アダムを相手にしていたアラスターはどこかに行ってしまったようだ。
流石に死んじゃいないと思う。彼は賢いので、ヤバくなったら逃げるだろう。
ということは、このアダムは俺が相手にしないといけないというわけだ。きちぃ~。
今が必要な時なんだろう。
まったく気分は乗らなかったが――俺はハズビンホテルくらいのサイズがある、クッソでかい怪獣に変身した。
流石にゴジラではない。でもこういうタイプの怪獣に皆覚えがあんのかなあ、ゴジラ以外に何に変身したのかあやふやだし。
昔のやんちゃが俺のせいだってバレませんように……。
アダムに向かって火炎を吐きかけるが、「アッチ!」と言いながら避けられた。
くるっとターンして爬虫類っぽい尻尾でアタック! アダムは再び避けたが、別の天使がぶち当たって地面でつぶれた。
そこにチェリー・ボムが爆弾を投げて追い打ちし、天使の四肢はバラバラに吹き飛んで、その破片を人食い族がキャッチして貪り食った。思いのほか連携がうまくいっているようでなによりだぜ。
しかし駄目だ、アダムの逃げるスピードが速すぎて攻撃が当たらない。直接捕まえるしかないか。
鋭い鉤爪でアダムに掴みかかるが、やっぱり避けられた。
アダムは掴み損ねたが、その後ろにいた2人の天使は俺の巨・ビンタにぶち当たって地面に手ひどくたたきつけられた。
その天使たちは体勢を整える暇もなく、地上にいたエンジェルにハチの巣にされた。ナイス。
「好き勝手やってくれるじゃねえかァ!」
アダムは両手の人差し指と小指あたりの指を立てて――悪魔も天使も指が4本だからどの指がどれに該当するのかいまいちわかんねえんだよな――俺に向けてビームを撃ってきた。
嘘ォ!? アダムってビーム撃てんのォ!?
聞いてねえけど!? 天使ってそうなの!? 今まで見たことないよ!
こいつ人類βテスターだからって運営から優遇されてやがる! ずるいぞ!
「っだァ! っぶねェ!」
こういう乱闘においてでかい怪獣って向いてねえ!
単に的がデカくなって攻撃当たりやすくなるわ! もう!
そんなこと、戦いのために読んだどの本にも書いてなかったぞ!
俺はヴァギーに化けてアダムのビームを回避したが、そのままグーパンチで突っ込んできたアダムは避けられなかった。
腕をクロスにして受けたが、腕からひっでえ音がしたのでバッキバキに骨が折れたことだろう。
アダムパンチにぶっ飛ばされた俺は足で着地して、数メートル地面に線を引きながらなんとか止まった。
着地の時ヴォックスに変身していたので、俺はそのまま地団太を踏んだ。
「クッソ! あいつマジで強いじゃんか! 泣いちゃいそうだぜ!」
泣きたくなるとついついヴォックスに変身してしまう。俺が一番泣き顔を見たい男なので。
「サー・ペンシャス!」
俺がアダムとの殴り合いに集中している間に、動きがあったようだ。
気づけば、アダムの近くに巨大な飛行船が浮いている。サー・ペンシャスの船だ。
船はアダムに近づくと、その先端からビームのようなものを発射しようとした。だが、それは叶わなかった。
アダムが手を一振りすると、いとも簡単に飛行船ごと消滅してしまったからだ。
「セーフ」
俺は絶句した。みんなも項垂れた。
こんなにもあっけなく、サー・ペンシャスは逝ってしまった。
守れなかった。俺は何のために戦ってたんだよ。
一瞬にしてすべてがどうでもよくなりかけたが、隣でチャーリーが怒りに燃えた。
これは文字通りのことである。燃えて、怒りに目の色を変えたチャーリーは、使い魔のラズルとダズルを呼んだ。
普段は小さい羊……いやヤギ? のかわいらしい姿をしているラズルとダズルが、ドラゴンのような巨大な姿に変身し、チャーリーとヴァギーをその背に乗せ、アダムに突っ込んでいく。
俺たちも、ただそれを見ているわけにいかない。
敵はアダムだけではないのだ。
人食い族のみんなも頑張って戦って……いや、食事をしてくれているが、敵の数は一向に減らない。
俺はエクソシストに化けて、天使の軍団に突っ込んだ。
「もうその手は食わないぞ、悪魔め!」
「だったら正面から全員殺してやるよ」
槍を投げて天使を突き殺し、剣を振りかぶって天使を切り殺し、斧を振り下ろして天使を叩き殺した。
それでもやっぱり数で負けていて、エッギーズなんかを守りながら立ち回っていれば、いつの間にか囲まれてしまった。
もうだめか、と思われたその時。
頭上で戦っていたアダムとチャーリーのもとに、加勢する者が現れた――ルシファーだ。
アダムをぶん殴り、その仮面を叩き割った。
一瞬で形成を逆転させると、ルシファーはアダムをおちょくりながら戦った。
すっげえ余裕ありそう。俺はそのアダムにボッコボコにされたんだけどね……。
ルシファーったら俺より変身能力使うのうまいし。楽器だけじゃなくあれも教えてくんねえかな。
俺はハスクたちの隣に、天使の姿から、チャーリーの姿に化けて合流した。
タキシードを着ている、普段から見覚えのある方のチャーリーなので、本物のチャーリーが戦装束に身を包んでいる今ならば一応見分けはつくだろう。
俺はみんなに、チャーリーらしくかわいいウインクをした。
「ルシファーに早起きするよう言っといて良かっただろ?」
ルシファーの住んでいるところからこのハズビンホテルまで、急いでも1時間程度はかかるらしい。
彼が起きるのがもっと遅かったら、この戦いに間に合っていなかったかもしれない。
昨日の電話口の感じからいったら、エクスターミネーションのことすら知らなさそうだったし。
かといって昨日の段階で言ってしまったらルシファーが眠れなくなりそうだったので、今朝ルシファーからのモーニングコールで俺が起こされたときに戦いのことを伝えたのだ。はい、俺は頑張っても起きられませんでした。
案の定エクスターミネーションが半年繰り上がっていたことも知らなかったルシファーは、当然ハズビンホテル――チャーリーが狙われていることをその場で知り、そこから急いでここにやってきてくれたというわけである。
「ゴースト……ナイス!」
エンジェルにこぶしを突き出されたので、俺は自分のこぶしでそれに応えた。
こつんとこぶし同士をぶつけて……これめっちゃ友達のやることじゃん!?
俺の腕がアダムにバッキバキにへし折られてなかったらもっと嬉しかったぜ!
痛ェ! でも痛さごと思い出には残るね!? やったぜ!