ブロードウェイに続く道を、ゴジラは風のように疾走していた。
その後を追うのは、機関砲を乱射しながら追走している二台の軍用車。しかしゴジラは後ろからやってくる人間たちの兵器など全く気にするそぶりを見せていなかった。マンハッタン上陸時の時もそうだったが、ゴジラは地上を逃げている人間たちの声を決して無視しているわけではない。ただ単に聞こえないだけなのだ。虫けらの抗議を人間が気にしないのと同じように。
しかし少々鬱陶しいとは感じていた。蚊がさす程度のダメージしか受けてはいないが、何とか処分したいとは思っていた。それには少しばかり材料が足りない。
走り続けて、ゴジラはやっと見つけた。燃え盛っている車を見つけたのだ。これがあればあの小うるさい人間たちをやっつけることが出来る。
軍用車の搭乗者は、突然ゴジラが方向を変えてこちら側に顔を向けたことを不審に思った。ところが次の瞬間、ゴジラの口から猛烈な火炎が放射されたのだった。軍用車はブレーキをかける暇もなく、猛烈な炎の中に飛び込んだ。
これぞゴジラの能力の一つ、パワーブラストである。
といってもゴジラが火を吐いたわけではなく、口の中に炎を吸い込み自身の高熱の息とプラスすることで火炎の威力を上げたのである。これはイグアナなどの爬虫類が時折行うような溜息のような動作であり、火種が無ければ火災の発生は出来ないが、逆に言えばどんなに小さくとも火さえあれば周囲を焼き払うほどの火災を発生させることが出来るのである。
これで追跡者を追い払うことに成功したゴジラ。すると上空から別の追跡者が攻撃を仕掛けてきたのだった。
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シルバーホーク隊とは、米国空軍の航空部隊の名称である。
ランブリンクから出撃した彼等は3機のヘリコプターを駆り、ゴジラに向かって攻撃を仕掛けてきたのだった。
「オニール!戦況はどうだ!?」
「に、逃げられました!今航空隊が追いかけています!!」
ヒックスの連絡に答えるオニール。そうこうしているうちにゴジラはまたしても疾走を始めたのだった。
「さあついて来い化け物!」
ホーク隊隊長はゴジラを追走しながら言う。ゴジラはタイムズスクエアで進路を東に変更した。ヘリもゴジラの尻尾に当たらないように追撃する。
「各機、攻撃準備!」
隊長の号令と共に、各ヘリコプターが攻撃態勢を取った。しかしゴジラはどんどんヘリから離れていく。急いで追いかけないと見失ってしまうだろう。
「時速150kmでも追いつけません!」
ヘリコプターはゴジラに何とか追いつくので精いっぱいだったが、何とかゴジラの体にロックオンすることに成功した。
「ターゲット・ロックオン!」
隊員の声は指令センターにいるヒックスの耳にも、通信を傍受していた部下からの声で聞こえた。オニールは誘導ミサイル発射を指令した。
ゴジラはビルの上によじ登り、クライスラービル・レキシントン側に入ろうとしている。今がチャンスだと判断し、隊長は全機にミサイル発射命令を下した。
発射されたミサイルはゴジラに迫って行く。しかしゴジラが身をかがめると、誘導ミサイルであるはずのサイドワインダーがゴジラを追いかけずにクライスラービルに激突し、ビルを爆破したのだった。
地上からゴジラを追いかけていた別の軍用車は、突如地上に落下してきたビルの破片を前にして慌ててブレーキをかける。何とか巻き添えを食う事だけは避けられた。
「……ミサイルが、…外れました」
「何だと!ふざけているのか。クライスラービルを吹き飛ばしおって…」
報告にエバート市長は憤怒の籠った声で応じる。
「ロックオンしたんじゃなかったのか?」
「熱探知装置捕らえられないんです!ビルより奴の体温のほうが低いんです!!」
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人気のない電気店に、二人の男が潜入していた。
