ヴァレンティノに一緒に遊ぼうと言われたのでやってきた俺だ!
友達からの遊びの誘いっていつだって新鮮に毎回嬉しいね!
「やほ~ヴァレンティノ、俺が来たぜ~ってウワァ! 全員薄着すぎる!」
扉開けた瞬間に目に入ったほとんどの人が、着てんだか着てないんだかわからないような際どい服を着用していたため、俺は即座に両手で顔を覆った。
しかし右手の中指と薬指の間からちらっと見てしまう。
えっちなのに興味はあるので! でもえっちすぎると直視はできないので!
「はァ!? ゴースト!? なんでここにいんの!?」
「え~んじぇる! こんなとこで奇遇だね~ウオワッえっちすぎるオッフちょっと待って……」
エンジェルはポールダンスを踊っていた最中だったのか、ステージ上のポールに手と足をかけていた。
しかもめちゃくちゃエロい格好をしている。局部は隠れているがそれだけというか、隠すことで逆にえっちになっているというか。
名前を呼ばれたためうっかり直視してしまい、俺は完全に脳みそがえっちビームに焼かれてしまった。
「待ってたぜゴースト、来てくれて嬉しいよ。まずは一杯どうだ?」
「ありがとねヴァル、でも飲んだらトイレの住民になるから酒はいいよ」
俺はヴァルの酒を断ったが、えっちなバニーガールたちにあれよあれよという間にヴァレンティノの隣に座らされた。
いかん、ついうっかり流されてこんなえっちな場所に入場してしまった。
このパーティなにが目的なんだ? ポールダンス鑑賞会? その場合何すればいいの、チップとか投げるの?
ヴァレンティノの隣にいたヴォックスが怒鳴る。
「おいヴァル、なんでゴーストを呼んだんだ! 場違いだろ!」
「お前は来てほしいかと思って」
俺はヴァルに呼ばれてここに来たけど、ヴァルはヴォックスのために俺を呼んだってこと?
なぜ……この場所で俺に作曲をしろということ……?
できなくはねえな、楽器があればだけど。きょろきょろ見渡すとピアノが置いてあるので、マジでできなくはねえわ。
とりあえず「やほーヴォックス」と挨拶すると、ヴォックスは頭を抱えて深いため息をついた。
「ゴースト、君もなんで来たんだ。こういう場は得意じゃないだろう」
「だってヴァレンティノが今回はえっちじゃないって言うから」
「それで本当にえっちじゃなかったことがあるのか!?」
「ない。……ないね!? 俺また騙されたの!?」
そうだ、とヴォックスと、ステージの上のエンジェルが頷いた。
え~ん、また騙された~! 毎回誘われたという嬉しさが上回って嘘かどうかを判断する脳みそが残ってねえんだよ~!
今回もまたえっちパーティじゃねえか! えっちパーティじゃなかったことないのになんで俺は毎回のこのこ来ちゃうんだ!? アホだからか!? そうだよ!!
「ひどいぜヴァル。俺はすぐ騙されるんだから騙すにしても頻度を考えてくれ! 君昨日も俺を乱交パーティに呼んだじゃん!」
「おいゴースト!? 参加したのか!? してないと言ってくれ!」
参加はしてないけどまんまと会場には行っちゃっただろうが!
