「うっし、いい感じに抜け出せたね」
「……ゴースト!? ワオ、マジ? 全然気づかなかったよ」
ポールダンスを大盛り上がりで終わらせた後、俺はもしゃもしゃと用意された美味しい料理を頬張っていたわけだが、そこにいたエンジェルはどうにも楽しくなさそうだった。だから俺が連れだしたわけである。
誰も見てないところで適当な男に変身して、エンジェルを買う振りして一緒に抜け出した。
これならヴァルも文句言わないと思って。
会場の外で元の姿に戻った俺は、ちょっともじもじして言った。
「なんか疲れてそうだったから連れだしたけど、その……これからえっち……なことしようってんなら俺は止めないぜ」
「相手してくれんの、ゴースト♡」
「俺以外ね!? さっき化けてた男ならその道行った先のバー勤めだから今行ったらいるんじゃない!?」
「冗談だよ。ありがとね」
エンジェルは笑うと、俺と肩を組んだ。
「帰ってチャーリーとヴァギーにゴーストのこと説教してもらわなきゃいけないし」
「それマジだったの、俺はなんで怒られるの」
「チャーリーならゴーストのためにいい道徳の授業組んでくれるって」
「道徳なら生前勉強したはずだけどなァ……」
「性教育の方かも」
「それは受けてない。エ!? 俺性教育的にまずいことエンジェルの前でしたの!?」
「ポールダンスしてチップもらうのは売春スレスレでしょ」
「マジ!? 街角で歌ってコイン投げてもらうのと一緒じゃないの?」
「……俺じゃ説得力ないね。はい、帰ろう」
これそういう哲学的な話になってくる?
AVは芸術かどうかみたいなこと……?
ハズビンホテルに帰宅すると、エンジェルが「みんな集合~!」とひとを集めた。
夜更けに足を突っ込んでいる時間帯だったが、流石悪い悪魔の集まりだ。全員起きていた。
「今日の議題はゴーストについて。聞いてよ、こいつさぁ!」
エンジェルが怒涛の勢いで今日の話をし始めた。
俺はうん、うん、と頷きながら聞いていた。エンジェルの言うことは全部正しく事実だったので。
話した内容は最初から最後まで事実だったが、みんなの顔が後半に行くにつれて曇っていくのがわかった。
ええ……やっぱり俺今日、なんかだめなことしたのか……。
俺は怒られるのか? しょんぼりして、俺はしっぽを下げた。
「えーっと……今日の行動の中で、ゴーストは自分に何か問題があると思った?」
「そうだな……素人なのにステージに上がった?」
チャーリーはひきつった笑いをしたし、ヴァギーはため息をついた。
このリアクションを見れば、さすがに今の回答が外れだったということは俺にもわかる。
でも正解が何かはわかんねえな! 答え合わせないんですか!?
エンジェルが「ああもう!」と頭を掻きむしった。
「友達が食い物にされるところなんか見たくないよ!」
「それが好きって言ったらカニバリズムに加えてリョナ的な特殊性癖が入ってくるもんな……?」
「全然話の趣旨理解してないねゴースト」
ごめん。わからん。なんとなくで会話して申し訳ない。
「V社の連中との付き合いは長いのか?」
「うん? うん、地獄に来てからわりとすぐ知り合ったね。もう3年近いよ」
「それだけ長い間つるんでて食い物にされてねえんだ、平気なんじゃねえのか」
いいね、ハスクはいいことを言った。
俺はドンと胸を張った。
「日本人ってその辺よく教育されてるからさ、契約契約~って言われても絶対詐欺だと思って全部つっぱねてきてるもんね! 今回は友達に誘われたから行っただけだし、嫌だったらすぐ帰ってたよ」
「そう言ってんだ。ちょいと過保護なんじゃねえのかエンジェル。見た目はこんなんだが、こいつは強い」
「ハスクは現場見てないからそんなこと言えるんだよ! あんな据え膳初めて見たって! よく今まで処女守れたね!? 襲ってきたやつ全員血祭りにあげてきたの!?」
俺はぱちぱちと瞬きした。
「俺は血が好きじゃないから、あんまり血が出ない方法でだけど……」
「オッケー、やっぱり俺の心配しすぎだったみたい。全員返り討ちに出来るなら問題なさそうだね、解散!」
エンジェルがパンパンと手を叩き、その場がお開きになった。
チャーリーは「次の講義内容について考えなきゃ……」とぶつぶつ呟きながら寝室へと歩き、ヴァギーは「明日考えな」とチャーリーを撫でた。
えーと……説教されなかったから、セーフ?