Laughing at the blue sky   作:ロリコン先生

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バイクの知識はにわかもいいところなので、なんかだめなとこあったら申し訳ない。


session3 want it all back

「ではこちらのセットで合計980円となります」

 

 手頃なハンバーガーセットについでにナゲットをつけたら結構な値段になった。ちなみに後払いらしい。中々こういう店にしちゃ珍しいシステムだ。

 五百円程度だったら払ったんだがなぁ。うーむ、これはセミナーにツケるしかない。

 

「悪いが支払いはセミナー宛にツケとていくれ」

「ミレニアムのセミナー宛ですか?かしこまりました。それではお名前をお伺いしても?」

「あ〜」

 

 一瞬言い淀んだ。本名を言ってユウカにバレるのも面倒くせぇ。

 偽名を言うのは確定だが、どう名乗るかだな。しかし、名前ねぇ……。ここは、そうだな。

 

「…早瀬 ユウキだ」

「かしこまりました」

 

 レジの……ロボットの兄ちゃんなんだか姉ちゃんなんだかは見た目じゃわからんが、そいつはサラサラっとペンで何かを書けばこちらに手渡してきた。

 

「こちら領収書になります」

「どうも。ごちそうさん」

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

 

 にっこりと顔の……モニター部分に映し出された目を模している模様が切り替わり、笑ったようなものになる。

 技術が高度だよなぁとは常々思っているが、ミレニアムの近未来さを考えれば存外大したことないのかもしれねぇな。

 店を出て、またミレニアム自治区をぶらつく。

 どーしたものかねぇ……。

 ボクはプラプラとミレニアムの自治区の中を歩く。

 が、直ぐに煙草を吸いたくなってきた。

 すかさずキョロキョロと辺りを見渡して良さげな場所を探す。

 エンジェル24だとかのコンビニの前で吸えりゃいいんだが、キヴォトスは喫煙者がほとんどいないもんで灰皿がない。

 この世界不満なところはすくねぇが、喫煙所がほとんどねぇのが困りものだな。

 まぁボクがいた場所では、煙草なんてみんな路上喫煙だったが。ボクもそのうちの一人だった。少数派は辛いねぇ。

 ぶらつきながら当たりを見回していると、カマキリマークの宅配トラックが動き始めた。そして、ちょうど止まっていた場所の奥に煙草を吸うには良さげな路地が見えた。

 あそこでいいか。

 ボクは目星をつけて路地へと入っていく。

 路地裏は人が一人入ることの出来るくらいのスペースしかねぇが、壁によりかかって煙草を吸う分には困らねぇ。

 胸ポケットから箱を取りだして、手首のスナップで一本だけ箱から頭を出すように調整する。

 出した一本を口に加えて、ポケットからシルバーのライターを取り出した。

 後は火をつけて、煙草から出る煙を吸い込んだ後、ゆっくりと吐き出す。

 紫煙が壁にあたって空へと昇っていく。

 アウトローに憧れているアルいわく、この一連の動作は格好いい行為らしい。実際、ボクもそう思う。

 煙草の似合う男はいい男だ。価値観としては、イマドキ古いんだろうけどな。

 ボクは再び、今度は蒼い空に向かって煙を吐き出したところで、ズボンのポケットに入れたスマホが震える。

 こんなタイミングで電話をかけるのは誰だってんだ?

 

「もしもし」

『ちょっと!ソラさん!?今のどこにいるんですか!?』

「悪ぃな。急用を思い出したぜ」

『ちょっ、待っ───』

 

 ブツリと容赦なく電話を切る。

 よし、これで安心だ。適当にぶらつくか。

 路地から出て、太陽の照りつける日差しの眩しさに目を細めていると、再びカマキリマークの宅配トラックが目の前を通った。

 そんなに忙しいのかね……。

 さて、今度はどこに行こうか。

 ミレニアムプライスの表彰があるって話だし、もしかしたらなんかおもろいもんがちょっとアングラ気味な店に売られてるかもしれねぇ。さすがにブラックマーケット程じゃないだろうが、気になりはする。見に行って────。

 そう思って、ボクは足を一歩踏み出したその瞬間目の前に猛烈なブレーキ音を鳴らしながら一台のバイクが止まった。

 その、色鮮やかなブルーのボディには見覚えしかなかった。

 さらに言えば、若干足が届いていないが、見事に乗りこなしている人物にも見覚えがあった。

 

「見つけましたよ、ソラさん!」

「げぇユウカ!なんでここがわかったんだよ!?」

「ここはミレニアムです。位置の特定くらいは容易に行えますから」

「あの電話に出たのは失敗だったね、ソラ」

 

