万魔殿の情報局が通る!   作:はっひっふっへっほ~()

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えー前話の冒頭の会話が、途中から再び挿入され繰り返されていました。
修正し、本来書きたかった風紀委員会の視点を改めて追加しました、同じ様な事は二度とすまいと今後は注意します。
アト高評価トカ感想ヲ頂ケルト嬉シイデス。
以上!それでは楽しんで


憎悪と災厄

アリウス分校──ゲヘナやトリニティにとって、因縁深い学校であり、今となっては忘却されかけていた学校。

彼女たちの情報は長い間伝承や発掘された古文書に頼らざるを得ず、十年前に起きたとされる内戦、その難民たちの情報は広大な砂漠から見出された小さなオアシス程、貴重な価値を持った。

 

曰く、アリウスはトリニティの政争に敗れ、放逐された分派を受け入れていた。

曰く、アリウスは、ゲヘナとトリニティ憎しの思想を脈々と受け継ぐアリウス分派と、おのが分派のトリニティ復帰や閉鎖的経済状況を嫌った派閥連合による対立があった事。

曰く、2年近くに渡る内戦によって、アリウス分派が勝利した事。

曰く、内戦の傷が癒える事無く、今も恐らくは致命的な不況のままであろうと言う事。

 

トリニティもゲヘナも、その過激勢力が政権を十年近く政権を維持して居る事への危機感と、恐らく行き詰まった経済は急速な軍拡と徹底したプロパガンダによって誤魔化されているに過ぎず、遠からずキヴォトス情勢にアリウスが躍り出てくると予想している。

 

 

 

 

 

──────────

 

「七つの古則、その五つ目を貴女は知っていますか?」

ある日突然、タツコは替えの飲み物を淹れに来た後輩に、そう話を振った。

 

「楽園にたどり着いた者の真実を証明することは出来るか、否か。

……と言った内容だった筈ですが?」

後輩は自分用に淹れておいた茶を美味しそうに飲みながら問い返した。

 

「ええ、そのとおり。

私もね、時折考えるのです。

人と人とは分かり合えるのか、変数を徹底して排除した人と人との関わり合いが成立するのか、と。

価値観や信念を予想する事は出来ても、それは高精度な予測でしかないのですよ。

我々は、否。私は、全く理解出来ていない。

彼らならこう動く、彼女らならこう決定する…私が培ったのは予想であって、予知ではない。

………ひょっとすると、私は私すらも理解出来ていないのかも知れない」

後輩が淹れてくれた茶を、ただ眺めて、言葉を紡ぐ。

 

「五つ目の古則への答えを、局長は持ち合わせていない、という認識で宜しいでしょうか?」

後輩は意外そうな声を上げた。

 

「意外かね?」

視線を微塵も後輩に流す事をせず、ただじっと茶を眺め続けるタツコはそう問うた。

 

「万事において余裕があるというか解を持ち得るのが先輩らしいってイメージだったので」

 

意外そうな後輩からの評価を、噛み締めるようにタツコは表情を綻ばせる。

 

「嬉しい事を言ってくれますねェ…

──もっと前からゲヘナに来るべきしたか…ふふっ」

 

「…?」

 

静かに微笑む局長の手の中には、小さく揺らめく湯気があった。

 

──この腹黒さは、この人間不信さは、この劣等感は、今でも忘れられない。

今でも忘れられないし、今の私を形作っている。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

時間を少し置いて、執務室に後輩たちが雪崩れ込んできた。

 

「……局長、矯正局脱獄の一件なのですが、宜しいでしょうか?」

「そ、それなら私の方からも…連邦生徒会の情報の精査が完了しました!」

「ブラックマーケットに出回るトリニティで採用されてる武器を買い揃える事が出来ましたよ先輩!

