鬼と平和は紙一重 作:αスタイル
︎︎ここはとある場所。
︎︎高低差の激しい建物がひしめき合うように立ち並び、道には人や獣、ましてはロボットまでもが行き交っている夢に出てきそうな光景が広がっていた。
︎︎そんな中で、1人の男が呆然と道の真ん中に突っ立っていた。
???「……なんだここ?」
︎︎男は白い髪に赤い獣のような瞳を持つ、額から2本の角を生やしたまさに鬼のような姿をしていた。
︎︎服は上下紺色で、上は黒いタイツを下に着てその上から丈と袖が短い服を着ていた。下は足元が膨らんだようなニッカポッカを着ている。
︎︎男はここは何処なのか、どうして自分はこんなところにいるのか分かっていなかった。
???「人も……鳥も……あのよく分かんないトーテムみたいな生き物まで喋ってやがる……」
︎︎男にとって人だけでなくあらゆる種類の生き物、または生き物らしきものがさも当たり前のように生活を営んでいる、この何でもありな光景に頭が混乱する。
︎︎すると、後ろから男の肩を叩く者がいた。
???「うおっ!?」
︎︎いきなりのことに男は驚いて後ろを振り向く。
︎︎すると、そこには1人の女性が立って男の事を怪訝な顔をしながら見ていた。
女性?「アンタ大丈夫?何かボーッとしてるみたいだけど?」
︎︎その女性は容姿からして男と同じように17〜18歳ぐらいの短い薄茶色の髪を持ち、何よりその頭部からは茶色の垂れた獣の耳と白い角が2つ生えていた。
︎︎服は短パンと上には何処か全体的に短い服を着ている。
???「今度は鹿と人のハーフ?」
︎︎男の言葉に女性は「は?」と返した。
女性?「なんかだいぶ混乱してるみたいだけど……どこから来たの?もしかしてお酒の飲みすぎで記憶飛んでるとかじゃないわよね?見た感じ私と歳変わらなそうだけど……」
???「酒は……飲んでないと思う」
女性?「そう。じゃあ名前は言える?」
︎︎女性にそう言われ、少し間を置いてから男は口を開いた。
白夜「
夜鹿「白夜ね?私は
︎︎白夜は少し考えるが、何も思いつかずに「分かんね」と投げやりに答えた。それを見て夜鹿はため息をついた。
夜鹿「余裕があれば力になるけど、私今忙しいから悪いけど警察に……」
︎︎夜鹿がそう言いかけたその時だった。
︎︎突如近くの店が爆発し、中から黒い旧ドイツ兵を連想させる格好をした顔に赤いガラスのバイザーが付いたガスマスクをつけた集団が姿を現す。
謎の兵士「行くぞ!」
︎︎その内の1人が合図をすると奥から道の隅に置いてあった箱やらゴミ箱やらを派手に撥ねながら不気味な黒く大きな荷台を持つトラックがやってきて黒装束でガスマスクをつけた集団の前に停車した。
夜鹿「クソっ!」
︎︎それを見た夜鹿が黒装束集団に向かって走り出す。
︎︎トラックは黒装束集団を荷台に載せ終わるとアクセル全開で逃げるようにして走り出す。
︎︎夜鹿は向かってくるトラックに怖気付くことなく突進していくかと思いきや、トラックとの距離が残り僅かになった瞬間にジャンプし、トラックの運転席の上に飛び乗った。
白夜「ん?あ、あぶねぇ!!」
︎︎それを見ていた白夜だったが、トラックは周りの人などお構い無しに危険な運転をしながら白夜の方に向かってくる。
︎︎咄嗟にトラックを避けた白夜だったが、その際に何処からか紐が足に絡まり、気づいた時には体を一気に引っ張られてしまう。
白夜「うおあああぁぁ!!」
︎︎どうやらトラックに何処かで紐が絡まったらしく、さらにその紐は白夜の足に巻きついてしまったのだ。
︎︎トラックはものすごいスピードで走り続け、白夜は仰向けのまま地面を引きずられていく。
白夜「ちょっと待っ……誰かアア!!」
︎︎助けを求めるも爆速で走っているトラックに引きずられている白夜を助ける人はいない。というより、助けたくても助けられないのだ。
︎︎白夜は背を曲げながら体を持ち上げ、足に絡まった縄を解こうと手を伸ばす。
白夜「いでででで!ケツ!ケツが死ぬ!!」
︎︎尻を削られながらも手を伸ばすが、白夜を引っ張っていたトラックが急に止まり、その反動で白夜の体はトラックの荷台に突っ込んだ。
白夜「いった……ん?」
︎︎前転の途中のような格好をしていると、そんな白夜の顔の近くに剣が突き刺さる。
︎︎目と鼻の先にある鋭い剣の刃を見ながら冷や汗をかいていた白夜は、そこでこの広い荷台の上で先程の黒装束達と夜鹿が派手に戦っている事に気がつく。
白夜「おい、何がどうなって……」
︎︎わけも分からないまま立ち上がった白夜に合わせるかのようにトラックが再び動き出し、せっかく立ち上がったのに今度は片膝を付いてしまう。
︎︎すると今度は夜鹿の蹴りで蹴り飛ばされた黒装束の男が白夜の横に転がってきて、白夜の姿を見ると有無を言わさずに持っていた剣で襲いかかってくる。
白夜「うおお!?」
︎︎振り下ろされる剣を白夜はギリギリのところで白刃取りをして防ぐ。
︎︎2人を同時に相手しながら夜鹿が白夜がいることに気がついた。
夜鹿「アンタ何やってるの!?」
白夜「引っ張られた!紐で引っ張られたんだよ!わざとじゃねぇって!!」
︎︎白夜はそう言いながら黒装束の剣を横に向けると出来た隙を狙い黒装束の体に蹴りを入れる。
︎︎急に蹴られた黒装束はよろけるとそのまま体制を崩して走るトラックから転落する。
白夜「おい!ここは何処でコイツら何なんだよ!?」
夜鹿「それ今言わなきゃダメ!?」
︎︎背後を取られて動きを封じられながら夜鹿が大声でそう聞き返す。
︎︎捕まっている夜鹿に向かって斧を振り下ろそうと近づく別の黒装束に向かって白夜が横から顔にパンチをする。
白夜「じゃあコイツら何とかしたら教えて貰えるんだろうな!?」
︎︎背中にしがみついてきていた黒装束の顔に向けて夜鹿は頭をぶつける。
しがみつく力が弱まったところで黒装束の片手を掴むと夜鹿はその場で背負い投げをする。
謎の兵士「ガッ!」
︎︎トラックの上にいた黒装束は全て倒したのを確認し、白夜は痛そうに後頭部を撫でている夜鹿に顔を向ける。
白夜「それで、答えてもらっても?」
夜鹿「ここは『セントラルワン』、世界の中心と言われてる都市よ。
そしてコイツらは『コンカラー』。悪党よ」
︎︎夜鹿の大雑把な説明を聞くも、白夜はどれも聞き覚えが無かった。
白夜「名前とか聞きゃ何か今の状況の手がかりがあると思ったけど……なんも変わんねぇな」
夜鹿「……もしかしてアンタ記憶喪失?」
白夜「さぁ?それすらも分かんねぇ。分かってることと言えば……」
︎︎白夜がそこまで言いかけたが、2人の乗っているトラックに背後から同じようなトラックが2台追ってきたかと思うとその2台は2人が乗っているトラックの左右に並走し始める。
︎︎左右のトラックの荷台に武器を持った黒装束を見て白夜は拳を構えた。
白夜「面倒なことに巻き込まれたことぐらいだ!」