万魔殿の情報局が通る!   作:はっひっふっへっほ~()

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『お前っ!お、前…がっ……!

お前が!あんな決断をしなければ!』

──私たちは負ける事は無かったのに!

 

巨大な工作機械に巻き込まれたかのように、身体はもち上がる。

肺は肋骨ごと強く押されるせいで、呼吸が難しくなって、視界は黒い靄がかかる。

 

『如何したッ!なんか言えよ!言いなよっ!

良い訳でもなんでも良いからっ!足掻けよ!』

 

どん、強く背中を打った音が聞こえて、遅れて痛みが体中にゴムボールの様に跳ね回る。

痛みは全身から溢れて止まらないのに、肺から吐き出される酸素も、胃袋から逆流する胃液も、何処にもなかった。

煤と汗、血や土、埃に汚れた“白いセーラー服”は台無しだった。

誇らしかった“白いセーラー服”は汚れて、“計画”は一つ年下の後輩に粉砕された。

 

でも今の私は、ゲヘナで………────

……そうか、これは記憶だ。今の私は“真っ黒なスーツ”じゃないか。

 

これが夢だと悟った彼女の周囲は途端にノイズが走り、歪み、色彩は滅茶苦茶になった。

先ほどまで首を締めあげ、「どうして、何故、お前が」と激しく激高していた“黒いセーラー服”の少女は、“真っ黒なスーツを着た局長”になって、突き放すような視線を此方に向けていた。

 

『その通り、これは夢。お前が実行し、お前が先導し、お前が招き寄せた“夢”の残骸から映写された夢』

 

──自分のした事に、怒っているのか?この“局長”は。

 

『“私は私だ”、局長としての私が一体なんだ』

 

『なんだ?とは悲しいですなァ?

戦に敗れ、全てを失っ…おっと、それどうでも良い。』

 

貼り付けた様な笑顔と、突き放すような視線は変わる事はなく、“局長”はこちらをのぞき込んでいる。

──お前はまだ、あの敗北から完全に立ち直ってはいない。その事実を思い出させに来たのですよ、ええ。

 

そんな馬鹿な!そんな事はあり得ない!そう言い返せば良かったのかもしれない。

改革を掲げ、融和を掲げ、その為に“計画”を企てた。

そして派手に失敗した、そしてすべて失って、逃げた。

 

“局長”と“私”だけが置き去りにされたあのブラックマーケットの路地で、雨粒は宙に停止していた。

あの敗北から3年近く経って、皆が前に進んでいる。

 

では私は?万魔殿情報局は影の存在で、局長は青春を放棄したような仮面で。

本来の私は?本来の私は何だ?

 

『復讐を掲げれば良かろう?

混沌をばら撒けば良かろう?

後輩を駒のように扱い、有象無象を使い潰せばよかろう?

後輩の成長を期待せず、誰かの友情や愛情を鼻で笑い、黙々と計画を練り、実行し、他者を陥れ続ければ良いだろう?』

 

──煩い。引っ込んでいろ、お前の過激さに溺れたりはしない。

 

『そ、うか。そうかそうか。そうだと良いな?』

 

局長は、人が人を嬲る時に見せる、大木の洞のような目で私をあざ笑って、首を掴む。

締め上げる力は増していく。視界が黒い膜に覆われ始める。

 

小雨だった雨は勢いを次第に増し、“私”に容赦なく叩きつけられる感覚だけが、鋭敏に残り続けた。

車内で目が覚めた時、寝汗が全身に張り付いていた。

 

やれやれ、まだ1時間と30分しか寝ていないじゃないか、そう内心で毒づきながら、エンジンをかける。

唸るようなエンジンの始動音は、高性能なエンジンである証拠であり、彼女の誇らしい愛車でもある。

同時に彼女にとって、寮の家以上に安心できる場所。

3年前から時を止め続けている動く彼女の城。

 

 

 

 

地平線の向こうを日が照らし始めた時、ブラックマーケットに彼女の姿はあった。

停滞と退嬰とが支配する、キヴォトス有数のブラックマーケット。

情報局の密造する武器弾薬の売買の拠点として、彼女は“アルハンブラ”の義体を起動する。

 

此処アビドスの衰退による権力の空白地の急速な拡大は、秩序と言う日照りが照らす砂漠を彷徨うしかなかった犯罪者たちにとってまさにオアシスに等しい場所。同時に数多の汚職と腐敗と陰謀の新しい集積地。

無法者が生きるために1日1日に持ちうる全ての活気を発露する場所。

 

そんな都市で、そんな苦しみと妬みの震源地で、私は、私は

 

「そうだ、私だ。

連邦矯正局襲撃に続き、各学園の自治区内部での不良の扇動を頼む。

私?気にするな、私は私でアビドスの売却した利権を調べ直しているだけだ」

 

アビドスを苦しめる為の一手を、連邦生徒会を分断する小細工を、この巨大ビルから始めよう。

局長として、か弱く愚かな昔を否定し続ける為に




更新が遅れに遅れております、新大学生生活が中々馴染めなくて…
書き方忘れ気味だから初投稿
申し訳ない
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