現在地下工廠で分解と製造を始めていますので確認宜しくお願いします、新しい収入源が手に入ったのは僥倖ですね!!」

 

続々と報告が齎される中、局長はただ黙って指を鳴らす。

落ち着いて報告し給え、その意図を込めて、少しばかり大げさに。

 

「落ち着いて、冷静に…

情報を司り、謀議を執り行うのが我々の仕事である。

……では各自、順々に報告をもう一度するように。…それと戦闘訓練を最近皆さんやっておりませんね、後でやりましょうか?」

 

「……せ、戦闘訓練は…勘弁して欲しいです」

「…局長怖いから嫌」「…ヒナ委員長より弱いって先輩が自称してたの覚えてますけど、嘘言ってません?」

 

「其処までボロクソに言いますかねェ、全力で叩き潰しに行くのが訓練ですよ…?」

 

──訓練を行うと告げた数瞬後、局長は鬼畜であると周囲からドン引きされていた。

 

「だっ、だってだって!拳銃から汎用自動小銃、短機関銃に、邪道すぎるフルオートショットガン、挙句トランプなんて曲芸で攻撃してくるんですよっ!!?」

「半泣きになって詰め寄られても…だって便利だしとしか」

 

「──おまけにトランプ使ってくるのやたら巧いよね…

移動する時にもトランプばら撒かれてみて下さいって…見えないんですよ……?」

「今度新技使ってみたいんだよね、トランプで作った囮なんだが、如何思う?」

「反省して下さい…」

 

「先輩にとって銃って何なんですかね……?」

「仕事道具…?」

「嘘でしょ…ファッションとかって考えていないんですか……?」

 

──その後報告前に後輩たちに30分にも渡ってファッションの重要性を語られた──

 

 

──30分後

 

「も、もうわかった。よォく分かったから落ち着きなさい…」

 

「大体ですね先輩!なんでずっと情報局長として支給された服を着ているんですか!

議長とよく似た制服なのは良いでしょう!

なんだったら先輩がスカート履いてる時なんて一度も見た記憶ありませんよ!!?」

 

「ズボンの方が楽じゃないか…」

 

「髪型だってぇ!…あぅっ!?」

 

後輩が悲鳴を上げる様にして僅かに仰け反った隙に、デコピンを一発喰らわせる。

 

「分かったから、ファッションの重要性というか私服を新しく買い揃えるから…!

まずは報告をだね…」

 

デコピンをした手で後輩に報告を促してみる、この案件はかなり昔から続く案件であり、カイザーの手の内が判明するにつれて難易度はどんどん減少していってる事も併せて、初心者講習染みてきている内容だ。

 

「あっはい。えーっとですね、私の案件はカイザー関連でした」

 

「うん」

 

「カイザーは長きに渡ってアビドスに土地を求める交渉を行っており、アビドス最盛期の自治区の過半をカイザーが手に入れています」

 

──アビドス、我々ゲヘナやトリニティより先に学園としてこの地に成立した学び舎

だが、栄枯盛衰には抗いきれず、彼女らは、オアシスの喪失や総人口、ばかげたと言って良いほど急速に進む砂漠化に苦しみ、経営難に陥った。

 

「成程、それで?」

 

充分に同情すべき、苦境に立たされているアビドスを、我々は情報戦の教材として取り扱っている。

恥ずべき行為で、無慈悲や冷酷と言われても仕方のない事だろう。

 

「我々の班内ではいくつかの可能性を検討しましたが、カイザー理事の挙動やアビドスへのアプローチを武力に変更している事も踏まえて、当初の目的は既に買い取ったアビドスの土地にあるのだと予想しています」

 

──その隙にカイザーは付け入った。はじめは良心的な利息で、次に現実的な利息で、最後に法外な利息で、彼女たちを借金漬けにし、彼女たちから何もない砂漠を担保として巻き上げた。

 

「うんうん、アプローチを変えたからと言ってカイザーがアビドスを企業都市にしようと目論んでいるからかもしれないぞ?」

──恐らく、私の考えている事と後輩たちの結論は一致しているか、殆ど重なっていると考えて良いだろう。

だが私から答えを言うのは筋が違う。後輩の為にならないし、成功体験を確りこの子たちには積んで欲しい。

 

