Laughing at the blue sky   作:ロリコン先生

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session4 ザ チェイス

 ───そんなこんなで今に至るわけなんだが。

 

「グレネード!」

「わかってる!」

 

 ウタハの掛け声を聞いて咄嗟にハンドルを切ることで、目の前に降ってきたグレネードを避ける。

 お返しとばかりに、ウタハとユウカがサブマシンガンを撃つが、さすがにこうも全力で飛ばしつつ回避機動も行っているとなると命中させるのは難しいらしい。

 

「当たらない!ああもうソラさん!先程のはもっと早くハンドルを切れば当たりました!」

「お得意の計算か!?知ったこっちゃねぇし、無茶言うんじゃねぇぜ!」

 

 この通り、ボクたちはミレニアムプライスの賞状を盗んだ宅配トラックとかれこれ十分以上は追いかけっこをしていた。

 ユウカがいい加減痺れを切らしたと言わんばかりに怒鳴り散らかす。

 

「〜〜〜〜っ!そこのトラック!いい加減止まりなさい!」

 

 どこから取り出したのかメガホンを持って……ウタハが渡したくさいな。

 ともあれユウカはそのメガホンを使ってトラックへ警告をだす。

 

『断る!止まって欲しければ我々の要求を呑むんだな!』

 

 ノイズ混じりの声は、向こうのトラックに着いているスピーカーから出てるらしい。

 そして再び飛んでくるのは木製の柄が着いている手榴弾。

 一々使ってるもんが古いんだよ。

 これはさすがに躱すことは容易だったが、それはそれとして、サイドカーが着いている上に2ケツ状態なのが中々しんどい。バイクもメンテナンス後とはいえ無理をさせている。こりゃ長くは持たねぇぞ。

 しかし、要求ってなんだ?そもそもコイツらが誰かも分からねぇんだがな。ボクらは。

 疑問は同じだったようでウタハも首を傾げていた。

 

「要求?」

「なんか言われてんのか?」

「少なくとも私は聞いてないね」

 

 チラリと横目でウタハへと確認を取ったが彼女は首を横に振った。

 ウタハは体を右後方へと向けることでユウカへ問いかけた。

 

「君は?」

「いえ、私も特には何も……」

 

 そう言ってユウカも、後ろにいるのでよく分からねぇが、きっと首を横に振った。

 彼女のツーサイドアップが服に当たったから多分そうだろ。

 

「あ」

 

 しかし後ろで小さく、だが確実になにか思い当たることがあるとばかりに、ポツリとユウカが呟いたのをボクは聞き逃さなかった。

 

「おいおい、まさか心当たりがあるのか?」

「いや、でもまさか……ええ?嘘でしょ?」

「心当たりは!?」

「か、化学部……」

「ああ!?」

 

 ボクは聞き返すが、ユウカはメガホン越しだと言うのに思わず耳を塞ぎたくなるような大声を出した。

 

「もしかしてあなた達、化学部!?」

『やっと気づいたか冷酷な算術使いめ!』

「な、なんですって!?」

「ひでぇ言われよう……」

 

 冷酷な算術使いって……。

 事実か。血も涙もねぇ女だからな。うん。

 

「仕方がない。彼女は経理担当だからね。色々と恨まれているのさ」

「なるほどね。そりゃボクの事も執拗に追いかけるわけだ」

「あなたは違いますが!?というか今の呼び名は忘れてください!あなた達もおいそれと言わないように!」

『断る!』

 

 ユウカは若干恥ずかしそうにしながら化学部に要求するがにべもなく斬り捨てられた。

 

『我々の要求を呑むか!このまま無様に逃げられるかだ!』

「だから要求ってなんだよ」

 

 しかもこのボクから逃げる気でいやがる。

 とはいえ、確かに十中八九逃げられるが。

 ボクの言葉に、ユウカは後ろで唸った。

 

「それが───」

『それにそんなボロのバイクで我々を捕まえられると思うてか!』

「───ああ!?上等じゃねぇか!」

「ちょっとソラさぁぁぁぁぁ!?」

 

 ボクがハンドルを思いっきり捻ることで相棒が唸りをあげる。

 わかるぜ相棒そうだよな。ナメた女共にはちゃんと分からせてやらねぇとな。

 何よりこのブルーのボディが街でよく映えるコイツをボロと抜かしやがった。許してはおけねぇ。

 慣性で後ろに飛びそうになったユウカが慌てて僕の背中へ抱き着くようにしがみついてから、その背中をバシバシと叩いた。

 

「い、いきなり飛ばさないで下さい!」

「あんま喋ってると舌噛むぜ」

「驚いた。まだ速度が出るのか」

「後でオーバーホールは確実だけどな!」

「それは腕がなるね。ただまぁ、あまり熱くなりすぎないようにね」

「誰が熱くなってるってえ!?」

「いや、なってるじゃないですか!」

 

 ボクは感情の昂るままに「なってねぇ!」と大声で怒鳴りながら、あのトラックを追いかける。

 ぶっ飛ばしてやる!