 ひょっこりとバイクの側面(ボクから見れば奥)から顔を出すのはウタハだった。

 彼女の言うことから察するに電話で逆探知でもされたか。

 ならバレたことには納得なんだが、なんでコイツがいるのか疑問だった。が、よく見りゃバイクの横にサイドカーが着いている。

 しかも準備の良い事にボクのバイクと同じくブルーのカラーで塗装されていた。

 

「お前、いつの間にそんなのを……」

「フフ、機会があるかもと思っていてね。でも思ったより早く使うことになってしまった。でも実際に乗ってみると良いねコレは。位置がバイクのシートより低いからかな。風をよく感じることが出来ているよ。とても心地がいい」

「そうかよ……」

 

 思わず肩を落とすボクに、ユウカはプンスカプン。私大変怒っています!と言いたげな様子で怒鳴り散らした。

 

「もう!黙って出ていくなんてほんとうに有り得ません!」

「なんだか大変そうだったからな。邪魔するのも悪いだろ。ボクの気遣いってやつさ」

「それであわよくば逃げおおせようって魂胆だろう?」

「おいおい、人聞きの悪いことを言うもんじゃないぜ」

「ソ〜ラ〜さ〜ん〜?」

 

 目の前には鬼が迫っている。

 前門の狼ならぬ、前門の鬼かな。どうする?土下座するべきか?

 とりあえず、普段通りに乗り切る方向で行くか。

 ボクは迫るユウカに頬を赤らめて照れたように笑う。

 

「ユウカ、勘弁してくれよ。こんな往来の場で……さすがに困るぜ」

「若干頬を赤らめるのやめてください!勘違いされるでしょう!?」

「なんだ……ボクじゃダメなのか」

「普通に嫌です……!」

「そいつは残念」

「ユウカは先生にお熱だからね」

「なるほどな」

 

 ウタハがやれやれと首を振りながら放った言葉にボクは納得して頷いた。

 さすがは噂のシャーレ。

 アビドスだけじゃなく、ミレニアムの生徒すら落としているとは。

 あの様子じゃ他の主要学校にもちゃんと顔が効くと見た。

 詳しくは知らないが、アビドスでのあれこれも大活躍だったらしい。おかげで、アルも先生にお熱だ。

 天性の人たらし……あるいは、魔性の男。

 なんにせよ、先生ってのは生徒たちを惹き付ける魅力があるんだろ。

 どうやらボクとは違うらしい。

 ボクは顔を見ればだらしなさそうと言われるし、喋れば胡散臭いって言われる。

 世知辛いねぇ。

 

「ち、違います!別に先生にお熱とかそういうのじゃ……。って、誤魔化さないでください!」

 

 ユウカはクネクネと照れたように頬を赤らめて、ワタワタと手を動かして否定するが、思い出したかのようにバッと顔を上げた。

 忙しいヤツだな。

 

「ダメみたいだね、ソラ」

「だな。上手く誤魔化せるかと思ったんだがな」

「ダメです誤魔化されませんから!……はぁ、まぁいいです。学校に戻ってから話を聞きますから」

「へいへい。んじゃ、戻りますか」

「あ、それは待ってください」

 

 ユウカに降りてもらおうとするが、先に彼女から制止が入った。

 

「待つって、なんでだよ」

「探し物がありまして……」

「へぇ。どんな?」

「宅配便です」

「……ああ?宅配便がなんだって」

 

 ボクは思わず聞き返した。

 なんで宅配なんか探してるんだ?

 

「盗まれたんですよ」

「何が?」

「ミレニアムプライスの賞状が」

「なんで?」

「知りませんよ!」

 

 ユウカはそう怒鳴るように答えた。

 別に怒鳴らなくたって良いだろ……。ボクは若干落ち込みながら、彼女へと声をかける。

 

「それで、特徴は?」

 

 そう問い掛ければ、ユウカは少し思い返すようにして空を見てから、こちらへと向き直る。

 

「カマキリ」

 

 カマキリ?