その事実は、奇妙さとなって我々の嗅覚に察知された。

何ら使えぬ土地を買い取り、対策委員会と呼ばれるアビドスの行政組織への武力攻勢を強めている。

まるで何かを焦るように、誰かが、何かがアビドスから離れる事を焦る様に──

まるで最低限の目標を達成し、さらに益を獲得するために手段を変えた。

 

「ええ、それも考えました。

でも、何かおかしいんです、誰かが、何かがアビドスから失われる事を焦る様にカイザーは攻撃を強めています」

 

「……この案件は君らに任せ続けておくべきでしょうねェ。ただ、何かあった場合は逐一報告する事、場合によっては私も策を巡らせるので」

 

便利屋68辺りが居た筈だ。

……アビドスと言えば、生徒会副会長の小鳥遊ホシノか。

 

「クククッ、フフフ…いやはや、面白くなって来ましたねェ」

 

──まだまだアビドスは滅んで無い。彼女らは欠片も折れていないし、諦めていない。

絶対に諦めたり、絶対に悲劇は望んでいない、だって、長きにわたる抵抗を続けているのだから。

 

「少しばかり、手を貸しても良いでしょう。長きに渡って我々の教材として足掻いたアビドスに、ね」

 

──“赤宮タツコ”は先生がやってくる事を未だに知らない。

──“情報局局長”は、諦めの悪いアビドスへの興味を初めて抱いた。ゲヘナ発展の駒ではなく、純粋に青春を謳歌する同じ生徒として

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

「──……げ!連絡を…!」

 

「今の内だ、急げ急げ!!」

 

連邦生徒会長が失踪したという情報が情報局に伝わってから早数日──

──矯正局の第13区は大規模な火災と爆発、そして暴動に見舞われていた。

 

D.U.中心地のデジタルサイネージで、その有様は中継されている。

『一体何があったのでしょうか!?1時間半前から突如として矯正局周辺で暴動が発生し、ヴァルキューレの警備が手薄になったタイミングでこの爆発と火災です!

我々クロノスに、匿名で通報があったこの真夜中!よくも寝る時間を潰しやがってと思いながら矯正局前に来ましたが、来て正解でした!…え?愚痴は聞いてない?

あらゆる地域からヘルメット団が結集し、ヴァルキューレと矯正局へ総攻撃を仕掛けているそうです!』

 

スケバンやヘルメット団は、警備局や公安局に互角以上の戦いを繰り広げている。

 

ヴァルキューレのバンが鉄の嵐の中に踊りだし、複数人の公安局員が飛び降りる、が直後にバンは不良生徒たちによる十字砲火を受け、火達磨となり、蛇が這うような不確かな軌道をとった後、派手に爆散。

 

「ヴァルキューレ共を蹴散らせぇ!

装備の質が改善した今恐ろしくとも何ともない!」

 

誰かが大声でそう叫ぶ、燃え上がるバンから伝わる熱気を言語化したような叫び。

それを諫めるかのように、彼女らの所有する無線機から一斉に声が入る。

 

『────…多少は私の指揮に従って頂きますからねェ?皆さん当初の目的は忘れずに…

それと、事前に配布した地図のyの34区画に一斉砲撃を、迫撃砲の皆さん。』

 

「お、おう。分かってるよ、アタシらの団長救出の為に装備や戦術士気をやってくれるのは、アンタくらいしかいないからな!アルハンブラさんよ」

 

『──…なに、私もヴァルキューレや防衛室苦手でしてな。連邦生徒会長の姿を長らく見かけぬ今しかないと思った故、お手伝いしているだけですよォ。

……工作隊の皆々様、高速道路第26号線の脚柱に設置した爆薬を一斉に点火してくれ給え』

 

声はボイスチェンジャーによって様変わりしていて、如何にも成人男性が出すような声を響かせている。

供給している装備は、数週間前から夥しい数が不法に流通している各校の制式装備。

そしてヴァルキューレを翻弄するかの様な情報戦と戦術指揮。

 

──それらが故に、此処に居る多くの不良生徒達は、このアルハンブラと名乗る不審人物を裏社会の有力者であると信じ込んでいた。

 

「アンタもヴァルキューレに辛酸をなめさせられたんだろ!?だったらそんな堅っ苦しく喋らなくたって良いんだぜ!連邦矯正局第13区画は多くのテロリストや組織の長が捕らえられている区画で、きっとアンタが其処に執着するのだって!きっとそういう事だろ!アタシ等はアンタに賭けて正解だった!