扉開けた瞬間えっちすぎて卒倒するかと思ったぜ。
俺はほっぺたを膨らませて怒っているぞ、というアピールをした。
ヴァルは笑いながら俺のほっぺたに指を突き立て、ほっぺを押された俺はぷしゅーと口から空気を吐いた。
「そんなに怒るなよハニー。腹が減ってるのか? 今日の料理監修はお前のお気に入りの店だぜ」
「わ~ホントだ~。ここの創作料理、いつも創作すぎないからいいんだよね、既存の料理の原型を残したうえでオリジナリティがあってさ。うん、うま~。シェフ呼んで! 褒めるから!」
「単純すぎる! それでいいの!? 心配だよゴースト!」
エンジェルに叫ばれたが、わりとそれでいいかもしれない。
なぜなら俺は昨日呼ばれた乱交パーティで「俺を呼ぶならうまい飯くらい用意しろよな!」と捨て台詞を吐いて帰っているので。実際セックスが行われている横で飯が食えるかというと別問題だ。
こういうちょっとした一言を覚えて対応してくるヴァレンティノ、恐ろしいぜ。ついつい絆されてしまう。
まあどんだけ絆されてもAVには出演しねえけど。しねえけど、ちょっとくらいご期待に応えてもいいか。
俺はぴょんとステージに乗って、さっき食べて美味しかったクラッカーをエンジェルの口に入れた。
エンジェルの口がもごもごしているうちに、俺はステージにあるもう一本のポールに手をかけてくるんと一周回った。
「オーケー、俺も呼ばれたからにはなんかしなきゃな! ポールダンス教えてよ、エンジェル! 自分で言うのもなんだが俺は覚えが良い方だぜ!」
会場に入ってきた瞬間にエンジェルがやっていたポーズを真似てみる。
右足を折ってポールにひっかけ、ポールに左足を伸ばしてつま先でバランスを取った。
うん、浮くだけなら意外と簡単だな。これをダンスに見えるようにまでもってけるかっつったら話は別だが。
「いいね。教えてやれよエンジェル」
ヴァレンティノは愉快そうに煙を吐いた。
エンジェルは何か言いたい顔で、口を「あ」の形にした後「い」の形にして、最後に「う」の形にし、顔を覆って返事をした。
「わかったよ、ヴァレンティノ……でも、そっちのアンタはそれでいいわけ?」
エンジェルに目を向けられたヴォックスは口を「あ」の形にした後「い」の形にして、最後に「う」の形にし、顔を覆ってから呟いた。
「見たい……」
「だとよエンジェル」
「ああもう! 教えろって言ってもね。俺は教師じゃないから、見て覚えなよ」
エンジェルは足でポールを挟んで逆さまになった。両手は伸ばしたまま宙に浮き、完全に片足だけで体重を支えている形である。すっげ。折りたたんだ膝の間にポール挟むだけで浮けんのか。
でも俺は見て覚えるのが得意。そうじゃなかったら変身なんざ
俺はエンジェルの見よう見まねで同じ体勢になってみせた。
途端「ワーオ」とかの歓声と、口笛が響き渡る。素人芸でもノリのいい会場だなあ。
ポールの上で逆さまになりながら、俺とエンジェルは目線を合わせる。
「えっちなの苦手なのに自分がえっちって言われるのはいいんだ?」
「ええ? 俺は別にえっちじゃねえからな……」
エンジェルはすぐに次のポーズをとった。動きと動きのつなぎが非常にシームレス、素晴らしいね。
俺はそれを真似ながら、己がえっちであるかどうかについて考えた――いやえっちではない。ちゃんと服も着てるし。
エンジェルは客たちに煽情的にウインクしてみせながら、俺に抗議した。
「すぐえっちって言うくせに! 感覚イカレてんだよゴースト! 鏡も見な! あるいはテレビ野郎の顔!」
「ヴォックスの顔を鏡にすると良いことがある……?」
俺はポールダンスのコツをつかんだので、オリジナル技をやってみた。
すなわち、俺には手と足以外にしっぽがあるので、しっぽだけでポールを挟んで浮いてみる。
空気椅子に座っているかのごとく足を組んで、組んだ足に肘ついて、さらに頬杖までついて優雅さをアピール。
ポールにしがみつく為にどれだけ筋力を使っていようが、まったく力を入れていませんよ、簡単にやってますよ、という風を装うことがコツと見た。
さらにエンジェルを真似てウインクしてみたら、会場がドッと沸いた。リアクション良いな~。
ついでにヴォックスの顔を見たが、鏡に出来るほど光を反射してなかった。
「いつも通りのにこにこじゃん」
「ゴースト、V社辞めて正解だよ! セクハラって知ってる!?」
セクハラは雇用関係があるから成立するもんで、今の俺とヴォックスには雇用関係がないからむしろセクハラにはならないんだけど……え? そういう話してる?
俺はしっぽの筋肉だけでポールに掴まったままぐるんと逆さまになって、顔の横でダブルピースした。
「俺はこんなにかわいいのに、えっちなのか……?」
「帰ったらチャーリーとヴァギーに説教してもらうからな!」
どちて……。