鬼と平和は紙一重 作:αスタイル
神殿へ向かうために列車に乗った白夜と夜鹿、その旅の途中で白夜は怪しげな刀を見つける。
白夜「なんだこれ?」
︎︎近くにいた子連れの家族にクスクスと笑われながらも白夜は車内に転がっていたために自らの足に引っかかった1本の刀を拾い上げる。
白夜「刀?なんでこんなところに?」
︎︎その刀は刀身から持ち手にかけて黒曜石のように真っ黒な色をしていた。鍔も付いているが、まるで元からくっついていたかのように鍔と刀の境目が見つからない。
︎︎模様も特に何かある訳ではないその見た目に白夜は色んな角度からその刀を観察した。
白夜「すげぇな……1個の岩を削って作ったみたいだ」
︎︎白夜は試しに刀の持ち手を持ってみると、まるでずっと使っていたかのように手に馴染んだ。
白夜「それなりの重さだけど、これはこれで力が入りそうだな……ん?」
︎︎よく見ると刀には刀身があるものの、その刃は斬れるような鋭さを持っていなかった。いや、正確には見た目は鋭いのだが、触った感覚はとても刃に触れているようには思えなかったのだ。
白夜(これじゃただの棒だろ……)
︎︎そんなことを分析していた白夜だったが、ふと別の老夫婦が自分のことを怪しげに見ているのに気づき、刀を観察するのを止める。
白夜「あぶね、人斬りだとでも思われたらたまんねぇや」
︎︎そう言いながら白夜は刀を車両の壁に立てかけてその場を離れた。
白夜「しっかし……誰があんなところに刀なんて落としたんだ?」
︎︎疑問を口にしながら車両間を繋ぐスライドドアを開けて次の車両に踏み込んだ途端、白夜は再び躓いてしまう。
白夜「ちょ、またなんか落ちて……」
︎︎そう言いながら足元を確認すると、先程と同じような刀が転がっていた。
白夜「あれ?」
︎︎白夜は刀を拾い上げて不思議そうに眺めた。
白夜「さっきあそこに置いてきたよな?」
︎︎首を傾げながらも今度も同じくドアの近くに立てかけてから車内を進み始める。
︎︎しかし、車内を半分ほど通過したところでまたしても足に何かが引っかかった。
白夜「おい!この電車物が落ちすぎ……ッ!?」
︎︎白夜の足にぶつかったのはまたしても見覚えのある刀だった。
︎︎白夜は自分の身に起こっていることに思わず唾を飲み込んだ。
白夜(有り得ねぇ!確かにこの刀はさっきドア横に立てかけて置いてきたはず……なんでここにある!?)
︎︎不気味な現象にこれ以上の進行は危険だと判断した白夜は来た道を戻り始める。
白夜「き、きっと同じのが何本もあるんだよ。全く誰だ同じもん落としまくってる奴……は……」
︎︎今度は戻る途中の空いている座席にその刀の姿があった。
︎︎先程の戻り始めた時点までの間で『座席に刀が置いてあった』光景を白夜は1度も見ていない。
︎︎白夜はその刀を無視して夜鹿の元へ早足で戻ろうとする。
白夜「あ、あんなところにも落ちてたのか、床だけじゃなくて席にも置いておくなんてけしからん奴だな。車掌に言って止めさせた方が……」
︎︎これで終わるはずがなく、今度は座席の上にある荷物置きから刀身が飛び出た形で置かれていた。
白夜「いや、いやいやいや!同じはずがない!だって刀だもん!動くわけがねぇもん!!」
︎︎走りながらそう自分に言い聞かせるようにするも、あの黒い刀は白夜が動けば動くほどまるで視界に入ろうとしているかのようにその姿を白夜の前に現す。
︎︎全力で車内を走り抜け、夜鹿のいる席にまで戻ってきた白夜は飛び込むように元の席に座った。
夜鹿「ちょっと!」
︎︎慌てて戻ってきた白夜に当たらないように読んでいた雑誌を退けた夜鹿に対して白夜は夜鹿の肩を掴んで顔を近づけた。
白夜「か、刀!」
夜鹿「ち、近い!」
︎︎急接近した白夜の顔に驚き頬を少し赤くしながら夜鹿は白夜を軽く蹴って引き剥がした。
夜鹿「急になんなのよ!」
白夜「つ、付きまとわれてんだよ!」
夜鹿「はぁ?」
