Muv-Luv Alternative×創世奇譚アエリアル とある確率分岐世界 作:†バレット†
紺碧の海深く、その青はある……
陽の光溢れるLight Blue……
闇の力強まるDeep Blue……
そして、全ての光が届かぬ『真の青』……Great Blue――――『Grand Blue』
音も光も一切届かない、その『真の青』に包まれて1人の少女と1つの機体は静かに、永い眠りについていた。
彼女が愛した1人のElemental Driverとの思い出を胸に秘め、再び出会うことは叶わないと理解していながらも、彼との再会を夢見ながら。
そう……その時までは。
「……? 眩し……い?」
音も光もその一切が届かない深海の底、その場所にいて唐突に発せられた強烈な光に休眠状態で眠りについていた少女……星海凪が異常事態を感知して眠りからゆっくりと覚める。
「……クラーケンが発光している? どういう事? このような現象は今までで一度も……」
モニターに映っているのは1匹の巨大海洋生物。しかしその実態は水の星『地球』の意思が精霊力として具現化した存在だった。
水の星を汚す存在を弾劾する存在、かつては人に襲い掛かり、そしてSPOOKとの最終決戦では結果的にこちらを助ける形となってくれた不思議な存在。
理由は知らないが、惑星強制力を発動し、Grand Blueで眠りについたアエリアルと星海凪を守るように、常に周辺海域に存在していた最強の守護者。
そのクラーケンが、何故か今強烈に発光しているではないか。
星海凪は、唐突に起こったその出来事に、ただその事の成り行きを見守ることしか出来なかった。
『………………!』
「……っ!?」
クラーケンが発したとてもじゃないが声とは言えないような鳴き声、咆哮。
だが凪は、それを聞いた瞬間に体がびくりと反応し、目端に熱い液体が浮かび上がってきたのを理解した。
どうして? なんで? 自分の体なのに自分で制御しきれない、その事に凪は驚きを隠せなかったが、眼前に映るクラーケンの巨体は徐々に徐々に光量を強めていく。
スクリーンの入光量は既に最低レベルに自動で調整されているはずだというのに、最早眩しくて目を開けていられないような状況だ。
「いったい……なにが……?」
目端に涙を浮かべながら、ギュッと目を瞑って光の渦に呑み込まれるのをアエリアル越しに感じる。
激しい衝撃にガクガクと全身を巨人にでも揺さぶられるかのようにシェイクされながらも数分後にはそれがぴたりと収まっていた。
視界に広がるのはつい先ほどまでと一切変わらぬ音も光も届かない、黒一色しかないGrand blueその物だ。
未だに目がチカチカしていて不快感を感じるが、クラーケンの姿は一切見当たらず先程までの異常事態が嘘のような静けさだ。
損傷軽微を知らせるアラートと目のチカチカが無ければ今までの出来事も夢だったと思い込んでしまう所であった。
ふぅ……っと小さく息を吐く凪、刺激や変わり映えなど一切存在しなかったこの3年間、いきなりの出来事に少しばかり疲れてしまった。
もう一度寝よう……そして再び、幸せな気持ちになれる、自分を騙す為の夢をみよう。
そうでもしなければ、悲しみに胸が引き裂かれてしまいそうになるから。
ギュっと自分を抱きしめるように腕を抱え込み、瞼を閉じる少女。
そんな時だった、何か違和感が頭の片隅で感じられたのだ。
とてもとても懐かしく、とてもとても暖かい。そんな不思議な感覚。
今気づかないで眠りについてしまえば、本当に一生後悔してしまうかもしれない気持ちにさせてくれる不思議な違和感。
そんな違和感をどうしても拭いきれなかった少女はしばしの間黙考を続ける……
そして少女は1つの結論に辿り着いた。
「まさか……そんな……嘘よ。だってシンが地球にいる筈が無いもの。スター・ノアに乗って既に計算では地球からは何百光年も離れた場所にいる筈……」
だが、相当離れた場所にいるであろう彼の反応が、アエリアルの生体OSとして専用に開発された凪には微かにだが感知出来ていた。
両目から気付かない間にぽろぽろと涙が零れて行く。ありえない現象、だが確かめなければいられなかった。
「通信を……駄目、さっきの衝撃で通信装置が故障している……。
だったら直接確認すればいいだけの……えっ?」
機体を浮上させようとして凪は気付く、アエリアルの挙動が常時の数十倍は重たいのだ。
「これは……」
3年間海の底で眠っていたからでは決してない、未来の技術で作成されたアエリアルがその程度の事でどうにかなる訳がないのだから。
機体の状態をチェックしていた凪の動きがピクリと止まる。
原因はすぐに判明した、燃料不足だ。
アエリアルは周囲の精霊力と操縦者であるElemental Driverの精霊力を糧として本来運用すべき機体なのだ、今までならシンからの精霊力の供給が無くても凪一人で操縦することも出来ていたが今は状況が変わってしまっていた。
何がどうなっているのか理解できないが、ついさっきまでは普通に供給されていた精霊力が今では先程に比べて3割程しか供給されていないのだ。
「どうしてこんな事が……」
機体に異常は見当たらない、強いて言うならば通信装置と自身のマーカーを発信する装置が先の衝撃で故障した位だ。
現状は全く理解できない、だが、やらなければならない事はハッキリしている。
「……精霊力を備蓄しながら低出力モードで進行を開始。
シン…………今……行くから」
ゆっくりと、本当にゆっくりとだが、海の底で目覚めた少女が静かに歩き出したのであった。