お前らァ!そうだよなァ!?」

 

「おう!」

「アルハンブラのアニキの為だったら何だって手伝うぜ!」

 

アルハンブラと不良生徒達は、確かに信頼関係を構築していた。

各地で長を一斉検挙という形で失い、苦しんでいた不良生徒達を、其々の長の救出作戦という形で鼓舞し、対立関係にあった不良生徒達を、装備と情報、そして資金の援助によって団結させ──

各々の得意分野や人間関係を正確に分析して、幾つかの部隊として再編成──

そして作戦時にはD.U.全域の情報を徹底して監視、その情報に基づく形での的確な士気を行った。

 

彼女たちは、伊達男と名乗る声に従って、ヴァルキューレを蹴散らす。

 

『──ククッ、嬉しいですよ。ええ、有難う御座います』

 

だからこそ、それ程の大恩があるからこそ、彼女達は手を組む味方の腹の底を理解していない。

 

 

 

「糞ッ!なんなんだ!増援が一向に届かないぞ、本部からの応答はまだか!」

「電波妨害がされていて、無線が繋がりません!電話線は戦闘開始直後の爆破で全て寸断されている模様でして…!」

「あり得ない!こんな計画的な犯行を不良が…!?」

 

 

 

「くっ!このォっ!私が盾を持って前に出ますから先輩方が…!」

「馬鹿野郎!そんな盾で奴らの銃弾が防げるか!あれは最新鋭の銃弾だぞ!引っ込んでろ!」

「…っ!?班長!奴らダイナマイトを投げ込んできやがった!」

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

「キシッ、キキキキッ!

随分派手に暴れているな、情報局め…」

 

万魔殿で、マコトは心底愉快そうにクロノスの報道を視聴していた。

 

「あら、マコトちゃん。何かまた悪巧みでも?」

 

「ん?サツキか。いやなに、お祭りだよ」

 

紅茶を舌の上で転がして、楽しむ様にマコトは言って、視線を再び画面に戻す。

サツキは僅かに目を細めて、大騒ぎとなっている画面の向こう側を見る。

まるでその更に先に居る謀略家の笑い声を聴くかのように。

 

「貴方達、昔から仲が良かったものね」

 

画面の向こうは立ち上る煙と燃え盛る炎で覆い尽くされていた。

何本もの脚柱を破壊され、高速道路は倒れ、ビルに突き刺さっていたり、あるいは完全に道路を封鎖している。

 

連邦矯正局を防衛しようと派遣された公安局や警備局の局員が登場していた筈のバンは横転し、炎に包まれている、その側面には一際目立つ穴があり、それは対戦車砲によるものであると誰の目にも明らかであった。

 

ヴァルキューレ生が必死に銃を、盾を構えて応戦しようとすれば、情け容赦の無い集中砲火や高火力の装備に押し潰されている。

 

最早誰の目にも明らかだった、此れはヴァルキューレにとって対処不可能な災害に等しく、SRT特殊学園を投入すべきな状況だ、と。

 

結局、SRTも連邦生徒会も動く事は無く、戦闘は終息した。

連邦矯正局はその日、第13区画以外からも数多くの脱獄者を出し、クロノスによってその敗北は、防衛室やヴァルキューレの予想以上に明らかにされてしまった。

その象徴とも言える一枚の画像は、不良達によって、SNSで投稿された物だった。

 

──多くの脱獄囚の中でひときわ異彩を放つ、災厄の狐。

その狐を、多くの不良生徒達が整列で出迎え、その間を堂々と歩む、そんな写真。

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