︎︎眉をしかめた夜鹿に白夜は巻き立てるかのようにしゃべり続ける。
白夜「なんかヤバいっつーか!いや多分俺の気のせいだと思うんだけど!でも認識したらいけないやつみたいな……!!」
夜鹿「お、落ち着きなさいよ。一体何があったのよ」
︎︎白夜が慌てている訳を知らない夜鹿はとりあえず白夜に落ち着くように言うが白夜は興奮してしまっているのか、窓を前回にして身を乗り出し始める。
白夜「とりあえず降りるわ!俺走って向かうから!」
夜鹿「バカ何やってんのよ!」
︎︎飛び降りようとする白夜を夜鹿は後ろからしがみついて止める。
︎︎夜鹿が力いっぱい引っ張り、何とか白夜を車内に引き戻した。
夜鹿「この速度で降りたら死ぬに決まってるでしょ!阿呆なの!?」
白夜「馬鹿野郎!早く降りねぇと俺は呪い殺される!!」
︎︎錯乱したかのような白夜の言葉に夜鹿は「えぇ……」と思わず声を漏らしてしまった。
夜鹿「とりあえず落ち着きなさいって。大体呪い殺されるって何?それに何処から持ってきたのよ『それ』」
白夜「それ……?」
︎︎夜鹿が「ほら、そこの」と言いながら指さした白夜の席の隣を見るとそこにはあの黒い刀がまるで最初からいたかのよう立てかけてあった。
白夜「……ッ!?」
︎︎目の前に姿を現した刀に固まった白夜を他所に夜鹿がその刀を持ち上げると白夜は「ちょ!?」と反応する。
夜鹿「凄いわねこれ。まるで黒曜石を削って作ったみたい……」
︎︎そう言う夜鹿の手から白夜は「おおおお!!」と叫びながら刀を奪い取るとそれを先程の窓から思い切り放り投げた。
︎︎突然の奇行に夜鹿は「は!?」と理解が追いついていない状態だった。
夜鹿「なんで投げたの!?」
白夜「いやだからアレがヤバいんだって!」
夜鹿「自分で持ってきたのに!?」
白夜「持ってきてねぇ!アレが勝手についてきたんだよ!」
︎︎白夜の言葉に夜鹿が「何を馬鹿な……」と言いかけると2人の足元でカランと言う乾いた音が鳴る。
︎︎夜鹿と白夜が音がした方を見るとそこには先程外に放り出されたはずの刀が床に転がっていた。
白夜・夜鹿「「……ッ!?」」
︎︎それを見た白夜と夜鹿は一斉に座席に飛び乗って刀から距離を取ろうとする。しかし、刀はそれに対して何かをする訳でもなくただ床に無機質に転がっているだけだった。
夜鹿「……アンタが言ってた呪いってもしかしてこれ?」
白夜「あぁ、さっきからずっとついてきやがる」
︎︎こうまでされては2人ともこの刀がただの刀でないと認めざるおえなかった。車外に出しても戻ってくる刀なんて恐怖でしかない。
︎︎すると夜鹿は座席から飛び降りると刀にかかと落としを繰り出した。
白夜「何してやがる!?」
︎︎夜鹿の黒くて堅いブーツでのかかと落としが刀にぶつかると硬い金属音が鳴り、車両の床が刀の形に凹む。
夜鹿「壊せたら何とかなると思ったけど……」
︎︎車両の床は凹んでも刀には傷1つ付いている様子は無かった。
夜鹿「アンタ何面倒事持ち込んでるのよ!」
白夜「俺のせい!?」
︎︎騒いでいる2人をうっとおしそうにする乗客の視線が集まる中、ローブを着た人物が2人に近づいくる。
白夜「……ん?」
︎︎ローブを着た人物は白夜に文句を言う夜鹿の背後に近づくとローブの中から刃物を取り出し夜鹿の背中につき立てようとする。
白夜「……!危ねぇ!」
︎︎白夜が夜鹿の服を掴むと自分の元に引き寄せる。
︎︎白夜が夜鹿を引き寄せたことでローブを着た人物の刃物は空を斬った。
白夜「テメェ、何のつもりだ!」
夜鹿「……!?!?」
︎︎抱き寄せられた夜鹿は白夜の胸に顔を埋めた状態で顔を赤くしながら混乱する。一方で、無意識に夜鹿を抱き寄せた白夜は夜鹿ではなくローブを着た人物を睨んでいた。
︎︎夜鹿を刺そうとした人物は随分と背が小さく、フードを被っているので姿がいまいち分からない。
︎︎ローブを着た人物は白夜の問いに一言も発することなく2人に襲いかかってきた。