喫茶店でニュースが報道される時間を今か今かと待っていたオードリーは唖然としていた。自分が仕入れた…正確に言うと盗んでしまった情報が自分が報道しているのではなく、上司のケイマンが報道しているのだから。
「ちょっと…何よこれ、どういう事!?なんでケイマンが…」
「あー、お前やられたな。ネタを盗られたんだよ」
隣に座っていたビクターが同情の声をかけた。この情報を渡した時、オードリーは以前彼が言っていたようにお人よしは踏み台にされるのが関の山的なことを言っていた。だが踏み台にされたのは自分だったとは…
「…ニックに悪い事しちゃったわ。どうしよう…」
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結局、マスコミの情報を横流ししたとしてニックは研究チームから外されるという処分が下された。
荷物と機材をまとめたニックには航空券が支給された。作戦の邪魔になるからだろうと安全だと言われているフィラデルフィア方面にでも行けと言うのだろう。
リュックを背負って本部を去ろうとしているニック。すると後ろから数人の足音が聞こえる。振り返ってみると、エルシーとクレイブンだった。
「…まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったわ」
「私は信じてるぞ。君はこんなことはしないと」
二人は同情の言葉をかけてくれた。それだけで十分だった。
「一刻も早く、巣の場所を見つけてください。僕の予想では産み落とされた卵は膨大な数になります。それが孵化する前に絶対に駆除してください。そうでないと…」
ニックは言葉をつなげた。
「人類に未来が無くなる!」
一夜が明けた。
オードリーは昨夜からずっとニックを探し続けていた。すぐ近くの電話ボックスではビクターがニックの行方を探すように頼み込んでいる。
そして遂にオードリーはタクシーのトランクに荷物を積み込もうとしているニックを発見したのだった。駆け寄って声をかけると、ニックはむっとした表情でこちらを見た。
「あ、あのニック。その…ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの…」
ニックは何も答えない。その反応がオードリーにとってはどんな反応よりもショックだった。
「あの、もしかしてフィラデルフィアにあるっていう避難所に行くの?」
「ああ。誰かさんのせいでね」
ニックはそれだけ告げるとトランクに荷物を積み込み始めた。
「…あの、ニック。あなたに言わなきゃいけないことがあるの。私、まだ正式にレポーターになったわけじゃないのよまだ見習いで…で、でもあなたを騙してたわけじゃないの。あの、まだ…」
オードリーは何とか言葉を繋ごうとした。だがニックはさっさと積み込みを終えてタクシーの中に消えていった。ニックを乗せたタクシーはさっさと発車してしまった。
「……本当にごめんなさい、ニック…」
一方、ビクターは電話を終えて電話ボックスから出てきた。すると後方から迫ってくるタクシーの後部座席にニックが座っているのを見つけた。
「!!おい、ちょっと!!あんた!」
しかしタクシーはビクターの静止の声が聞こえるはずもなく行ってしまった。
「クソッ」
ビクターは近くに停車している自分の車に飛び乗り、タクシーの後を追った。
つづく