この二人は軍の作戦を隠し撮りしようとしている一般人だった。カメラを棚から取り出していたジミーという男は、相方であるフレディを探していた。
「フレディ!どこに居やがるんだ!?」
フレディはトラックの荷台にかき集めたカメラなどを積み込んでいたのだった。
「ジミー。悪いことが起こると、俺はいつも予言してるよな?」
「それが?」
「また当たりそうな気がするんだよ」
その言葉は的中した。フレディとジミーの目の前に、ものすごい勢いで爆走してくるゴジラが迫ってきているのだ。二人は慌てて逃げ出したが、ゴジラが起こした衝撃波に吹き飛ばされてしまった。
「敵は91m下だ」
「標的11時方向!」
シルバーホーク隊は走り回るゴジラに向かって今度は機関砲を撃った。しかし先ほどまでゴジラがいた場所に向かって発射された弾丸はゴジラを捕らえられず、次々とビルを蜂の巣にしていった。
こんな敵は隊結成以来初めての事だ。ゴジラはすごい速さで逃げ回るため、弾丸は違う場所を撃つか、当たってもかすった程度だった。
ゴジラは5番街に入って行った。ヘリも当然のごとく追跡するが…なんとゴジラは消えていたのだった。
「…どこに行ったんだ?」
破壊の痕跡はあれど、ゴジラの姿は影も形もない。熱探知があてにならない以上、頼れるのは己の眼だけだ。
するとどこからかゴジラの鳴き声が聞こえた。その方向に行ってみると、ビルに巨大な穴が開いている。おそらくゴジラはこの向こうにいるのだ。
隊長は各機に再攻撃の準備を指示し、ビルの穴に向かって機関砲が発射された。反対側にあったビルが蜂の巣にされたが、それと同時にゴジラの鳴き声も続いて響く。
やがてビルが完全に倒壊すると同時に、ヘリは攻撃を取りやめた。鳴き声は聞こえなくなっている。
「…ようし、やったぞ」
隊長が勝利を確信した次の瞬間、ヘリの背後にゴジラが突如出現したのだった。
気づいたときにはすでに一機のヘリがゴジラに叩き落とされ地上に墜落、爆発する。ヘリコプターは慌てて逃げようとしたが、一機がゴジラに噛みつかれ爆発した。
残るは隊長機のみ。ゴジラはこの火炎を使ってパワーブラストを放つが、ヘリはギリギリで回避する。
指令センターではホーク2と3がやられたことが報告されたいた。悔しそうにするヒックス大佐は、ゴジラが今どこにいるのかを連絡した。
ゴジラは前方のうるさい蚊トンボを噛み砕いてやろうと宙を噛んでいた。
「な、何だこいつは…後を追いかけてきます!」
隊長は必死に逃げ回るが、ゴジラはもうすぐ後ろにまで迫ってきている。ヘリは何とか噛みつかれまいと通りに入って行った。するとゴジラが後を追ってこなくなった。
諦めてくれたか。安堵の息を漏らす隊長。しかし安心したのもつかの間、下から突然ゴジラが現れ、ヘリを噛み砕いたのだった。
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「・・残念です。ホーク隊、全滅しました」
肩を落とすヒックスを待っていたのは、エバートの非難の声だった。
「軍人として恥を知りたまえ!街を壊しているのはあの怪物よりお前たちじゃないのか!!」
「し、市長。冷静に。ほら甘いものでも…」
「うるさい!口出しするな!!」
ジーンの静止の声も届かないようだった。
ホーク隊の敗因は、ゴジラのもう一つの力に気付かなかったことだった。
それは擬態である。これはカメレオンが起こす擬態とほぼ同じもので、ゴジラはビルに体色を合わせて待ち伏せしていたのだった。
人間どもに勝利したゴジラは、高いビルによじ登り空に向かって咆哮を上げたのだった。
フラットアイアンビル前では、ニックがゴジラの体液を回収していた。オニールはその隣にやってきて、悔しそうに言った。
「こんな事信じられない。やりたい放題じゃないか」
「…餌をやった。それだけでも回収さ」
ニックは言ったが、彼は内心ゴジラへの同情を覚えていたのだった。
つづく