師が死に、自分達が心の中で常に頼りにしていたであろう男は酷い精神状態ながらも副司令の命令により最前線へと出向してしまった。

 

彼の状態を知っていた彼女達はそれがどれほど無謀な任務なのか理解しているのだろう。

 

だから今日だけは見逃してやることにした、それが彼女達に対する伊隅なりの優しさだったのだ。

 

(勿論明日以降も引きずるようなら矯正してやるがな)

 

ふっと笑みを零しながら、伊隅は鋭い目付きで着陸態勢に入ったヘリを見上げる。

 

バラバラと激しい音を響かせながら降りてくるヘリは伊隅の知っているヘリとよく似ている。

 

だが、二機のロボット、この二つは異質だ。

 

スラスターを噴かしているというのに、驚く程に静かだ。

これ程静音性の高いスラスターは跳躍ユニットを含めて思い当たらない。

 

(これが未来人の技術力……か)

 

こんな連中と銃を突きつけ合うような状況だけは勘弁だな。

 

中隊長である彼女はその考えを再認識し、妙にソワソワしている速瀬中尉の手綱をグッと強く握るのであった。

 

 

 

 

 

「――『COUGAR02』(クーガー)this is 『COUGAR01』周辺に異常は特に見当たりません涼子さん」

 

「――『COUGAR01』this is 『COUGAR02』こっちもよシン君、どうやら一応は歓迎してくれてるみたいね」

 

「流石に中隊規模のロボットが武装された状態で立ち並んでいた時にはびっくりしましたけどね……」

 

「確かにね、でも相手の立場から考えればしょうがない事なのでしょう。

それに万が一があったとしても私とシン君、そしてこのシルフィードがあれば十分に対処出来る筈よ。

アエリアル程高性能ではないにしろ、宇宙に出て三年間、確かに私達を守ってくれた愛機なんだから」

 

「そう……ですね、やっぱり涼子さんみたいにはいかないや」

 

「しっかりしなさい『COUGAR01』!あの人の跡を継いだからには私達BLACK COUGARをしっかり引っ張ってくれないと困るんだから」

 

「Copy! わかってるよ涼子さん。それじゃあ僕は機体を降りてエインズレイ長官達と一緒にDM(Dominance Manipulator )戦闘部隊の代表として同行するから機体の護衛と周囲の警戒をお願い、何かあったらすぐにコールしてね。

……この機体には大切なものが乗っているからくれぐれもよろしく頼むよ」

 

「――『COUGAR01』this is 『COUGAR02』,roger あなたの大切な機体と持ち物は安心して任せて頂戴」

 

「それじゃああとはよろしくお願いします」

 

21にもなって、いまだどことなく幼さが残るその顔に満足げな笑顔を浮かべてそれだけ言うと、シンは機体を膝立ちにさせてからハッチを開けて慣れた調子で降りていく。

 

その先でエインズレイ長官、ブライアン艦長の2人と案内役らしい金髪の女性がいる場所へと歩み寄っていくのであった。

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