ポールダンスは楽しかった。
初挑戦なので杜撰な技を見せていただろうに、観客がいい反応をしてくれるというのも面白かった。
みんな優しいね。またやってもいいな。でもやるなら練習したいわ。エンジェルってポール持ってるかな。
ステージから降りれば、会話したことのない悪魔たちに「よかったぞ!」「最高!」と言われながら服にチップをねじ込まれた。
なるほどチップってこうやって渡すんだな。勉強になる。
ケツとしっぽの間に札束を差し込まれたので俺は笑ってしまった。ここ金銭感覚のおかしいやつしかいねえのか?
金まみれになってヴァルとヴォックスのところにまで戻れば、ヴァルは超ご機嫌だった。
「ゴースト、やっぱりお前は天才だな。これ以上ないショーだった。映像に残さねえならこういうのもやってくれるのか?」
こういうの、にポールダンス以外の意味が含まれていそうなので俺は首を横に振った。
「乱交はしねえから」
「一人遊びは?」
「映像に残さないでそれ意味ある?」
「俺は見たい」
「う~ん? 変わってんねヴァル」
てっきり俺をAVに出演させるのが目的だと思っていたのだが、別にそういうの関係なく俺をえっちな沼に突き落としたいのか?
あ~困りますヴァレンティノ様、あ~。俺は地獄に落ちて随分倫理が狂ったけど、貞操観念についてだけは生きていた頃からの常識を保ちたいので~。
でもポールダンスについての印象は今日で変わった。
「ポールダンスってえっちなものだと思ってたけどやってみるとスポーツって感じ。おもろいわ~」
「じゃあセックスもスポーツだろ」
俺、また英語能力を一時的に失った? ヴァルが何を言っているのかわからない。
セックスがスポーツ……? え……? 俺の知らない単語の意味がある?
宇宙狸になっていたらヴォックスが俺の頭にチョップした。
「ドラッグをシリアルだと思ってるやつの言うことだ、聞き流しなさい」
「オーウ。ヴァル、地獄で言うことじゃねえけどもうちょい健康に気遣ったら?」
「その言葉そのまま返すぜ。この地獄で童貞処女を守ってる方がよっぽど不健全だろ。溜め込むのは体によくねえぜ?」
「俺処女だけど童貞ではないよ?」
「「はぁ!?」」
ヴォックスだけでなく、珍しくヴァレンティノもでかい声を出した。
「おいおい、そんな話聞いてねえぞゴースト。いつの間にどんなアバズレとヤったんだ、エンジェルか!? おいエンジェル、金はとったんだろうな!」
「濡れ衣だ! 最近ようやく目が合うようになったっつーの!」
エンジェルが吠えるように否定する。誓って言うがエンジェルとえっちなことはしていない。
エンジェルを見るとついついふわふわな胸に目が行ってしまい、えっち! となってしまうため、いっそしっかり目をガン見するほうがマシだということに最近気づいたのだ。
えっちなとこだけ露出してるの罠だろ! 俺はハスクのふわふわな胸でもたまにドキドキしてんのに! みんなもっときちんと服を着てほしいぜ!
アラスターやヴォックス、チャーリーを見習ってくれ。ヴァレンティノでさえ普段はきちんと露出押さえてるんだぞ!
目をガン見するとマシ、ということに気づくまではものすごく不自然に空中を見ながら話したり、目をぎゅっと瞑って話しかけたりしていた。
目を見るようになってからでも、たまにエンジェルが予備動作なくえっちな動きをするとひっくり返っている。
「誰とヤったんだ?」
「死ぬ前の話だからノーカンって言われたらそうかも」
「へえ。恋人がいたのか?」
「まね。でも死が二人を分かつまで、だからそれもノーカンだな」
「もっと詳しく聞かせろよ」
「あんまり楽しい話じゃないからなァ」
「俺は楽しいぜ、ゴースト?」
「俺は楽しくないからこの話はしないよ、ヴァレンティノ」
俺がにっこり笑ってそう言うと、ヴァレンティノは驚いたようだった。
ふふん、俺が話の流れぶったぎるのなんて珍しいからな! 俺はどや顔になった。
「俺は最近成長したんだ! 嫌なことにはノーって言えるようにね!」
胸を張って自慢する。これはチャーリーからの授業で学んだことだ。
ダメなことにはノー! イヤなことにもノー! そう言う権利と義務が俺にもあるってね!
ヴォックスが俺に聞く。
「今回の誘い、えっちだと事前に言われていたら断ったのか?」
「……、……う、う゛~ん……」
俺はえっちなのが苦手だが、友達のことは好きなので……その友達がどうしてもと言ってきたら……わからないかもしれない……。えっちなのは嫌だけど友達には会いたいっていうかァ……。
俺が顔を手で覆って唸り始めたので、ヴォックスが俺の肩にポンと手を置いた。
「もっと精進するんだな、ゴースト」
「クッ……くやちい……」
普通にえっちじゃない場所に呼んでくれないか!? それですべてが解決するだろ!?