 

「マークの」

 

 ウタハが続けるように答えた。

 ボクはその言葉を聞いて思わず口に出してしまう。

 

「「宅配便?」」

 

 偶然にもボクとユウカが言葉を発したのは同じタイミングで、それによって互いに顔を見合わす。

 

「ソラさん知ってるんですか!?」

「お前らが来る前にここを通りかかったぞ」

「それを先に行ってください!」

「ぐえっ」

 

 ユウカはボクの襟をグイッと引っ張って、バイクに乗るように促す。

 仕方が無いのでシートに座れば、ユウカは一つ後ろにずれて2ケツする形でお互いに座った。

 

「それでどっちに!?」

「ああ?あっちだな」

 

 ボクが弱々しく、さっき宅配トラックが向かった方向を指させば、ユウカはガバッとそちらを見たあと、ボクの方へ向き直る。

 

「行きますよ!」

「イマイチやる気が出ねぇなぁ」

「いいから追いかけてください!」

「なんでボクが……」

「文句を言わないで、走るんですよ!!」

「走るのはバイクだけどな」

 

 ボクの小粋な軽口にはユウカの鋭い睨みで返されてしまう。悲しいねぇ……。

 気を取り直しら改めて、シートにしっかり腰を下ろしてからハンドルを握る。

 キーを回してエンジンをかけた後、クラッチレバーを離せば、バイクはゆっくりと走り始めた。

 無事にエンジンがかかって発信できるようになったのを確認すれば、ボクは一度ユウカへと確認をする。

 

「それで?まずどう探す?」

「……正直アテはありません」

「うん、闇雲に探すしかないというわけだ。非効率だね。でも君はそういうのが好きだろう?」

「ああ。ボク好みで最高さ」

 

 スロットルを捻って、バイクをより加速させる。

 とはいえ街中だから、ローギアで安全運転だ。サイドカーも着いちまってる事だしな。

 しかし、探すといってもどうするのだろうか。何かアテがあるのなら楽なんだけどな。

 風が頬を撫でる感覚を心地よく思いながら、ボクは隣でサイドカーに座りながら優雅に微笑んでいるウタハへと話しかける。

 

「というかウタハさんよ。ボクの相棒のメンテナンスは終わったのかよ?」

「ああ。ユウカがこれに乗って追いかけるって言うものだから後輩たちと一緒に超特急で終わらせたのさ。とはいえ最低限だけどね」

「初めからそうして欲しいもんだぜ」

 

 ミレニアムの自治区の中を、ボクはゆっくりとバイクを走らせる。

 女二人侍らせて、正しく両手に花なツーリングなんて本来なら贅沢極まりないが、花がコレとコレじゃあな……。

 ため息を吐くのはバレそうなので、内心落胆していると、服の上からユウカが抓ってきた。

 

「いでっ」

「何か失礼なことを考えていませんか?」

「……いいや?お前らと一緒で最高の気分だぜ」

「白々しい……」

「相変わらず思ってもいないことをそれっぽく言うのだけは天才的だね」

 

 酷い言われように若干肩を落としつつ、ボクはハンドルを握り直した。

 確かにメンテナンスしたと言うだけあって、相棒のコンディションは前よりも調子が良い。

 どうやらマイスターのマッサージはお気に召したらしい。

 調子が上がってより大きい排気音をマフラーから出しながら、僕の相棒は走り続けようとする。

 そして、同時に。

 

「見つけたぜ……!」

 

 前方にカマキリマークの宅配トラックが走っているのを確認したボクはそう呟いた。

 ユウカとウタハも同様に確認したらしく、それぞれ愛用のサブマシンガンを構える。

 どっちも随分なカスタマイズがされており、ウタハのサブマシンガンなんか一見したらおもちゃに見える。

 なんなら、キヴォトスの住人の銃はほとんどが改造されており、改造してない銃を使っているのなんてボクやPMCとかの軍事組織くらいだ。

 ボクはハンドルから手を離さずに、トラックへと距離を詰める。

 

「横に着けるぜ」

「その必要はありません。タイヤを撃ちます」 

「OK」

 

 ユウカが片手でサブマシンガンを持ち、狙いを定めようとしたその刹那、目の前のトラックがブォン!と一際大きいエンジン音を鳴らし、エンジンを蒸かす。

 そして急激に速度が上がった。

 

「気づかれてしまったようだね」

「呑気に言ってる場合ですか!追いかけますよ!スピードを上げてください!」

「たっく、人使いが荒いのなんの」

 

 ギアをローからハイに変えて本格的にスピードを出す準備をする。

 スロットルを上げれば、答えるように相棒はマフラーから音を鳴らした。

 

「待ちなさい!」

「フフ、楽しくなってきたね」

 

 SMGを乱射しながらトラックを止めようとするユウカとは対象的に余裕そうに状況を楽しんでいるウタハ。

 そんな二人を尻目に、ボクはふと思うのだった。

 既にメーター残り一メモリしかねぇけどガソリン足りるのか、これ。

 そんな疑問を他所に、宅配トラックとのどうでも良いチェイスが始まるのだった。

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