 

「ソラさんってこんな人でしたっけ……?」

「ああ。ソラは気分屋でマイペースなのに結構短気なんだ」

「なるほど。矛盾ですね」

「聞こえてるからな」

 

 さすがに隣でこうも冷静に漫才されれば頭に昇った血も下がる。

 しかしそれはそれとして、あのガキ共はとっちめねぇと気が済まないのは確かだった。

 といっても、二人の射撃はイマイチ有効打にならないのも事実。

 それも仕方がない。ウタハは基本戦う時はこいつが作った……かみなりちゃんだったか?確かそんな名前の自律ターレットを使って戦う。

 つまり、あまりサブマシンガン主体で戦う訳じゃない。

 そしてユウカはというと、受けにはめっぽう強いのだが攻めになるとさすがに火力不足が目立つ。

 勝負とは最後に残ったヤツが勝つとは言うが、逃げられちゃ話にならねぇ。

 悔しいが、ボクらじゃ宅配トラックが止まるほどの有効打を持たないのが現実。あまりにも火力不足って訳だ。

 ボク?ボクはそもそも論外だ。手が離せねぇよ。

 対して向こうは無限とも思える爆弾をポイポイ投げてくる。

 ムツキじゃねぇんだぞ勘弁してくれ。

 何が『芸術は爆発だー!つまり化学も爆発だー!』だ。関係ねぇだろどっちも。

 

「なんかねぇのか!?」

「ないですよ!あったらとっくにやってます!」

「実はあるんだ」

「「あるんだ!?」」

 

 思わずユウカとセリフが被った。

 

「あるなら最初からやりやがれ!」

「うん。実はこんなのこともあろうかと思ってね。サイドカーに着けておいたのさ」

「またかよ。たっく、準備いいな──っとぶね」

「ナイス回避です!止まりは、しないわね……!」

 

 ボクが飛んできたグレネードを回避した後に、すかさずユウカもサブマシンガン二丁持ちで撃つが、相手も蛇行しつつの不規則な機動の運転だ。多少は当たったが、運転が困難になるレベルのダメージは相変わらず与えられなかった。

 

「それでなにがあんだ!?」

「驚いて腰を抜かさないでくれよ?」

 

 ウタハはサイドカーのハンドル部分に着いているボタンを押す。

 すると、サイドカーの全面。ライトのようなものが着いていたそこが、機械的な機構によって開き、中から銃口が複数束ねられたような円筒の銃身が出てきた。

 ……銃身?

 

「20mmバルカン砲さ」

「なんてもの仕込んでやがんだお前は!!?」

「ファイヤ!」

「話を」

 

 ドゥルルルルル!と低く恐ろしい音を立てて円筒が回転し、その後砲身から弾が───。

 

「う、うお、おおおおおおおあああああ!?」

『うわあああああああ!?』

 

 車体がぶれにぶれ始める。

 畜生が、バルカン砲の反動がデカすぎる。車体を維持するので精一杯だ。

 後ろではユウカが背中にしがみついて泣き叫ぶ。

 

「きゃああああ!?ソ、ソラさんちゃんと運転してくださいいい!」

「無理に決まってるだろふざけんな!いますぐ止めろ!」

 

 ウタハは直ぐにスイッチから指を離してため息を吐いた。

 

「やはりまだ反動が大きすぎるな。まだまだ改良の余地がありそうだ」

「お前はバイクを戦車かなんかだと思ってるのか!?」

「それも浪漫だと思わないかい?」

「知るか!」

 

 ボクはそう毒を吐いて前方をへと目を向ける。

 目の前を変わらず走るトラックはフラフラと蛇行運転を続けながら走っているのがわかる。

 しかし明らかに速度が遅くなっており、車体にいくつも穴が空いているのが見える。

 どうやらさっきのバルカン砲がかなり有効打になったらしい。

 

「だったら、このまま一気に詰める……!」

 

 ボクは緩めていた速度を再度上げて、バイクを加速させる。

 15m程だった距離がだんだんと縮まっていき、残り1mと言ったところまで近づいた。

 そんな時、ピー、ピーとバイクのメーターから音が鳴った。

 

「なんですか?この音」

「ユウカ。悪い知らせがある」

「え?な、なんですか?悪い知らせって」

「ガスがもうない」

「嘘でしょ!?って、どんどんバイクが遅くなってるじゃないですか!これじゃあ離される!」

 

 ユウカの言葉通り、ガソリンがもうなくなった相棒は緩やかに速度を落としていく。

 詰めた距離がどんどん開いていってしまう。

 

『はははは!やはりボロだったな!我々はこのまま逃亡し早瀬ユウカ!お前を困らせてやろう!』

「ま、待ちなさい!」

『待つものか!』

 

 またボロと抜かしたアホ共をボクとしても引っ捕まえてボコボコにしてやりたいが、現実は無慈悲である。

 バイクはどんどん速度を落とし、着実に距離が離れていった。

 

「くそったれ、追いかけるぞ!」

「え、でもバイクは」

「走ってだよ!」

「ええ!?……分かりました!」

 

 どうやらウタハはヒラヒラ手を振っているところを見るに走らないらしい。それもそうだ。アイツ根っからのインドアだからな。

 二人で駆けだす。

 さすがに相棒をコケにしやがったアイツらは許さねぇぞ!

 

 

「でもさすがにトラックに追いつくのは……ってソラさん足はやっ!?」

「待ちやがれ!」

 

 足の回転数を上げて、ガンガントラックへと近づく。

 車体のダメージがデカすぎてバイクで追いかけてた時より明らかに速度がでてない。これなら追いつける。

 そのまま車体の側面へと近づき飛び移ろうとする。

 

「さぁ!いっくよー!」

 

 そんな時聞き覚えのある声が聞こえた。




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